俺の異世界勇者デビュー   作:†バレット†

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出会いは常に唐突

「て……い」

 

うんんっ? なんだぁ?

 

「お……て…さ……い」

 

何だってんだよ煩いなぁ……身体が重くてもう少し寝かせて欲しいってのに……

 

微睡みの中、朦朧としている意識の中で何かがずっと音を発している、心無しか俺の身体がゆらゆらと揺れているかのようだ。

 

あぁ……そうか、目覚ましが鳴ってるんだな。

身体全体を揺するアラーム機能なんてこの世界の目覚ましは一味も二味も違うな。

 

けど、ごめん目覚まし。もう少しだけ俺に安眠を与えてくれ……身体が重くて仕方がないんだ。

 

「堪忍してくれぇ〜」

 

アラームを止めるべく、俺は瞼一つ上げずにゆらゆらと目覚ましのスイッチを止めるべく腕を伸ばす。

 

「なんですか? その手は……ッッッ!?」

 

 

パッシーーーーン!!

 

瞼に星が瞬いた、それも特大な奴だ。

 

「いってぇぇええっ!!」

 

頬に半端ないほどの衝撃と痛みを受け、頭が強制的に覚醒する。

 

何だ!? 何が起こったんだ!? これまでに受けたことがないような痛みがほっぺたから伝わって来るぞ!?

 

半ば混乱状態で飛び起きた俺は、尋常じゃない痛みと熱を帯びている頬をさする。

 

この世界独特の特殊な病気か何かじゃ無いかと本気で心配になり始めた頃、ようやく俺はこの部屋にもう一人居る事に気付いた。

 

顔を真っ赤に染め上げて、こちらを睨んできているミフィだ。

 

……えっ? 何で俺今合ったばかりのミフィにこんなに睨まれてんの?

 

「あ、ミフィおはよう。何か起きたら頬っぺたがメチャクチャ痛いんだけどミフィは何か知ってる? この世界独特の病気とかじゃないよな?」

 

「知りませんし、そんな病気は存在しません‼︎」

 

「えっと……なんでそんなに怒ってるんですか?」

 

「自分の胸に聞いて下さい!!」

 

怒り心頭なミフィの言葉に、動揺を隠せない頭で必死に考える俺。

 

アラームを止めようとしただけなのに、何でこんな目に合ってるんだ俺は……

 

……っと、考え始めた頃になってようやく俺はその事に気付く。

この部屋目覚まし時計なんて無いじゃん……と。

 

つーことはなんだ? アラームだと思ってたのはミフィの声で、それを止めようと俺は手を伸ばしたら凄まじい衝撃と痛みで飛び起こされ、目の前でミフィが昨日は見せなかった鬼のような表情で俺の事を現在進行形で睨んでいる……っと。

 

うん、客観的に見なくても、冷静に考えたら俺、ミフィにぶっ叩かれて飛び起きたんじゃね?

 

てか、ミフィがこれだけ怒っているって事は俺がやっぱり何かしでかしたって事なんだけど、心当たりがあるとしたらアラームを止める時位か?

もしかしたら俺はアラームを止めようと伸ばした手で、ミフィの他人が触れてはいけない部分に触ってしまったのかもしれない。

 

その考えに至ると同時に、俺の顔は紅潮し、背中には冷や汗を流しているという妙な状態へと陥るのであった。

 

「……ご飯食べに行きますよ、場所を教えるので付いてきてください」

 

「はっ、はい!」

 

静かな怒りを秘めた、昨日とは別人のような凄みのあるミフィの後ろをおそるおそる付いて行き俺は朝食を食べに行くのであった。

 

……勿論やたら旨そうに見えた朝食の味なんか覚えてないし、彼女の機嫌を直すので必死だったさ。このままミフィが機嫌を損ねたままだとこれからの行動に支障が出るだろうし、何より俺自身の保身の為にも必死にならざるを得なかったんだ……

 

必死過ぎてなにを食べたのかすらうろ覚えだよ……

 

 

ようやく彼女が機嫌を直してくれたのはそれからしばらく後だったけどね。

 

 

 

――――――――

 

 

 

「ここのメインストリートで大抵の品物は揃うんですよ?」

 

「ほうほう、そりゃまた便利だな。色々な所を走り回らなくて済むのは心底助かるよ」

 

機嫌を直してくれたミフィと共に、俺達二人は当初の予定通りこの国の案内をミフィにしてもらっていた所だ。

 

城から出てすぐの大通り……所謂メインストリートに沿ってこのグランセウム国の案内をお願いしている。

 

隣に立つミフィはフード付きの黒いローブを着用して自分が知り合いにバレないように変装している。

 

なんでも、学園に編入する前の俺と一緒にいる所を知り合いに見られたらマズイからだそうだ。

それなら街案内なんて適当な人に任せればいいんじゃ……とか一瞬頭を過るが、口に出したりはしない。

 

だってそんな事言ったらミフィがまた機嫌を損ねるかもしれないしな。

 

 

黒いフードを目深に被っているせいで表情はよくわからないが、楽しそうな声で俺に街を案内してくれているミフィ。

 

俺自身も元の世界では見たこともない屋台やお店を見て、正直とても楽しかった。

ウィンドウショッピングでこんなに楽しい気持ちになれた事がかつてあっただろうか?

 

 

メインストリートを歩きながらミフィの案内を聴いていた俺の視界にとある店が目に留まる。

 

「なあ、アレって……」

 

「アレですか? ただの武器屋ですがどうかしました?」

 

俺とミフィの視線の先、そこには一軒の武器屋があった。

 

店頭前の入れ物には大量の剣や槍が入れられており、粗品なのか安く叩き売られている。

 

ここからではハッキリとは見えないが、店内にショーケースらしきものがある事から、良質な武器は店内に展示されているのだろう。

 

武器屋か……RPGじゃ、お世話になりまくりのお店じゃないか! つっても、今の俺にはデュランダルがあるし、今回ばかりはあまり関係ない話なんだけど……。

 

ふと右手の甲に視線を落とすと、どこか誇らしげに聖痕が光っているようにも見えた。

 

「あぁ……ライトは学園で使う武器の心配をしているんですね。それならばお父様が聖剣と出来るだけ同じような物を用意してくれるらしいですから大丈夫ですよ」

 

おおぅ、全然違う事考えてたぜ。

 

てか学園って武器所持していくのね……。

物騒な事この上ないな。

 

「そっか、何から何まで色々と手を回してくれてありがとうな」

 

「いいえ、此方の都合で召喚してしまったのですからこの位は当然の義務というものですよ! さあ、グランセウム王立魔法学園はもうすぐですよ!」

 

城から出て、ミフィと一緒に大通りを歩きは始めて約二、三十分ちょっと。

ミフィ曰くもう学園に着く……らしいのだが。

 

まさかアレじゃないよな……。

 

俺の視線は、このメインストリートの先にある、一際大きく、周りの建物よりも一際異彩を放っている建物へと釘付けだ。

 

 

「到着です!」

 

「えっとここが俺の通うことになる魔法学園……?」

 

「ええ、そうですよ。トリエラ大陸に数箇所ある中でも一番大きな魔法学園です」

 

目深く被っているフードのせいで表情こそ伺えないが、ミフィは嬉しそうに声を弾ませてそう答えてくれた。

 

 

……ええ、そりゃ一番大きいでしょうよ。だってここ俺の知っている学校の形してないもん。これは城だよ!! 世間的には学園じゃなくて城って言っても間違いはないよ!!?

 

「あのー……これって学園っつーよりかは城じゃないのか?」

 

「ふふふ。実はこの学園、私達のご先祖様が使われていたお城を改装して使っているようなんですよ? だからお城の形が名残としてそのまま残っているんです」

 

とてつもなく大きく、円形状のとんがりを乗せたような塔が何本も突き出ている洋式の城を見ていると、なんだか自分が映画かなんかの世界にでも迷い込んでしまったかのような気がしてきて圧倒されてしまう。

 

まぁ実際、ファンタジーな世界に迷い込んでしまった訳なんだけど。

 

「中もとっても広くて、色んな施設や遠くから来た人や留学生の為にも学生寮があるんですよ」

 

「へぇー、そりゃ凄いし便利そうだな。因みに一学年でどのくらいの人がいるんだ?」

 

「えっと、お父様が言うには確か三年制で一学年五百人近くいるみたいですね」

 

「ほぇー、五百とはまた多いな……」

 

 

一学年で五百人とか俺の知る限りでは聞いたこともねえよ……。

 

 

「それと、残念ながら学園内は生徒かアポを取っている人しか入れないので明日のお楽しみですね。」

 

 

まぁ、その時は一人なんですけどね、信用の置ける友達が出来ればいいんだけど……。

 

 

一抹の不安を抱えながらも、俺とミフィは学園の前を立ち去り、残り時間をミフィと共にゆっくりと観光して過ごした。

 

 

 

 

「あっ……そろそろお時間ですね、お城へ戻りましょうか」

 

「もうそんな時間だったのか……」

 

魔法具を取り扱っている店内でミフィが時間に気付く。

そろそろアドルフさんの待つ城に戻らないと不味い時間に迫って来たらしい。

 

魔法道具という中々に心惹かれるアイテムを取り扱っている店であったが、約束を破る訳にもいかず、後ろ髪引かれる思いで店内を後にする事となってしまう。

 

名残惜しげに出てきた魔法具店を見ながら歩き出した……が、それが悪かった。

 

 

「きゃっ!!」

 

「うおぉっ!?」

 

不意に何かが顔を後ろに向けて歩いていた俺にぶつかって来たのだ。

 

前方から突如襲ってきた衝撃に、後ろ向きながら歩いていた俺が堪え切れる筈もなくみっともなく尻を強かに地面に打ち付ける羽目になってしまった。

 

「いてて…………」

 

後ろを向きながら歩いていた俺が悪い、早く謝らないと! と思っていたのだが、目の前で尻餅をついてる少女……恐らく俺と正面衝突してしまったであろう彼女を見て俺は二の句が継げないでいた。

 

 

金砂のようなキメ細かい黄金色の髪は赤いリボンでツインテールに髪を結えており、小さく整った顔立ちは十人男が居れば全員が可愛いと言うほどに可愛らしく、外国人のような綺麗な青の双眸は、お尻を強かに打ち付けてしまった痛みからか少しばかり涙目だ。

 

正直に言おう、ミフィに勝るとも劣らないこの弩級な美少女に俺は目を奪われていたのだ。

 

 

「……あっ…………」

 

「うぅ……たくっ。信じらんない、前くらい見て歩きなさいよね!」

 

白い清潔感が漂うYシャツに首下には赤いリボン、赤のチェックが入っているスカートという、いかにも制服らしき服装の女の子は小さく愚痴をこぼすが俺の視線は無意識のうちに一点へと集中していた……。

 

 

倒れた拍子に開いた秘密の場所へと……。

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