光を渡した夜   作:Haruyama

7 / 19
(カジヤと永瀬の再会/皆見拉致)


――最悪の再会は、いつも唐突だ。


第6章 再会は、銃口の向こうで

――…

 

 

 最初に聞こえたのは、靴音だった。

 

 

夜の路地裏。

雨上がりのアスファルトが、鈍く光っている。

 

「……出てこい」

 

 永瀬は、拳銃を下げたまま言った。

 狙いは、すでに定まっている。

 影の中から、男が現れた。

 

「相変わらず、扱いが雑だな」

 

軽い口調。

場違いなほど、気楽な声。

 

 

 永瀬は、舌打ちをした。

 

「生きてたかよ、カジヤ」

「そっちこそ。まだ堅気のフリしてんのか?」

 

 

二人の間に、数メートルの距離。

そして、積もり積もった過去。

 

 

「今回の襲撃、あんたが噛んでるな」

「“噛んでる”って言い方、懐かしいな」

 

 カジヤは、両手を軽く上げる。

 降伏の形だが、目は笑っていない。

 

「安心しろ。俺は、“殺す側”じゃない」

「信用できるか」

「だよな」

 

 次の瞬間、カジヤの視線が、永瀬の背後を掠めた。

 

「――後ろ!」

 

 永瀬が振り返るより早く、閃光。

 

 

銃声。

 

 

 永瀬は、地面に転がりながら理解した。

 

 

助けられた。

敵に。

 

「……借りを作ったな」

「昔から、そうだろ」

 

 カジヤは、素早く距離を取る。

 

「忠告しとく。今、お前らが追ってる“敵”は、違う」

「タカザキのことか」

 

 その名に、カジヤは一瞬だけ顔を歪めた。

 

「……ああ。あいつは、もう“敵”でいる気がない」

 

 それ以上を言う前に、遠くでサイレンが鳴った。

 

「時間切れだ」

 

 カジヤは、背を向ける。

 

「永瀬。次に会うときは――」

 

 振り返らずに言った。

 

「お前が、真実を知ってからにしろ」

 

 

 そして、闇に消えた。

 永瀬は、濡れた地面に立ち尽くす。

 

 

最悪の再会。

そして、最悪の予感。

 

 

________________________________________

 

 

 一方その頃。

 

 

 皆見は、ひとりで動いていた。

 永瀬にも、上にも、知らせていない。

 

 

“タカザキ”の足取り。

襲撃に使われた車両。

不自然な資金の流れ。

 

 

 点と点が、つながりかけている。

 

「……やっぱり」

 

 メモ帳に書かれた名前を、指でなぞる。

 

 

 

 セリ・タカサキ。

 

 

 

表には出ない。

だが、消えない。

その瞬間。

 

 

 背後で、空気が動いた。

 

 

「――気づくの、早すぎ」

 

 

低い声。

振り返る暇はなかった。

 

 

視界が、急激に暗転する。

鼻をつく、薬品の匂い。

床に倒れる感触の直前、皆見は思った。

 

 

 

――来た。

 

 

 

 そして、次に目を覚ましたとき。

 そこは、見知らぬ部屋だった。

 

 

コンクリートの冷たさ。

手首に、拘束具の感触。

椅子の前に、人が立っている気配。

 

 

 

「……誰だ」

 

 声を絞り出す。

 返ってきたのは、落ち着いた、女の声だった。

 

「聞きたいことがある」

 

 間。

 

「――どうして、彼女を追っている?」

 

 皆見は、はっきりと悟った。

 

 

 

 

 

自分は、

“タカザキ”に捕まった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。