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新大阪駅から東京へ戻る新幹線の車窓を、夕焼けが染め上げていた。
私は膝の上に置いたお土産のたこ焼き(冷凍パック)を大事に抱えながら、ぼんやりと外を眺めていた。ファットガムさんからもらった大量の大阪土産と、天喰先輩(サンイーター)の最後の言葉が、まだ胸に残っている。
「……アーカイブ。君は…立派な……一人の……ヒーローに……近い」
あの壁に向かって呟くような先輩の声が、不思議と温かかった。兵器として育てられた私にとって、「近い」という言葉は、完璧を求められていた頃には決してかけてもらえなかったものだ。
(私は、まだ「近い」段階なんだ……。でも、それでいい)
手首のリストバンドをそっと撫でる。体育祭で限界まで出したせいで、少し傷がついている。公安からはまた「警告」が来るかもしれない。でも、今はそれよりも、クラスメイトたちの顔が恋しかった。
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マンションのドアを開けると、いつもの優しい匂いがした。
「おかえり、朱奈」
八木さん(おじ様)が、エプロン姿でキッチンから顔を出した。痩せた体で、でも笑顔はいつものように太陽みたいだ。
「ただいま……おじ様。これ、大阪のお土産です。ファットガムさんが『食べて元気出せ』って」
たこ焼きのパックを渡すと、おじ様は目を細めて笑った。
「ほう、いい香りだね。今日は一緒に食べよう。……それより、職場体験はどうだった?」
私はソファに座り、ゆっくりと話した。精密制御の訓練、路地裏での共同戦線、地下街の火災救助……。話しているうちに、自分の声が少しずつ生き生きとしてくるのが分かった。
おじ様はうんうんと頷きながら聞いてくれた。
「素晴らしい経験だ。君が『守る』ために力を制御しようとしている。それが一番大事だよ、朱奈」
「……はい。でも、まだ怖いです。もし本気で出力したら……」
「その怖さを忘れない限り、君は大丈夫だ」
おじ様は私の頭を優しく撫でた。その手は、かつて私を海から引き上げた時の力強さを思い出させる。
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翌朝、雄英高校。
教室に入ると、すぐにみんなが寄ってきた。
「朱奈ちゃん! おかえりー! 大阪どうだった? たこ焼き食べた!?」
お茶子ちゃんが一番に飛びついてくる。デクくんもノートを片手に目を輝かせている。
「八木さん、ファットガム事務所だって! すごいよね、サンイーター先輩と一緒にパトロールしたんだろ?」
「……ええ。とても勉強になりました」
私はぎこちなく微笑もうとした。まだ笑顔は上手くないけど、みんなは温かく受け止めてくれる。
轟くんは窓際の席からこちらを一瞥し、静かに言った。
「……無事でよかったな」
爆豪くんはチッと舌打ちしながらも、視線を逸らさずに睨んでくる。
「テメェ、インターンで成長したってんなら、次は本気でぶっ飛ばしてやるぜ」
その言葉に、なぜか胸が熱くなった。
(みんながいる。ここが、私の居場所)
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放課後、相澤先生に呼ばれて職員室へ。
「八木。職場体験の報告書は問題ない。……ただ、公安からまた連絡があった。お前のリストバンドの同期データを強化するそうだ。体育祭とインターンのデータを見て、警戒を強めている」
「……はい。分かりました」
私は俯きながら答えた。枷はまだ重い。でも、その重さを知っているからこそ、私は前へ進める。
相澤先生はため息をつきながら、珍しく少し優しい声を出した。
「無理はするな。……今のお前は生徒だ」
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夜、マンションのベランダ。
私は小さく艤装を部分展開し、夜空に艦載機を一機だけ飛ばしてみた。偵察モードで、静かに周囲を回る。
(マスター……私はもう、あなたの元には戻りません)
過去の影はまだ消えない。でも、おじ様の温もり、クラスメイトたちの笑顔、天喰先輩の繊細な制御、ファットガムさんの豪快さ……それらが、私の「方舟」を少しずつ強くしてくれている。
新しい波が、近づいている気がした。
次は文化祭か……それとも、もっと大きな試練か。
私は空を見上げ、静かに呟いた。
「私は……アーカイブ。誰かを乗せて、明日へ航る船」
朱色の髪が夜風に揺れた。
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