エルフィン「きょーしゅー! 起きてー!」   作:如月SQ

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ようこそエーリアスへ

「やあ、こんにちは」

 

 そこには、白金の少女が笑顔を浮かべていた。

 ただ見た目と背丈は少女そのものだったが、妙に大きめの頭ともっちりとしたほっぺは、少し違和感を覚える。

 何よりも妙に達観しているように見えるその眼差しに、その見た目にそぐわない年不相応な何かを感じた。

 

「君は人間、だね。ここに流れ着いたのは運が良いのか悪いのか……まぁ安心すると良い。一先ず安全な場所に案内するよ。ついてくると良い」

 

 くるりと踵を返した少女は、ゆったりとした足取りで歩き始めた。

 はためくマントの隙間からは健康的な脚が覗く。

 その脚先が少し色素が薄れているように見えて、『あなた』はその身を固くした。

 人ではない、そんな直感と共に。

 

「ん……? ああ、警戒してるのか。別にとって食いやしないが……そうだね。まずはここがどこなのか、簡単に説明するとしよう」

 

 けれど『あなた』へと向き直った少女は、何も気にする様子もなくそう言ってゆるりと笑った。

 

「ここは世界樹と共にある世界、『エーリアス』。人間とは違う複数の種族が住んでいる世界だよ。君がいたであろう『地球』とはまた別の場所だ。ほら見えるだろう? あの巨大な樹が世界樹。そしてその麓にあるのがエーリアスに暮らす種族の一つ、妖精が平和に暮らす妖精王国だ。私達は今からあそこに向かう事になる」

 

 少女が指し示した先には、遠くに見えるにも拘わらず見上げる程に巨大な樹があった。

 『あなた』の記憶は定かではないが、少なくともそれが自分の常識から外れた光景である事は理解出来た。

 

「不安かな? 大丈夫。あの国を治めてる女王の事を私はよく知っているんだ。あの国……正確には世界樹教団だが、人間を受け入れる理由もあるし……無下にされる事はない。……教団って言葉が胡散臭いって? それは確かにそうかもしれないな。でも大丈夫。あの国を……『エルフィンランド』を治めてる女王は良い子だ。必ず君を受け入れてくれる」

 

 少女はそう言うと、クルリと踵を返した。

 そして、いつの間にかそこに立っていた複数の小さな人影に話し始めていた。

 ぬいぐるみを掲げた少女、傘をさし角の生えた少女、額に一本角を生やした少女、羽を生やし低空を飛んでいる少女、動物の骨のようなものを頭に被っている少女、大きなカエルに乗った少女、丸い機械に乗る耳の尖った少女、一際小柄な紫色の巫女のような少女……。

 多種多様……という言葉ではとても言い表せない異形の色物集団へと、少女は親しげに話し掛けていた。

 全て聞こえた訳ではないが、彼女達の視線は此方を伺っているようで、自分の事を話しているのだと朧気に理解が出来た。

 

 やがて話はついたのだろう、最初の少女は『あなた』へと近付くと四本指の手のひらを差し出した。

 そして、言葉を紡ぎ……困ったように眉を寄せた。

 

「さあ、行こうか。えーっと……」

 

 そこで『あなた』は名乗っていなかった事に気付く。

 『あなた』が自分の名前を名乗れば、少女は納得したかのように小さく頷いた。

 

「うん……そうだね、失礼失礼。私も自己紹介してなかったね。私は、エーリアスを旅するしがない旅人……」

 

 そこで一度切った少女は少しの間を開けた。

 やがて何かに納得するように何度か頷いてから、ゆっくりと口を開いた。

 

「……『キョー』だよ。キョーくんでもキョーちゃんでも好きに呼ぶといい」

 

 そう言って少女は、『キョー』はキラキラと光る白金の瞳を細めて、朗らかな笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ……上手く馴染んだようで何より」

 

「え? 何処に行ってたかって? まぁ私にも用事くらいはあるからね」

 

「それよりも世界樹教団教主就任おめでとう。ふふふ、その服も似合っているよ。サイズはどうだい? ……ふむ、彼女の作る服に間違いはないな……これから大変だとは思うけれど、陰ながら応援しているよ」

 

「さて……私は再び旅に出るとするよ。まだ旅の途中でね……まだまだ見たいところが沢山あるんだ」

 

「君も機会があれば旅をしてみると良い。きっとここエルフィンランドの中だけでも新たな発見がいっぱいある筈さ。エーリアスはきっと君を退屈させない。エーリアスの住人は愉快な輩ばかりだからね」

 

「……ふむ、けれど、そうだな……今の王国……ひいては教団の状況だと……少し君の安否が怪しいか」

 

「あっ、いやいや、命の危険という訳じゃないが、身の危険ではあるというか……まぁ、うん……きっと大丈夫さ」

 

「けど、ね、一応、万が一……君の身の安全の為に、私の旅仲間を一人、助っ人として君の側に置かせて貰っても良いかな?」

 

「ああ、そうそう。あの時、妖精王国に向かう時のメンバーだよ。みんな良い子だし多少は気心知れているだろう?」

 

「さあ、誰を指名するんだい? ふふふ、選り取り見取り、まるでハーレムだね」

 

「……ん? 私かい? 私は遠慮するよ。まだ旅半ばなのでね。……なあに、いずれまた道が交わる時もあるだろう。その時気が向けば君に手を貸す事も吝かではないよ」

 

「……ふむ、この子にするのか。じゃあお願いするよ。……新教主の事を、よろしく頼む」

 

「さて。それじゃあ私はまた旅に出ようかな。エルフィンにはよろしく伝えてくれたまえ」

 

「新教主君、この先きっと君は沢山の苦労と怒り、悲しみ、苛立ち……様々な感情を味わう事になるだろう。ここエーリアスは平和なだけの世界ではないからね」

 

「……けれど、悪い場所では決してない。君もきっとここを気に入るし、エーリアスは君を受け入れてくれる」

 

「これからの君の活躍、期待しているよ」

 

「……ようこそ、エーリアスへ。歓迎するよ後輩君」




一先ずここで一区切り……特にネタもないので、間は開きましたがこれで更新終了です。
気が向いたりネタが出たりすれば気紛れに書き足したいと思います。

あ、そういえば教主が目覚める前の選択肢、アレは目覚めた教主の種族を決める選択肢でした。
冷たい何かはヴィヴィの水銀で、それにすがれば教主はヴィヴィの眷属の白金の竜族として目覚める事になっていました。
身を任せた場合は目覚める時がかなり先伸ばしになりますが、妖精と魔女の合の子となり、エルフィンにより懐かれ、ベリータに可愛がられる事になってました。
そんな感じで、バッドエンドは存在しない選択肢でした、安心安全!

それでは皆様、ここまで閲覧ありがとうございました。
感想評価お気に入りここすき、改めてお礼申し上げます。
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