完結編です
「一つ。魔族として表舞台に立たず、人類の歴史に名を残さないこと」
男は静かに告げた。
「二つ。今の戦争、そして今後の私の戦いに、一切介入しないこと」
人の足が踏み入れることのない森の奥
「三つ。君がこれまでの歩みで得た魔法、技術、知識、思想。これから得るものも含め、それらを他の魔族へ伝えないこと」
風が凪ぎ、遠くで小鳥がさえずる森の奥。
「四つ。私と出会った事実も、私が君を見逃す理由も、誰にも明かさないこと」
魔族は黙って聞いていた。
「これらを約束できるならば、私は君を見逃そう」
「それはなんともありがたいことじゃが……しかしなぁ、分かっておるじゃろうがわしは魔族じゃぞ? こんな口約束に意味があるのか?」
まるで他人事のように腰に手を当て、困り顔を浮かべる。
「わしは真っ先に約束すると答えるぞ?」
魔族は男の顔色を窺いながら続けた。
「本当に守る気があるかどうかなど、わしにしか分からんじゃろうに。わしが言うならなおさら意味が無い」
「確かにその通り。これが例え人間同士であっても、口約束だけではなんの保証にもならないだろう」
男は少しも声を変えなかった。
「だが、ここに居るのが私であるならば、意味はある」
魔族の口が閉じた。
目の前の男を見上げる。
こちらの返事を待つその表情に、探るような素振りはなかった。
少し吊り上がった目が、魔族を見下ろしている。
ブラウンの瞳に宿っていたのは、殺意とも、傲慢とも違う。純粋なる確信だった。
「二つ、聞きたいことがある。まず、条件に人を殺すなと入れんでよいのか?」
「構わない。君は、好んで人を殺すことはしないだろう?」
返ってきたのは質問ではなく確認。
居心地の悪さを感じながら、魔族は頷いた。
「……もう一つ。それはそれとしてというやつじゃ。おぬし、わしを殺すことができるよな? 何故それをせん」
「君を倒すのが非常に面倒だからだ」
魔族は拍子抜けしたように瞬きをした。
「あいにく、私にはあまり多くの時間が残されていない」
その言葉に、固まっていた魔族の口元が緩んでいく。
「面倒か。おぬしが……」
戦えば殺される。その認識は変わらない。
「……喜ぶところなのか、それは」
「半分絶望しておるがな」
「つまり残り半分は喜んでいるじゃないか」
「そりゃもちろん。おぬしのような化け物が、“面倒”だと感じるぐらい。その限られた時間を割かせることができる程度。素晴らしきかな、わしの魔法が、そんな域に届いていたとは……これは喜ぶほかないじゃろう」
「倒せない、とは言っていないのだが」
「分かっておるとも」
笑みは消えなかった。
男はしばし魔族を見つめ、困惑と呆れの混じった息を小さく吐いた。
出会う前から分かりきってはいたが、実際に向き合うとやはり調子が狂う。
「……それでは、返答を聞かせてもらおうか」
久方に味わうその感覚は、微かに愉快なものであった。
それでも男の声音は崩れない。
一方の魔族は、男の催促に変わらず笑みを崩さずわずかに目を細めて。
「…………なるほどな」
腕を組み、人差し指で顎を軽く叩きながら呟く。
そして一度だけ、男の腰にある鞘に収まった剣へ視線を落とす。
男と出会った瞬間、走馬灯さえよぎった悪寒と、魔族は男の確信に満ちた言葉から正体を推察し、ほんわずかに掴みかけ——
「もちろんいぇすじゃ。その条件を守ろう」
流れるように右手を差し出した。
***
「ところでなんじゃが」
それはまたもや唐突だった。
酒場を出てからのヴォネは、それまでの饒舌が嘘のように、黙々と歩き続けていた。
路地裏から酒場へ移動した時と同じように、その背を追って辿り着いたのは……人気の少ない街外れだった。
日は既に傾き、足元から長い影が伸びている。
通りを行き交う人々も、酒を飲む客も、ここにはいない。ヴォネは自ら、フリーレン達がこれまで手を出せずにいた理由を取り払っていた。
緩みかけていた緊張の糸が、再び張り詰めていく。
「この帝国領まで足を踏み入れたということは、北部高原を通り抜けてきたのじゃろう? ならば、フリーレンとフェルン、おぬしたちは一級魔法使いの資格を得ておるということじゃな?」
先導していたヴォネが振り返り、二人を順に見やる。
「まさかぁ、かつては勇者一行じゃったおぬしが、闇ルートを通り抜けてきた闇魔法使いなわけがあるまい」
「…………」
「……え? そうなの?」
冗談めかしていたヴォネが真顔になった。
「フェルンにも同じこと言われたけど、この手の組織は過去にもあって、しょっちゅう変わるから一々意識なんてしてないんだよ」
「……おぬし、一時は世界が注目していた魔法使いの一人なんじゃぞ? きっと多くの人間たちの憧れでもあったじゃろ。その自覚とかないんか?」
呆れたように息を吐き、肩を竦める。それから人差し指を立てた。
その姿は、年下を諭す老人そのものだった。
「確かにおぬしは天才じゃが、それはそれとして、一人の魔法使いとして情報網くらい張り巡らせておかんか。新しい魔法も、それを扱う人間も、こちらの都合なぞお構いなしに現れるんじゃ。世の変化には敏感であれ。でなければ、それこそ先ほど話したように、時代に轢き殺されてからでは遅いんじゃぞ? まぁこれはわしが凡才ゆえの心掛けじゃが、天才であるおぬしがそうしておっても損はしなかろう」
フリーレンの眉が寄る。
正直、資格の件については耳が痛い。しかも最後にはこちらの実力を認める言葉まで添えてくる。魔族に気遣われながら説教をされるという状況が、余計に腹立たしかった。
「それに、かの葬送のフリーレンが無資格の闇魔法使いとして拘禁などされたらどうする。おぬしに憧れていた人間たちには衝撃が走るじゃろうし、わしも驚く。魔王を討って名を上げた後、次にその名を轟かせるのがそんなことでは、嘆けばよいのか笑えばよいのか。ヒンメル達も困惑するじゃろうて」
「黙れ」
ぴしゃりと切り捨てられ、立てていたヴォネの指が行き場を失う。
魔族が正論を吐くなど、あってはならない。
故にフリーレンはわずかに目を逸らした。
「……一級魔法使いの試験はちゃんと受けたよ」
資格どころか、大陸魔法協会の存在についてもフェルンに教えられたことは、説明から省いた。
隣から視線を感じたが、そちらは見なかった。
「ならば、何故黙ったんじゃ」
「落ちたから」
「…………」
今度はヴォネが視線を逸らした。
正確には空を仰いだ。
「…………ん? ではおぬし、本当に闇魔法使い——」
「私が一級魔法使いです」
師に妙な汚名が着せられる前に、弟子が口を挟む。
それはそれとして、かつての英雄が無資格で拘禁されでもしたら、という話にはフェルンも思うところがあった。なので、説教そのものには助け舟を出さなかった。
隣から視線を感じたが、そちらは見なかった。
「そうかそうか」
ヴォネはうんうんと頷いた。
フェルンの合格には驚きもせず、ただ心底安堵したような顔をしている。その老婆心めいた反応に、フリーレンの眉間の皺がさらに深まった。
「それにしても全く、さっきの精神魔法使いの件といい、一級魔法使いの基準は一体全体どうなっておるんじゃ? 大陸魔法協会に抗議したくなってきたわ」
遠い目をするヴォネの姿は、やはりどこか気の抜けるものだった。
「そうしてくれると助かるよ。ぜひとも創設者のゼーリエに直談判してきてくれ」
それはこれまでと同じ、軽い応酬のつもりだった。
ここまでの語りから、直接名前を出してはいないものの——神話の時代から活躍してきた魔法使い——ここまでの変わり者の魔族を生み出した要因のひとつであろう、ゼーリエに並々ならぬ想いを抱いていることは分かっている。
それでも、この臆病な魔族が、わざわざ本人の前へ抗議に出向くとは思えなかったが。
「…………大陸魔法協会の創設者」
まさか、その名が特大の地雷であるとは誰が予想できただろうか。
名前を口にせず、肩書だけを繰り返したことに、フリーレンはわずかな違和感を抱いた。
「のぅ……聞くところによると、一級魔法使いに昇格した暁には“特権”とやらが貰えるらしいが」
「……そうですね。望んだ魔法を一つ、授けていただけます」
「おぬしも、貰ったのか?」
「はい」
「どんな魔法じゃ?」
フェルンは答えをためらった。
だが、戦闘に直結する魔法でもない。
「……服の汚れをきれいさっぱり落とす魔法です」
「ほぉ、それは伝説級じゃな」
その評価は、フェルン自身やフリーレンと変わらなかった。
しかし、それにしては声が平坦だった。
あのヴォネが。
「………………はい」
正直に言ってしまえば、フェルンは拍子抜けしていた。
授与された魔法を答えるのにためらったのは、何も戦いのことだけではない。
どれほどの魔力を使い、どのような術式で、どこまでの汚れが落とせるのか。
そうした質問を息つく暇もなく浴びせられることを、フェルンは覚悟していた。フリーレン、シュタルクに続いて、自分まで長広舌のきっかけを与えてしまうのではないか、と。ついでに言えばフリーレンに肩を組まれることを。
しかし、ヴォネは一度頷いただけでその話を終えてしまった。
「……渡した魔法は、もう一度習得せねば使えなくなると聞いたが」
仰いでいたヴォネの顔がゆっくりと降りてくる。
灰色の前髪の奥、開ききった瞳孔がフェルンを射抜いた。
「“ヤツ”は学び直しておったか?」
誰を指しているのかは分かる。
ただ、その呼び方はこれまでの会話になかったものだった。
「……私には分かりません。ただ、最初は別の魔法をお願いしたのですが、それは既にほかの魔法使いへ渡してしまったと仰っていました」
「…………そうか」
小さな返事だった。
「それが、いつのことだったのかまでは――」
「覚え直せるはずじゃろう」
フェルンの言葉が途切れる。否、遮られた。
視線は変わらずフェルンを射抜いている——しかし、ここではない何処かを見ていて、返事も待ってはいなかった。
「渡すのは……百歩、千歩、万歩、億歩譲ってよい。いやよくはない。よくはないが、だがまぁよい。」
フリーレンとフェルンが杖を構え、シュタルクが戦斧を抜く。
ヴォネの魔力が揺らいでいた。
ただでさえ粗かった制限が、さらに乱れている。不規則に膨らみ、強引に押し戻され、また膨らむ。
その異変は、魔力の動きが読めなくとも、シュタルクの戦士としての勘もまた見逃さなかった。
フリーレンは杖先をヴォネの胸元へ据え、乱れる魔力の中に、術式の兆候を探す。
「なぜ覚え直さん……? オマエなら、オマエほどの魔法使いならば、それは容易であるはずじゃ。時間が要るとしても、オマエにとってそれは何の障壁にもならないはずじゃ」
ヴォネが両手で顔を覆う。
指の隙間から、金色が覗いていた。
「違うじゃろう。それでは違う。全くもって違う」
ゆらりと、小さな体躯が傾く。
倒れる前に片足が踏み直され、今度は反対側へ揺れた。顔を覆った両手は動かない。その下から、くぐもった声だけが漏れ続ける。
「オマエはずっと先を進み続けていて。もっと先に居て。居た。居る。わしなど、到底届かぬところへ。辿り着けると思うことさえ、焦がれることさえ、傲慢になる境地へ。そうじゃろう、そうでなければ」
声は、フェルンへ問いかけていた時よりも小さかった。
誰かに聞かせようとしているのではない。ただ喉から漏れ続ける独り言だった。
「圧巻であり、圧倒であり、究極であり、完璧でなければ。オマエは、憧れで、目標で、夢なのじゃ」
前衛を担うシュタルクが一歩前に出る。
「近づくな」
それは呪詛だった。
「近づくな。近づいてはならぬ。落ちるな、落ちてはならぬ」
足が地面を擦り、揺れる身体を支え直しながら、しかし揺れる魔力が収まる気配はない。
「わしがいつか、行くのじゃ。成るのじゃ。成りたいのじゃ。わしが、いつか……おい、オマエが降りてきてどうする? なぜ、なぜ、なぜ、わしはそんなものが見たくて——」
言いかけた口が止まる。
「——まさか、熟れて堕ちているわけではあるまいな」
顔を覆う十指に力が籠った。
「許さん」
端的に発せられたそれは、まさに人食いの化け物らしい怨嗟に塗れた声音。
しかし、魔族としてはあまりにも不似合いなもの。
「許さんぞ。熟れ切って落ちるというのならば、腐敗する前にわしが——」
奇跡的に成り立っていた均衡状態が崩れかけ……ぴたりと、止まった。
言葉も。揺れていた身体も。魔力の乱れも。
姿勢を保ったまま、一呼吸ほど固まり。
それから何事もなかったかのように両手を下した。
「いやはや、すまぬな」
控えめにヴォネが笑う。
「少しばかり取り乱してしまったのぅ」
聞き慣れた声音だった。
路地裏で出会い、酒場で料理を勧め、魔法について楽しげに語っていた時となんら変わらない。魔力制限も戻っている。
怒りが収まるまでの過程も、呼吸を整える仕草もなかった。
顔を覆っていた手を下ろしただけで、そこには先ほどまでの親しげな魔族がいた。
だが、だからこそフリーレンは杖を下さない。
フェルンも、シュタルクも。
決定的な瓦解はまだ起きていない。しかし、一度崩れかけた均衡が元に戻ることもない。
特にフリーレンは——ヴォネの発言。それがあまりにも独善的で、一方的で、傲慢で、侮辱的なもので——ヴォネの豹変以上に、自身がこのような怒りに近い感情を抱いていることに驚いていた。
「さてはて、少々寄り道してしもうたが……本題に入ろうか」
三人の警戒をそのままに、ヴォネだけが元の会話へ戻っていた。
「最初にじゃ。わしはおぬし達に感謝をしたい」
「いい加減、お前のお喋りにも慣れてきたつもりだったけど……今度はなに?」
杖も戦斧も向けられている。
悪態や皮肉を交わしていた時とは違う、明確に命が脅かされかねない局面。
「ありがとう」
「話聞いてる?」
「もちろん」
相も変わらず、ヴォネのペースが乱れることはなく。
「わしはな、話を聞いてもらえるだけで満足するつもりじゃった。賛同などせずとも、わしの技術、知識、思想の一片でも知ってもらえれば、それで充分じゃとな。嬉しかった。嬉しかったのじゃよ……」
笑みを浮かべた口元から、小さく息が漏れる。
言葉が途切れても、ヴォネの目はフリーレンから離れない。
「じゃがな? おぬしが悪いんじゃぞ、フリーレン。それで済ませるつもりじゃったのに、どうして気付いてくれるんじゃ」
責める言葉とは裏腹に声は弾んでいた。
それは酒場で本当の目的を問われた時と同じもの。
「おぬしに接触した理由は至ってシンプルなもの。身も蓋もない言い方をするとただの本能じゃ」
自嘲めかして肩を竦める。
けれど、その目には隠しきれない高揚があった。
「殺戮など愚の骨頂。魔力量での推し量りなどくだらぬ。人間の時代が訪れた今、魔族であるというだけの優位など、もう当てにはならん。わしらは既に、ただ捕食者として振る舞っておればよい立場ではない。今すぐ驕りを捨て去るべきじゃ」
そこで一度、言葉が切れた。
「その上で。そこまで自覚した上で。やはりわしにも抗えぬ、そして心地良いものなのじゃよ」
笑みが深まる。
「魔族としての、本能は」
空気が変わった。
ヴォネがおもむろに、頭部を覆う紺色のスカーフへ手を伸ばす。
「では、正々堂々お見せしよう」
結び目が、解かれた。
取り払われた布の下から、一対の角が露わになる。
側頭部から癖毛のような、わずかなうねりを帯びて後ろに伸びるそれは魔族である証。
向かって左の一本は、途中で欠けていた。
「わしの魔法を」
ヴォネは解いたスカーフを投げ捨てた。
「
すべては数秒の出来事だった。
ヴォネの姿が消える。
それと同時に、フリーレンとフェルンの魔力探知が居場所を捉え直した。
位置は——真後ろ。
「のォ、フリ————」
須臾。
シュタルクが反転した。
地を蹴り、二人の間を駆け抜け、戦斧を振る。
ヴォネは微笑みを浮かべたまま。
刃が、ヴォネの首筋に触れ――そう見えた瞬間には、姿は消えていた。
斧が空を切り、踏み込んだ足元で土が跳ねる。
「はははっ! やはり戦士は速い! 速すぎる! まったく、恐ろしいのぅ!」
頭上から魔力反応を検知すると同時に、妙に弾んだ声が降ってくる。
見上げた先に、飛行魔法で宙に浮くヴォネがいた。
背後へ向きかけていた二本の杖先が、その姿を追う。
が、またもやヴォネの姿が消えた。
「どうじゃ!! なかなかのものじゃろう!!?」
今度は正面から。
元の位置に戻っていたヴォネが、両手を腰に当て、仁王立ちで胸を張っていた。
「わしの魔法、
二の矢が来る。
そう身構えていたフリーレン達へ、この日一番の大声が飛んできた。
隠す気など微塵もない満面のドヤ顔。ヴォネは三人を順に見やり、期待に満ちた眼差しで返答を待っていた。
「ごめん、仕留め損なった」
「いや、よく動いてくれたよ。私たちも反応自体はできたけど、身体がついていかなかった」
「フリーレン様。今の魔法、ただ素早く移動したわけではないですよね。空間転移のような……」
「そうだね。ただ、アイツのはもっと質が悪いと思う」
「ふふふ……!」
感想が返ってきたわけではない。
しかし自身が見せた魔法の話を三人がしている。それ自体が既にヴォネの意に沿っている展開そのものなのだろう。
「魔力反応が一度、痕跡も無く完全に途切れ、別の場所に現れる……理を超えている魔法であるのは間違いない。」
「そうかそうか……!」
誰もヴォネに話しかけてはいない。
それでも、だからこそ本人は、『それでそれで?』と言わんばかりに胸を張り、笑みを深めて頷いていた。
三人は目の前の魔族から視線を外さず、短い言葉で情報を交わしていく。
ただし、その意識は正面だけに向けられてはいない。
仕組みは分からずとも、三度見せられた魔法の結果から、既にその性質の輪郭は見え始めていた。
「……シュタルク。斧を振った時、アイツに当たった手応えはあった?」
「手応えはなかったけど、刃がほんのわずかに触れたのは見えたぜ」
「アイツは反応していた?」
「俺に視線を向けることすら無かったな。正直、取れたと思っちまった」
「なるほどね」
フェルンは、短い返事で答えた師の横顔に予感を抱いた。
「……何か分かったのですか?」
「うん」
「ほう……!?」
ヴォネが喜色に富んだ声を出し——
「一度目と二度目だよ。私たちの背後へ現れた時と、シュタルクの斧を避けた時。同じように見えるけど、あの二つはまるで違う」
「違う、ですか?」
「正確に言うなら一度目と三度目は同じ性質、二度目だけ魔力探知にわずかな違和感があった。戦士の間合いに魔法使いは反応できない。才能が無いと宣っているアイツなら尚更だ。事実、振られた斧に目を向ける暇さえなくて、話している途中でそのまま消えている」
頷きが止まった。
「使われた魔法も、起きた結果も同じ。でも発動条件が——」
「ちょーいちょいちょいちょい!? それわしが話すから! 全部! ちょっと待つのじゃ!!」
腰に当てていた両手が、慌てて前へ突き出された。
先ほどまでの得意げな顔に、今は明らかな焦りが浮かんでいる。
「……違った?」
「違わん! じゃが、そこはわしが説明するところじゃろうがっ!」
ヴォネは決してフリーレンを侮っていなかった。
ただ魔族の魔法使いとして、己の磨き上げた魔法を誇示したい。
その価値が理解できる相手に、積み重ねてきた成果を魅せつけたい。
そんな魔族としての本能に従うならば、フリーレン以上に相応しい相手はいなかったというだけだった。
ただし。
その相手はアウラの魔法を解除し、マハトの呪いを解析し、不死なるベーゼの結界までも破ってきた魔法使いであることを。
葬送に自身の魔法を晒す行為が何を意味するのか。ヴォネは身をもって知ってはいなかった。
要するに。
「もう察しておるじゃろう!? わしがおぬしの前に現れたのは、創り上げた魔法を持って、正々堂々と挑むため! そんな魔族から魔法の説明の機会を奪うとは何たる所業なんじゃ!!!」
既に魔法の解読は始まっていて。
つまり、嬉々としていたお披露目の解説が奪われるという由々しき事態が、ヴォネを襲っていたのだ。
「だったら早く話せ」
地団駄を踏むヴォネへ、フリーレンは顎を使って説明役を投げ渡す。
己の魔法については、魔族の言葉でも一定の信用に値するものがある。
ましてや、魔法を魅せること自体を目的としている魔族ならば尚更だった。
フリーレンは杖を構えたまま、初めて素直な傾聴の姿勢に移る。
「え? 聞きたい?」
フリーレンは迷わずゾルトラークを撃ち放った。
「……正面突破は無理か」
土煙が舞う中にヴォネは居らず、フリーレンの視線もまた逸れていた——攻撃箇所から大きく左、始めからそこに居たと錯覚してしまうほど、傷どころか埃一つ被らず自然に佇む魔族へ。
「転移による徹底的な攻撃の回避か。直接的には殺しはしないし、殺されもしない……なるほど、これまでのお前の語りにも、理にもかなってはいる」
不敵に微笑むヴォネに、そっちがその気なら乗ってやるとフリーレンは続ける。
「いや、転移も誤った言い方か。今ので分かったけど、この魔法は文字通り望んだ場所に在るんだ。だから、拘束や結界の類は通用しない可能性が高い」
そこで区切ると、ゾルトラークによって抉れた地面を見やり。
「だって最初からそこには居なくて」
ヴォネに視線を戻す。
「あそこに居たからね」
「……なんだそれ、意味がわかんねぇ」
「そういう解釈によって生まれた、そういう魔法なんだよ。いかにも魔族らしい、人類にはイメージできない魔法だ」
見るからに青ざめていくヴォネを一瞥しながら。
「だけどやっぱりだ。この魔法自体も強力だけど、それ以上に厄介なのはその発動速度——」
「待って待って待つのじゃ! 今のはわしが悪かった! いや全部わしが悪かった! やっと完成したこの魔法を披露できたことで調子に乗ってしまった! すまぬ! じゃからこれ以上言うな!! 頼むから話させてくれ!!」
ヴォネが折れるまで、一瞬だった。
フリーレンは蔑むような目で見下ろす。
この距離でゾルトラークを撃っても避けられるだろう。そう冷静に判断すると、言葉を返すことなく、顎で今度こそと促した。
「うぅ……すまぬ。悪気はないんじゃぁ、ただ話したかっただけで」
なんとも情けない声を上げながらヴォネは立ち上がり、ぶつくさと言い訳を並べ始めた。
その姿を見たフリーレンがまた口を開きかけ——「もう言い訳しない! 全面的にわしが悪い! すまぬ!!」——ヴォネは慌てて制止し、やっとこさ本題に入ることになった。
「……その通りじゃ。わしが創り上げた、わしの魔法——
「すげぇ。フリーレンの言う通りだ」
「どうしてでしょうか。オウム返しにしか聞こえません」
冷ややかな風がヴォネを襲った。
「…………じゃが! じゃがの! この魔法の真髄はそこに在らずじゃ!」
しかし挫けはするし、折れもするが、しょげないのがこのヴォネ。
無い胸を張り直し、浮かぶ汗を拭いながら三人に向き直る。
「結局のところ、どんな魔法も発動する前に封じられれば意味がない。わしが反応する前に命を絶たれたら終いじゃ。そして非常に恐ろしいことに、この世にはそれができる人間がごまんとおる」
やはりヴォネの癖なのだろう。
毎度のこととばかりに、人差し指を立てる。
「実はな、
ヴォネの視線が、フェルンの杖、シュタルクの戦斧、そしてフリーレンの双眸とかち合う。
「問題なのはここからじゃ。風穴を開けられる前に、精神に干渉される前に、首を落とされる前に、無力化される前に……あらゆる脅威に先んじて、発動しなければならん」
もう片方の腕を腰に当て、ヴォネの口が回りだす。
「主な対策としては常時魔力探知を発動し、
そこで区切るように、大きなため息をひとつ吐いた。
「じゃがしかし、これではまだ大きな穴があった。おぬしら戦士の存在じゃよ。魔力探知はあくまで魔法使い、魔道具、魔封石にしか通用せん。当たり前じゃが、わしが認識し発動する前に戦士はわしを殺せる。ならば殺気を感じた瞬間に発動しようとも、戦士は当たり前のように殺気を消すし、生体反応を確認した瞬間に発動しようとも、戦士は気配どころか心の臓を止めて殺してくるじゃろどうせ」
「さすがに最後のは無理があると思うんだけど」
「いーや、戦士を常識で測ってはならん」
常識外にはそれ相応の対策をうたねばと、ヴォネは続ける。
「考えに考え抜いた結果、超シンプルな回答にたどり着いた」
ぱちんと、ひとつ指を鳴らし口端がニヤリと吊り上がる。
「わしに触れた瞬間、刃が肉を裂き、骨を断つよりも先に発動すればよいのじゃ!」
それは……答えを得るどころか、何も言っていないのと同義なのではないか。
初めからそれができたら苦労しないというもので、だから困っていたのではないか。
しかしヴォネは、天啓だったと言わんばかりに続ける。
「わしの全身の肌に……イメージとしては糸じゃな。細く繊細な魔力の糸をくまなく張り巡らせる。それは触れるだけのわずかな衝撃でも切れてしまうほど脆い。それがぷつんと切られた瞬間、
事前に魔法を使用するのではなく、自身に脅威が迫るその刹那まで引きつけて逃げ切る。
事も無げに両手を広げて笑い飛ばす——その姿も発想も、狂気の沙汰としか言いようが無かった。
「こうして今、なんとか形にはなったものの本当に苦労してなぁ……そもそもこの魔法を創り上げるに至った理由は、これまで並べた通りじゃ。己の才の無さ、天才という存在、訪れた人類の時代……わしは死にたくない、というか殺されたくない」
一段ヴォネの声が低くなる。
小さく収縮した瞳孔の奥で、煌々と輝く金色が三人を見据えていた。
「じゃから絞り、注いだ。たった一つの魔法に2631年の歳月をな」
細まっていた瞳孔が元に戻ると同時に、また飄々とした声音へ。
「正直、苦痛ではあった。なんせ、わしの生きる理由はあらゆる魔法を網羅すること。それまで様々な魔法を手当たり次第に、同時並行して学ぶ。そんな充実していた生活を、捨てなければならなかったからな。本当、ただでさえ永い道のりじゃのに……まったく、とんだ遠回りじゃ。あ、ちなみにそんな狂気とも言える生活を送りながらも、ゾルトラークはしっかり習得することができたぞ。じゃからやっぱりこの魔法は素晴らしいのぅ……無才にプラスして、
夢があり、ひとつの魔法に人生を懸けることを苦痛と呼び、自己評価があまりにも低く、他人の魔法を褒め称える。
一言一句、一挙手一投足。そのすべてが、これまで人類が記録してきた魔族の在り方とはひどく矛盾するもので。
ここまでフリーレンが出会い、喋り、観測してきたヴォネという生物を総括するような捲し立てだった。
「……してじゃ! フリーレンよ! 改めてどうじゃ!? この魔法は!?」
ため息が漏れそうになる。
結局のところ、この長々しい語りの着地点はそこなのだ。
再び腰に両手を当て、今度こそはと目を輝かせて感想を催促してくる魔族に、フリーレンは内心でうんざりと息を吐いた。
どこまで行っても鬱陶しいことこの上ない。
フリーレンは構えた杖の先をヴォネから外さないまま、空いた片手を無造作に腰の後ろへと回す。
「お前という魔族を象徴するような、厄介かつ危険な魔法だ。正直、発動条件に秘密があると踏んでいたけど、ここまでのもとのは思わなかった」
「お、おおぉ……!!!」
素直な評価を口にした瞬間、ヴォネの顔がパッと華やいだ。
感極まったように身を乗り出すその正面で、フリーレンの背後に回された指先が、外套の裾を掠めるように小さく一度、二度と動く。
「でもさ」
「ん?」
一歩、斜め後ろに控えるフェルンの視線が、ほんの一瞬だけ師の手元を掠めた。
「
「……えっと、え? ム、ムラ?」
拍手喝采でも待ち受けていたらしいヴォネの表情が、みるみるうちに引き攣っていく。
「まさかとは思っていたけど、膨大な魔力量がデフォルトになっているせいで気付いてなかったんだ」
「……あ、あのどこがおかしいんじゃ? 教えてくれんかの?」
「なんで敵であるお前に塩を贈るような真似をしなくちゃいけないの?」
「それは、そうなんじゃが……」
「あとさ、自動発動の方も魔力消費量が荒すぎない? 魔力探知を紐づけたと言っているけど、そんな丁寧なモノじゃないでしょ。あまりにも強引すぎる。まぁお前にしかできないのは確かだね」
「……わ、わしは自分の持っているモノはすべて利用し——」
「唾棄すべき固定観念とか言ってたけど、魔力量に一番甘えているのはお前自身だったわけだ」
図星だったのだろう。
ヴォネに怒りの色はなかった。ただ、痛いところを突かれたとばかりに目を白黒させ、慌てて両手を振りながら弁明を始める。
「こ、これでも人様にお見せできる程度! おぬし達一流の魔法使い相手にも通用する程度には仕上げたと自負しておるんじゃぞ!? 確かにそれこそゾルトラークのような超一級品の完成度には至っておらんが、それでもわしが初めて自分の手で魔法を完成させたと思っ——」
ヴォネが光に包まれた。
数瞬の後、爆発音が鳴り響く。
フェルンの高速ゾルトラークがヴォネを襲ったのだ。
「…………びっっっくりしたぁ」
土煙が晴れるより早く、頭上から間の抜けた声が降ってきた。
しかし、フリーレンは上空に現れたヴォネへ視線すら向けない。
「惜しかったね」
「……すみません。完全に意識が逸れたタイミングを狙ったつもりだったのですが」
フリーレンが労うように声をかけると、フェルンは杖を構えたまま、悔しそうにわずかばかり眉根を寄せた。
師の手信号を受け取り、ヴォネが弁明に躍起になった瞬間を正確に射抜いた一撃だった。それでも仕留めきれなかった事実に、フェルンは小さく息を吐く。
「いや、今の反応を見る限り、誰が撃っても結果は同じだったよ」
「ほんとマジでびびったぞ今のは! 心臓が口から飛び出るかと思ったわ!」
自分たちだけで反省会を始めた師弟へ、上空から降りてきたヴォネが胸を撫で下ろしながら割り込んでくる。
「というかフェルンよ、おぬしゾルトラークの速度が速すぎじゃろ。やっぱり天才じゃったか」
感心したようにうんうんと頷き——そこでようやく、自分が何をされたのかに思い至ったらしい。
「……というか何をするんじゃ! いくらなんでもひどいではないか! わしはまだ話の途中じゃったぞ!?」
「お前に触れたら発動するっていうのは、シュタルクの反応的に事実だと思った。でも、魔力探知と紐づけたって方はどうも信じきれなくてね」
「だ、だから試したのか……?」
ヴォネが引き攣った顔で一歩引く。
最初のフリーレンの一撃は、まだ正面切っての牽制と言えなくもない。
だが今の一撃は、フリーレン自身が言葉でヴォネの意識を誘導し、死角から弟子に撃たせた完全で完璧な奇襲だった。
「そうだよ。察しの通りフェルンのゾルトラークは速い。私よりもね。この距離の不意打ちで避けられるなら、事実の可能性が高いと判断できる」
「……なぁ、もしもわしの話が嘘じゃったら、どうするつもりだったんじゃ?」
「どうするもこうするも、その時はお前が死んでいただけだね」
「…………」
平坦な声で即答され、ヴォネは言葉を失った。
どちらが化け物なのか分からないと言わんばかりに、三人の顔を順に見比べる。もちろん、フェルンもシュタルクも至って真面目な顔のままだった。
「いやまぁ、正々堂々などというのはわしが勝手に始めただけじゃとは分かっておるが、しかし……」
恨めがましくぶつぶつと独り言ちるヴォネだった——ピタリと固まる。
「…………ん?」
ドン引きしていたヴォネの表情から、ふと険が消えた。
視線が落ちたのは、フェルンのゾルトラークが掠め、深く抉り取られた地面の痕跡だった。
まだ微かに残る魔力の残滓。
ヴォネは眉を寄せ、自分の肌が捉えた直前の感覚と、つい先ほどフリーレンに撃たれた時の記憶を頭の中で照らし合わせる。
一度目は、不意を突かれたことによる気のせいだと思っていた。
だが、二度も同じ感覚を味わえば、いくら無才を自称するヴォネであっても見過ごすことはできない。
「……なぁ、おぬしら」
ヴォネが顔を上げ、フェルンとフリーレンを交互に見やった。
「それ、ゾルトラークじゃなくないか?」
「いや、ゾルトラークだよ」
フリーレンが短く答える。
沈黙が落ちた。
ヴォネの双眸が細められ、フリーレンをじっと見つめる。
反応はない。
嘘を見抜く魔法は、フリーレンの言葉に何の齟齬も検知していなかった。
「嘘……ではない」
だが、ヴォネの納得がいくはずもなかった。
片手間とはいえ、ヴォネ自身もゾルトラークは習得している。クヴァールが生み出した原初の形も、人類が解析して広めた一般攻撃魔法としての構造も、その美しさも熟知しているつもりだった。
にもかかわらず、今この師弟が放った魔法は、自分が知るゾルトラークと決定的に何かが違っていた。
「なんかおかしい、絶対に何かが違うぞ……待てよ、ゾルトラークは応用や派生が効く。攻略の道を編み出した人類、それも多くの魔族を葬ってきたフリーレンなら、尚更何かを施していても……」
顎に手を当て、地面を睨みつけ、片足で地面を叩きながらブツブツと独り言が加速していく。
昨今の魔法戦の流れとしては、人を殺す魔法の対策に人類が創り上げた防御魔法……の対策として、物理的な効果を齎す魔法が流行っている。
そんな流れの中でも、一般攻撃を軸に戦いを展開する二人、そして静かに、確実に変化していた
ヴォネはガバリと顔を上げた。
「ええい、こんがらがってきた! 一旦家に帰って考えをまとめてくるわ!」
「は?」
あまりにも唐突で、あまりにも身勝手な宣言だった。
呆気に取られているフリーレン達を前に、きょろきょろとあたりを見渡すヴォネ。
あったあったと、投げ捨てていた紺色のスカーフを拾い上げると、手慣れた仕草で再び頭へと巻き付ける。
「……おい」
フリーレンが低く呼び止め、杖に魔力を集束させた。
厄介極まる魔族であり、簡単に殺すことはできないだろうが、それでもみすみす逃がすつもりはない。しかし、ヴォネはまるで友人の家を辞すかのように、ひらひらと片手を振って見せた。
「心配するな、まとまったらまた会いに行く。言ったじゃろう? この魔法があればどこにでも、どこまでも往けるんじゃ」
浮かべられたのは、魔族の牙が覗く、憎たらしいほどの満面の笑みだった。
「おぬしのような魔法使いに会えてよかった! 大好きじゃぞ! また話を聞いてほしいし、今度はおぬしたちの話ももっと聞かせてくれ!」
なぜか、いつの間にか、あまりにも勝手に距離感を詰めてきた、親愛が込められすぎているヴォネの言葉。
当然フリーレンたちは帰すつもりなどない。
だが、それはそれとしてこんな言葉を投げかけておいて、瞬きすら挟む余地を残さず消えるとは、誰が予測できただろうか。
連続して現れる魔力反応の果てに、その気配は瞬く間に探知の圏外へと遠ざかり――後には、夕暮れの風が吹き抜ける街外れの空き地だけが残された。
***
その後、フリーレンは大陸魔法協会へ一匹の魔族の存在を報告した。
神話の時代から生き延び、魔力を制限して人間社会へ完璧に溶け込み、あらゆる拘束と初見殺しを無効化する転移魔法を備えた魔族。
本来であれば、歴史の裏に潜んでいた大魔族として、新たな二つ名が冠されても不思議ではない案件だった。
だが、万が一にもその存在が一般人に広まり、『言葉を交わせる友好的な魔族』として名が知れ渡ってしまえば、人類社会に与える混乱と危険は計り知れない。
故に、その魔族には大魔族としての二つ名は与えられず、ただ『ヴォネ』という名だけが、一級魔法使いたちの間で密かに共有されたのだった。
***
勇者ヒンメルの死まで60年。
「信じてくれなくても構わない。ただ、もしも君が勇者ヒンメルと出会うことがあれば、その時は伝えてほしい。『道は斬り開いた』と」
男――南の勇者は、静かにそう告げて背を向けた。
だが、歩き出す直前。
ふと何かを思い出したように足を止め、肩越しにフリーレンを振り返る。
「……それから」
未来を見通すブラウンの瞳に浮かんだのは、どこかバツの悪そうな、それでいて微かなおかしみを含んだ苦笑だった。
「君には、苦労をかけることになる。すまないね」
何のことかは語られなかった。
ただ一言だけ謝罪を残して去っていった男の横顔を、フリーレンは今でも時折思い出す。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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元々は1本の短編の予定だったんです。
しかしいつの間にか前後編、上・中・下、完結編となっていました。
そして本当のヴォネの顛末があるとしたら、それは帝国編次第になるかなと。
もし書くことになったら、凄くカオスなことになってしまうのが目に見えてて怖いですが。
なので、現状はここで完結です。
あとは気が向いたら他の原作キャラクターと絡ませてみたり、ヴォネの過去編を書いたりするかもしれないです。
(後者はオリ主主体すぎて、微妙な気はしています)
PS.帝国編かなり好き。だから更新頼む。黄金郷のアニメも楽しみ。