機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー   作:井上斐呂

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第117話 装備の開発 x 試運転

さて、身体を休めている間にコアはコアでやることがある。

 

魔銅がいい感じに成長してきたのでそろそろ武器の改良に使用することにする。

 

“雷豪丸”の芯の部分をくり抜いて魔銅に置き換えるとそこから植物の根のように細く無数に伸ばしていき全体に行き渡るようにする。層と層の間に潜り込むように伸ばしてみると通りがより良くなる。

 

柄の部分は掌に魔銅が触れるように芯から表面に飛び出るような形にする。それを避けるように滑り止めの革紐を巻いていく。

 

見た目は変わらないが使用感はかなり変わっている。

 

銘も新たにしておくか…

 

“鉄鋼刀・絶雷(ゼツライ)”という銘に決めた。

 

大まかな形状としてはこれ以上変化することはないだろう。長さとか幅とかは変えるかも知れないが狩りの中で使う以上あまり大きくは出来ない。と言うことで絶の文字を入れることにした。

 

次に考えるべきは防具か。

 

レザン戦の最後で左腕を吹っ飛ばされたことが思い出される。あのときは軽くするために防具は着けていなかったが、もし着けていたらあそこまでのダメージにはならなかったのではないだろうか?

 

いつでも着ていられるような服みたいな防具でいて十分に防御力を確保出来るものが作成したい。

 

鎖帷子(くさりかたびら)のようなものを作るとしようか。今用意出来る最高の素材、八等級相当の魔鉄ならば鎖を細かく小さくしても十分な強度を得ることが出来るだろう。

 

自分の肉体データを参照してそれに沿って鎖を立体的に編み上げていく。身体の動きに追従させるために所々鎖の形を変化させたりして編んでいくと形が完成する。

 

早速試着してみよう。身体は寝たままだから亜空間内でシミュレーションしてみる。肉体データを動かして着ようとする。しかし、着れない。伸縮性がないと体型にピッタリあったものは着れないな。

 

所々ゴム製の糸なんかを使用して伸縮性を確保しつつ場所によってはリングを外して金属繊維に置き換えたりして対応する。

 

何度か試着を試みつつ、改良を加えていくと何とか着ることが出来るようになる。しかし…

 

着心地はあんまり良くないな…

金属製だから当然か…

 

肌触りが良くて丈夫で吸水性が良く、伸縮性も申し分ない糸があればいいんだが…それで裏地を作れば着心地も良くなるだろう。

 

どうするか? そんな物が都合よく売ってるのか…?

 

やはり繊維からデザインしていくしかないと思う。蚕のような魔物がいるなら良い繊維が手に入ると思うんだがいないらしいしな…

 

魔境産の樹木の繊維を亜空間の力で最大限細く分解していく。それをつなぎ合わせて長い糸を作り出し、結合を部分部分で強化して強度と柔軟性を両立させていく。

 

納得の糸が出来上がると出来上がった鎖帷子を巻き込むように編み上げていき裏地を作っていく。

 

金属が擦れると音がして魔物に気づかれるからな…ついでにリング一つ一つを繊維で覆っていき音対策もしておこう。

 

こうして防具も完成すると朝になった。

 

早速試してみたい。今日からまた狩りを始めるとしようか。

 

ずいぶんご無沙汰な気がする。狩人から狩りを取ったらだだの人だ。やはり定期的に狩りをしなければ心がなまってしまう。

 

それに、いい加減拠点の確認をしなければならないだろう。レザンの所為でいろいろと痛んでいるはずだ。

 

もともと拠点がレザンに破壊されないように魔境に行くつもりだったのだがな。直接戦うことになってなんやかんやで後回しになってしまった。

 

肉体を起こして朝食を取ると早速車に乗り込んでラディフマタル森林に向かって出発する。

 

最近は魔力が上がった所為か180キロぐらいまでけっこう楽にスピードが出せた。

 

足回りや車体とか魔鉄で補強したりしているのでそれぐらい出しても変に振動が起きたりふらついたりはない。制限速度もないし道もすいているので200キロを越えて出してみようかと思う。

 

キュイイイイィィィィ……

 

タービンが回転する音が車内に響いてくる。音だけでなくハンドルからもその振動が伝わってくる。スピードメーターは220を超えた所まで上がってくる。

 

流石にここまで来ると車体に妙な振動が生じ始めた。

 

タイヤの特性とか空気抵抗とか関係あるんだろうか? 今後の課題だな。時間があるときにそこら辺もいじってみるとしようか。

 

村に行く前に街のギルド支部に寄ってレザンの影響なんかを聞いておこう。

 

ギルドを訪れるとレドはいなかったが職員から話が聞けた。どうやらこちらの被害は王都ほどではなく例年通りぐらいに留まっているらしい。

 

腕を吹っ飛ばされたぐらいの甲斐はあったと言うことかな…

 

自分のためにやったことではあるがこうしていろんな人のためになったと思うと嬉しくもなるのは何故だろうか?

 

ギルドから出ると村に向かいそこからすぐに拠点へと走って行く。鎖帷子を着ているが動きにくいと言うことはないな。

 

重さはそれなりにあるはずだがこの肉体の力なら苦にならない。むしろ質量が増えた分、力を上乗せ出来る。

 

魔力も肉体の魔力格も上がっているためか意識して測ってみると確実に動きが速くなっているな。防具の重さ分、遅くなるはずだが前より速く動けていた。

 

拠点に着いてみるとやはりそれでも被害は免れなかったようだ。屋根に()いていた木製シートがけっこう吹き飛ばされている。木の葉とか折れた枝がいたるところに散乱していて荒れている事実を突きつけてくる。

 

掃除もしなければな…

 

拠点を作ったときに比べれば使える魔術のバリエーションも増えている。精度も上がっている。亜空間を使用しなくてもそこまで苦戦せずに修復は可能だろう。

 

だがそれでもショックなことはある。トイレに使用していた建物がまるごと地面に落ちてバラバラになっていた。

 

…おのれ

 

なんとなく怒りがこみ上げてきたがその対象はもういない。台風のような自然現象のようなそんな存在に怒りを募らせてもあまり意味がないな。

 

切り替えると俺は作業に取りかかった。

 

空術で余計なものを吹き飛ばしてから木術で素材の調達から加工、組み上げまで行っていく。一時間ほどで元の状態以上のものに仕上げていった。

 

作業完了後、昼食を食べながら今後について考える。

 

今の俺の力なら上級上位でも狙っていけるだろう。そろそろ森林の奥へ行ってみるか。そうなると途中で夜を明かす必要が出てくるな。

 

深層深部でテントを張るのは危険だろうか?

野宿のような感じでいつでも動ける状態で寝るのが現実的か?

いっそのこと寝ないという選択肢はどうだろう?

 

二、三日なら不眠不休でも問題なく活動出来そうだがそれだと気がつかないうちにパフォーマンスが落ちるかな? 知らず知らず窮地に陥る事にもなりそうだな。

 

とりあえず木の上で野宿する方法をとるか…

 

寝ている間はコアにより魔術を使って結界を張りつつ魔物の警戒をする。そうすれば間違いなく奇襲を防ぐことが出来るはずだ。

 

ステルスバイパーのような魔物、いや、あれ以上の隠密性に優れた魔物がいるかも知れないから絶対はないだろうけど。

 

その際にコアブーストの練習をしておこう。いざと言うときにより高いレベルで力を発揮出来なければレザン戦のような歯痒い思いをする羽目になる。

 

正体を隠したまま全力で戦わなければならないときがまた来ないとも限らないからな。

 

昼食が終わると早速探索に行こうかと思ったがやることがまだあったことを思い出す。

 

せっかく周りに人がいない所に来たのだから機鋼式戦闘体への初換装と試験運用を行っておきたい。

 

換装(チェンジ)

 

待ちに待った機械の身体の初運用だ。気合いを入れるために口に出して宣言する。

 

一瞬で入れ替わると銀色に輝くボディがそこに現れた。魔石を利用したカメラは想像通りの性能を発揮している。視界は良好でフォーカスも光量調節もスムーズだ。

 

銀色で人工筋肉がむき出しの掌を見つめる。グーパーグーパー、握ったり広げたりを繰り返して感触を確かめてみる。

 

関節が詰まるな…

 

金属で出来た人工筋肉は蛋白質で出来た筋肉より当然硬い。関節を曲げていくと筋肉が干渉して途中で曲がらなくなってしまう。

 

肉の人体とは異なる間接構造や筋肉量にしなければならないと言うことか。

 

腕や足を曲げたり身体をひねったりして全身の可動部を確認していく。そうしてから再び亜空間に格納して修正を加えた。

 

繰り返していくと動きが滑らかになって動かしやすくなる。ラジオ体操のような動きをして動作確認を行いつつ振動板から声を出して発声の感覚を確かめる。

 

「ア~、ア~、、ホンジツハセイテンナリ、ホンジツハセイテンナリ 」

 

口を動かさずに声を出す感覚がちょっと気持ち悪い。肉体と異なる感覚に戸惑って上手い具合に発声できていない。

 

発声の練習をしつつ、より高度な運動を試していく。森の木々の間を走ったり跳んだり木の枝を掴んでぶら下がったりいろいろな動きをしてみる。

 

周りから見れば今の俺は全身が銀色で、頭は骨格標本、身体は人体模型のような有様だ。知る人が見れば古い有名な映画に出てくる殺人ロボットが森を駆け回っているように見えるだろう。

 

なかなかにひどい光景だな。悪い夢でも見ている気分になるだろう。家の中とは言え街中でやるものじゃなかったな。やらなくて良かった。

 

家がぶら下がっている木まで戻ってくると、亜空間から姿見を出してその木に立てかけた。あらためて外観を確認してみる。

 

怖いな…

 

自分で見てもかなり不気味な印象を受ける。とりわけ顔が怖い。ほとんど骨が剥き出しの顔に顎の部分だけ筋肉が付いている。眼窩の中は人工筋肉によってぎょろぎょろと動く目が生気を感じさせる光を放っている。

 

白骨化しつつあるゾンビにも見えるな…

 

こんなところで人に見られると思わないが万一見られても大丈夫にしておきたい。人だと勘違いしてくれる程度には取り繕っておくか。

 

頭部に取り付ける兜のような装甲を開発して被せていこう。

 

顔が隠れているだけでも身体の部分も鎧のようなものを着ているように見てくれるかもしれない。

 

口から音響衝撃魔術を放てるように口の部分が開くようなギミックを仕込んで取り付けていく。パーツはある程度分割して繋げてメカメカしくも鎧武者のような頭部に仕上げていく。

 

最後にレインメーカーの象徴である純白に塗装してとりあえず今日はここまでにしておこう。

 

あたりはいつの間にか暗くなっていて夕食の準備などを行わなければならなくなった。直したばかりの台所を使ってカレーを作っていく。完成するとパンを焼いて食べ始める。

 

ちぎったパンをカレーに付けて食べているとふと思うことがあった。

 

ナンが食べたいな…

 

インドではチャパティーというパンが主流だそうだが日本では根強くインドカレーにはナンが主流だった。

 

いつかナンを焼いてみるか…

 

だがナンのレシピなんて知らないな。まあ、小麦粉と卵と牛乳があればいろいろ配合を変えて近いものは出来るだろう。

 

後は釜か。名前はタンドールだったか。縦型の窯で内壁に貼り付けて焼くんだったと思う。

 

どういう素材が使われているのかわからないがコンクリートはこちらにもあるから形を模したものは作成出来る。形が同じなら似たような加熱の仕方になるだろう。

 

不可能ではなさそうだ。後はやる気の問題だな…

 

心に留めつつ後片付けをして眠りに就いた。

 

 

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