24年問題、危険物の規制強化…
日本の物流を支えるトラック野郎達を取り巻く環境は悪くなる一方だった。そんな中、1人のトラック運転手が立ち上がる。
今日も説得の為に全国各地を回りながら同業者を説得して回るのであった。

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トラック野郎のパレット改革道中記

次々と法律が改正されてトラックの運転手達は皆困っていた。

まったく稼げなくなったからだ。

かく言う俺もその一人。

働き過ぎないようこれ以上残業させない!とか、

燃えやすいこの荷物は運んじゃダメだ!とか、

長距離運送は交代制にしろ!とか、

規制ばかり増やして、まともに働けなくされている。

残業出来なきゃ残業代は貰えない。

危険物なんざ一番単価の高い美味しい仕事だ。

長距離だってむしろどんどん引き受けたいのに、交代制になったら稼ぎは半分になってしまう。

それに、あまり他人と話さなくても良いってんで運転手やってる奴も少なく無い。

そんな奴にとっては密室で他人と2人っきりで10数時間過ごさなきゃいけないなんて拷問もいい所だ。

 

そんな状態だから、みんな運送屋を辞めていく。

そうするとトラック運転手一人当たりの負担は当然増える。

それまでは数カ所で良かった配達先が倍にも3倍にも増える。

高速道路乗って一気に運べた荷物も、配達先が増えてあちこちに行かなきゃいけないから、狭い下道をでっかいトラックでちまちまと通るのだ。事故を起こさない様に神経も余計に使う。

燃費は悪いし、距離も稼げないから本当に辛い。

金銭面にも、仕事の進捗的にも厳しいのだ。

 

それに世間では勘違いされているけど、トラック運転手の仕事ってトラックを運転するだけじゃ無い。

荷物の積み込みや荷下ろしまでやらなきゃいけない。

これがかなりキツイ。

荷物の荷下ろしなんてフォークリフトでチャチャっと載せて終わりだろ?という勿れ、これが結構人力頼りなのだ。

冬の寒い最中でも、猛暑の炎天下でも人力で積む。

嘘をつけと仰るかもしれないが、そもそもフォークリフトというのは万能では無い。

フォークリフトで荷物を運ぶ為には、まずパレットという木の板の様な物に荷物を載せなきゃいけない。

このパレットというものは木やプラスチック出来た平べったい箱状の板だ。

その上に荷物を載せる。

パレットの底の部分にフォークリフトのフォーク部分を差し込む穴が開いていて、ここにフォーク部分を差し込む。

フォークリフトのフォーク部分は上下する仕様になっているので、そのまま持ち上げて運んでトラックの荷台に乗せるという仕組みだ。

人間で言うと食器を載せた盆を水平にした手に載せて歩く様なイメージだ。

なんだやっぱり人力じゃないじゃ無いか?

そうなのだ、そのまま載せるだけなら人力でやる必要は無いのだ。

しかし、そう上手くはいかない。

何故なら各取引先によって使っているパレットの大きさから素材から全く違うのだ。

トラックの荷台に2列に並べて置けるものから、はみ出すから一列しか置かないもの。重くて丈夫なものや軽くて柔いもの。様々だ。

形や大きさが違うとトラックの荷台にピッタリ詰め込めなくなる。

それに、そもそもパレットはその会社にとって資産である。

だからそのパレットを他社である運送会社のトラックが持ち出すのを極端に嫌う傾向にある。

だから多くの会社で荷物を積み込む前に、わざわざ手持ちのパレットへ積み替える必要が出てくるのだ。人力で。

それだけじゃ無い。

荷物を運ぶ先には倉庫がある。

その倉庫が最近ではシステム化されていて立体駐車場の様に自動で荷物を収納し管理できる様になっているのだ。

ん?結構な話しじゃ無いかと思われるだろうが、システム化され画一的な管理をする必要から、その倉庫に入庫する時のパレットは縦が何センチ、横が何センチ、高さは何センチと事細かく仕様が決まっている。

わざわざ行く先々のパレットを準備して行けるワケじゃ無い。

さっきも言ったけど、納め先は以前の倍以上に増えている。

パレットだって結構場所を取るのだ、そんなの積んでいたら他の荷物が積めなくなってしまう。本末転倒だ。

だからまた積み替えるのだ、トラックに積んでいたパレットから納め先指定のパレットへ。もちろん、人力で。

 

大きなトラックになればなるほど、行き先の企業は大きくなる。

大きくなると運ぶ荷物も桁違いになる。

地面に置かれたパレットから隣に置いた指定パレットへ一つずつ持ち上げては載せる。

よくある荷物に18リットル缶というものがある。

別名、一斗缶だ。

名前の通り、中には18リットルの原料やらなんやらが詰まっている。重さも多少上下するがだいたい18キログラムだ。

油断すると腰をやってしまう重さだ。

これを持ち上げては隣のパレットに運び載せる。

これを何百缶もやるのだ。

炎天下でも、寒風吹き荒ぶ中でも、雨の日も、雪の日も。

かなりキツイ作業である事は伝わっただろうか?

しかも、一斗缶の取手はやたらと細い。

2〜3ミリ程度の針金という事が多い。

その細さに18キロの重さが加わるから、結構手に食い込んで痛い。でも、缶は鉄で出来ているから、汗がつかない様にあまり接触出来ないって理由もあって、痛くても取手を持って移動する。

これを積み込みの時と荷下ろしの度にやらなきゃいけない。

 

ドラム缶に入った製品や原料を運ぶ時も大変な作業がある。

200キロはあるドラム缶をフォークリフトの届く位置まで移動させなきゃいけない。

フォークリフトのフォークに取り付ける事によってドラム缶を吊り下げられるようになるそういう器具があるのだけど、トラックの荷台の真ん中辺りだとフォークが届かないからだ。

ドラム缶は200キロぐらい有るから、当然、人力では持ち上げられない。だから、ドラム缶の片側に体重をかけて傾けてからコロコロ転がせて動かす。体重が軽すぎると出来ない作業なので女性には不向きだし、傾けたドラム缶もそれなりに重いので油断すると転倒させてしまう。その時、ドラムの下敷きになったり、手や足を挟んで大怪我をするというケースが毎年死亡事故が起きるほど運送業者の間ではメジャーな事故となっている。

これだってパレットの規格がみんな一緒なら、パレットをバンドでリフトに繋いで引っ張れば安全に移動できる。

なのにパレットの都合で危険なのを承知で人力に頼っている。

 

キツくて、どんどん人が辞めていく理由が少しはお分かりいただけただろうか?

 

じゃあどうすれば良いのか?

簡単な話、皆んな同じ規格のパレットを使えば良い。

そうすれば、事前にパレットを何枚か持っていくだけで良い。

荷物を積み込む時にそれを積み込む荷物のパレット枚数分、積み込み先の会社に置いて、あとはそのまま荷物をパレットごとフォークリフトで荷台に載せればいい。飲み放題のお店のグラス交換制ならぬ、パレット交換制だ。

パレットは同じ規格のものなのだから、わざわざ積み替えなくても代替えのパレットを置いていけば良いワケだ。

荷下ろし先でも同じだ。

そのまま荷台の荷物をパレットごとフォークリフトで下ろし、代わりに下ろした分の空のパレットを積み込むだけで良い。

非常に単純だし、管理もしやすい。

ついでにどこの会社も同じ規格のパレットなら、大量生産が可能になりパレット自体の単価も下げられると良い事だらけだ。

 

じゃあ何故そうなっていないのか?

こんな事は実は物流に関わる人なら誰でも考えている事なのだ。

なのに、誰も動こうとしない。

誰しもが自分の資産であるパレットを変えようとしないのだ。

先ほどの様に既にそのパレットの規格で倉庫を作ってしまっている企業も多いのだ。もし、パレットが使えなくなってしまえばその損害は一億や二億どころでは無い。

しかも、大変なのは運送業者であって自分の会社はダメージが無いのだから、先頭切って身銭を切るような物好きはいない。

結果、ジリジリと物流業界が弱っていくのを知りながらどこの企業も動かないと言うわけだ。

 

だけど、現場の人間である俺はそう悠長に構えてもいられない。

制限いっぱいでこれ以上申請出来ない残業や業務時間外のはずなのに拘束された時間。

今日も1人、仲間が会社を辞めた。

勤め先の社長に文句を言いたかったが、自らもトラックのドライバーを頑張っている社長は既に疲労困憊で今にも倒れそうだ。

正直、俺も体力的にも堪忍袋的にも限界は近い。

こうなりゃ実力行使しかない。

江戸時代、米の値段が高騰した時、庶民達は徒党を組み、米を貯め込んでいる米問屋を襲って、隠してあった米を捨ててしまったらしい。

さぞや痛快であっただろうな。と心底思う。

それを俺もやってやろう!

そう決心した俺は、翌日から配達で行く先々で同志を募った。

到底一人ではなし得ない大きな目標だからだ。

なんせパレットは日本中あちらこちらにある。

まさに物流の要、血液とも言えるのがパレットだ。

それを一度ぶっ壊し、再生する。

そう、パレットに俺は革命をもたらすのだ!

 

最初は誰も相手にしなかった。

「また疲れて頭おかしなった運ちゃんがおるわ」

そんな目だ。

そりゃそうだろう。

パレットを統一する。

それは日本全国の物流の規格を統一するのと同義だ。

そんな話、今まで何百回も話が上がっては、何百回も流れていった話しだ。

みんながもう既に諦めてしまった話しなのだ。

悔しさ、無力感、怒り。

そういったものを一度飲み込んで諦めざるを得なかった問題だ。

それを俺は蒸し返しているのだ。

その時の悔しさを蒸し返され、そのまま俺にぶつけてくる人も少なく無かった。

「お金がかかるんだよ!その金、お前が出せんのか!」

「余計な事して、取引先に切られたらどうするんだ!」

胸ぐらを掴まれ、突き飛ばされる事もあった。

それでも俺は根気強くみんなを説得した。

彼らの怒りが嬉しかったからだ。

彼らの言葉がかつて彼ら自身が誰かから浴びせられた言葉である事が分かっていたから。

その時の怒り、悔しさをまだ心の奥に無理矢理閉じ込めている人達がこんなに沢山いると分かったから。

何よりその「黙らされた言葉」の中に解決のヒントが隠されていたから。

幸いな事に配達で日本中を走り回っていたから、毎日沢山の物流関係者達と話す機会は山程あった。このチャンスを逃すまいと、中継地で、納入先で、手当たり次第説得して回った。

フォークリフトの運転手の愚痴を聞く合間に。

汗だくで一斗缶を積み替えているのを手伝いながら。

休憩室で缶コーヒーを奢りながら。

「パレットの種類が多いと管理も保管も大変でしょ?」

「なあ、この作業、あと何年やれる?腰悪いんだろ?」

「生活どうだ?最近懐が寂しいよな〜」

その都度膝を突き合わせて、相手の立場に立って話した。

俺だって当事者だから彼らの事情は手に取るようにわかるのだ。

それでも返事は決まってた。

苦笑いか、ため息か、無言。

大半がそんな反応だ。

それでも俺は続けた。

「パレットを触ってる一番扱っている俺たちが、そのパレットに振り回されている。その作業が原因でトラックを降りた奴らも少なくない。パレットにトラック運転手の人生壊されたんだぜ!なら、俺たちがパレットを壊したって良いだろう!」

「壊す」という言い方が良かったのかもしれない。

みんなの目の色が少しずつ変わっていった。

 

もちろん、実際に破壊するわけじゃない。

いやまあ、実ははじめは実際に壊して回ろうと思ってた時期もあった。でも、そんなの最終手段だ。

トラックのドライバーをこれからも続けていく為にパレット革命を起こすんだから、器物破損で刑務所に行ってたんじゃ本末転倒になってしまう。

でも、諦めてしまった人達にはこの言葉は響いた。

レンタルパレット最大手の企業でもパレットの在庫は1,100万枚だという。流通しているパレットは5億枚という話を業界誌で読んだ事があるけど、実際に5億枚のパレットが存在という意味ではない。先ほどのレンタルパレットの会社も在庫は1,100万枚なのに、年間の貸し出しは5,000万枚になるという。パレットは飲食店で言うお盆と同じ。使い回すのだ。だから、実際のパレットの枚数自体は1億枚を下回るのでは無いだろうか?

対する運送業に従事するトラックドライバーの数は66万人。

1人頭、151枚のパレットをぶっ壊せば革命終了って計算になる。

ぶっちゃけ100枚や200枚なんて俺達トラック野郎にとっては1週間に扱うパレット数にも満たない数量だ。

それにこの仕事をしてるとパレットを破損させる事もしょっちゅうなので、あまり罪悪感も無い!大きな声では言えないけど。

何年も何十年も苦しめられてきた作業から、たった1週間の破壊で無くなる。このイメージはドライバー達にパレットの統一という目標が「解決不可能な難題」では無く、「俺達の気持ち次第でどうにでも出来る程度の課題」だったという認識に変えさせた。

俺の革命に参加しようという人が少しずつ増えてきた。

 

俺たちがやるのは「パレットの規格統一」だ。

ただし、行く先々でコロコロ変わる不完全な規格じゃない。

現場の俺たちが主導する物流側に都合の良い全国で統一された規格だ。

だいたいトラックの荷台の幅なんてだいたい似たり寄ったりだから、運転手同士、あまりモメずにすんなり決まった。

その荷台にピッタリと詰め込めるそんなサイズ。

検討の結果、日本でも最大手のメーカーが使っているパレットがその理想に近い事が分かった。

流石は超がつく世界的大手、最大限トラックに積み込めるサイズで既に運用していたのだ。効率化とはこのようにあるべきなのだ。

これは幸先が良い。

「あの大手〇〇さんも使用しているパレットの規格」

これだけで我々が進めるパレット改革の説得力が格段に増す。

早速、我々はその大手がパレットを発注しているメーカーにパレットを発注する。完全に大手さんにあやかろういう作戦だ。

パレットの枚数は10万枚。

流石に1億枚買うだけの資金は集まらなかった。

一応1枚2000円のところを、大量発注するのだからと半額に負けさせたけど、おかげでみんなからのカンパは全部使ってしまった。

あとはこのパレットを餌に、

「50枚こちらの工場に納めさせていただきますので、弊社の運送便で運ぶ分は全てこのパレットを使って下さい。今後、このパレット以外では運べません。」

と荷受け先に行って回る。

それだけだ。

あくまで法律の範囲内で動く。

ただ、ドライバー不足でどこの運送屋も手が回っていない。

言うなれば、今は運送屋の側が仕事を選べるのだ。

それを取引先には再認識して貰わなければならない。

まとまった量のパレットをはじめに無償で渡す。

これが最大限のこちら側の譲歩である。

あとはそれをしっかり運用してもらう。

出来なきゃそことはそれっきりだ。

こっちはちゃんと運用してくれる企業とだけ仕事をするのみだ。

 

俺の会社の社長をはじめ運送業の経営者達は、俺達のその動きにはじめ好意的ではなかった。

「取引先を選んでいたら儲からない!会社が潰れる!」

と悲壮感を漂わせていたが、ドライバー不足で経営者は俺達には面と向かって反対はしてこなかった。少し申し訳ない気持ちになったが、運送業の未来の為だと割り切った。

その悲壮感も最近は全く無くなっている。

前より儲かっているのだ。

そもそもがらもともと仕事量が多すぎたのだ。

しかも、パレットの積み替えで無駄に時間を消費していたからドライバーの捌ける荷物の量も少なかった。

しかし、パレット積み替えという無駄に体力と時間を浪費する作業がなくなった事でドライバー一人当たりが運べる荷物が増えたのだ。

当然と言えば当然だ。

例えばパレット積み替えで1時間掛かるとしよう。その間次のトラックは待たされる。そのトラックも積み替えをしたとしたら、さらにその次のトラックは通算何時間かかるでしょう?

単純な足し算だ。

こんな簡単な事を今まで放置されていたことの方が驚きだ。

業者は協力的な業者を選べ、ドライバー一人当たりの荷物運搬能力も格段に上がった。

こんなの儲かるのが当たり前だ。

かくして、運送業者は潤っていき、ドライバーを辞めるものも一気に減った。

 

一方、今までの客、特に工場や量販店、大型ショッピングセンターなどは大いに困った。

ただ、運ばない。

しかし、企業にとってはそれは死刑宣告に近い。

売るものが、物を作るための原料が、納品が、全て出来なくなるのだから仕事にならない。

最初に悲鳴を上げたのは多くて大企業の製造工場だ。

大量に原料を仕入れて、作った製品を大量に運ばなければならない大きな会社の工場ほど物流業とは無関係でいられないのだ。

小さい工場なら知り合いに軽トラを出してもらったり、ツテを使ってついでに載せてもらうなどが出来る。

中規模なら自社の配送部門だけでなんとか賄うことが出来る。

しかし、全国津々浦々にまで影響力のある企業ほど、外部の運送業者の存在無くしては回せない。

にもかかわらず、いまの今まで物流業界の苦境を我関せずと傍観していたのだ。俺達の改革は物流業界の未来の為ではあるが、一方で奴らへの制裁でもある。

「なんであそこの荷物を引き取らないんだ!」

「あーパレットが規格外なので引き取れないっす」

「いやいや困るよ!今まで運んでただろ!」

「ちゃんと事前に伝えてますよね?今後はパレットをちゃんと統一して下さいって。わざわざ正規の規格パレットも渡してますよね?」

「いやいや前まで使ってたのも残ってるのに勿体無いしさ」

「そういう場合は、配達日までに御社で積み替えをしておいて下さい。」

日本中あちこちでこういったやり取りがあったが、俺たちは折れなかった。

そもそも、俺達ドライバーの業務に積み替えというものは明記されていない。これまで厚意でやってあげていただけに過ぎない。

大手といえどこれ以上強制は出来ないのだ。

一時、彼らは更なる大企業を焚き付け、この改革を潰そうとしたが、そもそも最大手とその関連企業は皆、俺たちのパレットと同じ規格のものを使っている。

痛くも痒くも無いのだ。

しかも、実は痛くも痒くもどころか、最大手企業達は今回の改革が自分たちにとってもメリットがある事に気付いたらしい。

パレットというのはよく紛失されるのだ。

納品先に行ったまま帰ってこない。

この紛失が年間ベースで見るとかなりの額の損失となっていた。

しかし、今回の改革でパレットは出荷と同時に補填される。納品先に返却要請したり、パレットの運賃なんてものはもう必要ない。

しかも、大量生産が進んで前よりも安く手に入るようになった。

改革様々なのだ。

結局、大手メーカー達による改革潰しは頓挫した。

規格パレットを受け入れたのだ。

大手がパレットを統一すると、中小零細企業もそれに倣った。

俺達の改革は成功したのだ。

 

ニュースにすらならなかった。

政府も何も言ってこなかった。

だが確実に、日本中の倉庫で、工場で、搬入場で、静かな革命が見事に実を結んだ。

物流業界の未来の為とか言った事もあったけど、実際はしんどかっただけだ。

ただ、手が痛くなるのが苦痛だったし、腰を壊すのが嫌だっただけ。

 

今日も俺はトラックを走らせる。

同じサイズのパレットを積んで。

荷下ろし時間が短縮された事で、前より遠くまで届ける事も増えた。長距離扱いじゃ無くなったから運転席には俺一人だ。

俺は音楽をかける。アニソンだ。俺は人と話すのは苦痛ではないのだけど、聞く曲がちょっと万人ウケしないから同乗者がいると我慢しなきゃいけないのだ。でも、今は思う存分アニソンが聴ける!

トラックの現場にはやたらと女性が増えていた。

ドラム缶を動かしたり、一斗缶を何百缶も移し替えたりという作業が無くなったから、採用しやすいって社長も喜んでいた。

現場の奴らも出会いのない職場だったから、大喜びだ。

まあ、色恋沙汰でモメるのは勘弁してほしいけど、奴らが身なりに気をつけて小綺麗になったのは良かったと思う。これでトラック野郎のイメージも少しは上がるかもしれない。

 

ふと俺たちの革命について考える。

大手メーカー達はなぜ、あんなに抵抗しようとしたのか?

今では、積み替えが無くなった事で納品にかかる時間も短縮されて、経費的にも納期的にも余裕が出来たと大喜びしているってうちの社長が言っていた。

多分…、ただ面倒臭かっただけだったのだ。

前の担当者から引き継いだ事を何も考えずにこなす。

確かに楽なのだ。

その「楽な状態」を邪魔しようとしたから反射的に「反対」と叫んだのだろう。

今回の改革でも某ショッピングモールの抵抗が凄かったのを思い出す。元副総理を身内に持つ経営者一族が営んでいるあのモールだ。かなり執拗な嫌がらせや圧力を受けたのを思い出す。しかし、今では入ってくるパレットが全て同じで保管スペースもスッキリして倒壊事故も無くなったと喜んでいた。

これもただ変化に対して反射的に拒絶していただけなんだろうなと、当時のこちらに散々嫌がらせをしてきた担当者を思い出したが、それは怒りでは無く、憐れみの感情だった。

変化への拒絶感か…

そう言えば、今度、ドローンを使った配達システムが実用化されるとか言っていた。

ニュースでは「物流改革」なんて呼んで盛り上がっていた。

俺たちトラック野郎のライバル登場か?

鼻で笑う、いや違うな。

むしろ、あまり稼げない少量の荷物を大きなトラックで入りにくい場所に運んでくれる。

俺たちはもっと遠くに沢山の荷物を届けに行けるという事だ!

よし!物流改革とやらよ!早く来い!

ハンドルを握りながら、俺はそんな未来にワクワクしていた。


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