千の妖精、そして結ばれた世界線   作:如月悠

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ベル「なぜ投稿が遅れた」

「てへぺろ」

レフィーヤ「アルクス・レイ」

「ぎゃぁぁぁぁ!!?」


Two

「ほら、更新終わったよ」

 

 背中を両手でポンっと押され、優しい声が背後からかけられる。起き上がって振り向き、その声の主に微笑みを向ける。

 

「ありがとうございます、神様」

 

 そう、今ベル達はロキ・ファミリアとの遠征内容を伝えに竈火の館へと来訪していた。ついでにと、ヘスティアとステイタス更新を行っていたのだ。

 ベルがお礼を言うと、にへらとヘスティアは笑ってふふんとそのたわわと実った胸部を誇張するように胸を張る。ベルはそれを見て、ロキが見たら血の涙を流しそうだ。という感想を心の内に留める。

 

「こういう時しか、更新する機会はないからね」

「そうですね、そもそも神様と会う機会が以前より減りましたもんね。リリ達とはダンジョン探索で同じですけど」

 

 あはは、と苦笑いをするヘスティアに目を伏せて唇を噛む。苦虫を噛み潰したような顔をするベルにヘスティアは真剣な眼差しで見つめる。

 

「……ベルくん、後悔してるかい?」

「……え?」

 

 神々(デウスデア)に、嘘は通じない。隠し事、嘘、言い訳。違いはあれど全て一様に神の前では子供騙しとなる。

 それを理解してる神々は、子供たちに質問(じんもん)をする。一切の嘘偽りを許さない。ベルの心残りにも近い思いを、誰よりも近くで見てきたヘスティアが分からないはずなどありはしない。

 

「……正直、僕は君たちの事反対だったんだ」

「っ……」

「まぁ……それは僕のエゴで、本気で愛し合ってる二人をあの時反対しきれなかったんだけどね」

 

 乾いた笑いを零すヘスティアの脳裏に焼き付く、ベルとレフィーヤの本気。ロキとヘスティア、その両派閥に行く日も行く日も懇願する彼らの決意。

 最初は、悪感情しか無かった彼らは今ではお互いが一番の理解者となる。フィンは元々そこまで反対はしてなかったものの、リリは苦虫を噛み潰したような表情をしていた。

 四年前とは異なり、中堅と言えるほど規模の拡大した【ヘスティア・ファミリア】と最強と名高い【ロキ・ファミリア】。両派閥の団長と幹部の交際なんて前代未聞。

 

「それに……ロキとも、話したんだ」

「ロキ……様と?」

 

 時は遡り、四年前。

 ベルとレフィーヤの交際云々で揉めていた時の神々の会話。人知れず行われた【竈火の館】にての一幕。

 

「……それで? ロキ、君的にはOKなのかい?」

「んなわけないやろ、ドチビ! ムカつくに決まっとる、んで……あん子の幸せそうな顔で余計ムカつく」

 

 ロキの言い分としては、手塩にかけて育てた眷属(こども)が取られるのは普通に嫌だ。とのことで話し合いはずっと平行線の一途を辿っていた。ヘスティアとしては、これ以上話し合いが長引くのは精神的にも削られる。

 なので、こうして話し合いの場を設けたわけなのだが。

 

「……ベルくんもさー、どうしてヴァレン何某じゃなくてロキのところのエルフくんを選んだんだろうね」

「ウチが知るかいな、下界の住民(こども)ほど変わりやすいもんはない。神々(ウチら)が一番知っとるはずやろ」

 

 その通りだ。ヘスティアは思わずといった様子で俯いてしまう。下界の住民(こども)ほど変わりやすいものはない。知ってはいるものの。いつの日かに憧憬の奴隷と言われそうな程のベルの思いがそんなたった一ヶ月もないのに変わるとは到底思えなかった。

 すると、酒を飲んでいたロキは酒瓶を机に置いて腕を組む。真剣な眼差しでこちらを射抜いてくる。

 

「せやかて……ウチやって、そっちのベル・クラネルに問題あれへんなら認めたっていい。リヴェリアを除けばウチのファミリアで祝福してないんはウチとアイズたんだけやからな」

「あぁ……そっちのハイエルフくんに関しては石化してたからね……」

 

 鮮明に思い起こされる。【ロキ・ファミリア】の本拠(ホーム)でのゴタゴタに、ワンチャンこれ殺されないか? と震えるベル。それを冷めきった目で見ていたレフィーヤ。

 満場一致であの時は酷かったね、となる程である。

 一番酷かったのは、意外にもロキではなかった。ベルの憧れ、アイズ・ヴァレンシュタインだった。

 

『ベルは……不良』

 

 と言いながら、先んじてベルとレフィーヤの交際を知っていたラウルの用意した祝杯用の酒を飲み干して、暴れ回ったのだ。それはもうとんでもなかった。

 リヴェリアは石化中、フィンとガレスで復讐者(アヴェンジャー)状態のアイズを抑え込んでいたのだ。多勢に無勢とはこの事、どれだけ強化したところで二人の連携に気圧されて最終的には丸く収まったのだった。

 

 まあ、交際自体は認められてないが。

 

「だからこそ、こうして話し合ってるんじゃないか」

「ウチの結論は1つや──アカン」

 

 ロキはロキで、頑固にも交際を認めないオヤジになっているので正直ヘスティアは辟易を通り越して呆れていた。

 別に、ロキの子を思う気持ちがわからないわけではない。ただ、ヘスティアには、確信があった。

 

「君のその決定で、あの子は喜ぶのかい?」

「……ッチ」

 

 ロキはロキで、ベルを本気で嫌悪している訳でも、その甲斐を見くびっている訳でもない。ただただ、ムカつく。応援したい気持ちと取られたくない気持ちがどちらも存在するロキは、未だ笑顔で送り出せていない。

 

『ロキ、意地を張るのをやめたらどうかな?』

 

 ムカつく、ただそれだけだった。

 フィンには諭されて、ガレスには呆れられた。リヴェリアは複雑な心境だが、送り出す決意はしているらしい。

 それが一番ムカつくのだ。

 

 フィンが送り出す一番の理由はヘスティア・ファミリアのベル・クラネルだからだろう。

 

 誠実、謙虚、優秀、将来有望。黒龍の重要人物(キーマン)

 フィンはどうにか手の中に戦力(てふだ)として置いておきたいのだろう。だからこそだ、レフィーヤがアイツに騙されてないのか? 何故ベル・クラネルなのか? 

 あんなに嫌い嫌いと嫌煙していたのに。

 

 子供は変わりやすい。

 分かっている、だがアイズ至上主義レフィーヤにはベル・クラネルという人間を男として選ぶ余地などないのだ。

 なら何故? 騙されているのではないか? 

 

 そんな思考がぐるぐるぐるぐると邪魔をして、ロキは未だ答えを出せていない。

 いい男だから、ムカつく。

 屈託のない笑みでレフィーヤを見る目が、ムカつく。

 打算も、執念もないくせに。

 

 

だが、それでも御伽噺のような英雄になるだろう。

 

 

 

「……条件」

 

 ポツリ、とロキが呟いた。酒を煽る手を止めてどこか一点を見つめながらも諦めに近い感情を秘めてそういった。

 ヘスティアは「え?」と声を漏らす。ロキはジロリと睨んでため息をついた。

 

「認める条件があるっちゅうねん」

 

 


 

 

「……そんなことがあったんですか」

 

 思い出話のように語るヘスティアの横顔を見ながら、ベルは心の中で何かがストンと落ちる感覚がした。

 納得──というのが、こんななのかと変に思ってしまうベルを他所にヘスティアは目を伏せる。

 

「僕もロキも本質は同じだからね。司るものも、思いも全く違うけど……眷属(こども)を思う気持ちは同じなんだ」

 

 疲れたように笑うその姿にキュッと口を噤む。

 瞬き一回すると、いつもの無垢な表情へと変わりベッドの上から立ち上がり、こちらを向いて手を差し伸べる。

 

「さ、行こう」

 

 それは女神様のよう──女神だが──に暖かい()()だった。そっと差し伸べられた手を取り、ベットを立ち上がって部屋から出ていく。

 向かうは、みんながいる所へと。

 四年、たった四年。それだけでこんなにも関係が、立場が変わるなんて思わなかった。

 

「あの子を泣かせたらダメだよ?」

「……え? それって──」

 

 ボソッと囁かれた言葉を聞き返そうと思った、その時。光に包まれて、その言葉は遮られることとなる。

 

「お帰りなさいませ、ベル様」

「あ、ヘスティア様に……ベル様!」

「ベル、おかえりなさい」

「よ、ベル。少し遅かったが、大丈夫か?」

「ベル先輩! おかえりなさい!」

 

 四年前からの古参メンバーが迎えてくれる。春姫、リリ、ヴェルフ、リュー、ニイナ。その中に混じる可愛い彼女、レフィーヤ。

 

「おかえりなさい、ベル」

 

 こちらを向いてニコニコと微笑む姿に見蕩れてしまう。その様子に気づいたのか、その場にいた女性陣の目の色が変わる。特にヘスティアとリリだ。

 

「べぇぇるぅぅくぅぅん?」

「べぇぇるぅぅさぁぁま?」

「不埒です、ベル」

 

 その瞬間、ずいずいっと顔を近づけて睨んでくるヘスティアとリリ。そして近づいては来ないが手厳しい事をこともなげに言うリュー。

 春姫とニイナは愛想笑いしながら静観している。

 

 彼女、といっても目の前でイチャつかれるとやはりイラつくのだ。目の前でリア充を見るのはムカつく。

 

「ええっ!?」

「ええっ!? じゃないです! レフィーヤ様に変な目線向けて、鼻の下伸ばしちゃって!」

「そうだ! 処女神(ボク)本拠(ホーム)でイチャつくのは禁止だぁぁぁ!!」

 

 といっても、毎度の光景なのでヴェルフは窘めることすら諦めている。

 普段窘める側であるリューはにじり寄る訳では無いがベルを擁護する気はないらしい。

 

「してませんてばぁ!」

 

 ベルの悲鳴のような叫びが本拠(ホーム)に響き、数十分のゴタゴタの後。やっと冷静を取り戻したみんなはベルとレフィーヤがここに来た理由をようやく思い出す。

 

「それで? 【ロキ・ファミリア】ではどうだったんだい? どうせ先にあっち行ってきたんだろ?」

「あ、はい! ここに……」

 

 会議という体裁を取り戻した【ヘスティア・ファミリア】は一応の静けさに包まれていた。

 等級(ランク)、S。四年前と比べれば、沢山と言えるだけの人材を抱えている四年間で最も力をつけた【ファミリア】だ。個人技と共に、連携を重視する彼ら。

 ベル・クラネルを筆頭にどれも粒揃い。

 

「………………っはぁ────!!?」

 

【あたおか・ファミリア】が頭を抱える問題。

 それは【ロキ・ファミリア】との合同遠征である。ここ数年で押せ押せムードとなった【ロキ・ファミリア】の遠征。

 向上心に火がついたのか、全体的なランクアップは当たり前。三首脳陣も度々ダンジョンへ潜るほどである。

 

「な、なななっ、70階層!!?」

 

 その驚愕の数字に、その場にいたベルとレフィーヤを除くみんなが凍りつく。ヘスティアは口をわなわなさせて頭の中で整理させているようだ。

 ただでさえ、60を超えると難関ばかりだというのに70階層とは聞いていないぞと言わんばかりだ。

 

「どうなってるんだ──ー!!!」

「コンッ!? ……お、落ち着いてくださいませ。ヘスティア様……!」

「どう落ち着けって言うんだぁぁぁ!」

「か、神様?!」

 

 固まっていた者達もヘスティアの絶叫にギョッとしてそのまま仲裁に入ろうとするが、ヘスティアは宥められたとしても止まらないことは目に見えていた。

 

 そして

 

 ヘスティアが正常に戻るまでに日が暮れた。

 その日のうちに話し合いは無理だろうとの事で、ヴェルフやリリと話し合って後日、日を改めることになった。

 団員達はレフィーヤとベルに羽交い締めにされているヘスティアを見て少しばかり目を疑ったらしい。

 

「それじゃあ、僕たちは帰るね」

「おう、明日は休日(オフ)だからな。勝手にダンジョン行くんじゃねぇぞ?」

「行かない──」

 

 ヴェルフからの釘を刺す言葉にベルは笑って、絶対に「行かない」と言おうとしたところ。2人はその言葉が終わるか分からないかぐらいで遮った。

 

「「行くでしょうね(だろうな)」」

「……そ、そんなぁ……」

 

 信頼できる要素がゼロ過ぎるのだ。

 いつぞやのゾンビワニワニパニックの時には、ゾンビとして感染しながらもうわ言のように「ダンジョン」と呟いていた過去や、隙あらばダンジョンに行こうとする事があるためヘスティア・ファミリア+レフィーヤの認識は完全なる【社畜(ダンジョン中毒者)】である。

 

 あからさまに信頼されてないさまに落ち込むベルを尻目にヴェルフはレフィーヤの方へと向く。

 

「……ベルを頼むぞ、【千の妖精(サウザンド)】」

「えぇ、勿論です」

 

 そして、その言葉を受け取ったレフィーヤは一度目を閉じ何かを考えるように今度はゆっくりと目をあける。

 未だ落ち込んでいるベルへと手を差し伸べて、たった一言「帰りましょう」と投げかけると、フッと諦めたように笑ったベルは優しい手つきでレフィーヤの手を取る。

 

「やっぱり、君には敵わないなぁ……」

「当然です、破廉恥兎」

「……破廉恥兎て、懐かしい呼び方引っ張り出して来ますね。レフィーヤさん」

 

 その矛盾した言葉にレフィーヤはふふふっと堪えきれないといった様子で笑う。

 ベルのいう()()()()()()()呼びがむず痒がったのか「レフィって呼んでください」と顔を赤らめながら補足をつけるレフィーヤ。

 

「仕方ないなぁ、レフィ?」

「……ベル、意地が悪いですよ?」

「レフィだからだよ」

 

 もう! っとベルの胸をポカポカ叩く。甘々な空気を切り裂く声がひとつ投下される。この二人の会話を聞いていたヴェルフだ。

 

「……帰っていいか? ふざけろ」

「あっ……ごめん」

 

 そして、二人は竃火の館を後にする。

 

 

 ◆◇◆

 

 

 私は、何をしているんだろう。

 暗い部屋の中で、ポツリとその言葉だけが空虚に響く。綺麗であったはずの金髪は布団に無造作に広がって絡まる。自分の体の重さだけが支える腕にのしかかって現実を実感させられる。

 

『アイズさん!』

『今日も指南お願いします!』

『アイズさん! あ、あの兎じゃなくて私に──』

『僕、強くなりたいです』

 

 慕ってくれる後輩たち。

 

『あ! アイズ〜っ! ねね、ダンジョン行かないー?』

『アイズ、こっちで食べましょ』

『やぁ、アイズ。どうしたんだい?』

『……またダンジョンか』

 

 気さくに喋りかけてくれた仲間達。

 全てが無に帰ったような気持ちとなって自分だけが取り残された時間にいるようだ。起き上がることも、外に行くことも。ダンジョンに潜ることもできなくなった。

 

「……黒竜」

 

 黒竜が倒された。それはいい事だったはずなのに以前行ったエダスの村に行くと住民は悲しんでいた。 祀っていた黒竜が倒されたのだから当然と言えば当然だ。

 だが、それを見て私は黒竜を倒すことが正義だったのか分からなくなってしまった。

 それからずっと引きこもっている。

 

「…………お母さん……お父さん……私を、一人にしないで」

 

 そして、そっと布団を被った。

 その時、コンコンコンというノックとともに「入るぞ」という一言と共に翡翠髪のエルフが入ってくる。リヴェリアだ。

 リヴェリアは入ると同時に布団でまるくなっている白い塊を見て、はぁっと息を吐いた。規則正しい足音と共に布団に近づきその縁に腰を下ろす。

 

「……アイズ」

「来ないでって言った」

 

 その一言にリヴェリアはそっと口を噤む。

 アイズは布団の隙間から赤くした目でリヴェリアを見た。そっとリヴェリアが手を伸ばすとビクッとして更に身を縮込める。

 それを見て、リヴェリアの手は力なく下を向く。

 

「70階層」

 

 リヴェリアはただそれだけを言って返事を待った。布団の中で目を見開いているであろう大馬鹿者(アイズ)を見据えた。

 ──声が出なかった。たった一言だけなはずなのにアイズは「なに」とも「帰って」とも言えない。口をへの字に曲げる。そして、布団からそっと顔を出す。ずるいと言いたげに。

 

「……行く」




後書き

前書きのなんなんと言われたら答えてあげるが世の情け。
自分の暗殺防ぐため、自分の平穏守るため。

自の保身の闇を貫く


とまぁ、遅れた理由はSVやってたからっすなぁ
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