人造人間達との戦いに敗北し、トランクスに未来を託しながらその命を散らした孫悟飯。しかし彼が目を覚ました時居たのはあの世ではなく、また別の世界であった。

バランス調整のため、悟飯にはデバフがついています。

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其之一 孫悟飯、目覚める!

 雨が、降っていた。

 

 滝の様な、激しい雨。

 そしてその中で、一人の戦士が最期の闘いに身を投じていた。彼は体にいくつもの傷痕を残し、また左腕を損失しながらも、果敢に『奴ら』へと立ち向かい続けていたのだ。

 

「ハァ……ハァ……クッ……」

 

しかし、もはや彼には頭上に浮かぶ『奴ら』を───人造人間達を撃ち落とす余力は残されていなかった。

 

「…………」

 

「…………」 

 

 人造人間達は無言で構え、気弾を生成する。もうこれで終わりだと、お前はここで死ぬのだと言わんばかりに。

 ……だが、戦士の目にはまだ闘志が残っていた。眼前の敵を倒さんとする闘志が。

 

 ───戦士の髪が黒から金へと変わり、激しく逆立った。

 

「か……め……は……め……!!!!」

 

 最後の最後に残された僅かな気を右掌に凝縮させ、彼は構える。そして……

 

「波ァーーーーーーーーーーー!!!!」

 

 渾身の咆哮と共に、一気に放出した。

 青い光が柱となり人造人間を飲み込もうとするが、彼らの手から放たれた無数の光弾がそれを阻み、僅かな間拮抗する。

 

 ……けれど、その拮抗はすぐに崩れ始めた。

 人造人間にエネルギー切れという概念はない。だから、どれだけ死力を尽くした一撃だったとしても……やがては押し切られてしまう。

 

「ぐ、ぐぅっ……!!」

 

 戦士は苦悶の表情を浮かべつつ、諦めずに押し返そうとするも……人造人間達は無慈悲に、そして冷酷に気弾の量を増加させた。

 そしてそれから……たった5秒も持たずに、戦士は光弾に飲み込まれた。

 

「ぐああああ、ああっ……!!」

 

 全身を焼き尽くされるような耐え難い痛みと苦しみの中で、戦士は悔やむのでもなければ憎むのでもなく……ただ、願った。

 

(トランクス……生きろ……キミは最後の……希望……)

 

 自分の、最初で最後の、たった一人の弟子が生きていく事を。

 

「がはっ……!!」

 

 それが、孤独な戦士の最期の願いだった。

 

 


 

 

「……か……ですか……」

 

(……だ、誰だ……?オレに、話しかけているのは……)

 

「……大丈夫ですか……」

 

(……トランクス……?いや……)

 

「お兄さん!大丈夫ですか!」

 

「!」

 

 先ほどの物よりも一層大きい呼び掛けによって、彼……孫悟飯の意識は完全に覚醒し、また即座に立ち上がって二人から距離を取った。

 

「えっ、速!?」 

 

「……良かった、元気そうだ」

 

「あ、すまない。つい反射で……キミたちは?」

 

 無意識的な構えを解きながら、悟飯は目の前に立つ男女に質問した。どちらも彼にとって面識のない人間であり、またどこか不思議な雰囲気を感じ取っていた。

 

「僕はアキラ。この店───『Random Play』の店主の一人さ。で、こっちが───」

 

「同じく店主のリンだよ!よろしくね!」

 

「あ、ああ……よろし───」

 

 すぐ目の前にある店を指差しながら微笑みを浮かべた二人が兄妹だという事に驚きつつ、悟飯が挨拶を返そうとした瞬間───彼は唐突に自身の左腕を掴んだ。

 

「「?」」

 

 驚いた様に目を開きながら、彼は数秒静止した……かと思うと、また唐突に、そして素早くシャドーボクシングの様に体を動かし始めた。

 

「え、えぇ……?」

 

「……なんてキレだ。こんなの、映画でも見た事がない」

 

「気にするとこそこ?」

 

 その異様な光景に、二人はただ首を傾げるのみ。しかしながら、悟飯にとってそんなことは重要ではない。何故ならば。

 

(……間違いない、オレの左腕だ。しかし一体何故……?仙豆はすでに……)

 

 人造人間との闘いで失ったはずの左腕が、何故か付いていたからである。それだけでなく、光弾により飲み込まれた筈なのに体はピンピンしていて───

 

(……そうだ、オレはあの時人造人間達に敗れ死んだ筈。なら、あの世にいる筈だけど……)

 

 辺り一帯をぐるっと見回してみるが、特にあの世らしい風景は何もない。むしろ、少し古めの都市の様な生活感があった。

 てっきり血の池地獄やらが広がっているのだと思っていたが、案外あの世というのは文明的なのだろうか。それとも───

 

「キミたち」

 

 今なお戸惑い続けて、首を傾げている兄妹に悟飯は声をかけた。

 

「ここはあの世……なのか?」

 

「……はい?」

 

「……いまいちよく分からないけれど、少なくとも僕たちにとってはあの世ではないかな」

 

 さっきから困惑し続けているのにも関わらずよく分からない質問を投げかけられ、リンは少しフリーズ。かろうじて質問を飲み込んだアキラが、何とか答えを返した。

 

「……なら、オレは一体……?」

 

 自身の両腕を見ながら、悟飯は一人困惑する。そしてそんな彼を横目に、フリーズから復帰したリンはアキラの耳元に口を近づけた。

 

「ねえお兄ちゃん、あの人なんか……」

 

「ああ、随分と混乱しているようだ。強いお酒を飲み過ぎてしまったのか、もしくは何か事情があるのかもしれない」

 

「事情って……あ、なんか事件に巻き込まれたとか?」

 

「うーん……特にそんな様子はなさそうだ。顔の傷も古い物のようだし」

 

「とにかく、どうする?朱鳶さん呼んでみる?」

 

「いや、もうすぐで深夜だ。朱鳶さんは退勤してしまっているだろう」

 

「じゃあ、どうするの?」

 

「とにかく、まずは話を聞こう。あの!」

 

「ん?」

 

 己の両腕から顔を上げた悟飯に対し、アキラは左に向かって指を指した。

 

「もう時間も遅いし、とりあえず店の中で話さないかい?」

 

「えっ?い、いいのかい?」

 

「むしろ、こんな夜中に一人で置いて行くわけにも行かないだろう?ただ…その前に名前を聞いてもいいかな」

 

「あっ、そういえば名乗っていなかったね」

 

 うっかりしていたとでも言うように悟飯は笑い、二人の方に向き直った。

 

「オレは孫悟飯。まあ、好きに呼んでくれ」

 

 


 

 

「ふむ……つまりあなたは『人造人間』と呼ばれる存在に殺された筈なのに、目が覚めたらここにいたと」

 

 興味一割、疑念九割と言った顔でアキラが悟飯の話をまとめ、悟飯もそれに頷く。

 

「そうなんだ。オレにもよく分からないんだけど……というか、この世界には人造人間達はいないのか?」

 

「うーん……まあ、いるにはいるんだけど、悟飯さんが言うような酷い奴らじゃないよ」

 

「そうなのかい?」

 

「うーんと……あ、これでいいかな」

 

 リンは手慣れた様子でスマホを弄ると、ある写真を表示して悟飯に見せた。そこに写っていたのは、白髪の長身……ロボット?だった。疑問形なのは、そのロボットがまるでスライムのような柔軟なポーズを取っていたからである。

 

「私の友達で『ビリー』って言うんだけどね。『知能構造体』って言って、お兄さんの言う『人造人間』と似たような感じなんだ」

 

「知能、構造体……」

 

「彼らは『論理コア』と言うのを持っていてね。自分で考えて、自分で行動出来るんだ。ただ……悟飯さんの言うような、街を破壊するような思想や力を持った者の話は聞いたこともないし、見たこともないかな」

 

「……そうか、それは良かった」

 

 心底安心したのか、悟飯の顔に笑みが溢れる。その様子を見ていた兄妹は顔を見合わせ、複雑そうな表情を浮かべていた。

 

 というのも。

 実のところ、アキラとリンは悟飯の話をあまり信じていなかった。彼らは職業柄、多くの人と関わる機会があるのだが……中には妄想を繰り広げている者もいて、対応に困ったこともある。

 それ故、悟飯も同じようなタイプなのだと思っていたのだが……彼の話には妙な臨場感と一貫性が伴っていた。まるで実在する異国の話を聞いているような、そんな気分になってしまう。

 加えて、彼の表情。笑顔や悲哀、憤怒……それら全てが、リアリティのある自然な物だったのだ。

 故に、アキラとリンは悟飯の話を妄想と受け取るべきなのか、それとも奇妙な真実と受け取るべきか分からず戸惑っていたのだ。

 

(目が覚めたら別の世界だった、というのは映画では良くあるけれど……この人の場合、映画の見過ぎという訳でも無いようだし)

 

(でも、本当に別の世界から来たんだったら、何でそんなことになっちゃったんだろ……?)

 

「……?」

 

 店内にじわじわと奇妙な空気が広がりつつあった頃。

 アキラとリンのスマホから、唐突に通知音が鳴った。

 

「ん?……お兄ちゃん、これ」

 

「……ふむ」

 

「何か、あったのかい?」

 

「どうやら、また新しい共生ホロウが出来たらしい」

 

「ほろう?」

 

「ああ、そういえばホロウについての説明がまだだったね。ホロウというのは災害の一種のことなんだ」

 

「災害……」

 

「大抵の場合いきなり現れるんだけど、その中に長くいた生き物や機械はエーテルっていう物質に侵蝕されて、最終的にエーテリアスって化け物になっちゃうの」

 

「何だって……大変じゃないか」

 

「ああ、大変さ。一度エーテリアスになってしまえば、もう二度と元には戻れないからね……ただまあ、今回の共生ホロウはこの無人地帯に出来たそうだから、大した被害は出ないとは思う」

 

「……………」

 

「けどお兄ちゃん、これ結構規模大きそうだよ」

 

「ふむ……確かに、これだと鎮圧するのには時間がかかりそうだ」

 

「……その鎮圧というのは、どうやるんだ?」

 

「ん?ああ……ホロウは中にいるエーテリアス達を一掃することで規模を縮小させることが出来るんだよ。場合によっては消滅させられるけど、今回は中々大きいから、消滅させるには時間がかかるだろうね」

 

「……そうか。教えてくれてありがとう、世話になったよ」

 

 悟飯はフッと笑って立ち上がると、店のドアを開けて外へと歩いて行った。

 

「悟飯さん?」

 

「ちょ、ちょっと?どこ行くの?」

 

 いきなりの退店に驚いたリンとアキラは慌てて彼の後を追い、店の外へと飛び出す。そして、上空を見つめる悟飯を呼び止めた。

 

「悟飯さん、いったい何を……」

 

「アキラ、そのホロウというのは中にいる化け物達を倒せば消滅するんだな?」

 

「それは、そうだけど……まさか悟飯さん、ホロウに入ろうとしているのか?」

 

「それはダメだよ!ただでさえ危ないし、それにホロウの中は迷路みたいになってて複雑なの!中で迷っちゃったら、最悪外に出れなくなっちゃうかも……」

 

「心配してくれてありがとう。だけど、こういう時ただじっとしていることはオレには出来ないんだ」

 

「けど……」

 

「大丈夫、ちょっと見に行くだけだから。中に入るつもりはないよ」

 

「見に行くって……そもそもどうやって?歩いて行くには遠いけど……」

 

「問題ないさ、オレは空を飛べるんだ。こんな風に……」

 

 悟飯は体に気を纏わせ、軽くジャンプすると……なんと、彼の全身が空中に留まった。

 

「え……えぇ!?」

 

「これは……驚いたな」

 

「それじゃあ、二人とも。この恩は何処かで返すよ」

 

 悟飯はそう言って微笑むと、顔を引き締め……とんでもないスピードで空へと飛び出して行った。

 

「…………お兄ちゃん、これ夢?」

 

「……そうだったら良かったんだけれどね……」

 

 そして、置いて行かれたアキラたちは。

 ただ、点となった悟飯の姿を目で追う事しか出来なかった。

 

 


 

 

 突如として無人地帯に現れた共生ホロウ。

 本来ならばエーテリアスの鳴き声が響いているはずだったが、今宵はそれらとは全く違う力強い声が響き渡っていた。

 

「はっ!!」

 

 声の主は、悟飯。

 群がる大量のエーテリアスを前に気を解放し、鬼神の如き無双を続けていた。

 

「うおぉりゃあ!!」

 

 飛びかかってきたエーテリアスの足を掴み、遠くに向かって投げ飛ばす。そしてすかさず背後のエーテリアスに肘を突き刺して牽制し、裏拳で頭部を破壊した。

 

「むっ!!」

 

 まだまだ大量のエーテリアスが向かってくることに気づくと、悟飯は一瞬にして天高く飛び上がり、頭上で手のひらを重ね。

 

「魔閃光ーーーー!!!!」

 

 叫びと共に、エーテリアスに魔閃光を浴びせた。巨大な爆発と共にその一切合切が塵すら残さず消え去ったことを確認すると、悟飯はすぐさま別の場所へと飛び立つ。

 

 やがて新たなエーテリアスの群れを見つけると、すぐさま降下し一掃。再び飛び上がる……これを何度も、何度も繰り返す。

 

「だだだだっ……!!」

 

 また、その獅子奮迅の活躍からは想像もつかないことではあるが……実は、悟飯は通常時に比べ遥かに弱体化していた。驚くべき事に、現在の彼の戦闘力は本来の力の1%にすら満たない。

 

 故にこのエーテリアス掃討、本来なら適当に気弾を撃つだけで良かったのだが……わざわざ近付き肉弾戦を仕掛けなければならなくなってしまっているのだ。

 

「フンッ!!」

 

 ……もっとも、その弱体化があったとしても悟飯の戦闘力は常軌を逸しているのだが。

 

「まだまだ!!でりゃあ!!」

 

………

……

 

 悟飯が共生ホロウの中に入ってから、約八分。

 内部のエーテリアスはほぼほぼ消滅し、共生ホロウは縮小し始めていた。

 

「ふぅ……」

 

 あらかた仕留め終わった悟飯は息を吐き、目の前で消滅していくエーテリアスの群れ達の亡骸に目を向けた。

 

(この化け物たちは皆元々……)

 

 頭の中に、リンとアキラの言葉が響き渡る。

 エーテリアスは元々機械や生物であり、それがエーテルという物質に侵蝕されこうなったのだとか。

 きっと目の前で消えて行く彼らも、元々はこの無人の街で静かに、そして健気に生きていたのだろう。しかし、ホロウに飲み込まれてしまい、このような醜い姿になってしまった。

 

「………………」

 

 悟飯は合掌する。

 彼が何を思っているのかは分からない。けれど少なくとも、先ほどの掃討は彼にとっての弔いでもあったのだろう。

 

 数十秒間の黙祷の後、やがて悟飯は顔を上げ……そして、振り返った。遠くの方から地響きと共にやってくる『何か』の方に。

 

「……まだ、残っていたのか」

 

 それは、恐らくはエーテリアス。しかしながら、常識外れの巨体と二対の腕、そして怪獣のような凶暴な頭部と尻尾が、他のエーテリアスとの格の違いを表していた。

 

「………………」

 

 悟飯は向き直り、無言で構えを取ると……地面を吹き飛ばしながら、そのエーテリアスに突っ込んだ。

 

「おりゃああッ!!!」

 

 勢いを乗せた渾身のストレートを以て、怪獣エーテリアスの頭部を思い切り殴り飛ばす。その余りの威力に、怪獣エーテリアスはバランスを崩すが……それだけだった。

 

「むっ!!」

 

 お返しとばかりに振り抜かれた尻尾を、悟飯は全身で受け止める。凄まじい衝撃に、彼は眉間に皺を寄せた。

 

「ぐぐぐぐっ……はぁぁぁぁぁっ!!」

 

 受け止めた尻尾を両腕で抱え、背後へと全力で体を捻る。

 

『──────────!!!!』

 

 怪獣エーテリアスは自らに備わった巨大な両足と剛腕で悟飯の力に耐えようとするも、数秒と持たずに全身が宙に浮いた。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!」

 

 悟飯が体を回転させる事に、怪獣エーテリアスもその勢いのまま空を回る。この大回転による強風が辺りの廃墟に吹き荒れ、やがて崩れて行く。

 そして、12回転目で悟飯は思い切り上空へと投げ飛ばした。怪獣エーテリアスは一刻も早く着地しようと全身でもがくが、空中ではその立派な肉体も何ら役に立たないようであった。

 悟飯はそれを見上げながら全身に気を込め始め……やがて沸き立つように気が立ち上り、髪が逆立つ。

 

「ぐぐっ、ぐぐぐ……うおあああああ!!」

 

 その叫びと共に、黄金の嵐がホロウ中に吹き荒れた。すでに崩れた廃墟が塵となり、わずかに残っていたエーテリアスもその気に押しつぶされた。

 

 彼は、ついに変身した。金色に輝く髪と、翡翠色の瞳、荒ぶる気……そう、穏やかな心を持ちながら激しい怒りに目覚めたサイヤ人だけがなれる、伝説の姿。

 

 『スーパーサイヤ人』に。

 

「…………」

 

 上昇を終え、こちらに落ちてくる怪獣エーテリアスに狙いを定めながら悟飯は構えた。かつて彼の父やその師匠が使った、気を一点に集めて増幅させる技。いわゆる『切り札』の一つである、あの技を。

 

「か……め……は……め……!!」

 

 激しい自由落下の最中、怪獣エーテリアスは小さな脅威を仕留めようと口を開く。化け物の持つエーテル、その全てが口内に集中、凝縮された。

 

『──────────!!!!』

 

 そして、放射。どんな兵器や装備であろうと焼き尽くす必殺の熱線が、悟飯に向けて放たれた。

 

「……波ァァァァァァァァ!!」

 

 しかし、悟飯のかめはめ波は……その必殺の熱線も、怪獣エーテリアスも飲み込み、天高く立ち上る。そして、遂には……

 

 雷鳴にも似た爆音と共に、共生ホロウすらをも突き破ったのだった。

 

 


 

 

『続いてのニュースです。先日の夜に発生してから僅か十数分で消滅した共生ホロウですが、ホロウ調査局の調査により、消滅は自然的なものではなく人為的な鎮圧が原因である事が判明しました。調査局は今回の事案について「強力な兵器を用いた組織的な鎮圧は現場の状況から考えにくく、個人の、それも『虚狩り』級の戦力を持った者による武力的鎮圧である可能性が高い」と公式に発表し、また一部ではすでにこの鎮圧を行なった者を特定すべく───』

 

「……なんか、凄いことになっちゃったね」

 

「……そうだね」

 

 テレビに映るニュースを見ながら、リンとアキラはしみじみとした声を漏らしていた。

 

「まさか、共生ホロウ発生の通知の十数分後に共生ホロウ鎮圧の通知を見ることになるとは……」

 

「あの後雅さんと瞬光、それと師匠に確認してみたけど、皆やったのは自分じゃないって」

 

「だろうね。というか、多分……」

 

「うん、多分あの人だよね」

 

 巷ではあることないこと言われている『鎮圧を行なった人間』について、二人は何となく察しがついていた。多分、それは……

 

「すみませーん!!」

 

「あっ、お客さんだ!私先に出てくるね!」

 

「ああ、頼んだよ」

 

 丁度いいタイミングで店先に客が来たらしい。

 リンは嬉しそうな笑顔で出ていき、アキラも外に出ようと手に持ったコップを置こうとしたところで。

 

「あれ!?悟飯さん!?」

 

「……なんだって?」

 

 思わず、そんな声が漏れた。

 アキラも慌てて部屋の外に出ると、そこには昨夜より少し服の汚れている悟飯が立っていた。

 

「やあ、おはよう」

 

「あ、ああ、おはよう……じゃなくて、悟飯さん。どうしてここに……」

 

「ほら、昨日言っただろう?恩を返すって。だからお店の手伝いをしに来たんだけど……」

 

「まあ、確かにそう言っていたけれど……いくら何でも早くないかな」

 

「そうかな?『善は急げ』って言うだろ?」

 

「っていうか、そんなこと今はいいの!悟飯さん!!」

 

 急速に詰め寄るリンに対し、悟飯は何歩か後ずさるが……やがて壁際に追い込まれ、苦笑いを浮かべた。

 

「ど、どうしたの……?」

 

「昨日の共生ホロウの話!あれ鎮圧したの、悟飯さんだよね!!??」

 

「え?い、いやぁ……何のことかな……」

 

「とぼけても無駄だよ!どう考えても悟飯さんとしか思えないもん!!」

 

「僕もリンの意見に賛成だ」

 

「ア、アキラまで……」

 

「とにかく!昨日何をしてたのか、ラーメン屋でじっくり聞かせてもらうからね……!!」

 

「ら、ラーメン屋!?…………お、お手柔らかに……」

 

 そうして、共生ホロウを鎮圧した英雄である孫悟飯は、力無く頭を掻きながらリンとアキラにチョップ大将のラーメン屋まで連行されたのだった。


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