(三星高校地区大会優勝、長野
わたしは棚に飾られている表彰状やトロフィーを改めてみる。写真にはわたしには存在しない記憶ながらわたしの姿が笑顔で写っていた。……ではここにいるわたしは何者なの?本当にわたしは森井夕菜?
「せんせー、次の局始まるスよ!」
「次はわたしが親番ですね。」
「……僕は……逃げる立場ですね……。頑張ります。」
東2局 親番:大代瑠美
持ち点
山田
大代
長野
瑠美 配牌:壱九①② ⑥145 6778 8發 ドラ:壱
(
9巡後
瑠美 手牌:壱壱①⑤ ⑥456 7788 9 ツモ牌:9
(①
瑠美 打牌:①
(
「今度こそ
山田星菜:打牌:⑧
「じゃあ、わたしも
大代瑠美:ツモ切りした北で追っかけ
「……よかった、予想通り大代さん張ってた。…………安牌沢山残しておいて助かった。」
「瑠美の〝じゃあ
山田星菜:打牌:④
「ロン。
「えええぇぇぇぇぇ!まだ東2局なのにうちのトビ!?」
「瑠美さん。今のリーチのタイミングだけれど、相手を土俵に上げての勝負を狙ったの?」
「そうですね、それもありますが、星菜ちゃんからリーチ棒が出てきたじゃないですか。もしわたしが倍満をツモ上がれば星菜ちゃんの残り点数は6000点。これでわたしは次局満貫に仕上がらなくても親の3翻8000点の一本場ツモ、4000は5000オールで残り1000点、星菜ちゃんは
(かわいい笑顔でえげつない事考えるわね、この子。)
「それで星菜ちゃんはどんな形から
「外れた宝くじの番号に興味はないッス。」パタン
山田星菜 最終形:九九九 ②②② 白白白 111 ⑦⑦ 99
「ツモり四暗刻!?」
「これは……元々白・三暗刻の⑥・⑨
「でも負けは負けッスよちっくしょ~~~!」
(星菜ちゃん、前局といい誤手は打っていない。どちらかというと勝負手が来ない限りダマにできる我慢強さがある。今回は運が悪かったけれど、見た目に似合わず結構ガードが固い子なのかもしれないわね。)
集計
山田
大代
長野
「ああ、もう!ありえない!次は絶対トップとってやるから!東1局で終わらせてやる!」
「
そして次局が始まり、先ほどの打撃戦が嘘のような穏やかな展開が続いた。
南3局 オーラス 親番:山田星菜
持ち点
山田
大代
長野
山田星菜 手牌:②②②③ ③④④⑦ ⑦⑧⑧⑧ ⑨ ツモ牌:⑨
(良い待ちね。
※大車輪:
山田星菜 打牌:②
次巡:山田星菜 ツモ牌:6
(親の役満を張っているのに手変わり……。確かに心花君が
長野
(見事なビタ止めね。普通の打ち手なら
次巡 山田星菜 ツモ牌:7
「
打牌:⑨
最終形:②②③③④④ ⑦⑧⑧⑧⑨ 67 (5・8
(心花君が染め手だったとしても5・8
長野
「……ツモ。えっと……自摸・混一色・白・ドラ1(6翻 跳満)。4000・8000です。」
「ねえええええぇぇぇぇぇぇえええええ!なんでぇええ!!!」
「首切られちゃった。やっぱり二人とも染め手だったんですね。もう安牌が無くてどうしようかと思ってました。」
(最善を尽くしたからといって最善の結果にならないのが麻雀。これほど努力が人を裏切るゲームも無いわね。本当に理不尽。)
集計
山田
大代
長野
「ゲーム終了ね。トップは心花君だけれど、星菜ちゃんも打ち筋に計画性の見える素晴らしいものだったわ。……そう言えば大会が近いという話をしていたけれど、ごめんなさい。何の大会だったかしら?」
「え……先生……覚えてくれていないのですか。昨日弱音を吐く僕を慰めてくれたのに……。」
「マジせんせーおかしいよ?頭でも打った?」
「長野先輩がBリーグを一位通過したから、Aリーグでの順位争い初戦が一月後。そして学校対抗の桜花杯まであと3週間じゃないですか。」
「そう……だったわね。」
「先生だって学生時代Sリーグの上位まで勝ち上がってドラフト指名されたじゃないですか。」
「せんせー確か最盛期の年俸8000万だったッスよね?」
(え?マジ?学校出たらすぐに残高確認しなきゃ。)
「僕小さなころから先生の……いえ……森井夕菜のファンでした。ぼ、僕も……先生のいた世界に連れて行ってください。」
「もちろんうちも!」
「わたしも是非!」
わたしは三者三葉の眩い瞳に囲まれて、動揺すると同時にかつてない自尊心が胸に去来した。自分がどんな神の悪戯に巻き込まれたのかはわからない。それでも自分が自分を信じられないような胡乱な日々が音を立てて崩れ落ちた。この世界のことはまだわからない。それでもここで言うべきは一言だろう。
「ええ!わたしに任せなさい!」