まもなく三十路の実力派女流雀士のわたし。なぜか異世界で3人麻雀部の顧問をすることになった件 作:セパさん
《配信まってたーーー!》
《まって心花君の対面にいるの神城凛じゃない?最近Bリーグで無双しているデジタルクイーン》
《もう一人は昨日ボロ負けしてた子?大代ちゃんだっけ》
《数合わせかな。》
「皆様ごきげんよう、私立白鳳学園麻雀部主将、
「えっと……あの……よろしくお願いいたします。同じBリーグだけれども、そういえば神城さんとは打ったことないなぁと思って配信になりました。」
《待ってましたーーー!!》
《うおおお急に始まったぞ!?》
《神城凛キターーー!Bリーグのデジタルクイーンが三星高校の部室にいるのガチで草》
《対面の心花きゅん、マイペースすぎて草。噛み殺されそうだぞ》
《大代ちゃんカメラマンに徹してて草》
「……ふん。Bリーグで名前だけは聞いたことがあるけれど、まさか本人がこんな底辺の巣窟で飼い犬をやっているとはね。まあいいわ。あなたたちのその『運頼みのイロモノ麻雀』が、私の計算し尽くされたロジックの前でどれだけ無様に散るか、その目に焼き付けてあげる」
神城凛は優雅な仕草で席につき、鮮やかな手つきで自らの持ち点を整える。その表情には、微塵の隙も疑いもない。完全無欠の『計算された麻雀』を信奉する者特有の冷徹な自信が漂っていた。
対する心花は、トロンとした目を細め、どこか楽しそうに手牌をかき混ぜる。
「ふふっ……計算通り、かぁ。そういう硬い頭の人ってね、全部自分の想定外のことが起きたときに、すごく可愛い顔をして絶望してくれるから……僕、大好きなんだよね」
「口だけは達者ね。東一局、親番は私よ。後悔しても遅いんだからね」
ガチャリ、と自動卓が牌をせり上げる。配信のコメント欄が、一瞬にして数千件の弾幕で埋め尽くされた。
《バチバチすぎて草》
《デジタルクイーン vs 狂人部長、開幕!!!!》
《これもうプロの公式戦より見応えあるだろ……》
《心花きゅん、今日も暴れてくれ頼むwww》
(……さて。神城凛のロジック麻雀と、心花君の狂気。どちらがこの卓を制すかしらね。)
親番:神城 凛 配牌 一南南西 ②③④ ④⑥⑦ 1134 抜きドラ:なし
第一打:一
《悪くはないけれど終盤キツイな》
《
《ドラがないから火力が低い》
(……東一局、配牌は悪くないわね。無駄な運頼みに頼らなくても、確率と効率の計算通りに打てば、あなたのようなイロモノなんて数巡で沈められるわ)
神城凛は冷ややかな笑みを浮かべ、最初のツモに手を伸ばす。
神城 ツモ牌:⑤
《お、いきなりターツ延びた》
《流石デジタルクイーン、無駄のない一打》
対する心花は、手牌をパラパラと整えながら、とろけるような笑みを崩さない。
「ふふっ……そうやって確率通りに綺麗な道ばかり歩いているとね、足元に仕掛けられた落とし穴に気づけなくて、落ちたときにすごく面白い声が出るんだよね。」
「……口の減らない子ね。」
バチバチと火花が散る空気の中、東一局の序盤戦が静かに、しかし確実に牙を剥き始めていく――。
神城:7巡目手牌: ②③④ ⑤⑤⑥⑦ ⑧11 345 ツモ牌:①
《おお一気通貫ついた!》
《これは文句なく
神城: ①②③④ ⑤⑥⑦⑧ 11 345 打牌:⑤
「
「ロン。
心花 手牌: ①① ⑦⑦ ⑧⑧ ⑨⑨ 66 77 ⑤ 待ち:⑤
「っ……!」
(
神城凛の優雅な仮面に、初めて明確なひび割れが入った。確率とロジックを信奉する彼女にとって、相手の変則的な手作りや、あえての一巡遅らせた待ち取りは、最も理解不能で、かつ最も嫌悪する「不確定要素の暴力」に他ならない。
配信のコメント欄は、一瞬の静寂ののち、凄まじい勢いの弾幕で爆発した。
《は???》
《マジで一局目から心花きゅん直撃させたぞwww》
《デジタルクイーンのロジック、狂人の罠に一発で粉砕されてて草》
《これがお前らの言う「運頼みのイロモノ麻雀」の破壊力だあああああ!》
カメラの背後で、夕菜はふっと口元を緩め、内心で小さくうなずいた。
(一盃口・平和系をあえて崩し、ドラを抱え込んだチートイツへの変化待ち。確率論だけでは測れない、相手の裏をかく『執念の麻雀』……。神城の計算を、心花の狂気が完全に上回ったわね)
「……たまたまよ。そんな泥臭い偶然が、何度もあると思わないことね。次局、その傲慢な鼻を完全にへし折ってあげるから!」
震える指先を必死に隠しながら、神城は次の局の牌を力強く手元に引き寄せた。
東2局、早々に一度目の親番を落としてしまった神城だが、デジタルと狂気のぶつかり合いは、まだ始まったばかりだった――。神城凛はフッと鼻を鳴らし、乱れた呼吸を無理やり整えると、東二局の配牌を冷徹な視線で見据えた。
東二局。親番は、大代瑠美。
先ほどの一撃で完全にプライドを傷つけられた神城にとって、ここは是が非でも取り返さなければならない正念場だ。
「神城さん、普段のルールなら親番の人の手牌を見せるように撮影するのだけれど、今回はあなたにカメラを固定してもいいかしら?」
「ええ、望むところよ。」
(確率的にも、二連続であんな変則的なアガリが通るわけがない。次こそは、私の完璧なロジックでこの狂人を完膚なきまでに沈めてあげる……っ!)
神城 一九九① ②③③③ 3578 8 ドラ:⑥
《デジタルクイーン、静かなる怒りを感じる》
《心花きゅん、次もハメれるか!?》
《大代ちゃんの親番だから、瑠美ちゃんもそろそろ見せ場作りたいところだな》
カメラの背後で見守る夕菜は、神城のわずかに強ばった手つきと、対照的にどこか蕩けたような微笑みを浮かべる心花の横顔を交互に眺めながら、腕を組んだ。
(神城のロジックは確かに美しい。けれど、麻雀というゲームは、時にその美しい理屈ごとすべてを押し流す『狂気』が勝つ。――さあ、二局目はどう転がるかしらね)
静まり返った部室のなかに、タンッと牌を打つ音が響き渡り、二度目の嵐が静かに幕を開けた――。
3巡目
「
大代瑠美 打:④
《親の3巡目
《オリられるか?》
《どのみちツモちゃいそうだな。》
神城 手牌:九九① ②③③③ 3457 88 ツモ牌:九
(8の
神城 打牌:九
《追っかけないのか。》
《まぁ妥当だね。》
《自分にドラがない=相手がたくさん持ってる確率が高いってことだからな》
4巡目 心花:打⑥
《危険牌しか打ってねぇwww》
《この子は何がしたいんですか?》
《というか神城さん7
(くっ、手が進まない。このままだとツモられる。それにしてあの狂人は何を考えてあんな暴牌の連打を……)
「ツモ。
大代瑠美 最終形:壱壱 ⑤⑥⑦ 234 567 北北 ツモ牌:北 ドラ4
大代瑠美は静かに手牌を倒す。
親の3巡目リーチのプレッシャーを完璧にモノにし、綺麗な高速ツモアガリを決めてみせた。
《瑠美ちゃんナイス親番!》
《デジタルクイーン、完全に沈黙してて草》
《心花きゅんの危険牌暴投はなんだったんだ?w》
カメラの背後で、夕菜はフッと小さく笑みをこぼした。
(神城は「確率とロジック」に縛られるあまり、目先の安全牌選びに終始して親の先制パンチに屈した。一方の大代さんは自分の親番できっちり出和了も狙える好形リーチを実らせたわね。さて……では、あの無茶苦茶な捨て牌を続けていた心花君は、いったい何を企んでいるのかしら?)
心花 手牌 東東東 西西西 135 中中 白白
(うへぇ、混一色のイーシャンテン。しかも三暗刻やチャンタも狙える。)
《これは押してもしょうがない。》
《おれでも押すわ》
《配牌に愛されてるな。》
配信のコメント欄は、心花の狂気的な手作りの意図を理解し始め、もはやお祭りのような熱狂に包まれていた。
神城は、震える指先を隠すように両手を組み、心花を睨みつける。
「なによ……さっきから、わざと危険な牌ばかり切って……。あなた、何を狙っているの……っ!」
「んー? さぁ、何だろうね?」
心花はクスクスと笑いながら、妖しく光る瞳を神城へと向けた。
バチバチと火花を散らす中、東二局・一本場へと突入する自動卓の音が、まるで次なる惨劇を告げる鐘のように部室の空気を震わせた――。
神城凛 14000点(チップ△4)
大代瑠美 53000点(チップ+4)
長野心花 39000点(チップ±0)