日本で一番、月に近い場所   作:五宝合体竹取ロボ

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学パロ?です。

エイプリルフールなので番外編。


【蛇足】エイプリルフール・都立武蔵川高校の転校生

☽000☾

 

 

 今日は4月1日、2年生の1学期の始まりの日だ。

 始業式の前の朝会までの空いた時間に、今年も同じクラスになれた真実と芦花と雑談をしていた。

 

 「ねえ、彩葉聞いた?」

 「ん? 何が?」

 

 芦花が唐突に聞いてくるが、そんな誰もが知る大ニュースみたいに聞かれても心当たりがない。

 

 「ウチのクラス転校生が来るんだってー」

 「えっ、ホント?」

 「ほら、そこー」

 

 真美が指で示した先の私の隣席には空の机があり、黒板に張り出された座席表を目を細めて見ても空欄だった。

 

 「へー、女子かな? 男子かな?」

 「男子じゃない? 彩葉の隣だし」

 「まあ、そっか」

 

 芦花の言うとおり、(女子の列)の隣だし、男子か。

 にしても公立とはいえ、2年のこの時期にめずらしい。

 

 「あそうだ、今年は2年は1日目から進路希望取るんだって」

 「えー、早すぎない?」

 「ねー、私、前のテスト壊滅的だったんですけどー」

 「真実はそろそろ勉強したら?」

 「3年から本気だーす!」

 「もうノート貸さないよー?」

 「私は借りまーす」

 「えー、そんなー……」

 

 進路希望かぁ……。

 お父さんは、彩葉は才能あるし音楽系でもいいんじゃない? とか気軽に言ってくれてるけど、お母さんからは仕送り代わりに東大文科の赤本がどっさり届くあたり、期待されてると思いたい。

 お兄ちゃんも成績良かったけど、なんか今プロゲーマーとかやってるし、その分を背負わされてる気分だ。

 

 そんなことを考えてると、先生が入って来たので、真実と芦花は自分の席に戻った。

 担任は……お、アタリだ。

 

 可愛がってもらってる月見先輩からは、古文の先生は優しいし進路相談も親身に乗ってくれる当たりとあらかじめ教えてもらってたのだ。

 にしても、ドンピシャで当てるとは、未来でも見えてるのではないかとたまに思う。

 

 「はい、皆さん席に着きましたねー、朝会の前に転校生を紹介します、入ってきてー」

 

 先生の呼びかけで入ってきたのは、予想に反して女子生徒だった。

 私たちと同じ白地に水色のセーラーに身を包んだ彼女は、キメッキメの金のロングを風で靡かせて教室に入って来た。

 

 「えっ、金髪?」

 

 思わず声が出てしまい、転校生の目線がこちらを向く。

 すると、流星を二つ押し込めたような輝く大きな目を、さらに大きく強調するようにしばらく見開き、その後に、いたずらそうに笑った。

 

 ヤバ、不良に目を付けられたかも。

 

 この学校、公立とはいえ、そこそこ偏差値も高いし金髪はあんまり見ない人種だ。

 おしゃれさんの芦花や真実も、カラー入りのシャンプーでうっすら色を付けているが、そんな大っぴらに髪を染めている人は見たことがない。

 

 まあ、地毛がまさかの銀髪(白髪ではないらしい)の月見先輩は例外ということで。

 

 「えっとねー、この髪は地毛なんだー、なんか、おばあちゃんが金髪だったらしくてさー、隔世遺伝? みたいなヤツ?」

 

 私だけではなくクラス全体が疑問を顔に浮かべていたのか、自己紹介の前に転校生から髪色の説明があった。

 天真爛漫といった感じの話し方は真実にも似てて、良い子そうだった。

 なぜか疑問形だったけど。

 

 私の危惧は杞憂に終わって胸を撫でおろしていると、転校生が黒板に大きく名前を書いていた。

 

 「はい! 竹取かぐやっていうの! かぐやって呼んでね! よろしくぅ!」

 「はい、じゃあ竹取さんはそこの空いてる席に座ってください、わからないことがあったら……酒寄さん、案内をお願いします」

 「あっ、はい」

 

 唐突な先生からの指名につい反射的に答えてしまった。

 え、転校生のお世話係に任命された?

 

 まぁ、慣れるまでの1か月ぐらいの話だろし、別にいいか。

 

 「酒寄さん? よろしくね!」

 「彩葉でいいよ、わたしもかぐやって呼ぶし」

 「じゃあ、よろしく彩葉!」

 

 こそこそとホームルームの最中に自己紹介を交わし合う、ちらっと先生と視線が合うけど何も言ってこないあたり織り込み済みなのかもしれない。

 

 「じゃあ、これでホームルームを終わります、予鈴が鳴ったら廊下に並んでください」

 「はーい」

 

 ちょうどホームルームも終わったようだった。

 

 「ね! 彩葉! 放課後ヒマ?」

 「今日? 予定は……、特にないけど?」

 「よっしゃ! かぐやさー、東京来たばっかでぜんぜんわかんないんだよねー、いっしょ遊びいかない?」

 

 すさまじい距離の詰め方だ、すごい陽キャ。

 

 「あー……、じゃあ、他に友達2人呼んでもいい?」

 「おっけおっけ、さっそく友達4人かくほー♪」

 

 私はともかく、まだ話してすらいない芦花と真実まで友達カウントをしている……。

 隣から感じるすさまじい陽キャ力に圧倒されながら予定を抑えられてしまった、あとで芦花と真実に弁明せねば。

 

 「お、チャイム鳴った」

 「じゃあ、行きますか」

 「れっつごー!」

 「なにそれ」

 「えへへー」

 

 

☽001☾

 

 

 そんなこんなで放課後になった。

 お昼を持ってこなかったかぐやを売店に案内したりとか細々なことはあったが、まあいつもどおりの学校だった。

 

 「芦花と、こっちが真実」

 「美少女転校生ともう仲良くなるとは彩葉も油断ならないねー、よろしくー」

 「よしなにー」

 「よろしく! かぐやって呼んで!」

 

 クラスメイト達が思い思いに帰っていく教室の中で二人に引き合わせる。

 元気いっぱいのかぐやに二人とも好感を持ってくれたようで、胸を撫でおろす。

 いや、私も今日初対面なんだけどね?

 

 あと、油断ならないってなんだ。

 

 「で、どこ遊び行く?」

 「んー、東京見物ついでっていうならカラオケはパスだし……」

 「あ! じゃあ私あそこ行きたい! 新しく出来たかっふぇ~」

 「カフェ? そんなのあったっけ?」

 「ふっふっふ、インスタでさ~~―――」

 

 真美が、見つけたカフェの情報を提示しようと、何やらスマホを操作しだすと、教室の入り口から銀の髪が空を舞った。

 

 「いーろは! ヒマ!?」

 「お、月見先輩だ、こんにちはー」

 「モテモテだねー、彩葉」

 「そんなんじゃないって……、先輩どうしたんです?」

 「ヤチヨでいいって彩葉、ね? ヤチヨって呼んでみて! いち、にの、はい!」

 「や、ヤチヨ先輩……」

 「良く出来ました!」

 

 3年の月見ヤチヨ先輩はその美貌や、それに鼻をかけない気安い態度のおかげか、この学校のマドンナだ、あと生徒会長。

 どうやら読モもやってるらしいが、いつ撮影してるのかもわからないぐらい、放課後はあちらこちらで相談に乗っていて、そのおかげか、いつも人の輪の中心にいる。

 私も相談に乗ってもらったし……。

 

 そんな人気者ではあるが、なんか妙に気に入られたらしく、ちょくちょく私に絡みに来てくれる。

 マジ眼福。

 

 「ねー、ヤチヨ先輩、これから4人でパンケーキ食べるんですけど、いきません? ね! かぐやちゃんもいいでしょー?」

 「んお? ぜんぜんおっけ! かぐやはかぐやっていうの! かぐやって呼んで!」

 「よろしくーかぐや! ヤチヨはヤチヨっていうんだー、じゃあお言葉にあまえちゃおっかなー」

 「おっすヤチヨ! よろしく!」

 

 真美がヤチヨ先輩を誘うついでに水を向けられたかぐやは爆速で距離を詰めて、なんと一緒にカフェに行くという事になった。

 

 あと、敬語とか使いな?

 

「れっちごー!」

「おー!」

 

 グルメの炎を宿した真実の号令に、かぐやが真似して腕を突き上げ、そのまま二人して出て行ってしまった。

 

 えっ、ちょっと、私たちまだ場所知らないんだけど。

 

 「ほら、彩葉、置いていかれちゃうよー?」

 「ほらほら、レッツゴー!」

 「あっ、ちょっと待って!」

 

 

☽002☾

 

 

 真美の先導でやってきたのは、立川の複合施設。

 いやここ、大体のお店めっちゃ高かったような……?

 

 「いや私、今月ちょっと厳しいんだけど……」

 「そなこといわずにー、ほらほらー」

 「後生ですから~~」

 「うお、めっちゃうまそう! えと」

 「5人でお願いしまーす」

 

 貧乏女子高生の願いむなしく店の中に連行されてしまった。

 

 無理言って一人暮らしさせてもらってる手前、仕送りの額もギリギリといった感じで、遊んでしまえばすぐに底をつく。

 お父さんもいうてはるし、生活費くらいは出したげるけど、遊びたかったら自分で働きなはれとは、お母さんの言。

 大変おっしゃるとおりであったため、勉学の合間を縫って、ここではないけどカフェでバイトをしている。

 何気にお嬢様の真実の食道楽に付き合うと、あっという間に嵩が減る財布に戦々恐々の日々だ。

 

 各々の注文が終わり、机の上に並べられたのは映えの権化というべきクリーム山盛りのふわふわパンケーキたち。

 ヤチヨ先輩はノリに乗らずプリンアラモードだったけども、たしか好物なんだっけ?

 

 「いただきま―――」

 「なにこれ! うっま!」

 

 はやっ。

 この金髪転校生パンケーキ1段を一口で行ったぞ。

 

 がっつく大食いファイターを視界から外して、ナイフの必要があるのか疑問に思うほどのふわふわのスフレの塊を小分けにして口に運ぶ。

 噛む必要のないほどの舌で潰れる柔らかさと、暴力的な生クリームの甘味に思わず頬がとろける。

 

 「うまっ」

 「んー、プリンもおいしー、あそうだ、彩葉も一口食べるかい?」

 「エッ」

 「ほら、あーん」

 「アッ、えと……は、はい」

 

 唐突に差し出されたヤチヨ先輩のひと匙をおっかなびっくり食べる。

 もうなんかいっぱいいっぱいで味がしないんだが!

 

 「おー、情熱てきー」

 「む、ほら彩葉、私のも、あーん」

 

 なんだか口笛を吹きそうな顔してる真実と、自分も差し出してきた芦花。

 なんだか餌付けされてる気分だ。

 お、芦花のチョコの奴もおいしい。

 

 「むー、彩葉ばっかりずるい! かぐやもちょうだい! ほら彩葉! あーん」

 「いや、あんたの私のと一緒でしょ……」

 「あーん!」

 「はいはい」

 

 よくわからない嫉妬をして雛鳥のように口を開け続けるかぐやに、パンケーキのひとかけを差し出すと、そのままパクリと食べて、おいしそうに目を細めた。

 確かにちょっと楽しい、ヤチヨ先輩と芦花の気持ちが分かった、あと動物園の飼育員の。

 

 「ふふっ」

 「あ、そういえば、ヤチヨ先輩はアラモード好きなんですか?」

 「そうだよー、白くてぷりんとしてて可愛いと思うんだよねー、ウミウシみたいで」

 「ウミウシ……?」

 

 可愛いからって食べる人初めて見た。

 あと、ウミウシって可愛いか……?

 

 「あ! かぐやもウミウシ好き! でもやっぱ一番は蟹かなー」

 「えー、ウミウシの方が可愛くない? ほら! このゴマフビロードってやつがさー」

 「お! 可愛いー、でもやっぱだららら蟹! おいしいし!」

 「ウミウシは食べられないしねー、負けちゃうかー」

 

 広がるんだその海洋トーク。

 てか、『可愛い』なのか? 『おいしい』なのか? 好きってどっち……?

 

 なんだか二人で盛り上がってるのを微笑ましく見ていると、隣の芦花が話しかけてきた。

 

 「ねー、彩葉ー、進路決めたー? やっぱ音楽系?」

 「進路?」

 「ほら今日、配られてたじゃん、進路希望表」

 「あー」

 

 そういやそんなのあったっけ。

 

 「んー、迷い中、音楽はお父さんは才能あるとか言ってくれるんだけど身内贔屓入ってそうだし、お母さんからはドサドサ赤本送られてくるし、しかも東大」

 「えー、お母さん厳しー、獅子は谷に子を落とすってやつ?」

 「私なんかでろでろに甘やかされてるからなー」

 「いやー、私も甘やかされてるよ、一人暮らし許してもらったし」

 

 4人の弟妹を養いながら京大を出て弁護士になったお母さんと比べると、環境は雲泥の差だろう、……実際、実家戻るとそのことをチクっと言われるし。

 

 まあでも、やりたいことも特にあるわけでもないし。

 

 「未来かー、わっかんないや」

 「わたしもー」

 「ま、提出期限まで一週間あるし、迷えよ若人みたいな?」

 「えー、芦花なにそれ」

 「テレビのまねっこー」

 「あー、私も見たー、それー」

 

 芦花の小ボケに2人でクスクス笑っていると、海洋対決はかぐやの勝利に終わったらしく、うなだれるヤチヨ先輩とガッツポーズをとるかぐやが目に入った。

 

 何をもって勝ちだったんだろう……。

 

 

☽003☾

 

 

 その後、帰路に就く3人を駅で見送って、方向が一緒らしいかぐやと連れ立って夕日に照らされた立川を歩く。

 

 「んー! マジ楽しかった!」

 「えー、普通じゃない?」

 「そなことないよー、前のところは超ーつまんなかったの」

 

 前、つまり転校前の学校の話。

 そういえば、何でこんな中途半端な時期に転校してきたか聞いてなかった。

 

 「そういえば、何で転校してきたの? 聞いていい感じ?」

 「別にいいよー、うーん……、なんかこう、お嬢様学校? みたいなやつでさ~~、とにかく、毎日超つまんなくて~、もうヤダ、どっか行きたーい! って思って、あ! じゃあ、転校しちゃおって」

 「すげー」

 

 色々な意味ですごい、それで公立に来ることも。

 あと、説明が軽すぎて、全然目的が伝わってこないのもすごい、情報量0だ。

 

 「じゃあ今は?」

 「めっちゃ楽しい!」

 「それはようございました~」

 

 芦花も真実も追加で来たヤチヨ先輩も楽しそうだったし、誘われた甲斐はあった。

 

 「ね! 明日も遊び行こ!」

 「明日はバイトだからむりー」

 「えー!」

 

 調子に乗ったかぐやにおかわりを要求されたが、さすがに連日は無理だ、バイトあるし。

 

 「やだー! かぐやと遊んで~~?」

 「はぁ、バイトが空いてる時ならね」

 「ホント!? やった!」

 

 ぴょんぴょん喜ぶかぐやの跳ねる金髪を呆れたように見つめる。

 あれ? そういえばこいつどこまで付いてくるんだ?

 

 「そういえば、かぐや、家は?」

 「ん? もうすぐだよー」

 「へー、割と近所なんだね」

 

 珍しいこともあるもんだなどと思いながら歩くと、私のIRアパートに着いてしまった。

 

 「じゃ、ここ私の家だから、また明日」

 「ここ、かぐやの家だよ?」

 「え?」

 「ん?」

 

 あーもしかして! なんて言いながらかぐやが私を追い越して外階段を軽やかに登っていく。

 え、私の部屋も2階なんだけど。

 

 訝しがりながら慎重に2階に登ると、ちょうど空室のはずの隣の扉が開いていた。

 

 ―――まさか……。

 

 「お! あった!」

 

 隣の開いた扉からは、先ほどいやというほど聞いた明るい声がしていた。

 

 半分現実逃避で、自室の扉の鍵を開けると、かぐやが何やら贈答用の箱を持って廊下に出てきた。

 

 「やっぱお隣さんだ! はい! お蕎麦! 今後ともよろしくー!」

 「あっ、どうも、今後とも……」

 「じゃ! また明日学校でね!」

 「あ、うん、また明日」

 

 差し出された箱を機械的に受け取って、部屋に帰ってくかぐやを呆然と見送った。

 

 えーっと、金髪美少女が急に転校してきて?

 そんで隣に住んで?

 で妙に懐かれて?

 

 うーん……、それって……。

 

 「漫画かよ!」

 

 私の心からの叫びは、立川の夕日に溶けていった。

 




エイプリルフールといえば学パロですよね!

ちょっとお話に詰まってたので、息抜きに、別の短編を仕上げてました!
更新遅くなってすみません!

ちなみに、あと5話ぐらいはプロットが有るのでエタりません! 遅筆なだけです!

息抜き短編は、お暇だったらどうぞ。

かぐやが初星学園に入学する話 『なよ竹の一番星』
https://syosetu.org/novel/407046/

学マス×超かぐや姫クロスオーバーです。
ちょっと状況説明多くて最初の20%ぐらいはしんどいかもですけど、その分ハッピーエンドがおいしくなるように書いたので是非最後までお読みください!

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