日常のホロライブSS(一話完結の短編集)   作:Sano / セイノ

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兎田ぺこらが古道具屋で目利きをして騙される話、そんなホロメンたちの日常の一コマ。楽しんでいただければ幸いです。



兎田ぺこらの目利き勝負

巨大な黒山羊の化け物にぺこらんどのニンジン農場を荒らされ、兎田ぺこらは頭を抱えていた。

幸い化け物は隣国へと去ったが、人類を兎化して世界を侵略するための特別製ニンジン、その収穫直前に起こった災厄は農場のニンジンを台無しにしたのである。

 

 

はっきり言って財政難……

そんな兎の少女は安易な一儲けを企んで、古道具屋に掘り出し物を漁りに来たのである。

どんなに落ちぶれてもぺこらんどの姫、彼女は目利きには自信があった。

 

 

骨董品の花瓶を手に取ったぺこらは、今一つの品に眉根を寄せる。店の品揃えがあまりによろしくない、むしろガラクタだらけと言ってよい。店主の力量を鼻で笑うしかないが、こういう店に限ってどこかに逸品が隠れていたりするのである。そう思えばこそ、彼女は目を皿のようにして商品をチェックしていった。

 

 

(ッく~~、全然ないぺこ!!)

 

 

時間を掛けて丁寧に物色するもその甲斐なく、ぺこらは大きく息を吐きながら肩を落とした。

空振りかと店を後にしようとした、その時のことである。

 

 

——古道具屋の横で、仔猫が皿に盛られた餌を食べているの気づいたのである。

 

 

大きくまん丸に見開かれたぺこらの目は仔猫ではなく、その餌皿を捉えていた。

地味な見た目に反しつつも、どことなく品が良い紫檀の皿であった。

 

 

そう、ぺこらは餌皿の正体に気づいたのである。

シャ・ル・イース(アキロゼの出身世界)産のエルフの宝皿、1000ホロは下らない逸品である。

 

 

(マジぺこか⁉ きtら!!!!!)

 

 

目利きもできないここの店主はとんだお宝を、あろうことか仔猫の餌皿にしているのである。

手を叩いて歓喜の声を上げたいのをぐっと吞み込んで、ぺこらは内心ほくそ笑んだ。

 

 

(……ククク……この古道具屋はいいカモぺこ)

 

 

腹黒い笑みを浮かべる兎の少女。

彼女の頭では既に高速で算盤が弾かれ、宝皿を巻き上げる算段が出来上がっていたのである。

この皿の取引を直接持ちかけるのは悪手、わざわざ餌皿が高価であると知らせてしまうようなものである。

 

 

ぺこらは〝将を射んと欲すれば先ず猫(?)を射よ〟と断じて、猫好きを装って仔猫の横にしゃがみ込んだ。

そして仔猫の背を撫でたり、抱いたりして可愛がり、気に入ったように振る舞い始めたのである。

それには仔猫の方も、満更ではなさそうに喉をゴロゴロと鳴らす。

 

 

「あのー、すみませんぺこ!」

タイミングを見計らって、ぺこらは仔猫を抱えながら店番に呼びかけたのである。

 

 

「はぁ~い」

それに応じてやって来たのは、三角巾を目深に被った娘。その胸に『アルバイト』のバッジを認めて、ぺこらの目がすっと細まる。

 

 

(——しめたッ!!!)

 

 

「この子猫のことがとっても気に入ったので、我が家にお迎えたいんですけど。もしよかったら50ホロでもいいので、売って欲しいぺこ……」

折しも、仔猫の方も彼女の手の中で満足そうな愛くるしい鳴き声を上げる。

 

 

「はあ、それは構わないんすけど……全然特別な猫じゃありませんよ。普通の猫につける値としては高すぎるかも知れませんよ」

「いえいえ。気に入ってしまったこの仔猫は、ぺこーらにはもう特別ぺこ」

そう言ってぺこらは仔猫に頬ずりするのである。

 

 

「分かりました。そうまで言うのでしたら、50ホロでお譲りしますよ」

そう言って、店番の娘はほほ笑んだ。

 

 

——そしてついに、お金を渡した終えた兎の少女の目が光る。

 

 

「あ、そういえば猫好きの知り合いから聞いたことがあるぺこなんですけど、仔猫は食べなれたお皿じゃないとなかなかご飯を食べてくれないらしいんです。ちょっと高めの値段で仔猫を引き取りましたので、その餌皿もつけてくれないぺこですかね?」

 

 

上手く持ち掛けたものである。

皿の価値を知らない者が相手なら、ここでぺこらの都合の良いように事が運ぶに違いない。そして、その相手は異世界の宝皿を餌皿にするような店なのである。

 

 

ぺこらは必勝を確信していた。

 

 

だが、彼女の期待は裏切られることになる。

店番の娘は、〝それはダメです〟と頭を振って応じないのである。

これにはぺこらも慌てたように問い質した。

 

 

「ど、どうしてぺこです?」

「このお皿はシャ・ル・イースの王室御用達の宝皿で、今は1000ホロ以上するものだからです」

 

 

(な、なんで知っているぺこ⁉)

物の価値を全く分かっていないはずなのに、とぺこらは目を剥いてしまった。

 

 

「なんでそんな超高級なお皿を仔猫の餌皿にしているぺこか!!」

身を乗り出して吠えるぺこらに、娘は涼しい顔で笑みを深めた。

「だって、そのお皿で仔猫にご飯を上げていると、普通の仔猫が50ホロで売れちゃったりするんですから」

 

 

「なんだって~~~~~~~!?」

兎の少女の絶叫が辺りに響き渡った。

娘を罠に掛けようとして、逆にまんまと罠に嵌ったのである。

 

 

 

 *  *  *

 

 

 

猫を抱きながらも肩を怒らせて去る兎の少女の後ろ姿。

それを〝毎度あり~〟と店の娘はにこやかな笑みで見送るのだった。

 

 

アルバイトの娘、その正体は旅費が尽きた吟遊歌人、琴を片手に流浪する歌い手であった。

ここのところは古道具屋の手伝いをしており、もし猫が高値で売れたら報酬を弾むとの約束を店主から取り付けていたのである。

 

 

これでまた旅を続けられると、娘は息を吐いて頭巾の結び目を解いた。

露わにした巻き角を陽光に光らせながら、彼女はにやりと笑う。

「……わためは悪くないよねぇ」

 

 

かくして、兎田ぺこらは商品の目利きをしたものの、人物の目利きをした角巻わために一杯食わされた分けである。

 

 

 

【後日譚】

ぺこらは不本意ながら迎えた猫をごろーと名付け、本人の予想とは反し大変溺愛したのである。

そしてあろうことか猫好きを拗らせ、もう一匹の猫を迎えることにしたのであった。

 

 

 

 

 




(今回と関係する話)
姫森ルーナの怪物退治 https://syosetu.org/novel/401404/11.html
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