緋に染まる天空   作:暁 蒼空

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第23話:時の狭間、繋がる想い

 世界が反転した。

 マグノリアの荒野も、空も、大地も消え失せた。

 そこは、無重力の空間。

 七色の結晶が不規則に浮かび、過去と未来が混濁する「時の狭間」。

「う……ここ、どこだ……?」

 ナツが目を覚ます。

 体が軽い。いや、重さがない。

 周囲を見渡すと、ガジル、ウェンディ、スティング、ローグ、ラクサス、コブラも同じように漂っていた。

「……時の狭間だ」

 冷徹な声が響く。

 空間の歪みから、人の姿をしたアクノロギアが現れた。

 アースランド(現実世界)には肉体である竜を残し、ここでは精神体として君臨しているのだ。

「貴様らの肉体は向こうにある。……ここは精神だけの世界。魔力の源(エーテルナノ)も存在しない、完全なる無だ」

 アクノロギアが手を振るう。

 それだけで、強烈な圧力が7人を襲った。

「ぐわぁぁぁぁっ!?」

「ちっ……! 魔力が……練れねえ!」

 ラクサスが焦る。

 魔導士にとって、魔力のない空間は酸素のない水中と同じ。

 呼吸ができず、力が入らない。

「終わりだ、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)。……時の中に溶けて消えろ」

 アクノロギアが笑う。

 7人の体が透け始め、結晶化していく。

 存在そのものが「時」に飲み込まれようとしていた。

 だが。

「……消させません」

 透き通りかけた腕で、ウェンディが杖を握りしめた。

 彼女の体だけは、淡い緋色の光に包まれていた。

「ウェンディ……?」

 ナツが目を見開く。

「ここは『時』の世界。……マザーが教えてくれました。時とは流れであり、位置であり、概念であると」

 ウェンディの瞳が輝く。

「付加術(エンチャント)とは、世界に新たな概念を付け加えること。……魔力がないなら、私が作ります! 私たちの『絆』を魔力に変えて!」

 ウェンディが杖を掲げる。

 アイリーンから受け継いだ膨大な知識。それは単なる攻撃魔法ではなく、世界の理(ルール)に干渉する賢竜の叡智。

「『高位付加(ハイ・エンチャント)・七竜連鎖(セブン・ドラゴン・リンク)』!!」

 カッッッ!!!! 

 緋色の光が弾けた。

 その光はナツたち6人を結び、一つの巨大な魔法陣を描き出した。

 消えかけていた身体が実体を取り戻し、失われたはずの魔力が──いや、それ以上に熱い「想いの力」が全身に漲る。

「力が……戻ってきた!」

 スティングが拳を握る。

「いや、前よりすげえぞ! これは……!」

 ガジルがニヤリと笑う。

「みんなの心を繋げました!」

 ウェンディが叫ぶ。

「ナツさんの炎、ガジルさんの鉄、私の風……全部を共有して、増幅させています! これなら……!」

「……小賢しい真似を!」

 アクノロギアが激昂する。

 想定外だ。

 時の狭間でさえも、アイリーンの魔術とウェンディの意志が凌駕したのだ。

「行くぞお前ら!!」

 ナツが先陣を切る。

「おう!!」

 7人の滅竜魔導士が同時に突っ込む。

 ナツの炎にラクサスの雷が纏い、ガジルの鉄にコブラの毒が乗る。

 スティングとローグの光と影が、ウェンディの風に乗って加速する。

 ドゴォォォォォォォォォォォッ!!!!! 

 7人の連携攻撃が、アクノロギアを吹き飛ばした。

「ぐぅぅッ……!?」

 無敵の竜王が、時の結晶に叩きつけられる。

 一方、アースランド(現実世界)。

 マグノリア上空では、精神を切り離されたアクノロギアの肉体(ドラゴン)が暴走していた。

 理性なき破壊の化身。

 街を、海を、全てを破壊し尽くそうとしていた。

「くっ……! ナツたちが戻るまで、何としても持ちこたえろ!」

 エルザが叫ぶ。

 グレイ、ルーシィ、ジュビア、ミラジェーン……残された魔導士たちが総力戦を挑む。

 目的は一つ。

 暴走する竜を、「妖精の球(フェアリー・スフィア)」に閉じ込めること。

「信じるのよ! ナツたちを!」

 ルーシィが魔力を振り絞る。

「あいつらは必ず勝つ! 私たちは私たちの戦いをするの!」

 地上の願いと、時の狭間の戦い。

 二つの世界がリンクし、物語は最終局面へ。

 時の狭間。

 吹き飛ばされたアクノロギアが、怒りの形相で立ち上がる。

「認めぬ……! 我は竜の王! 全てを破壊する者!」

 彼の魔力が膨れ上がる。

 時の狭間そのものを食らい尽くし、世界を崩壊させるほどの力。

「ナツさん!」

 ウェンディが叫ぶ。

「もう維持できません! ……みんなの力を、一つに!」

「ああ! わかってる!」

 ナツが右腕を掲げる。

 ガジル、ウェンディ、スティング、ローグ、ラクサス、コブラ。

 6人の魔力が、想いが、全てナツへと託される。

 七色の炎が燃え上がる。

 これが最後の魔法。これが狩人の答え。

「アクノロギアァァァァァッ!!!」

「来いィィィィィッ! 滅竜魔導士ィィィッ!!!」

 終焉と希望が激突する。




次回、「第24話:七炎竜の鉄拳、緋色の空へ」
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