世界に拒まれた青年は、静かな場所で生き直す   作:肩幅ひろし

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第10話:黒白の魔法使い、静かな神社に乱入す

 朝の博麗神社。

湊は棒を握り、霊夢の指示に従って構えの練習をしていた。

 

「湊、もっと腰を落として。

そう、重心を下げるの」

 

 霊夢の声はいつも通り落ち着いていて、湊の緊張をほどいていく。

 

 そのとき――

 

 ドォンッ!

 

 境内の空気が爆ぜるような音が響いた。

 

 湊は驚いて振り返る。

 

「な、なんですか今の……!」

 

 霊夢はため息をつき、鳥居のほうを睨む。

 

「……来たわね」

 

 次の瞬間、黒い影が空から落ちてきた。

 

「よっ、霊夢! 遊びに来たぜ!」

 

 霧雨魔理沙が、箒に乗ったまま勢いよく着地した。

 

 湊は呆然とする。

 

 霊夢は眉をひそめる。

 

「遊びじゃないわよ。今は湊の修行中」

 

 魔理沙は湊を見て、にやりと笑った。

 

「おっ、こいつが噂の外来人か。

へぇ、思ったより根性ありそうじゃん」

 

 湊は戸惑いながら頭を下げる。

 

「さ、佐伯湊です……よろしくお願いします」

 

 魔理沙は湊の肩をバンバン叩く。

 

「よろしくな! あたしは霧雨魔理沙。

霊夢の相棒で、幻想郷一の魔法使いだ!」

 

 霊夢が冷たく言う。

 

「自称ね」

 

「おい霊夢、そこは乗ってくれよ!」

 

 

 

 

 魔理沙は湊の棒を見て、興味津々で近づく。

 

「へぇ、棒術か。

でもそれだけじゃ妖怪相手には心もとないぜ?」

 

 湊は不安そうに霊夢を見る。

 

 霊夢は肩をすくめる。

 

「魔理沙。湊はまだ基礎の基礎なの。

いきなり変なこと教えないで」

 

「変なこととは失礼な!

あたしは“実戦的なコツ”を教えてやろうってんだよ」

 

 魔理沙は湊の前に立ち、指をさす。

 

「湊! 妖怪相手に必要なのはな――

勢いと度胸だ!

 

 霊夢が即座にツッコむ。

 

「それはあなた限定の話よ」

 

 魔理沙は気にせず続ける。

 

「湊、構えろ!」

 

 湊は慌てて棒を構える。

 

 魔理沙はニヤリと笑い、突然湊に向かって飛び込んだ。

 

「うわっ!? ま、魔理沙さん!?」

 

「ほらほら、考えるな! 動け!」

 

 湊は反射的に横へ飛び、魔理沙の突進を避ける。

 

 霊夢が驚いたように目を見開く。

 

「……湊、今の動き、悪くないわ」

 

 湊は息を切らしながら答える。

 

「ま、魔理沙さんが急に来るから……!」

 

 魔理沙は笑いながら指を立てる。

 

「それだよ!

妖怪は“急に来る”んだ。

霊夢の修行は丁寧だけど、実戦はもっと雑で、もっと速い!」

 

 霊夢はむっとする。

 

「雑って言わないで」

 

 

 

 

 魔理沙は湊に向かって手招きする。

 

「湊、次はお前から来い!」

 

「えっ、僕から……?」

 

「そうだ。

守るだけじゃ霊夢を守れないぜ?」

 

 湊の胸が強く脈打つ。

 

――霊夢さんを守りたい。

 

 その思いが、湊の足を前へ押し出した。

 

 湊は棒を握り、魔理沙に向かって踏み込む。

 

 魔理沙は軽くかわすが、湊の動きに目を細める。

 

「おっ、いいじゃん!

さっきよりずっと速い!」

 

 霊夢も湊の動きを見て、静かに頷く。

 

「湊……本当に成長してる」

 

 湊は息を切らしながらも、魔理沙に向かってもう一度踏み込む。

 

 魔理沙は笑いながら受け流す。

 

「いいねぇ!

その調子で霊夢を守れるくらい強くなれよ!」

 

 湊は顔を赤くしながら答える。

 

「な、なります……!」

 

 霊夢は少しだけ頬を染め、視線を逸らした。

 

「……魔理沙、余計なこと言わないで」

 

 

 

 

 休憩中、魔理沙は湊の隣に座り、肩を叩く。

 

「湊。

お前、思ってたよりずっと根性あるぜ」

 

 湊は照れくさそうに笑う。

 

「ありがとうございます……

でも、まだ全然弱いです」

 

 魔理沙は空を見上げて言う。

 

「弱くていいんだよ。

大事なのは“守りたいものがあるかどうか”だ」

 

 湊は霊夢を見る。

 

 霊夢は湊の視線に気づき、少しだけ微笑んだ。

 

 魔理沙はその様子を見て、にやりと笑う。

 

「おーおー、いい雰囲気じゃんか」

 

 霊夢が顔を赤くする。

 

「魔理沙、黙りなさい」

 

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