外の世界で居場所を失い、心の境界が崩れかけていた青年・佐伯湊。
論理で世界を測ろうとするほど、世界のほうが彼を拒むように歪んでいく。
生きる理由を見失い、ただ夜の街を彷徨っていた湊の前に現れたのは、境界を操る妖怪・八雲紫だった。

「あなた、今の世界に絶望しているでしょう」

紫の手に導かれ、湊は“幻想郷”へと落ちていく。
そこは、忘れられたもの、こぼれ落ちたものが静かに息づく世界。

目を覚ました湊を迎えたのは、博麗神社の巫女・博麗霊夢。
淡々としていながらも、必要以上に踏み込まず、しかし確かに温かい。
彼女の神社で過ごす日々は、湊の心に少しずつ風を通し、固く閉ざされた思考の迷路に光を落としていく。

掃除をし、お茶を飲み、風の音を聞く。
そんなささやかな時間の積み重ねが、湊の“生き直し”を静かに始めさせる。

しかし幻想郷は、優しさだけでできた世界ではない。
妖怪との遭遇、紫の意味深な言葉、そして湊自身の心に残る深い傷。
それらが彼に問いかける。

――あなたは、どこで生きたいのか。
――そして、誰と生きたいのか。

絶望の底から連れてこられた青年が、
静かな場所で、もう一度自分の形を取り戻していく物語。

これは、壊れた心がゆっくりと芽吹いていく“再生の幻想譚”。

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