魔理沙が去ったあと、博麗神社には再び静けさが戻っていた。
夕暮れの光が縁側を照らし、湊は棒を抱えたまま息を整えている。
霊夢は湊の様子をしばらく見つめ、ふっと微笑んだ。
「湊。
今日は……よく頑張ったわね」
湊は顔を赤くしながら答える。
「い、いえ……魔理沙さんが急に来たから、必死で……」
霊夢は首を横に振る。
「違うわ。
あなた、自分から“攻め”に行った。
あれは……あなた自身の意思よ」
湊の胸が熱くなる。
霊夢は縁側に座り、湊に手招きした。
「こっちに来て。
話したいことがあるの」
湊は緊張しながら霊夢の隣に座る。
◆
霊夢は湊の手元の棒を見つめ、静かに言った。
「湊。
あなたに……もっと深い修行をしてほしいの」
湊は驚いて霊夢を見る。
「もっと……深い修行……?」
霊夢は頷く。
「あなたはもう、ただ守られるだけの存在じゃない。
今日の動きを見て、確信したの。
あなたは……強くなれる」
湊の胸が震える。
霊夢は続ける。
「でもね、深い修行は……身体だけじゃなくて、心にも負担がかかる。
だから、無理にとは言わないわ」
湊は迷わず答えた。
「やります。
霊夢さんの力になりたいから」
霊夢は一瞬だけ目を見開き、そして静かに微笑んだ。
「……ありがとう。
そう言ってくれるの、嬉しいわ」
◆
霊夢は湊の手をそっと取った。
湊は驚いて固まる。
「れ、霊夢さん……?」
霊夢は湊の手を軽く握り、目を閉じる。
「湊。
あなたの“気”を感じたいの。
深い修行をするには、あなたの内側を知らないといけないから」
湊の心臓が跳ねる。
霊夢の手は温かく、しかし不思議な静けさを持っていた。
霊夢は湊の手を包み込むように握り、ゆっくりと息を吸う。
「……あなたの気は、すごく繊細。
でも、芯がある。
折れそうで折れない……そんな感じ」
湊は照れくさくて、視線を逸らす。
「そ、そんな……大したものじゃ……」
霊夢は首を振る。
「大したものよ。
あなたの気は、私が今まで見てきた外来人の中で一番“澄んでる”」
湊の胸が熱くなる。
◆
霊夢は手を離し、湊の目を見つめる。
「湊。
これからあなたに教えるのは――
“気配を読む”だけじゃなくて、“気を流す”修行」
湊は息を呑む。
霊夢は続ける。
「妖怪はね、気の流れを乱してくる。
だから、自分の気を整えられないと、すぐに飲まれてしまうの」
湊は真剣に頷く。
「僕……やります。
霊夢さんの隣に立てるように」
霊夢は少しだけ頬を染め、視線を逸らした。
「……そんなこと言われたら、期待しちゃうじゃない」
湊は慌てる。
「えっ、あ、あの……!」
霊夢は笑った。
「冗談よ。
でも……本当に、あなたと一緒に戦える日が来たら嬉しいわ」
湊の胸が熱くなる。
◆
その夜、湊は眠れずに縁側へ出た。
すると、霊夢が同じように外を見ていた。
「湊。
今日のあなた……本当に良かったわ」
湊は照れながら答える。
「霊夢さんが……教えてくれたからです」
霊夢は湊の横に座り、静かに言った。
「これからも……一緒に頑張りましょう」
湊は深く頷いた。
「はい。
霊夢さんと一緒に……強くなります」
霊夢は湊の肩にそっと手を置いた。
その温度は、湊の心に深く染み込んだ。