世界に拒まれた青年は、静かな場所で生き直す   作:肩幅ひろし

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第14話:気の流れは、二人の心を静かに結ぶ

 影の妖怪が消えた翌朝。

博麗神社の空気は、いつもより澄んでいるようで、どこか張りつめていた。

 

 湊は縁側に座り、昨夜の紫の言葉を思い返していた。

 

――影は、あなたの心の形。

――あなたの心を守りなさい。

 

 胸の奥がざわつく。

 

 そのとき、霊夢が湯呑を二つ持って縁側に現れた。

 

「湊。

今日は……いつもより深い修行をするわ」

 

 湊は顔を上げる。

 

「深い……修行……?」

 

 霊夢は湊の隣に座り、湯呑を渡した。

 

「ええ。

あなたの“気”を整えるだけじゃなくて……

“心の揺れ”を鎮める修行よ」

 

 湊は息を呑む。

 

 霊夢は湊の横顔を見つめ、静かに続けた。

 

「紫の言葉……気にしてるでしょう?」

 

 湊は視線を落とす。

 

「……はい。

影が……僕の心に反応してるって……」

 

 霊夢は湊の手にそっと触れた。

 

「だからこそ、あなたの心を守る修行が必要なの。

湊。

あなたは一人で抱え込まなくていい」

 

 湊の胸が熱くなる。

 

 

 

◆

 

 霊夢は湊を境内の中央へ連れていく。

 

「湊。

今日は“気を合わせる”修行をするわ」

 

 湊は首をかしげる。

 

「気を……合わせる?」

 

 霊夢は湊の正面に立ち、両手を差し出した。

 

「私の手に、あなたの手を重ねて。

気を流し合うの」

 

 湊は戸惑いながらも、霊夢の手に自分の手を重ねた。

 

 霊夢の手は温かく、静かで、どこか安心する。

 

「湊。

目を閉じて。

私の気の流れを感じて」

 

 湊は目を閉じ、霊夢の手の温度に意識を向ける。

 

 すると――

霊夢の気が、湊の手から腕へ、胸へとゆっくり流れ込んでくるような感覚がした。

 

 柔らかく、穏やかで、揺れない気。

 

 湊は思わず息を呑む。

 

「……霊夢さんの気……すごく、静かで……」

 

 霊夢は微笑む。

 

「あなたの気も、すごく澄んでるわ。

ただ……少しだけ揺れてる」

 

 湊は胸に手を当てる。

 

「……影のせい、ですか」

 

霊夢は首を横に振る。

 

「違うわ。

揺れてるのは……あなたが“誰かを守りたい”と思ってるから」

 

 湊は驚いて目を開ける。

 

 霊夢は湊の手を握ったまま、静かに言った。

 

「湊。

あなたの心は弱くなんかない。

揺れるのは……優しさがあるからよ」

 

湊の胸が熱くなる。

 

 

 

◆

 

 霊夢は湊の手を離さず、さらに一歩近づく。

 

「湊。

今度は……あなたの気を私に流して」

 

 湊は緊張しながらも、霊夢に意識を向ける。

 

 胸の奥にある“気”を、そっと霊夢へ向ける。

 

 霊夢は目を閉じ、湊の気を受け取る。

 

「……優しい気ね。

でも……奥に、深い孤独がある」

 

 湊は息を呑む。

 

 霊夢は湊の手を包み込み、静かに言った。

 

「湊。

あなたはもう一人じゃない。

私がいる。

あなたの心の揺れは……私が受け止める」

 

 湊の目に涙が滲む。

 

「霊夢さん……

僕……あなたに救われてばかりで……」

 

 霊夢は首を振る。

 

「救ってるんじゃないわ。

あなたが……私のそばにいてくれるだけで、私は十分よ」

 

 湊は言葉を失う。

 

 霊夢は湊の胸にそっと手を当てた。

 

「湊。

あなたの心は、もう影に飲まれたりしない。

私が……守るから」

 

 湊は震える声で答える。

 

「僕も……霊夢さんを守ります。

あなたの隣に立てるように」

 

 霊夢は微笑み、湊の手を強く握った。

 

「ええ。

一緒に、前へ進みましょう」

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