世界に拒まれた青年は、静かな場所で生き直す   作:肩幅ひろし

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第14話:気の流れは、二人の心を静かに結ぶ

 影の妖怪が消えた翌朝。

博麗神社の空気は、いつもより澄んでいるようで、どこか張りつめていた。

 

 湊は縁側に座り、昨夜の紫の言葉を思い返していた。

 

――影は、あなたの心の形。

――あなたの心を守りなさい。

 

 胸の奥がざわつく。

 

 そのとき、霊夢が湯呑を二つ持って縁側に現れた。

 

「湊。

今日は……いつもより深い修行をするわ」

 

 湊は顔を上げる。

 

「深い……修行……?」

 

 霊夢は湊の隣に座り、湯呑を渡した。

 

「ええ。

あなたの“気”を整えるだけじゃなくて……

“心の揺れ”を鎮める修行よ」

 

 湊は息を呑む。

 

 霊夢は湊の横顔を見つめ、静かに続けた。

 

「紫の言葉……気にしてるでしょう?」

 

 湊は視線を落とす。

 

「……はい。

影が……僕の心に反応してるって……」

 

 霊夢は湊の手にそっと触れた。

 

「だからこそ、あなたの心を守る修行が必要なの。

湊。

あなたは一人で抱え込まなくていい」

 

 湊の胸が熱くなる。

 

 

 

 

 霊夢は湊を境内の中央へ連れていく。

 

「湊。

今日は“気を合わせる”修行をするわ」

 

 湊は首をかしげる。

 

「気を……合わせる?」

 

 霊夢は湊の正面に立ち、両手を差し出した。

 

「私の手に、あなたの手を重ねて。

気を流し合うの」

 

 湊は戸惑いながらも、霊夢の手に自分の手を重ねた。

 

 霊夢の手は温かく、静かで、どこか安心する。

 

「湊。

目を閉じて。

私の気の流れを感じて」

 

 湊は目を閉じ、霊夢の手の温度に意識を向ける。

 

 すると――

霊夢の気が、湊の手から腕へ、胸へとゆっくり流れ込んでくるような感覚がした。

 

 柔らかく、穏やかで、揺れない気。

 

 湊は思わず息を呑む。

 

「……霊夢さんの気……すごく、静かで……」

 

 霊夢は微笑む。

 

「あなたの気も、すごく澄んでるわ。

ただ……少しだけ揺れてる」

 

 湊は胸に手を当てる。

 

「……影のせい、ですか」

 

霊夢は首を横に振る。

 

「違うわ。

揺れてるのは……あなたが“誰かを守りたい”と思ってるから」

 

 湊は驚いて目を開ける。

 

 霊夢は湊の手を握ったまま、静かに言った。

 

「湊。

あなたの心は弱くなんかない。

揺れるのは……優しさがあるからよ」

 

湊の胸が熱くなる。

 

 

 

 

 霊夢は湊の手を離さず、さらに一歩近づく。

 

「湊。

今度は……あなたの気を私に流して」

 

 湊は緊張しながらも、霊夢に意識を向ける。

 

 胸の奥にある“気”を、そっと霊夢へ向ける。

 

 霊夢は目を閉じ、湊の気を受け取る。

 

「……優しい気ね。

でも……奥に、深い孤独がある」

 

 湊は息を呑む。

 

 霊夢は湊の手を包み込み、静かに言った。

 

「湊。

あなたはもう一人じゃない。

私がいる。

あなたの心の揺れは……私が受け止める」

 

 湊の目に涙が滲む。

 

「霊夢さん……

僕……あなたに救われてばかりで……」

 

 霊夢は首を振る。

 

「救ってるんじゃないわ。

あなたが……私のそばにいてくれるだけで、私は十分よ」

 

 湊は言葉を失う。

 

 霊夢は湊の胸にそっと手を当てた。

 

「湊。

あなたの心は、もう影に飲まれたりしない。

私が……守るから」

 

 湊は震える声で答える。

 

「僕も……霊夢さんを守ります。

あなたの隣に立てるように」

 

 霊夢は微笑み、湊の手を強く握った。

 

「ええ。

一緒に、前へ進みましょう」

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