世界に拒まれた青年は、静かな場所で生き直す   作:肩幅ひろし

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第17話:心の底に沈んだ声は、青年を呼び戻す

 夜の博麗神社。

湊は境内の中央に立ち、深く息を吸った。

 

 霊夢は少し離れた場所で見守っている。

 

「湊。

今日は……あなたの“心”と向き合う修行よ」

 

 湊は頷く。

 

「……影が僕の心を映すなら、

僕が自分の心を知らないと……勝てませんよね」

 

 霊夢は静かに微笑む。

 

「ええ。

でも、無理はしないで。

あなたの心は……まだ傷ついているんだから」

 

 湊は胸に手を当て、目を閉じた。

 

――影は、僕の絶望の残滓。

 

 紫の言葉が胸に刺さる。

 

 霊夢の声が、湊の意識を支えるように響いた。

 

「湊。

私がここにいる。

だから……安心して」

 

 湊は深く頷き、心の奥へと沈んでいった。

 

 

 

 

 気が沈むと同時に、景色が変わった。

 

 灰色の空。

音のない街。

人影はあるのに、誰も湊を見ない。

 

――ここは、外の世界。

 

 湊は震える声で呟く。

 

「……僕の……記憶……」

 

 足元には、濡れたアスファルト。

雨の匂い。

そして――

 

 ひとりの青年が、うずくまっていた

 

 湊自身だ。

 

 過去の湊は、顔を伏せ、震えている。

 

「……もう、無理だ……

誰も……僕を見てくれない……」

 

 湊は息を呑む。

 

――これは、僕が最後に外の世界で感じていた絶望。

 

 影が湊の心を模倣した理由が、痛いほど分かる。

 

 

 

 

 湊はゆっくりと過去の自分に近づく。

 

「……僕……」

 

 過去の湊は顔を上げる。

その瞳は濁り、光を失っていた。

 

「……誰……?」

 

 湊は膝をつき、過去の自分と目を合わせる。

 

「僕だよ。

未来の……いや、今の僕」

 

 過去の湊は首を振る。

 

「……嘘だ……

僕は……もう終わったんだ……

誰にも必要とされない……

生きてる意味なんて……」

 

 湊の胸が締めつけられる。

 

「違う……違うんだ……!」

 

 湊は震える声で叫ぶ。

 

「僕は……今、誰かに必要とされてる!

霊夢さんが……僕を助けてくれた!

僕は……生きてていいって……言ってくれた!」

 

 過去の湊は目を見開く。

 

「……そんな人……いるわけ……」

 

 湊は強く頷く。

 

「いるんだよ。

僕を見捨てなかった人が……

僕の心を守ってくれる人が……!」

 

 過去の湊の瞳に、わずかに光が戻る。

 

 

 

 

 そのとき――

過去の湊の背後に、黒い影が立ち上がった。

 

 湊の形をした影。

しかし、先ほどよりも濃く、重い。

 

 影は湊の声で囁く。

 

「……守れない……

どうせまた……失う……」

 

 湊は震えながらも、影を睨む。

 

「違う……

僕はもう逃げない……!」

 

 影は湊の胸に手を伸ばす。

 

「……お前は弱い……

また絶望する……

また壊れる……」

 

 湊は胸に手を当て、霊夢の言葉を思い出す。

 

――あなたの心は、私が守る。

 

 湊は影に向かって叫んだ。

 

「僕は……ひとりじゃない!

霊夢さんが……僕を見てくれてる!

僕は……もう壊れない!」

 

 影が揺らぎ、形を崩し始める。

 

 

 

 

 過去の湊は震えながら、現在の湊を見つめる。

 

「……本当に……

僕は……誰かに……」

 

 湊は優しく微笑む。

 

「うん。

霊夢さんは……僕を救ってくれた。

だから……君も救われていいんだ」

 

 過去の湊は涙を流し、ゆっくりと消えていった。

 

 影も同時に霧散する。

 

 湊は静かに目を閉じた。

 

 

 

 

 湊が目を開けると、霊夢が目の前にいた。

霊夢は湊の頬に手を当て、心配そうに見つめる。

 

「湊……!

大丈夫?

急に気が乱れて……」

 

 湊は霊夢の手を握り、涙をこぼした。

 

「霊夢さん……

僕……過去の自分と……向き合えました……」

 

 霊夢は湊を抱きしめ、静かに言った。

 

「湊……よく頑張ったわ。

あなたはもう……影に飲まれたりしない」

 

 湊は霊夢の肩に顔を埋め、震える声で答える。

 

「霊夢さんが……いてくれたから……

僕は……前に進めます……」

 

 霊夢は湊の背中を優しく撫でた。

 

「ええ。

これからも一緒に進みましょう」

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