世界に拒まれた青年は、静かな場所で生き直す   作:肩幅ひろし

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第18話:影の本体は、静かに世界へ滲み出す

 夜の博麗神社。

湊は縁側で霊夢と並んで座り、静かに夜風を感じていた。

 

 霊夢は湊の手を握り、優しく言う。

 

「湊。

今日の修行……本当に頑張ったわ」

 

 湊は照れくさそうに微笑む。

 

「霊夢さんがいてくれたから……

僕、過去と向き合えました」

 

 霊夢は湊の横顔を見つめ、少しだけ頬を染める。

 

「……あなたは強いわ。

自分の心と向き合える人なんて、そういないもの」

 

 湊は胸が熱くなる。

 

――霊夢さんの言葉は、僕を前へ進ませてくれる。

 

 そのときだった。

 

 空気が、沈んだ

 

 湊は反射的に立ち上がる。

 

「……また……影の気配……?」

 

 霊夢も立ち上がり、札を構える。

 

「違う。

これは……もっと深いところから来てる」

 

 境内の空気が、黒く染まり始めた。

 

 

 

 

 鳥居の向こうの闇が、ゆっくりと揺れた。

 

 影の妖怪とは違う。

もっと重く、もっと深い。

まるで“底なしの井戸”のような気配。

 

 湊の胸が強く脈打つ。

 

「……これ……僕の……」

 

 霊夢が湊の肩を掴む。

 

「湊、落ち着いて。

これは……あなたの心の揺れじゃない」

 

 湊は驚いて霊夢を見る。

 

「じゃあ……何なんですか……?」

 

 霊夢は鳥居の向こうを睨む。

 

「“本体”よ。

影を生み出していた……本当の存在」

 

 湊の背筋が凍る。

 

 影の本体――

紫が言っていた、“心の外側に落ちた絶望の残滓”。

 

 それが、ついに姿を現そうとしている。

 

 

 

 

 鳥居の向こうの闇が、ゆっくりと形を変える。

 

 人の形ではない。

獣でもない。

ただ、黒い“深淵”が立ち上がる。

 

 その中心から――

声がした

 

 湊の声に似ている。

しかし、もっと低く、もっと冷たい。

 

「……返せ……」

 

 湊は息を呑む。

 

「……僕の……声……?」

 

 影の本体は、再び呟く。

 

「……返せ……

お前が……捨てたものを……」

 

 湊の胸が締めつけられる。

 

 霊夢が湊の前に立つ。

 

「湊、聞いちゃダメ。

あれは……あなたの“絶望”が形になったものよ」

 

 湊は震える声で答える。

 

「僕が……捨てたもの……?」

 

 影の本体は、ゆっくりと湊のほうへ伸びる。

 

「……痛み……孤独……

お前が見ないふりをした……すべて……

ここにある……」

 

 湊の心が揺れる。

 

 霊夢は湊の手を強く握る。

 

「湊。

影はあなたの心の“外側”に落ちた絶望。

でも……それはもう“あなたのもの”じゃない」

 

 影の本体が揺れ、怒りのような気配を放つ。

 

「……否定するな……

お前は……俺だ……」

 

 湊は震えながらも、影を見つめた。

 

「違う……

僕は……もう前に進んでる……

霊夢さんが……僕を救ってくれたから……!」

 

 影の本体が激しく揺れる。

 

 

 

 

 影の本体が地面に触れた瞬間――

境内全体が黒く染まった。

 

 霊夢が叫ぶ。

 

「湊、下がって!」

 

 湊は霊夢の背後に飛び退く。

 

 影の本体は、影の触手のようなものを伸ばし、霊夢に襲いかかる。

 

 霊夢は札を投げ、光の壁を作る。

 

 しかし――

影の本体は光を“飲み込んだ”。

 

 霊夢が驚愕する。

 

「……光を……吸ってる……!?」

 

 湊は震える声で叫ぶ。

 

「霊夢さん……!」

 

 影の本体は湊のほうへ向き直り、低く呟く。

 

「……お前の光を……奪う……

お前が……前へ進むほど……

俺は……消える……」

 

 湊の胸が痛む。

 

――影は、僕の絶望そのもの。

――僕が前へ進むほど、影は存在を失う。

 

 だから、湊を止めようとしている。

 

 

 

 

 霊夢は湊の手を掴み、強く言った。

 

「湊。

影の本体は……あなたの“過去の絶望”が形になったもの。

でも、それはもう“あなた”じゃない」

 

 湊は霊夢の手を握り返す。

 

「霊夢さん……僕……怖いです……

でも……逃げたくない……!」

 

 霊夢は湊の目を見つめ、静かに頷く。

 

「ええ。

あなたはもう逃げない人よ。

だから――

私が隣にいる」

 

 湊の胸に力が戻る。

 

 影の本体が再び襲いかかる。

 

 霊夢は札を構え、湊は棒を握りしめる。

 

 二人は、影の本体と向き合った

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