世界に拒まれた青年は、静かな場所で生き直す   作:肩幅ひろし

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第19話:光と影の境界で、二人はひとつの呼吸になる

 影の本体が現れた夜。

境内は黒い霧に包まれ、空気は重く沈んでいた。

 

 湊は棒を握りしめ、霊夢の背中を見つめる。

 

 霊夢は札を構え、影の本体を睨む。

 

「湊。

あれは……普通の妖怪じゃない。

私の術が吸われるなんて……初めてよ」

 

 湊は震える声で答える。

 

「霊夢さん……僕たちで……弱点を探しましょう」

 

 霊夢は湊を振り返り、静かに頷いた。

 

「ええ。

あなたとなら……できるわ」

 

 

 

◆

 

 影の本体は黒い触手を伸ばし、地面を這うように迫ってくる。

 

「……返せ……

お前が捨てた……痛みを……」

 

 湊の胸がざわつく。

 

 霊夢は湊の手を掴み、強く言った。

 

「湊、影の声に引きずられないで。

あなたの心は……私が守る」

 

 湊は深く頷き、霊夢の手を握り返す。

 

 その瞬間――

二人の“気”が重なった。

 

 霊夢の静かな気と、湊の澄んだ気が混ざり合い、境内に淡い光が広がる。

 

 

 

◆

 

 影の本体が光に反応し、形を揺らす。

 

 霊夢が気づく。

 

「湊……!

あなたの気が影を“照らしてる”!」

 

 湊は驚きながらも、影を見つめる。

 

「僕の……気が……?」

 

 影の本体は苦しむように呻く。

 

「……やめろ……

その光は……俺を……消す……」

 

 霊夢は湊の手を握ったまま、声を強める。

 

「湊!

あなたの気は“影の弱点”よ!」

 

 湊の胸が熱くなる。

 

――僕の気が……影を弱らせている。

 

 霊夢は湊の背に手を添え、気を流すように言う。

 

「湊。

私の気をあなたに重ねる。

あなたはそれを……影に向けて」

 

 湊は深呼吸し、霊夢の気を受け取る。

 

 温かく、揺れない光。

 

 湊はその光を胸に集め、影へ向けて放つ。

 

 

 

◆

 

 影の本体が悲鳴を上げ、黒い霧が裂ける。

 

 その奥に――

小さな光の欠片が見えた。

 

 湊は息を呑む。

 

「……あれ……僕の……?」

 

 霊夢が目を細める。

 

「湊。

あれは……あなたの“心の欠片”よ」

 

 影の本体は苦しみながら叫ぶ。

 

「……返せ……

それは……俺の……

俺が……抱えていた……絶望……」

 

 湊は影を見つめ、静かに言った。

 

「違う……

それは……僕の“過去”だ。

でも……もう僕のものじゃない」

 

 影の本体が激しく揺れる。

 

 霊夢は湊の肩に手を置き、強く言った。

 

「湊。

あなたが“心の欠片”を取り戻せば……

影は弱る。

それが……影の弱点よ」

 

 湊は頷き、影の本体へ一歩踏み出す。

 

 

 

◆

 

 影の本体が触手を伸ばし、湊を阻もうとする。

 

 霊夢が札を投げ、光の壁を作る。

 

「湊!

今よ!」

 

 湊は走り出し、影の中心にある光の欠片へ手を伸ばす。

 

 影の本体が叫ぶ。

 

「やめろ……!

それを取れば……俺は……消える……!」

 

 湊は震える声で答える。

 

「僕は……前へ進む。

あなたに……縛られない」

 

 湊の指先が光の欠片に触れた瞬間――

影の本体が大きく崩れた。

 

 黒い霧が吹き飛び、境内に静寂が戻る。

 

 

 

◆

 

 湊は膝をつき、光の欠片を胸に抱く。

 

 霊夢が駆け寄り、湊を支える。

 

「湊……!

大丈夫?」

 

 湊は息を整えながら頷く。

 

「霊夢さん……

僕……影の弱点を……見つけました……」

 

 霊夢は湊の手を握り、優しく微笑む。

 

「ええ。

あなたの“心の光”が……影を弱らせるの」

 

 湊は胸の光を見つめ、静かに言った。

 

「僕は……もう逃げません。

影が何であっても……

霊夢さんと一緒に……前へ進みます」

 

 霊夢は湊の肩に手を置き、そっと寄り添った。

 

「湊。

あなたはもう……影に負けないわ」

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