世界に拒まれた青年は、静かな場所で生き直す   作:肩幅ひろし

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第19話:光と影の境界で、二人はひとつの呼吸になる

 影の本体が現れた夜。

境内は黒い霧に包まれ、空気は重く沈んでいた。

 

 湊は棒を握りしめ、霊夢の背中を見つめる。

 

 霊夢は札を構え、影の本体を睨む。

 

「湊。

あれは……普通の妖怪じゃない。

私の術が吸われるなんて……初めてよ」

 

 湊は震える声で答える。

 

「霊夢さん……僕たちで……弱点を探しましょう」

 

 霊夢は湊を振り返り、静かに頷いた。

 

「ええ。

あなたとなら……できるわ」

 

 

 

 

 影の本体は黒い触手を伸ばし、地面を這うように迫ってくる。

 

「……返せ……

お前が捨てた……痛みを……」

 

 湊の胸がざわつく。

 

 霊夢は湊の手を掴み、強く言った。

 

「湊、影の声に引きずられないで。

あなたの心は……私が守る」

 

 湊は深く頷き、霊夢の手を握り返す。

 

 その瞬間――

二人の“気”が重なった。

 

 霊夢の静かな気と、湊の澄んだ気が混ざり合い、境内に淡い光が広がる。

 

 

 

 

 影の本体が光に反応し、形を揺らす。

 

 霊夢が気づく。

 

「湊……!

あなたの気が影を“照らしてる”!」

 

 湊は驚きながらも、影を見つめる。

 

「僕の……気が……?」

 

 影の本体は苦しむように呻く。

 

「……やめろ……

その光は……俺を……消す……」

 

 霊夢は湊の手を握ったまま、声を強める。

 

「湊!

あなたの気は“影の弱点”よ!」

 

 湊の胸が熱くなる。

 

――僕の気が……影を弱らせている。

 

 霊夢は湊の背に手を添え、気を流すように言う。

 

「湊。

私の気をあなたに重ねる。

あなたはそれを……影に向けて」

 

 湊は深呼吸し、霊夢の気を受け取る。

 

 温かく、揺れない光。

 

 湊はその光を胸に集め、影へ向けて放つ。

 

 

 

 

 影の本体が悲鳴を上げ、黒い霧が裂ける。

 

 その奥に――

小さな光の欠片が見えた

 

 湊は息を呑む。

 

「……あれ……僕の……?」

 

 霊夢が目を細める。

 

「湊。

あれは……あなたの“心の欠片”よ」

 

 影の本体は苦しみながら叫ぶ。

 

「……返せ……

それは……俺の……

俺が……抱えていた……絶望……」

 

 湊は影を見つめ、静かに言った。

 

「違う……

それは……僕の“過去”だ。

でも……もう僕のものじゃない」

 

 影の本体が激しく揺れる。

 

 霊夢は湊の肩に手を置き、強く言った。

 

「湊。

あなたが“心の欠片”を取り戻せば……

影は弱る。

それが……影の弱点よ」

 

 湊は頷き、影の本体へ一歩踏み出す。

 

 

 

 

 影の本体が触手を伸ばし、湊を阻もうとする。

 

 霊夢が札を投げ、光の壁を作る。

 

「湊!

今よ!」

 

 湊は走り出し、影の中心にある光の欠片へ手を伸ばす。

 

 影の本体が叫ぶ。

 

「やめろ……!

それを取れば……俺は……消える……!」

 

 湊は震える声で答える。

 

「僕は……前へ進む。

あなたに……縛られない」

 

 湊の指先が光の欠片に触れた瞬間――

影の本体が大きく崩れた。

 

 黒い霧が吹き飛び、境内に静寂が戻る。

 

 

 

 

 湊は膝をつき、光の欠片を胸に抱く。

 

 霊夢が駆け寄り、湊を支える。

 

「湊……!

大丈夫?」

 

 湊は息を整えながら頷く。

 

「霊夢さん……

僕……影の弱点を……見つけました……」

 

 霊夢は湊の手を握り、優しく微笑む。

 

「ええ。

あなたの“心の光”が……影を弱らせるの」

 

 湊は胸の光を見つめ、静かに言った。

 

「僕は……もう逃げません。

影が何であっても……

霊夢さんと一緒に……前へ進みます」

 

 霊夢は湊の肩に手を置き、そっと寄り添った。

 

「湊。

あなたはもう……影に負けないわ」

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