世界に拒まれた青年は、静かな場所で生き直す   作:肩幅ひろし

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第20話:影は形を変え、青年の光を喰らおうとする

 影の本体が崩れ、境内に静寂が戻った夜。

湊は霊夢に支えられながら、胸に抱いた“心の欠片”を見つめていた。

 

 霊夢は湊の背中を優しく撫でる。

 

「湊……よく頑張ったわ。

あなたの心を取り戻せたのは、大きな一歩よ」

 

 湊は息を整えながら頷く。

 

「霊夢さん……僕……少しだけ……軽くなった気がします」

 

 霊夢は微笑む。

 

「ええ。

あなたの心の光が戻ったのよ」

 

 その瞬間――

境内の空気が、再び沈んだ。

 

 湊は顔を上げる。

 

「……え……?」

 

 霊夢の表情が一瞬で険しくなる。

 

「湊……下がって!」

 

 

 

 

 地面に散った黒い霧が、まるで逆再生のように集まり始めた。

霧は渦を巻き、空気を震わせる。

 

 湊は震える声で呟く。

 

「……まだ……終わってない……?」

 

 霊夢は札を構え、湊の前に立つ。

 

「影の本体は……あなたの絶望の残滓。

心の欠片を取り戻しただけじゃ……消えない」

 

 黒い霧がひとつにまとまり、形を変えていく。

 

 先ほどの“人型の影”とは違う。

もっと歪で、もっと深い。

 

 まるで――

湊の心の“奥底”に沈んでいたものが、表面へ浮かび上がったような形

 

 影は低く、重く、地鳴りのような声で呟いた。

 

「……光を……返せ……

お前が……前へ進むほど……

俺は……消える……」

 

 湊の胸が強く脈打つ。

 

 

 

 

 影の本体は、先ほどよりも巨大で、輪郭が曖昧だった。

人の形を模倣していた第一形態とは違い――

 

 第二形態は、“形を持たない絶望”そのもの

 

 黒い霧が常に揺れ、中心には深い穴のような“虚”がある。

 

 霊夢が息を呑む。

 

「……これは……

湊の“心の底”にあった絶望……」

 

 湊は震える声で言う。

 

「僕の……心の底……?」

 

 影は湊の声を模倣しながら、低く囁く。

 

「……誰にも……必要とされない……

お前が……一番信じていた……絶望……」

 

 湊の膝が揺れる。

 

 霊夢は湊の手を掴み、強く言った。

 

「湊!

影の言葉に飲まれないで!」

 

 

 

 

 影の本体が触手のような霧を伸ばし、境内の灯りに触れた。

 

 次の瞬間――

灯りが吸い込まれ、消えた。

 

 湊は息を呑む。

 

「……光が……消えた……?」

 

 霊夢は顔を強張らせる。

 

「湊……気をつけて。

第二形態は“光”そのものを喰うわ」

 

 影は湊の胸の光――

取り戻した“心の欠片”に向かって伸びる。

 

「……返せ……

それは……俺の……

絶望の証……」

 

 湊は胸を押さえ、後ずさる。

 

「……僕の……光を……狙ってる……」

 

 霊夢は湊の前に立ち、札を構える。

 

「湊。

あなたの光は……影にとって“毒”なの。

だから奪おうとしている」

 

 影の本体が霊夢に向かって触手を伸ばす。

 

 霊夢は札を投げるが――

光は吸われ、術が消える。

 

 霊夢が歯を食いしばる。

 

「……術が……効かない……!」

 

 

 

 

 影の本体は湊を見つめ、低く呟く。

 

「……お前の光を……喰えば……

俺は……完全になる……」

 

 湊は震えながらも、影を睨む。

 

「……僕の光は……

あなたに渡さない……!」

 

 霊夢が湊の肩に手を置く。

 

「湊。

あなたの光だけが……影を弱らせる。

あなた自身が……戦わなきゃいけない」

 

 湊は深呼吸し、胸の光を両手で包む。

 

 影の本体が揺れ、苦しむように呻く。

 

「……やめろ……

その光は……俺を……壊す……」

 

 湊は震える声で言った。

 

「僕は……前へ進む。

あなたが何であっても……

僕の未来を奪わせない……!」

 

 影の本体が激しく揺れ、境内全体が黒く染まる。

 

 霊夢が叫ぶ。

 

「湊!

気を強く持って!

影の第二形態は……ここからが本番よ!」

 

 湊は棒を握りしめ、影の本体と向き合う。

 

 光と影の“第二ラウンド”が始まった

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