世界に拒まれた青年は、静かな場所で生き直す   作:肩幅ひろし

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第20話:影は形を変え、青年の光を喰らおうとする

 影の本体が崩れ、境内に静寂が戻った夜。

湊は霊夢に支えられながら、胸に抱いた“心の欠片”を見つめていた。

 

 霊夢は湊の背中を優しく撫でる。

 

「湊……よく頑張ったわ。

あなたの心を取り戻せたのは、大きな一歩よ」

 

 湊は息を整えながら頷く。

 

「霊夢さん……僕……少しだけ……軽くなった気がします」

 

 霊夢は微笑む。

 

「ええ。

あなたの心の光が戻ったのよ」

 

 その瞬間――

境内の空気が、再び沈んだ。

 

 湊は顔を上げる。

 

「……え……?」

 

 霊夢の表情が一瞬で険しくなる。

 

「湊……下がって!」

 

 

 

◆

 

 地面に散った黒い霧が、まるで逆再生のように集まり始めた。

霧は渦を巻き、空気を震わせる。

 

 湊は震える声で呟く。

 

「……まだ……終わってない……?」

 

 霊夢は札を構え、湊の前に立つ。

 

「影の本体は……あなたの絶望の残滓。

心の欠片を取り戻しただけじゃ……消えない」

 

 黒い霧がひとつにまとまり、形を変えていく。

 

 先ほどの“人型の影”とは違う。

もっと歪で、もっと深い。

 

 まるで――

湊の心の“奥底”に沈んでいたものが、表面へ浮かび上がったような形。

 

 影は低く、重く、地鳴りのような声で呟いた。

 

「……光を……返せ……

お前が……前へ進むほど……

俺は……消える……」

 

 湊の胸が強く脈打つ。

 

 

 

◆

 

 影の本体は、先ほどよりも巨大で、輪郭が曖昧だった。

人の形を模倣していた第一形態とは違い――

 

 第二形態は、“形を持たない絶望”そのもの。

 

 黒い霧が常に揺れ、中心には深い穴のような“虚”がある。

 

 霊夢が息を呑む。

 

「……これは……

湊の“心の底”にあった絶望……」

 

 湊は震える声で言う。

 

「僕の……心の底……?」

 

 影は湊の声を模倣しながら、低く囁く。

 

「……誰にも……必要とされない……

お前が……一番信じていた……絶望……」

 

 湊の膝が揺れる。

 

 霊夢は湊の手を掴み、強く言った。

 

「湊!

影の言葉に飲まれないで!」

 

 

 

◆

 

 影の本体が触手のような霧を伸ばし、境内の灯りに触れた。

 

 次の瞬間――

灯りが吸い込まれ、消えた。

 

 湊は息を呑む。

 

「……光が……消えた……?」

 

 霊夢は顔を強張らせる。

 

「湊……気をつけて。

第二形態は“光”そのものを喰うわ」

 

 影は湊の胸の光――

取り戻した“心の欠片”に向かって伸びる。

 

「……返せ……

それは……俺の……

絶望の証……」

 

 湊は胸を押さえ、後ずさる。

 

「……僕の……光を……狙ってる……」

 

 霊夢は湊の前に立ち、札を構える。

 

「湊。

あなたの光は……影にとって“毒”なの。

だから奪おうとしている」

 

 影の本体が霊夢に向かって触手を伸ばす。

 

 霊夢は札を投げるが――

光は吸われ、術が消える。

 

 霊夢が歯を食いしばる。

 

「……術が……効かない……!」

 

 

 

◆

 

 影の本体は湊を見つめ、低く呟く。

 

「……お前の光を……喰えば……

俺は……完全になる……」

 

 湊は震えながらも、影を睨む。

 

「……僕の光は……

あなたに渡さない……!」

 

 霊夢が湊の肩に手を置く。

 

「湊。

あなたの光だけが……影を弱らせる。

あなた自身が……戦わなきゃいけない」

 

 湊は深呼吸し、胸の光を両手で包む。

 

 影の本体が揺れ、苦しむように呻く。

 

「……やめろ……

その光は……俺を……壊す……」

 

 湊は震える声で言った。

 

「僕は……前へ進む。

あなたが何であっても……

僕の未来を奪わせない……!」

 

 影の本体が激しく揺れ、境内全体が黒く染まる。

 

 霊夢が叫ぶ。

 

「湊!

気を強く持って!

影の第二形態は……ここからが本番よ!」

 

 湊は棒を握りしめ、影の本体と向き合う。

 

 光と影の“第二ラウンド”が始まった。

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