湊と霊夢の新技『光祓』が影の本体を切り裂いた夜。
境内には黒い霧が散り、影は弱りきったように見えた。
湊は息を切らしながら霊夢に寄りかかる。
「霊夢さん……
僕たち……勝てたんでしょうか……」
霊夢は湊の背中を支え、静かに首を振る。
「まだよ。
影は……完全には消えていない」
その言葉を証明するように――
地面に散った黒い霧が、再び震え始めた。
湊は顔を上げる。
「……また……?」
霊夢の表情が険しくなる。
「湊、下がって!」
◆
黒い霧が一点に集まり、渦を巻く。
その中心には、湊が取り戻した“心の欠片”の残滓が、まだ微かに光っていた。
影はその光に触れようとし、触れられず、苦しむように揺れる。
「……光……
奪えない……
ならば……喰らう……」
霊夢は息を呑む。
「湊……!
影はあなたの光を奪えないから……
“光そのものを喰らう存在”へ進化しようとしてる!」
湊の胸が強く脈打つ。
「光そのものを……?」
影の霧が一気に膨れ上がり、境内の灯りが次々と吸い込まれていく。
提灯が消え、月明かりすら薄れていく。
霊夢が叫ぶ。
「湊!
影が……世界の光を喰らってる!」
◆
黒い霧が天へ伸び、巨大な影の塊となる。
その中心には、深い深い“虚”が口のように開いていた。
形はもはや人でも獣でもない。
ただ、光を喰らうためだけに存在する“深淵”。
影は低く、重く、地鳴りのような声で呟く。
「……光を……
すべて……喰らう……
お前の未来も……
お前の希望も……
すべて……」
湊の背筋が凍る。
霊夢は湊の手を掴み、強く言った。
「湊!
これは……あなたの“未来の絶望”が形になったものよ!」
湊は震える声で答える。
「未来の……絶望……?」
霊夢は頷く。
「影はあなたの“過去の絶望”から生まれた。
でも今は……あなたが未来に抱く不安や恐れまで喰らって、進化したの!」
影の最終形態『虚喰(うつろぐい)』が、湊に向かって触手を伸ばす。
◆
影の触手が湊の胸の光に触れようとする。
湊は胸を押さえ、後ずさる。
「……僕の……未来を……?」
影は湊の声を模倣し、歪んだ声で囁く。
「……どうせ……
また失う……
また壊れる……
未来など……いらない……」
湊の心が揺れる。
霊夢は湊の手を強く握り、叫ぶ。
「湊!
影はあなたの“未来への恐れ”を喰らって強くなってるの!
あなたが未来を信じない限り……影は止まらない!」
湊は震える声で言う。
「未来を……信じる……?」
霊夢は湊の胸に手を当て、静かに言った。
「湊。
あなたはもう一人じゃない。
未来は……あなたが思うほど怖くない。
私が……一緒に歩くから」
湊の胸に温かい光が広がる。
◆
影の虚が大きく開き、境内の空気が吸い込まれる。
木々が揺れ、砂利が浮き、光が消えていく。
湊は叫ぶ。
「霊夢さん……!
このままじゃ……幻想郷が……!」
霊夢は札を構え、湊の前に立つ。
「湊。
影の最終形態は……“世界の光”を喰らう存在。
あなたの光だけじゃなく……
幻想郷そのものを飲み込もうとしてる!」
影は低く呟く。
「……光を……
すべて……
喰らう……」
湊は震えながらも、影を睨む。
「……僕が……止める……
霊夢さんと……一緒に……!」
霊夢は湊の手を握り、強く頷く。
影の虚がさらに広がり、境内が闇に包まれる。
光と影の最終戦が、静かに幕を開けようとしていた。