世界に拒まれた青年は、静かな場所で生き直す   作:肩幅ひろし

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第22話:影は深淵を超え、青年の未来を喰らう

 湊と霊夢の新技『光祓』が影の本体を切り裂いた夜。

境内には黒い霧が散り、影は弱りきったように見えた。

 

 湊は息を切らしながら霊夢に寄りかかる。

 

「霊夢さん……

僕たち……勝てたんでしょうか……」

 

 霊夢は湊の背中を支え、静かに首を振る。

 

「まだよ。

影は……完全には消えていない」

 

 その言葉を証明するように――

地面に散った黒い霧が、再び震え始めた。

 

 湊は顔を上げる。

 

「……また……?」

 

 霊夢の表情が険しくなる。

 

「湊、下がって!」

 

 

 

◆

 

 黒い霧が一点に集まり、渦を巻く。

その中心には、湊が取り戻した“心の欠片”の残滓が、まだ微かに光っていた。

 

 影はその光に触れようとし、触れられず、苦しむように揺れる。

 

「……光……

奪えない……

ならば……喰らう……」

 

 霊夢は息を呑む。

 

「湊……!

影はあなたの光を奪えないから……

“光そのものを喰らう存在”へ進化しようとしてる!」

 

 湊の胸が強く脈打つ。

 

「光そのものを……?」

 

 影の霧が一気に膨れ上がり、境内の灯りが次々と吸い込まれていく。

 

 提灯が消え、月明かりすら薄れていく。

 

 霊夢が叫ぶ。

 

「湊!

影が……世界の光を喰らってる!」

 

 

 

◆

 

 黒い霧が天へ伸び、巨大な影の塊となる。

その中心には、深い深い“虚”が口のように開いていた。

 

 形はもはや人でも獣でもない。

ただ、光を喰らうためだけに存在する“深淵”。

 

 影は低く、重く、地鳴りのような声で呟く。

 

「……光を……

すべて……喰らう……

お前の未来も……

お前の希望も……

すべて……」

 

 湊の背筋が凍る。

 

 霊夢は湊の手を掴み、強く言った。

 

「湊!

これは……あなたの“未来の絶望”が形になったものよ!」

 

 湊は震える声で答える。

 

「未来の……絶望……?」

 

 霊夢は頷く。

 

「影はあなたの“過去の絶望”から生まれた。

でも今は……あなたが未来に抱く不安や恐れまで喰らって、進化したの!」

 

 影の最終形態『虚喰(うつろぐい)』が、湊に向かって触手を伸ばす。

 

 

 

◆

 

 影の触手が湊の胸の光に触れようとする。

 

 湊は胸を押さえ、後ずさる。

 

「……僕の……未来を……?」

 

 影は湊の声を模倣し、歪んだ声で囁く。

 

「……どうせ……

また失う……

また壊れる……

未来など……いらない……」

 

 湊の心が揺れる。

 

 霊夢は湊の手を強く握り、叫ぶ。

 

「湊!

影はあなたの“未来への恐れ”を喰らって強くなってるの!

あなたが未来を信じない限り……影は止まらない!」

 

 湊は震える声で言う。

 

「未来を……信じる……?」

 

 霊夢は湊の胸に手を当て、静かに言った。

 

「湊。

あなたはもう一人じゃない。

未来は……あなたが思うほど怖くない。

私が……一緒に歩くから」

 

 湊の胸に温かい光が広がる。

 

 

 

◆

 

 影の虚が大きく開き、境内の空気が吸い込まれる。

 

 木々が揺れ、砂利が浮き、光が消えていく。

 

 湊は叫ぶ。

 

「霊夢さん……!

このままじゃ……幻想郷が……!」

 

 霊夢は札を構え、湊の前に立つ。

 

「湊。

影の最終形態は……“世界の光”を喰らう存在。

あなたの光だけじゃなく……

幻想郷そのものを飲み込もうとしてる!」

 

 影は低く呟く。

 

「……光を……

すべて……

喰らう……」

 

 湊は震えながらも、影を睨む。

 

「……僕が……止める……

霊夢さんと……一緒に……!」

 

 霊夢は湊の手を握り、強く頷く。

 

 影の虚がさらに広がり、境内が闇に包まれる。

 

 光と影の最終戦が、静かに幕を開けようとしていた。

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