世界に拒まれた青年は、静かな場所で生き直す   作:肩幅ひろし

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第22話:影は深淵を超え、青年の未来を喰らう

 湊と霊夢の新技『光祓』が影の本体を切り裂いた夜。

境内には黒い霧が散り、影は弱りきったように見えた。

 

 湊は息を切らしながら霊夢に寄りかかる。

 

「霊夢さん……

僕たち……勝てたんでしょうか……」

 

 霊夢は湊の背中を支え、静かに首を振る。

 

「まだよ。

影は……完全には消えていない」

 

 その言葉を証明するように――

地面に散った黒い霧が、再び震え始めた。

 

 湊は顔を上げる。

 

「……また……?」

 

 霊夢の表情が険しくなる。

 

「湊、下がって!」

 

 

 

 

 黒い霧が一点に集まり、渦を巻く。

その中心には、湊が取り戻した“心の欠片”の残滓が、まだ微かに光っていた。

 

 影はその光に触れようとし、触れられず、苦しむように揺れる。

 

「……光……

奪えない……

ならば……喰らう……」

 

 霊夢は息を呑む。

 

「湊……!

影はあなたの光を奪えないから……

“光そのものを喰らう存在”へ進化しようとしてる!」

 

 湊の胸が強く脈打つ。

 

「光そのものを……?」

 

 影の霧が一気に膨れ上がり、境内の灯りが次々と吸い込まれていく。

 

 提灯が消え、月明かりすら薄れていく。

 

 霊夢が叫ぶ。

 

「湊!

影が……世界の光を喰らってる!」

 

 

 

 

 黒い霧が天へ伸び、巨大な影の塊となる。

その中心には、深い深い“虚”が口のように開いていた。

 

 形はもはや人でも獣でもない。

ただ、光を喰らうためだけに存在する“深淵”。

 

 影は低く、重く、地鳴りのような声で呟く。

 

「……光を……

すべて……喰らう……

お前の未来も……

お前の希望も……

すべて……」

 

 湊の背筋が凍る。

 

 霊夢は湊の手を掴み、強く言った。

 

「湊!

これは……あなたの“未来の絶望”が形になったものよ!」

 

 湊は震える声で答える。

 

「未来の……絶望……?」

 

 霊夢は頷く。

 

「影はあなたの“過去の絶望”から生まれた。

でも今は……あなたが未来に抱く不安や恐れまで喰らって、進化したの!」

 

 影の最終形態『虚喰(うつろぐい)』が、湊に向かって触手を伸ばす。

 

 

 

 

 影の触手が湊の胸の光に触れようとする。

 

 湊は胸を押さえ、後ずさる。

 

「……僕の……未来を……?」

 

 影は湊の声を模倣し、歪んだ声で囁く。

 

「……どうせ……

また失う……

また壊れる……

未来など……いらない……」

 

 湊の心が揺れる。

 

 霊夢は湊の手を強く握り、叫ぶ。

 

「湊!

影はあなたの“未来への恐れ”を喰らって強くなってるの!

あなたが未来を信じない限り……影は止まらない!」

 

 湊は震える声で言う。

 

「未来を……信じる……?」

 

 霊夢は湊の胸に手を当て、静かに言った。

 

「湊。

あなたはもう一人じゃない。

未来は……あなたが思うほど怖くない。

私が……一緒に歩くから」

 

 湊の胸に温かい光が広がる。

 

 

 

 

 影の虚が大きく開き、境内の空気が吸い込まれる。

 

 木々が揺れ、砂利が浮き、光が消えていく。

 

 湊は叫ぶ。

 

「霊夢さん……!

このままじゃ……幻想郷が……!」

 

 霊夢は札を構え、湊の前に立つ。

 

「湊。

影の最終形態は……“世界の光”を喰らう存在。

あなたの光だけじゃなく……

幻想郷そのものを飲み込もうとしてる!」

 

 影は低く呟く。

 

「……光を……

すべて……

喰らう……」

 

 湊は震えながらも、影を睨む。

 

「……僕が……止める……

霊夢さんと……一緒に……!」

 

 霊夢は湊の手を握り、強く頷く。

 

 影の虚がさらに広がり、境内が闇に包まれる。

 

 光と影の最終戦が、静かに幕を開けようとしていた

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