夜の博麗神社。
空は黒く染まり、星も月も影に喰われていた。
境内の中心には、巨大な影の最終形態――虚喰が蠢いている。
その中心には、底なしの“虚”が口のように開き、
世界の光を吸い込み続けていた。
霊夢は札を構え、湊の前に立つ。
「湊……ここが最後よ。
影はあなたの“未来への恐れ”を喰らって進化した。
だから――
あなたが未来を信じない限り、影は止まらない」
湊は震える手で棒を握りしめ、影を睨む。
「……僕は……未来が怖い。
また失うかもしれない。
また壊れるかもしれない。
でも――」
湊は霊夢の手を握り、強く言った。
「霊夢さんが……僕の隣にいてくれるなら……
僕は未来を信じられる!」
霊夢は目を見開き、そして静かに微笑む。
「湊……行きましょう。
二人の光で、影を祓うわ」
◆
虚喰が大きく口を開く。
空気が吸い込まれ、木々が揺れ、地面が震える。
「……光を……
すべて……喰らう……
お前の未来も……
お前の希望も……」
湊は胸の光を押さえ、叫ぶ。
「僕の未来は……僕のものだ!
あなたには渡さない!」
虚喰が触手を伸ばし、湊の胸の光を奪おうとする。
霊夢が札を投げ、光の壁を作る。
「湊!
今こそ“光祓”を――
二人の気を合わせて!」
◆
湊は霊夢の手を握り、深く息を吸う。
霊夢の気が湊に流れ込む。
湊の光が霊夢に重なる。
――二人の呼吸が重なる。
――二人の心が重なる。
湊の胸の光が強く輝き、霊夢の札が白く燃える。
霊夢が叫ぶ。
「湊!
あなたの光を――私に!」
湊は胸の光を両手に集め、霊夢へ流す。
霊夢の札が眩い光を放ち、境内を照らす。
虚喰が苦しむように揺れる。
「……やめろ……
その光は……
俺を……壊す……!」
◆
霊夢は湊の手を握り、技の名を告げる。
「湊……これは、あなたと私の“未来を結ぶ光”。
――『光祓・結(むすび)』!」
湊は棒を構え、霊夢の札と同時に振り抜く。
光と光が重なり、一本の巨大な光の刃となる。
光が虚喰の中心――“虚”へ突き刺さる。
虚喰が絶叫する。
「……やめろ……
未来を……
奪わせろ……!」
湊は叫ぶ。
「僕は未来を奪わせない!
霊夢さんと……生きる未来を!」
霊夢も叫ぶ。
「湊!
あなたの未来は――あなたのものよ!」
光が爆ぜ、虚喰の身体が崩れ始める。
◆
虚喰の“虚”が裂け、黒い霧が吹き飛ぶ。
影は湊の声で最後の言葉を呟く。
「……こわい……
未来が……
こわい……」
湊は静かに答える。
「僕も怖いよ。
でも……
それでも前へ進むんだ」
虚喰は光に包まれ、完全に消滅した。
黒い霧が晴れ、空に星が戻る。
◆
湊は膝をつき、霊夢に支えられる。
霊夢は湊の頬に手を当て、優しく言った。
「湊……
本当に……よく頑張ったわ」
湊は涙をこぼしながら微笑む。
「霊夢さん……
僕……未来を……信じられました……」
霊夢は湊を抱きしめ、静かに囁く。
「ええ。
あなたはもう……影に飲まれたりしない。
これからは……一緒に歩きましょう」
湊は霊夢の肩に顔を埋め、震える声で答える。
「はい……
霊夢さんと一緒に……未来へ」
次回、最終話です。