エルフの森はなぜ焼かれたのか? ~平和な森が炎に包まれた理由~   作:第616特別情報大隊

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丘の向こうにある森

……………………

 

 ──丘の向こうにある森

 

 

 私が一連の取材を終えてから、再びリリエルに会った。

 というのも彼女の方から伝えておきたいということがあったからだ。

 今回もクラウゼの案内でリリエルの家に向かい、そこで彼女に会った。

 

「君はルナリエンにかかわった大勢の人間にあって、大勢のことを知っただろう」

 

 リリエルは言う。

 

「だが、私たちエルフをそれだけで分かったと思わないでほしい。私は私自身の目で見たことしか語れなかった。ソフィエルが本当は何を考えていたのか。それについては憶測で話すしかなかった」

 

 今回の取材ではとうとうソフィエルというリリエルの盟友であり、ルナリエンの指導者であり、麻薬取締局(DEA)が麻薬の皇帝(キングピン)と呼ぶエルフを直に取材することはできなかった。

 私の中の彼女の姿は心優しき友であり、血も涙もない化け物であるという矛盾したイメージがついてしまっている。

 

「私のように理想を信じたエルフもいる。信じなかったエルフもいる。積極的に否定したものも、そもそも無関心だったものもいる。エルフの数だけ彼らの事情があったと思ってほしい」

 

 彼女は静かにそう語り、私は彼女の言葉にしっかりと頷いた。

 そう全員が善人ではないし、全員が悪人でもない。

 それぞれの事情があって皆が生きていると。

 

「ルナリエンは再建が進んでいる」

 

 そこで不意にリリエルがそう言った。

 

「重機の音やハンマーの音がときどきここまで聞こえてくるんだ。彼らは再建に向けて歩みを進めている。私の耳は再建の音が確かに聞こえる」

 

 彼女はそう言って丘に登ろうと私に提案した。

 丘からはルナリエンの森がよく見えると言って。

 私は頷き、彼女とともに丘に登った。

 

「ほら。見てごらん。あそこにトウモロコシ畑があったんだ。今もトウモロコシを育てているのだろう。トウモロコシで作ったパンは今でも私の大好物だよ」

 

 最初の取材から数年が経ち、爆撃によって灰色に焼け焦げていたルナリエンにも回復の兆しが見られた。

 緑がよみがえり、その先にはエルフの集落がかすかに見える。

 

「森の方をじっと見ていると子供たちが笑う声が聞こえてくるような気がする。だが、今はどうなのだろうか。子供たちは今も笑っているのだろうか……」

 

 彼女のその問いに私は答えることはできなかった。

 

 麻薬取締局(DEA)の発表によれば今もルナリエンは『深刻な麻薬国家』であり、ソフィエルは麻薬の皇帝(キングピン)だそうだ。

 再建を進めるルナリエンがそうなのか確かめた麻薬取締局(DEA)の捜査官はいるのだろうか。

 いたとすればその人物はソフィエルに会ったのだろうか。

 

「またルナリエンに戻りたいと思いますか?」

 

 私はリリエルにそう尋ねたが、彼女はあいまいに笑うのみだった。

 ルナリエンは彼女の故郷であり、夢であり、そして苦痛と挫折の地なのだ。

 

……………………




これにて完結です。お付き合いいただきありがとうございました。
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