『双氷の加護 ―世界で一番可愛い弟が、最強の精霊と姉に甘やかされる理由―』   作:can'tPayPay

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第12話:王都の聖者と、過保護な防衛線

アルヴの「無自覚な人誑し」によって、王都の市場はかつてない奇妙な熱気に包まれていました。

「あの、本当にありがとうございました!」

アルヴが満面の笑みでペコリと頭を下げるたび、周囲の大人たち――それも普段は気難しいことで有名な職人や、揉め事ばかり起こしている荒くれ者たちまでが、「おう、困ったことがあったらまたいつでも言いな!」「これ、おっちゃんからのオマケだ!」と、次々に貢ぎ物(果物や焼き菓子)を差し出してきます。

「……なぁアルヴ。お前さ、自分が歩くパワースポットだって自覚ある?」

荷物(大量の貢ぎ物)で両手を塞がれたスバルが、半眼でツッコミを入れました。

「え? そんなことないよ。みんな、僕が困っているから親切にしてくれてるだけだよ。ほら、スバルもリンガ食べる?」

無邪気に果物を差し出してくるアルヴの瞳には、一切の計算がありません。だからこそ、擦れた大人たちの心にストレートに刺さってしまうのです。

「その純粋無垢な笑顔が一番危険なんだっつの! おいおい見ろよ、後ろからついてくる人の数が、さっきの倍になってんぞ!」

スバルの言う通り、アルヴの後ろには「銀髪の可愛い少年が困っている」と聞いて集まった街の人々が、まるでファンクラブのパレードのようにゾロゾロと列をなしていました。

「あ、あそこにいる人たちが、アナスタシアさんの荷物を持ってるみたい!」

アルヴが指差した路地裏には、荷物を盗み出して「へへ、これを売り飛ばせば大儲けだぜ」と悪だくみをしていた男たちが数人、たむろしていました。

「よし、ここは俺の出番――」

スバルが前に出ようとした瞬間、アルヴがトコトコと盗賊たちの前に歩み出てしまいました。

「あの、すみません。それはアナスタシアさんの大切な荷物なんです。返していただけませんか……?」

少し眉を下げ、潤んだ瞳で真っ直ぐに見つめるアルヴ。

盗賊たちは一瞬、ポカンと呆気に取られました。

「あ、あんだぁ? てめぇ、迷子か? ……って、なんだその顔。そんな目で見られたら、俺たちがもの凄ぇ悪いことしてるみたいじゃねぇか……」

「おい頭、なんか胸が痛んできたぜ……。こんな綺麗なガキを悲しませたら、男が廃るんじゃねぇか?」

「ええい、うるせぇ! 荷物は渡さ――」

頭領らしき男が怒鳴りかけた、その時。

アルヴの背後から、市場中の人々――屈強な荷荒らし、大工の棟梁、さらには通りすがりの衛兵までもが、一斉に武器や拳を構えて路地裏に雪崩れ込んできました。

「おいコラ泥棒ども!! その子を困らせるんじゃねぇ!!」

「アルヴちゃんに荷物を返しやがれ!!」

「ひ、ひえぇぇぇ!? なんだこの人数は! 悪かった、返す! 返すからその武器を収めてくれぇぇ!!」

盗賊たちは、アルヴを守ろうとする「王都大集結包囲網」の気迫に圧倒され、涙目で荷物を差し出しました。

「わぁ、ありがとうございます! やっぱり皆さん、お話すれば分かってくれる優しい人たちなんですね!」

アルヴが嬉しそうにパッと表情を輝かせると、盗賊たちすらも「……おう、これからは真面目に生きるわ」と赤面して改心してしまう始末。

「お前……もう聖者か何かに就職しろよ……」

スバルが乾いた笑いを漏らしていると、路地裏の気温が、急激に、かつ劇的に低下し始めました。

「――そこまでよ、悪い虫たち!!」

上空から、美しい銀髪をなびかせたエミリアが、氷の結晶を足場にして華麗に舞い降りました。その胸元からは、パックが目を光らせて飛び出してきます。

「アルヴ! 大丈夫!? 変な人に囲まれて、怖い目に遭わされてない!? お姉ちゃん、心配で心配で、心臓がバクバクしちゃったわ!」

「そうだよアルヴ! パパの目の届かないところで、こんなにたくさんの人間に言い寄られるなんて……! よし、とりあえずこの路地裏の人間を全員、足元から凍らせて固定しちゃおうか!」

「待って、姉さん! パック! みんな僕を助けてくれただけだから、凍らせちゃダメ!!」

アルヴが慌てて二人の間に割って入り、両手を広げて制止します。

「もう……。だから『一人で大丈夫』って言ったのに、二人とも心配しすぎだよ。僕はスバルと一緒に、ちゃんと任務をこなせたんだから」

アルヴが少し拗ねたように頬を膨らませると、エミリアとパックは一瞬で「うっ……」と言葉に詰まりました。

「う、うぅ……。アルヴが頑張ったのは凄ーく偉いと思うの。でも、お姉ちゃん、やっぱりあなたが誰かに連れて行かれちゃうんじゃないかって、心配で……」

エミリアは寂しげに眉を下げ、アルヴの服の裾をぎゅっと掴みます。パックもアルヴの髪にすり寄ってきました。

「……はぁ。分かったよ。心配してくれて、ありがとう」

アルヴが苦笑いしてエミリアの頭を優しく撫でると、彼女の表情は一瞬で幸せそうな笑顔に変わりました。

結局、初めてのおつかいは大成功(?)に終わりましたが、アルヴの「人誑し」の才能を目の当たりにしたエミリアとパックの過保護バリアは、さらに強固なものになっていくのでした。

 

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