アビドスの少女達にお礼として柴関ラーメンに連れ出されてから数日経った頃、私は今日も柴関ラーメンに来ていた。
あの日から大将とはちょくちょく会って雑談をしつつ、ここアビドス砂漠の昔の事について聞かせてもらった。
大将は昔からこの場所でラーメン屋として商売をしていて、アビドス地区の変化をその目で見てきたらしい。だからこそ、生き証人としての話を聞く。
「はぁ、随分と大変なことになってるんだな」
「ああ、砂漠化が進むたびに客足が減っていっちまってるからな」
アビドス砂漠がここまで急激に砂漠化が進んだのは直近な話ではなく、大分前の話らしい。けれど、その砂漠化の原因はわからず、自然とこうなったとしか言えないらしい。
砂漠自体は大将が幼少の頃からあったが、今よりもずっと小さく、オアシス、要は湖と呼べるような場所がいろんなところにあって、そこを中心として発展していたらしい。街の収入の大部分はオアシスを中心とした観光業であったが、オアシスが枯れたことにより収入の消失。それに合わさって砂漠化の進行と、踏んだり蹴ったりな事になっていると。
「そんな水が枯れたり、砂漠化が広がるだなんて何か異変が起きているんじゃないのか?」
「そうかもしれないな」
幻想郷ならば、それだけの事が起きれば確実に異変認定されて、霊夢や魔理沙、生活に困る妖怪達が勝手に動き異変解決に動いているだろう。普通に暮らしている者たちは、何か困ったことになったなっと思った数日後には異変解決は済んでいる。
「ああ、そういえば」
大将は何かを思い出したように話し出す。
「少し前から砂漠の方で奇妙なモノの見られてるらしいな」
「奇妙なもの?」
餃子を食べていた箸を止めて、大将の方を見る。
「ビルよりもデカい鉄の蛇ってのがいるらしいんだよ」
「いや、本当になんだよそれ」
本当になんだそれ。ビル程度はこっちの世界に来たおかげでおおよその感覚は掴めるが、その大きさはだいだらぼっちやがしゃどくろをも超えているのではないだろうか。しかも、その全身を金属で覆っているともなれば、それが妖怪なのかも怪しい。
妖怪とも取れるようなそいつの正体が気になる。
「っと、すまないな、お客だ」
「ああ、話に付き合ってくれてありがとうな」
大将と雑談していたが、その話は新しいお客が来たことにより終わった。
「おい、大将。またサービスするつもりか?」
「はて、何のことか」
新しいお客としてきた客を見てみれば、この前来た時にホシノ達と親しくしていた少女達が来ている。
私は相変わらず酒が飲みたいと思いつつ、ラーメンを啜りこれからの事を考える。
それからしばらくして。
「友達なんかじゃないわよぉーーーー!!」
大声と机を叩く音が聞こえる音が聞こえてきた。声の方を見てみれば、先程入店した少女達のようだが、一体何で揉めているのか。酒を飲んで居たら誰か揉めているところを見るのはざらであるが、素面でそういうのは珍しい。
まぁ、どうせ友人同士で揉めて大きな声を出してしまったのだろう。私は構わずレンゲを使って汁を飲もうとした。
?
次の瞬間には、何故か私は死んでいた。何故いきなり死んだのかわからずに、魂の状態のまま数秒程放心してしまった。いくらおかしなことが起きる幻想郷であっても、ここまで脈絡もなく私が死ぬなんてことはありえないはずだ。
リザレクション
魂の状態から、肉体を復活させて地面に降り立つ。
「い、一体何があったんだ」
死ぬ直前から復活したこの瞬間まで私の魂の場所は移動していない。そう、場所は移動していないはずなのに、周囲の光景は全く違うものになっていた。まさに飲食店の店内であったのだが、今は瓦礫が積み上がり、建物の面影はどこにもない。
一体何があったのか周囲を見渡すが、状況からみて柴関ラーメン付近で爆発が起きて、建物はその爆発に巻き込まれて崩壊したところか。
「おい!!大丈夫か!!」
私は瓦礫に埋もれてしまった大将を救い出す。私の体よりも大きな瓦礫を退かして、頭から血を流している大将を救い出す。そして、同じく瓦礫に埋もれてしまっている他の客達の救出もする。
大将と他の客達は全員多少怪我をするだけで、致命傷にすらなっていない。同じ爆発を食らったのに私だけ死んでいる事が解せぬ。
無駄に長く生きている間に培った応急手当の技術、ほとんど経験則とも言えるもので技術を使って大将の血を拭い、傷口を塞いでいく。その間、少女達が何かを話していたのだが。
「そういうことだったのね!!」
「あんたたち……!!よくもこんなひどいことを!!」
先の爆発を聞いてか、アビドスの少女達が集まってきた。そして、彼女達の様子はあまり穏やかな様子ではなさそうだった。
「大将、動けるか?」
「ああ、どうにか」
「肩を貸すから、何処か安全な場所に」
この世界の子達の少女達が喧嘩を始めれば、周辺被害は弾幕ごっこの比にはならないものになる。この状態の大将をこのまま置いていたら危険である為、大将の腕を私の肩に回して担ぐと、ゆっくりと歩きだした。
「妹紅さん、大将!!」
瓦礫の上を歩いて抜けたところで、アヤネが私達の方へと駆け寄ってきていた。
「ああ、アヤネか。大将を安全な所に運びたいんだが」
「近くのシェルターならあっちにあります」
アヤネが指さした方を見れば、確かに他の建物よりは丈夫そうな場所があった。そして、シロコ達の方を見てみれば、まさに一触即発、このまま近くに居るのは危ないだろう。
「わかった、大将、舌噛むなよ」
「え?」
大将を背負いあげると、地面を蹴りシェルターと呼ばれている場所まで走る。そして、シェルターの近くまで行けば、つい先程まで居た場所からは銃撃の音が鳴り響いてくる。
大将がこんな状態だって言うのに、構わず戦闘をする子供達にため息を漏らしたくなる。
「嬢ちゃん、あんたも爆発に巻き込まれていたはずだけど、大丈夫か」
「私は大丈夫だよ。それよりも大将はどうなんだ」
「ああ、ただちょっと動けそうには無いかな」
「わかった。ひとまず今は安静にしていろ」
大将の身の安全はひとまず確保することができた。怪我の状態と出血の程度からしても命の危険はなさそうだが、しばらくの間は安静にさせて居なければいけないだろう。
永遠亭ってわけじゃないが、近くの医者の所に連れて行くべきだ。けれど、ただでさえ人が少ないこの辺りで何処に医療施設があるのかなんて私は知らない。元々そうしたもののお世話にならなくて済む身である以上、調べてすらいない。
「はぁ、となれば」
この状態で大将を安全の確保するためには、ここの土地勘がある奴を頼るしかない。そして、今近くに居る事が確認できて、土地勘がある相手となれば、彼女達しかいないか。
「大将、ここでじっとしていてくれ」
シェルターの中から飛び出すと、来た道を戻り、アビドスの少女達の元へと戻るしかない。
走って行けば、何やら少女達の数が増えていて、その少女達は気絶して地面で伸びてしまっている。そんな伸びた少女達の中でまだ立っているのはシロコ達と、先程店内に居た少女達は撃ち合いをしている。
「おい、お前達!!」
一先ず、これ以上争われていたら大将の話をでき。
なんか爆発してまた死んだんだが?