蓬莱人のキヴォトス生活   作:御神梓

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十五話 えぇぇ(困惑)

 理由がわからずまた死んだ。さっきの一つ前の死亡といい、生身の人間を容易に殺せるだけの威力がある武器が当たり前のように使われているここは一体何なんだ。

 あまりにも突然な事であったが、死ぬ瞬間の感覚は覚えている。全身に強い衝撃が走り、私の体はその衝撃を受け止めきれず、肉は裂け、骨は砕けてバラバラになった。

 バラバラになった体はあっという間に燃え上がり、初めから存在しなかったかのように消え去る。周囲は酷く粉塵が舞い、少し先すら見ることができない。この炎に気がついたのは何人居るのか。

 普段ならば、自分の死に気がついた時点で復活するが、今回はすぐには復活せず、魂の状態のまま周囲の状態を確認する。

 少なくとも、さっき私が死んだのは近くで何かが爆発したことによるものだが、どうも先に爆発はシロコ達と店にいた少女達、どちらも巻き込んだ爆発だった。どちらにも被害が出ている以上、今の爆発はどちらも狙って爆発させたとは考えにくい。そうとなれば、一体誰が。

 私は誰があんな爆発をしたのかと考えていれば、シロコ達の視線が一点へと集まっていた。私のその視線の先を見てみれば、また新たな団体様の姿があった。

 なるほど、察するに先程の爆発はあの団体様が原因だと。

 

「うちの風紀の連中だよ!ここまで追ってくるなんて!それもこのタイミングで……!」

 

 店の中に居た少女達、彼女達はゲヘナ所属のように思えるから、どうやらゲヘナの連中のようだ。それにこの店に居た方の少女達は団体様に追われている立場だと。

 私がどのタイミングで復活をしようかと考えていると、団体様の方から何かが飛んできて、こちらの方へと着弾し、地面を抉りながら大きな爆発を起こした。なるほど、さっき私が殺されたのはこれが原因か。

 完全に無関係な私が殺されたことと、それについて全く気がついていないこの場の全員に若干のイラつきを覚えつつ、このままただで殺されてハイそうですかと終れるほど私は優しくない。売られた喧嘩は買ってやろうじゃないか。

 加えて、シロコ達も随分とあの団体様相手に戦うつもりのようだ。そうだろうな、自分達が戦ってたら、いきなり部外者に攻撃されたんだから、やられたまま終わるわけがないよな。

シロコ達が戦うとなれば、私が復活する場所を少し考えなければならない。いくら弾幕ごっこに慣れている私であっても、味方が後方にいる状態で交戦した経験は数えるほどしかない。そもそも、私一人で戦ってきた経験の方が圧倒的に多いから、誰かと一緒に戦うなんて経験はほとんどない。

 

 そうなれば、私が復活するべき場所は。

 

 シロコ達の戦いと私の戦い、お互いの戦いを邪魔することなく思う存分暴れられる場所となれば、一つしかない。

 団体様たちの間を魂のまま移動して抜け、団体様の背後へと回る。そして、私は復活した。

 

リザレクション

 

「な!?何!?」

 

 それは突然だった。ゲヘナの風紀委員会が乱入してきたと思った直後、そのゲヘナの風紀委員会よりも後ろの方から大きな火柱が上がった。

 その火柱の大きさは私達全員が見上げる程であり、誰もがその火柱に目を奪われてしまった。

 

「なんなんですかあれは、ゲヘナの新兵器でしょうか」

「いえ、それだったら風紀委員会の方々があんな反応をしないと思います」

 

 ノノミの言う通り、あの火柱には風紀委員会の面々も目を奪われている。あの火柱がゲヘナのものであれば、ゲヘナの生徒達がこんな反応をするとは考えにくい。

 

「ん、それでもやることは変わらない」

 

 シロコの言葉に、アビドスの彼女達は皆自分達の武器を握り直す。

 

「先生!指揮をお願いします」

”ああ、任せて”

 

 

 私はタブレットを操作して、周囲の戦況を見極める。

 私が展開したドローン達をアロナが操作し、戦場の隅々を撮影してそのデータを下に仮想マップを構築、更に敵軍と自軍の全員を反映させ、戦況がどうなっているのかを一目でわかるようにする。

 風紀委員会達の戦力が更新されていき、ようやく最後尾の委員達が反映されたところで、それは映った。

 

”妹紅!?”

「え!?妹紅さんがこちらに!?」

 

 すぐにドローンのリアルタイム映像を確認する。そして、映像に映ったのは、目の前にいる風紀委員達を相手に、殴る蹴る、その場にあった物を使い殴打する。そのさまはまさにヤクザスタイルとも言える、銃撃戦が基本なキヴォトスでは異質とも言える戦い方だった。

 

「これが妹紅さんなんですか?」

 

 隣で見ていたアヤネは妹紅の戦い方を見て思わず言葉を失ってしまう。

 私と同じ、銃弾一発でも致命傷であるにも拘わらず、撃たれる事に一切の恐怖を見せず、銃弾の雨の中を突き進む。そして、相手を痛めつけることになんの躊躇いもない拳と蹴りが風紀委員の一人一人を襲っていく。

 風紀委員もただやられるだけではなく、応戦をしようとはしている。けれど、妹紅は外から来た大人であることは誰の目から見ても明らか。もし、自分が撃った銃弾で重症を負わせてしまってはと考えがよぎり、引き金を引かせない。

 

「どうして妹紅さんが戦っているのかはわかりませんが、このままでは妹紅さんが危険です」

”そうだね。とにかく合流しないと”

 

 風紀委員達を抑えることと同時に、私達の反対側に居る妹紅と合流しないといけない……のだが。

 

「ん、先生。反対側で何が起きてるの?」

”う、う~ん”

 

 シロコ達でも見えるほどの爆発や火柱が何度もあがっている。いくらまだ土地勘がないといえど、世間一般的な街のつくりならば、あんな火柱を生むようなものはないはず。風紀委員達の装備でもないとすれば、あの炎を扱っているのはただ一人、妹紅彼女だけだ。

 以前、シャーレの奪還の際にも彼女は協力してくれた。私が知っている妹紅の戦い方は、今ほど戦況をしっかり見えるような装備がなかったため、実際に私の目で見たものではなく、傍で見ていたスズミ達の口伝という形になってしまう。

 

 ユウカ曰く、生身で銃弾一発が致命傷であるにも拘わらず、銃弾が飛び交っている戦場の中を走り回り、不良生徒達一人一人を殴り蹴っていた。

 ハスミ曰く、自身へ向けられた敵意の察知能力が異常に高く、銃口を向けられた次の瞬間にはその者の顔面に蹴りを叩きこんでいた。

 スズミ曰く、妹紅の戦った周囲には炎が立ち、火炎瓶らしきものを多用して、辺り一帯を炎上させようとしていた。

 チナツ曰く、硝煙の匂いや爆弾の匂いでもない人の血肉が焼ける臭いがあの場にあった。

 

 そして、今映し出されている妹紅の戦い方には、なんと言えばいいのか言葉を詰まらせてしまう戦い方があった。

 基本的な戦い方はやはり殴る蹴る、近くにあるモノを掴んで叩きつける、まるでヤクザの様な戦い方をしている。けれど、その全てがヤクザのようだとは言い切れない。

 妹紅が相手を殴る、蹴るために振りかぶった瞬間、その腕と足には炎が纏わりついている。まるで魔法のように、妹紅は自在にその炎を操り、我流の格闘術と合わせて風紀委員達を圧倒して制圧している。

 

”……”

「あの、先生、これ妹紅さんの方に近づくほうが危ないのでは?」

”そうかも……しれないね”

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