蓬莱人のキヴォトス生活   作:御神梓

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十六話 有象無象

呪符「無差別発火の符」

 

 私の周囲一帯に厄火と書かれた御札が現れ、瞬く間にそれらは爆発していく。この世界にはグレネードと呼ばれる爆弾があり、それらと比べれば小さくてショボい爆発であるが、圧倒的な物量が圧倒的な人数不利と火力を埋める。

 

「ほらほら!!どうしたんだ!?私に喧嘩を売ったんだ、殺すつもりでかかって来いよ!!」

 

 撃ち零した方へと駆け寄る。当然、私に対して銃口を向けてくる者達は居るが、そこから引き金を引くことができたのはごく僅かな。その僅かな撃ちだされた銃弾のうち一発が私の足を掠め、そこから血がにじみ出る。

 

焔符「自滅火焔大旋風」

 

 そんな怪我など私の中では怪我の一つにすらならない。足に炎を纏わせ、その際に傷口は焼灼止血で塞ぐ。そして、私は炎の旋風となり、軌跡上に居た奴らを蹴り飛ばす。

 魑魅魍魎の如く湧き出てくる奴らだが、酷く弱い。私はこんな奴らに二回も殺されたのかと苛立ちがピークに達しそうになった時。

 

「あ、あのぉ」

 

 見覚えのある少女がそこにはいた。

 

「ん、ああ、お前は」

「その、お久しぶりです。妹紅さん」

「この間のシャーレの時にいた奴だよな」

「火宮チナツです」

 

 赤い眼鏡をつけている茶髪の少女だった。

 

「ははぁん、お前もこいつらの仲間ってことでいいんだな」

「あちょ、わ、私は戦うつもりはないですから!!私はあくまで救護班でこの場にいるだけで、戦うメンバーじゃないですから」

 

 私が握りこぶしを作ると、チナツは両手を挙げて顔を横にぶんぶんと振った。

 

「あ、あのどうして妹紅さんがここに?」

「ん?ああ、ちょっとそっちの奴らに用があって来たんだが」

 

 私は銀髪の少女に対して、狼娘のシロコと店の中にいた一際背が高かった少女二人で戦っているほうを指さす。

 

「オタクらの攻撃に巻き込まれて一回死んだ」

「え、しん……」

 

 チナツは一瞬何言ってるんだという表情を見せた。

 

「えっと、つまり、私達の迫撃砲に妹紅さんが巻き込まれてしまったってことでいいんでしょうか?」

「その迫撃砲ってのがなんだかは知らないけれど、まぁ、何かしらの爆発には巻き込まれたね」

「それは、本当に申し訳ありません。一般人を巻き込まないように撃たせた筈なのですが」

 

 結果として私は巻き込まれて死んでしまっている。チナツの様子から察するに、本当にただの事故で巻き込まれて私は死んだのかもしれない。それはそれでやるせない気持ちが残ってしまうが。

 

「その……お怪我の方は大丈夫ですか?遠目でもわかるほどに、炎を使ってましたし」

「ああ、これくらい大丈夫だよ。ほら」

 

 先程銃弾を掠めた部分を見せるが、すでにそこの傷口は焼灼止血を済ませていて血は止まっており、火傷の痕も綺麗に初めから無かったかのように消えている。

 

「さて、私に喧嘩を売ったんだ覚悟はできてるよな」

 

 手をポキポキと音を鳴らし、チナツの方へと歩み寄る。

 

「い、いえできていません!!」

 

 後ずさり私から距離を取ろうとするが、それよりも早く距離を詰めチナツの脚を蹴る。一回二回と蹴り、姿勢が崩れたところで少し地面を蹴り浮かび上がって腹部に炎を纏った深い蹴りを入れる。

 

「っと、あっちも片付いたか……」

 

 チナツに蹴りを入れ終わった頃、シロコ達の方の戦闘も終わったようだった。

 

”妹紅、大丈夫だった?”

 

 お互いの戦闘が片付いた為、物陰に隠れていた先生がようやく姿を見せて話しかけてきた。

 

「ああ、これくらいは大丈夫だよ。それよりも、生身な先生がこの場所にいる方が心配になるが」

”大丈夫。信頼できる仲間が守ってくれているから”

「へぇ」

 

 先生の視線はアビドスの少女達を回り、そして手にしているタブレットに落ちる。

 

”それで、ちょっと悪いんだけど、チナツと話をさせてもらっていいかな?”

「ん、あぁ、はいはい」

 

 どうやらここから先の話には私は必要なさそうだ。大方戦後処理みたいな形で話が進んでいくのだろう……となれば、その対応は先生と眼鏡娘のアヤネがやるだろうから。

 

「あ~、ノノミだっけか?ちょっと大将の事を医療施設に運びたいんだが、この辺りだとどこに連れて行けばいいんだ?」

「ああ、やっぱり大将も巻き込まれていたんですね。それでしたら」

 

 ノノミにどこに連れて行けばいいのかと聞き、道筋を聞いていたら、何やら先生達の方が騒がしくなってきた。

 

「ん~?」

 

 先生達のほうを見てみれば、新しい人物がホログラムらしきもので現れていた。状況から察するに、団体の関係者なのだろうが。

 

『なるほど、そちらが炎の喧嘩屋ですか』

「前に聞いたときも思ったが、なんだその炎の喧嘩屋ってのは?」

 

 確かに私は炎系の妖術と我流の体術で戦ってはいるが、そう喧嘩屋と呼ばれるようなことはしていないと思うが。多分霊夢の方が圧倒的に喧嘩っ早いぞ。

 

『ゲヘナ地区に留まらず、トリニティ地区、ミレニアム地区、百鬼夜行地区、各地で喧嘩をしていて、あなたが喧嘩した跡には幾つもの焼け跡が残されていそうですよ』

「た、煙草のポイ捨てかしら。最近の若者はねえ」

”生徒達が煙草を吸ってたらそれはそれで問題だよ”

 

 そういえば、煙草も酒同様二十歳より若い奴らは駄目なんだっけか。

 

『それにしても、随分とやってくれましたね』

 

 青い髪で首元に鈴をつけている、幻想郷ではまぁわからない方な格好をしているそいつは、周囲を一瞥する。

 

「お前達の目的は知らないが、先に喧嘩を売ってきたのはお前達だぞ?」

『勝手なことを言ってくれますね』

「こちとら、お前らのせいで死んだんだぞ?」

『現に生きていますよね』

「死んで生き返ったんだよ」

『そうですか』

 

 こいつ、私が不死であることを信じてないな。まぁ、別に信じても信じなくてもどっちでもいいんだけどな。

 

”……”

「どうした?先生?」

”いや、なんでも”

「そうか」

 

 さて、そこから私からしたらどうでもいい話が続いていく。その間に、チナツと銀髪の少女、イオリと呼ばれた少女が立ち上がり、変わらずアビドスの少女達と団体は対立関係が維持されていると取れる会話が続いていく。ついでに、店の中に居た少女達、便利屋68などと言う集まりも会話に加わっていき、話が複雑になっていく。

 私は事前知識が全くと言って良いほど無いので、彼女達が何を争っているのかはほとんどわからなかった。それでも、幾つか分かったことがある。

 

「で、私は結局柴関ラーメンで飯を食ってたら、そこの紫の奴(ハルカ)の爆弾の爆発に巻き込まれた挙句、大将をシェルターに連れて行って戻ってきたら、オタクの迫撃砲に爆破されたのも、ただの不運だってことだな。あと、オタクらの目的が先生の奪取だと、私は随分ととばっちりだな」

”よく生きてるね”

「二回死んだ」

 

 さぁて、なんで先生を奪取しようとしているのかはわからないが、ここまで関わってしまった以上、この場をこのまま抜けるわけにはいかない。それに、アビドスの奴らに恩を売っておくのにも丁度いい機会だろう。これからしばらくアビドスで調べごとをするのだ、現地の奴らと多少は良好な繋がりを作って置いた方がいいだろう。

 

「アコって言ったな」

『ええ、何か?』

「生憎余計な事に時間を使っているほど暇じゃないんでな、さっさとおたくらの増援を出しな」

 

 これで恩を売れるのならば、安いものだ。

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