蓬莱人のキヴォトス生活   作:御神梓

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五話 ここでも異変?

 ミレニアムと呼ばれる地区を抜けて、私は今百鬼夜行と呼ばれる地に来ていた。砂漠から一度も休むこともなく、歩き続けていたため、道中で一回餓死して体が動かなくなり、朽ちてしまった。

 一度のリザレクションを挟み、ようやく百鬼夜行の地へと到着した。

 

「その名からもしかしてとは思っていたが」

 

 百鬼夜行、真夜中に多くの妖怪や鬼が列をなして徘徊する、かつての日の国では何度も見た光景でもある。

 そんな言葉を土地の名として冠している場所ならば、妖怪と縁深い幻想郷へと帰る手立てが見つかるかもしれない。

 見慣れた和風の造りをした建物の数々が見えてくる。けれど、時代の流れというものなのだろうか、いやここは外の世界とは異なる異界であるから時代の流れというのはおかしな話か。時代の流れに合わせ、建物の造りが変わっていっている。

 この地の雰囲気は、他の地域の雰囲気と比べて幻想郷の雰囲気に近しいものがある。

 

「ここなら何かありそうな気がするが」

 

 とりあえず、博麗神社とかそのあたりのものが見つかればいい。博麗神社は幻想郷だけでなく、外の世界にも存在していて、お互いの神社同士が繋がっている。可能性は低いものの、幻想郷の博麗神社と繋がっている、異界の博麗神社の存在も否定はできない。

 

「にしても、祭りでもあるのか?」

 

 どこぞの河童達のように、通りの隙間を埋め尽くすように的屋がこれでもかというほど並んでいる。日常的に存在している屋台と比べて、作りが簡易的で簡素、一時的に出している屋台であることは明白。

 

「ふ~む」

 

 ミレニアムと比べれば、圧倒的に歩きやすく、無駄にでかい桜の木があるため居場所の把握しやすかった。

 そして、神社を一つ、二つと幾つもの神社を見つけては、名を確認する。けれど、どこにも博麗神社と名が記された神社はなかった。

 

「外れのほうにあるのか?いや、そもそもない可能性もあるし」

 

 そもそも幻想郷は忘れ去られた者たちの楽園、そこと繋がりがある博麗神社もそう簡単に人目に付く場所には建てられていないのだろう。

 

「はぁ、そうなれば外れのほうを調べるべきか……いや、文献とかを調べたほうが……私にそれができるほどの学はねぇよ」

 

 そもそも博麗神社に祀られている神様ってなんなんだ?それを知っていれば探すのも楽だったのかもしれない。

 

「えーと、ここがダメだったから」

 

 地図帳に印を入れて、まだ印のない調べていない場所を調べに行こうと歩き出そうとした。

 

「ん?」

 

 突然何かが爆発する音が聞こえてきた。それも距離はかなり近い。

 

「なんだなんだ」

 

 音が聞こえてきたほうを見れば、黒い煙が立ち上っている。

 

「!?火事か!!」

 

 爆発の音の正体はわからないものの、煙が立ち上っている場所は確か人通りの多かった場所だ。煙の量を考えれば、かなり大規模の火災が生じているように思える。

 私は急いで煙の発生源の方へと急いでいった。同時に、問題の場所へと近づいて行けば行くほど、何十発もの銃声が聞こえてくる。

 

「おいおい、幻想郷より治安が悪いんじゃねぇのかここ」

 

 いくら幻想郷でも、人里でここまで大きな騒ぎが起きるのは稀有な話だ。しかも、銃声の数からして、一人二人の話ではなく、数十人規模での戦闘が起きている。

 

「うわぁ」

 

 火元で騒ぎの中心となっている場所へと来たが、目の前に広がっている光景には言葉を失ってしまう。

 人里でも人と人での争いを見ることはあれど、妖怪が関わるのと比べれば圧倒的にかわいいものが多い。それなのに、今の私の目の前に広がっている光景は何だろうか。

 多数の少女達が銃の引き金を引き、無数の弾丸が撃ち出されている。そしてその弾丸は市民を襲い、祭のために用意されていた屋台や装飾を破壊していく。

 

「あはは!!燃やせ燃やせ!!」

 

 火を扱う武器を使うやつもいて、木造建築は燃えて大規模な家事となっている。建物作りがどのようなものだかわからないが、私が知る建物の作りのままならば、鎮火までの時間を考えればここら一帯は燃え尽きてしまうだろう。

 

「でけぇ、やつもいるな。自走する砲ってか?」

 

 砲を自走できるようにして、砲手や砲弾を鉄の塊で覆い隠している乗り物も居る。あれが何発もの砲弾を撃ちだしては周囲の建物を次々と破壊して、屋台を轢き潰していく。

 

「まだ、戦乱の世の方がましだと思えるぞこれは……」

 

 いきなり何故こんなことが起きているのか色々言いたいことはあるが、一先ず今やれることをやろう。

 

「おい、そこのお前早く逃げろ!!」

 

 とにかく人命を優先して、大急ぎでこの場から逃がしていく。何人かの人達はこの場に残って戦おうとしているが、多くの人達はこの場から逃げようとしている。

 

「こっちだ!早く!!」

 

 逃げ遅れた小さな少女の手を掴み、そのまま背負いあげると、走ってこの場から離脱する。

 

「ほぅ?」

 

 私が小さな子供を背負い走っていると、一人の少女が私のことを見ていた。

 

「……おい、お前、急いであっちの方まで逃げろ」

「え?」

「急げ!!」

「う、うん!!」

 

 小さな子供を逃がして、私のことを見ている相手を見る。

 体系から見て女、背丈はそれなりにある。派手な着物であるが、寒さ対策をしていないのか足を無駄に露出させていて、そういえば博麗の巫女も脇出していたけど、冬もあの格好なのか?そして、狐の面をつけている。

 長年の経験から出される直観、こいつは強い相手だ。そして、明らかに強者を求めているタイプだ。

 

「お前、私に何の用だ?」

「何か、ずいぶんと野暮な質問をするのですね」

 

 少女は次の瞬間、手にしていた銃を私に向けて引き金を引いた。私は、それを半歩横へと動き、弾丸を回避する。

 

「この距離で避けますか」

「来るとわかってりゃ避けれるし、音より早いやつなんざ何人も見てきたからな」

 

 地の利は相手にあるはず、それならこの状況で私がこいつから逃げるのは無理だろう。そして、こいつは私を逃がすつもりはないのだろう。

 

「さぁ、私達の祭りを始めましょうか」

 

 次の瞬間、もう一度弾丸が私を襲うが、今度は一切避けることなく地面を蹴り少女に接近する。弾丸は胴体を貫通し、衝撃と激痛を与えるがそんなものはお構いなしに、右手を握りしめて炎をまとわせる。

 

「!?」

 

 面越しであるため、表情がわからない。それでも、いつぞやの面霊気と比べれば抱いた感情を読み取りやすい。純粋な驚愕、自分の攻撃を避けずに突っ込んできた事にか、何もないところで炎が発生したことにか、私の腕がその炎で包まれていることに驚いているのかはわからない。

 

「おらぁ!!」

 

 拳は胸部を捉えて打ち込むが、少女は咄嗟に後ろへと跳び距離をとって攻撃を避けようとする。

 

「逃がすか!!」

 

 グレイズされることは予想している。すぐに殴っている方の腕とは別の腕を動かし、炎を纏わせて切り裂こうとする。

 少女はそれに対して、握っていた銃で私の腕を受け止めて指先が自身へと届かないようにする。けれど、それで防ぎきれるのは片腕だけ。もう片方の腕で切り裂く。

 

「ッ!!」

 

 私の攻撃が届くよりも、少女の膝蹴りが私の腹へと入った。

 重い!!

 幻想郷じゃ見た目に対して、力が釣り合わないことはよくある話だ。だからこそ、この少女が見た目以上の筋肉だるまであっても驚くようなことではない。それでも、妖怪達に負けない力を持った、重たい一撃だった。

 

「この!!」

 

 私はその場で地面を蹴り宙返りをしながら後ろへ逃げる。そして、ただで逃げるだけではなく。

 

「破ぜろ」

 

 投げられた幾つもの火の付いた竹筒、火焔竹筒は少女へと襲い掛かる。

 目の前に広がった幾つもの竹筒を見た少女は、さらに後ろへと飛び、竹筒の爆発にはお互いに巻き込まれることなく、ただ距離を取る仕切り直しとなった。

 

「ふむ、まさか銃弾が貫通するとは思いませんでしたわ」

「あ~、くっそいてぇじゃねぇかよ」

 

 かなり速いペースで攻撃をしたにも拘わらず、攻撃は全て捌かれてしまった。

 

「・・・銃使ってるやつだから、近接戦のほうが有利だって思ったんだけどな」

「格闘技も嗜んでおりますので。それにしても、それほどの流血、大丈夫なのでしょうか?」

「大丈夫だ、これくらい。というか、心配するくらいなら見逃してほしいんだがな」

「そうはいきませんわ」

 

 少女が銃をこちらに構える。こちらも構え、次の瞬間、お互いの弾が放たれる。

 銃口から撃ちだされる、鋭利な弾丸。それに対して、私の手から放たれる羽根型の弾幕。お互いの弾は空中でぶつかり合い、相殺される。

 

「!?今何を」

「弾幕だよ!!」

 

 人間の体である私では、先の攻防で純粋な力勝負となる近接戦では分が悪いことが分かった。殴る蹴るの攻撃方法でまともに戦うことができないのならば。こっちの方法で戦うのがいいだろう。

 

「さて、こっちの世界じゃどこまでやれるかやってみようじゃないか。蓬莱人の弾幕がどこまで通じるかよ」

 

 背には燃え盛る炎の翼を持ち、羽ばたく。

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