蓬莱人のキヴォトス生活   作:御神梓

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八話 奇妙な人間

 多数の少女達を叩きのめし、五人が目的地としている建物の方へと近づいていく。流石に全ての弾幕を回避することはできず、何発かは私の体をかすめて血が流れ出るが、この程度の怪我は無視できる範囲。それに、怪我をしたら直ぐに傷口を焼き不要な出血を止める。

 

「ふぅ」

 

 戦場ではあるが、一息つく。少女の一人が落とした棒付キャンディーの封を開けて、口にくわえると、周囲の様子を見る。

 四人の少女達によって、かなりの人数の少女達は気を失うか、逃亡を選択した。それに対して、私が相手にした少女達は、痣に火傷、怪我の程度が酷く、一人残らず逃亡を許さずに気絶させていた。

 多少丈夫であれど、妖怪と比べれば忍耐力は無い。正直に言って、幻想郷で群れを成す妖精の方が厄介とも思える程度には。

 

「骨がある奴はいねぇなぁ」

 

 こちらの世界に来てから、輝夜との殺し合いの様な、一切の手加減なしで殴り合うことは一度もない。もっとも、何度も復活するのは疲れるので、いくら死なないと言えど面倒な話だ。

 五人の目標である建物まであと少し、事が片付いたらわざわざこんな場所で何をしようとしていたのか、一体何者なのかを聞こうか。

 そう考えていると、地響きのような大きな音がこちらへと近づいてきている。

 

「あ~、戦車ってやつか、面倒なのが来たな」

 

 多少、こちらの世界の兵器についての知識も身についてきた。

 一台だけではあるが、音を響かせながら戦車がこちらへと進んできて、砲を私達の方へと向けている。何時でもそれを私達に向けて撃つことができると言わんばかりに。

 これには流石に四人の少女達は遮蔽物に身を隠し、どうにかして直撃を避けようとしている。一方で、私は開けた場所にただ突っ立て居る。

 

「そこのあなた!!いくら銃弾に当たらないと言っても」

「流石に砲弾を回避するのは」

「ん?」

 

 着弾地点で爆発する弾幕なんて幻想郷じゃよくある話だ。それに、撃ちだす間隔も圧倒的に遅いともなれば、面制圧をしてくる魔理沙のレーザー弾幕の方が圧倒的に面倒だ。

 尤もの話、その攻撃が私に飛んで来ればの話である。

 どれだけ強力な攻撃であっても、それが私の元へと届かなければ意味はない。そして、この場に居る誰もが、私に致命的な一撃を与えるために攻撃はしてこないのだ。

 

「ああ、大丈夫大丈夫」

 

 何故、誰もが私に対して致命的な一撃を与えてこないのか。それは、とっても単純でくだらない理由がある。

 

「誰も、私を殺す覚悟がある奴なんていないんだから」

 

 誰も私を殺す覚悟なんて持っていない。それは、死ぬことができない蓬莱人である私相手であっても。

 彼女達は全員が丈夫過ぎる。どれだけ撃たれようか、爆破に巻き込まれようが、戦車の攻撃を受けようが、痛いで済んでしまう。他人に危害を加えて、傷つけてそれが誰かを殺してしまうことを知らない。だからこそ、容易に攻撃をすることはできても、誰かを殺すことなんてできやしない。

 

「だとしても!!」

 

 この世界の住民とも幻想郷の妖怪とも比べて、私の体は酷く脆く柔らかい。銃弾を受ければ、彼女らより致命的な怪我になり、多くの血を流す。妖怪の部分はともかく、そのことはこの世界の住民はよくわかっている。だからこそ、下手に攻撃を加えれば死んでしまう私に攻撃などできない。

 

「いつまでそこに隠れてるんだ?だったら、私がやっちゃうぞ」

「え、ちょっと!!」

 

 致命的な攻撃をできない奴らの攻撃は脅威ですらない。銃弾の雨の中をかけ進み、あっという間に戦車の真上に乗り、ハッチの鍵を殴り破壊して開ける。

 中に居た少女達は私がハッチを開けたことに驚き、急いで銃を手にして私に攻撃しようとして来るが、それよりも先に中へと入り、目の前まで近づけば力強く殴る。

 流石にこの狭い空間で撃たれ銃弾は避けることなどできず、かなりの数当たってしまったが、無視することができる範疇だ。

 ものの数分と言うには短い程度の時間で戦車の中を制圧する。

 

「おーい、終わった……って、何があったこれ?」

 

 よっこらしょとハッチから出て周囲を見れば、私が見ていない間に周囲の状況が変わっていた。

 どうやら新手が現れて五人がその新手の対応をしていたようだが。あっという間に周囲が火の海になっているのは本当に何があったのかと思う。

 

「ん?あれって」

 

 五人が見ているほうを見てみれば、嫌に覚えがある相手が立っていた。

 

「……うげ」

 

 何時だったか私に対して行き成り攻撃を仕掛けて来た狐面の少女が居た。何故あいつがこの場に居るのかわからないが、明らかに面倒な相手であった。

 あの狐面の少女とは下手に関わりたくない。そう思いつつも、この状況では関わらないという選択肢は無理がある。私は内心嫌だと思いつつも、五人の元に歩み寄る。

 

「おやおや、あなたはいつぞやの」

 

 狐面の少女も私の事に気がつき、その声には喜びが乗っている。

 

「ああ、私としてはもう一度会いたいとは思っていなかったんだけどな……」

 

 このままだと、いつぞやの時の様に戦わなければならないのか。とっても面倒くさいという気持ちが勝っている状態なのだが。

 

「あら、それは残念ですわね」

「面識があるんですか?」

「前にちょっとヤリあった程度だ。住民の避難の時に絡まれてな」

 

 あの手のタイプを考えれば、一度戦った程度では満足しない。この状況が彼女を満足させるためにできた状況と考えても、大方満足はしていないだろう。

 また何度か死ぬことになるのかと、身構えつつ、新しいお札を構える。

 

「折角ここでお会いすることができたのですから、一戦交えたいところですが」

「ん?」

「私はここで失礼させてもらいますよ」

「あら」

 

 狐面の少女は予想外なことに、このまま私達と戦うつもりなのかと思っていた私達とは裏腹に、新たに何もせず何処かに姿を消してしまった。

 

「……何だったんだ?」

「さあ」

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