色々ありつつ、周囲の少女達はあの狐面の少女の撤退を皮切りに手を引いていった。この状態ならば、五人の目的を果たすことができると、そのまま目的地であるビルへと走って行った。
目的地に着けば、五人の中で先生と呼ばれていた人は建物の中へと入って行き、残された四人は他に誰かが建物に入らないよう、入り口を守る様に立ち塞がる。
「なぁなぁ」
「なんですか」
一先ず落ち着いたところで、私は事情を知って居そうな少女を一人捕まえる。
「結局あんたら、ここに何の用があったんだ?」
「今更ですね」
ここに来るまで、ずっと戦闘続きだったのだからそんなことを聞いている暇なんてなかった。ようやく、戦闘らしい戦闘なくなった今がゆっくり話をすることができる場なのだ。
私が話しかけた相手は、青っぽいやつで時折銃を二つ使っていたやつ。
「私達は元々連邦生徒会に文句を言いに来たってのに、どういう訳だか不良達の鎮圧とシャーレの奪還をすることになったのよ。いくらシャーレの奪還が現状を解決するために必要なことだって聞かされても」
話を聞けば、この場に居る四人全員所属する組織が違うようで、正確には銀髪と黒髪の少女は学園は同じらしいが、所属が違うとのことで。それぞれが偶々同日同じタイミングで連邦生徒会に苦情・事情を聞きに向かったのだが、丁度こっちでトラブルが起きていたので、それの対応をすることを勝手に決められて、こうしてこの場に来ていたらしい。
「へぇ、随分と大変だったな」
「ええ、お陰で大変でしたよ。私、こう見えてもミレニアムでかなりの立場なんですよ?」
「そうには見えねぇな」
「バカにしてます?」
「いや、無駄にお人好しな奴がそういう立ち場だってのは考えにくくてな」
実力主義の弱肉強食の幻想郷ならば、上に立つ立場がお人よしなんてことは珍しい。
「となれば、あの先生ってやつは何者なんだ?」
「実は私達もわかっていないんですよね」
「なんだ?わかっていない相手と一緒に戦ってたのか?」
あの場で一緒に戦っていたから、多少の付き合いはあるのかと思っていたが、どうやら本当に数時間前、連邦生徒会に苦情を言いに行った際に初めて会ったらしい。他の三人も同様らしいが、よくもまあ、初めて会う相手に背中を任せられるというか。
それでも、多少先生の事についている事を聞かせてもらった。
キヴォトスの外から来た大人の一人であり、現在失踪中である連邦生徒会長という人。この連邦生徒会長というのはまぁ、天狗の天魔とかそういうあたりらしい。その人が指名していた人らしく、何故指名したかの理由は一切わからないとのこと。
そして、連邦捜査局シャーレと呼ばれる組織の担当顧問でもあるらしい。なんでも連邦捜査局シャーレというのは、超法規的権限を持っているらしく、本来自治区はそれぞれの学園が問題を解決することにはなっているが、シャーレはそうした物を無視して問題解決ができる。要は博麗の巫女みたいな存在らしい。
「あの人間がねぇ?」
言ってしまえばかなりの権力を持った組織、それをあの人間に任せたということだが、そうなれば気になる点がある。
あの人間は見るからに普通の人である。この環境で普通の人間が生きていくのは難しいだろうに、何故わざわざ弱い普通の人間をそんな役職に就けたのか。あの人間個人だからこそそれを任せたのだろうか……気になる点が多い。
「なるほどね……」
あの大人は明らかに異質な存在。幻想郷でも昔、外の世界から来た、確か守屋神社だったかが来た時に色々とあった。もし、あいつらと同じような流れが起きるとすれば、これから先、このシャーレとやらがいくつもの出来事に関わる事になるだろう。
「ここなら、私の探している答えが見つけられそうだ」
「?何かを探しているのですか?」
「ああ、私がここに連れて来られた答えがな」
多くの出来事に絡むとなれば、多くの場所でいろいろな人達と関りを持つことになる。まさに、博麗の巫女、博麗霊夢のように多くの人に関わって、色んなことを知っていく。そうした人物の近くにいれば、いずれは私が探し求めている答えへと近づくことができるかもしれない。
「そういうあなたは一体ここに何をしに来たんですか?」
「ん?なに、今日は近くの公園で屋台をやろうとしていたんだが、この騒ぎだからな、今日は誰も客が来ないだろうし」
「ん?屋台って?それに、あなたのその姿……」
少女は私を上から下に、下から上に視線を動かしていき、そして。
「もしかして、焼き鳥屋「藤屋」ですか?」
「ああ、そうだが……それがどうした?」
「嘘!!少し前から有名な焼き鳥屋の!!」
どうやら、私がやっている屋台の屋号を知っているようだ。多くの客を相手にしているため、客の一人一人の顔は流石に覚えていないが、少なくとも今回関わった五人は誰も来た覚えはないのだが。
「私の屋台ってそんな有名なのか?」
「ええ、有名ですよ。不定期でしかも営業場所が不規則だから、相当運がよくないと行くことができない屋台だって有名ですから」
「あ~、まぁ、金が必要になったときに営業しているからな」
毎日毎日営業していたら、ずっと仕込みに追われて調べごとをしている余裕なんてない。だから、不定期に、しかも前日まで調べ事をしていた地域の近くで営業をしている。だからこそ、不定期で不規則に営業していた。
「あ~、もう、どうしてこういう日に限って、営業場所がわかったのに……」
相当残念そうだったのか、地団駄を踏んでいる。幻想郷じゃ、八目鰻の屋台に負けて、お客さんなんてほとんど来なかったって言うのに。こっちの世界じゃ、私の焼き鳥に需要でもあるのか。
「まぁ、日付が変わるころまではやってるから、終わったら来な」
「それまでに業務が片付くとは思いにくいのですが」
少女がため息を漏らし、これからやらなくてはならない仕事を想像してうなだれている。
「そういえば、あなたの戦いを見ていて思ったのですが」
横から銀髪の少女が話しかけてきた。
「ん?なんだ?」
「昨年あたりから、トリニティ自治区で耳にするようになった紅白の喧嘩屋と特徴が一致するのですが」
「なんだ、その紅白の喧嘩やって……紅白っつったら霊夢とかああいう感じのやつだろ。私のどこが紅白なんだが」
本当に紅白の喧嘩屋ってなんだよ。まぁ、確かにトリニティってところで何度か不良に絡まれて、売られた喧嘩は全部勝って、全部確りぼこぼこにしてやったけどさ。
「紅白ですか、私のほうでは炎の喧嘩屋とお伺いしたことがありますが」
「あ~、確かにさっき火炎瓶?らしきものを使ってましたもんね」
「私、自分から喧嘩は売った覚えはないんだけどなぁ……」
その喧嘩屋って奴が本当に私なのかは今の会話の内容ではわからないのだけれど。
「まだ役職についていなかったツルギと丸一日殴り合いをしたうえで、ツルギが一晩程度回復に要するほどに負傷をさせた相手だと聞いていましたが」
「あ~、たぶんそれ私だわ……」
去年くらいに丸一日喧嘩し続けた相手がいたのを覚えている。なんで殴り合ったのかは忘れたけれど、久々に骨のある相手で途中から楽しくなってたっけ。いやぁ、幻想郷でも純粋な再生能力だけで私に食らいついてくる奴は珍しいよ。
「私も似たような話を聞いたことがありますね。もっとも似たような事例がいくつもありますから、明言することはできませんが」
「私、そんなに頻繁に暴れていた覚えなんてないんだけどなぁ」
四人が集まり、私がこっちの世界に来てからやった喧嘩の話が次々出てくる出てくる。どうも、この場にいる四人中三人が治安維持に関わる人員だそうで、仕事柄喧嘩した相手を拘束して、何をしていたのかの話を聞くらしい。そこで、私の容姿や戦い方なんかの話を聞いていたらしい。
しばらく話を進めていると、四人の懐から次々と音が聞こえてくる。
「すみません」
一人また一人と音を出していたそれを手に取り、虚空相手に話し始める。
「ん?」
そういえば、いつの間にか目の前の建物に明かりが灯されている。先ほど入っていった先生が中で何かをやったのだろうか。
少しして、建物の中から先生が出てきた。
「よお、目的は終わったのか?」
”うん、おかげさまで問題なく”
「そりゃよかったな」
”これで、ひとまずの問題は解決したかな?”
「ええ。サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会が取り戻したことを確認したわ」
「ワカモは自治区に逃げてしまったのですけれど……すぐ捕まるでしょう。私たちはここまで」
話の流れ的に、さっきの狐面を付けてたやつのことを言ってるのかな?そういえば、前に会った時もあいつワカモって呼ばれてたっけか?
「あとは担当者に任せます」」
「お疲れさまでした、先生。先生の活躍はキヴォトス全域に広がるでしょう。すぐにSNSで話題になってしまうかもしれませんね?」
SNS?そういえば、董子が以前、幻想郷で撮った写真が全然バズらないとかそんなことを言っていたような気が。
”みんなお疲れ様”
「これでお別れですが、近いうちにぜひ、トリニティ総合学園に立ち寄ってください。先生」
「私も、風紀委員長に今日のことを報告しに戻ります。ゲヘナ学園にいらっしゃった時は、ぜひ訪ねてください」
「ミレニアムサイセンススクールに来てくだされば、またお会いできるかも?先生、ではまた!」
四人は目的を果たしたようで、挨拶を済ませるとそれぞれが別の道を使って居なくなってしまった。
「まぁ、私としても色々聞きたいことがあるが……忙しいだろ?」
”あはは、まぁね”
「それじゃ、終わったころにもう一度来るよ。屋台も置きっぱなしだしさ」
私もこの場を後にする。