波動砲艦隊はこれより艦隊の指揮に入る   作:前衛武装航宙艦アマテラス

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どうも皆さん!今回は日本から離れ、地中海での話となります。

日本は峯岸達の活躍により安定、しかし海外はどうなのでしょうか?今回はそこに焦点を当てて行きます。それではどうぞ!


クレタ島基地

日本であさかぜ型対潜駆逐艦が極秘裏に就役する一方、世界各地では第六艦隊から派遣された守備隊が、それぞれの任務に当たっていた。

 

日本は峯岸たち主力部隊が駐留していることもあり、少しずつではあるが平穏を取り戻しつつある。

 

しかし、世界全体を見れば状況は決して楽観できるものではなかった。

 

異形艦との戦闘によって破壊された都市や港湾施設の復興。

 

混乱した情勢による政治不安と治安の悪化。

 

さらに、一部の軍関係者による汚職や権力争い。

 

そうした問題が、世界各地で次々と発生していた。

 

そう考えれば、日本やアメリカのように比較的秩序を維持できている国々は、まだ恵まれていると言えるだろう。

 

そんな混乱の中、第六艦隊から各国へ派遣された守備隊は、治安維持や復興支援、そして異形艦への警戒任務を担いながら、それぞれの地域で最善の道を模索していた。

 

その中でも、ヨーロッパ方面、とりわけ地中海へ派遣された守備隊の任務は悲惨そのものだった。

 

スエズ運河を行き交う商船を狙う海賊への対処。

 

緊張状態にある各国海軍同士が互いを挑発し合い、その衝突を防ぐための仲介。

 

さらには、戦乱によって混乱した海域の治安維持や船団護衛まで、その任務は多岐にわたっていた。

 

本来であれば、人類は異形艦という共通の脅威に立ち向かわなければならない。

 

その現実を目の当たりにするたび、守備隊の隊員達は胸の内で思わずにはいられなかった。

 

――今、本当に互いに争っている場合なのだろうか、と。

 

そんな中、地中海・クレタ島基地に駐屯するD級リシュリュー率いる守備艦隊は、この日も哨戒任務に当たっていた。

 

「当該海域、異常ありません。航路上にも不審船の反応はなし。本日の哨戒は順調です。」

 

オペレーターの報告を聞き、リシュリュー艦長は静かに頷いた。

 

「分かった。輸送船団の方はどうなっている?」

 

「現在、船団護衛には護衛艦はつしま及びドイツ海軍所属のプリンツ・オイゲンを含む艦娘三名が護衛任務に就いています。」

 

「そうか……。」

 

艦長は窓の向こうに広がる穏やかな海を見つめながら、小さく呟いた。

 

「こんな状況でも船団護衛を引き受けてくれるオイゲンたちには感謝しないといけない。」

 

峯岸たちがこの世界へやって来る少し前まで遡る。

 

突如として出現した異形艦の襲撃によって、各国は甚大な被害を受けた。

 

その中でも、ドイツ海軍の損害は特に深刻だった。

 

主要戦力を次々と失い、国内の混乱は急速に拡大。

 

やがて政府や軍内部でも意見の対立が激化し、国家としての統制が大きく揺らぎ始めた。

 

そして、その混乱は艦娘たちにも及ぶ。

 

海軍内では派閥争いが発生し、組織は事実上分裂。

 

これまで一つの部隊として行動していた艦娘たちも、それぞれ異なる立場を取るようになってしまった。

 

一部の艦娘たちは、混乱に乗じて軍の物資を横領。

 

さらには、補給物資を積んだ輸送船を襲撃するなど、海賊まがいの行動にまで手を染めていった。

 

そして最悪なことに――。

 

かつて共に戦った仲間であるはずの艦娘同士が、互いに武器を向け合う事態にまで発展してしまったのである。

 

最近では、ドイツ国内も少しずつ安定を取り戻しつつあり、こうして船団護衛任務を行えるまでに回復していた。

 

だが、決して油断はできない。

 

いつ、どこから反乱を起こした艦娘たちが現れるか分からないからだ。

 

しかも、そのような問題はドイツだけに限った話ではない。同様の混乱は世界各地で発生しており、各国は未だ不安定な情勢の中にあった。

 

状況が落ち着き始めたとはいえ、警戒を緩めるわけにはいかなかった。

 

そんな中、リシュリューと共に哨戒任務に就いていたドイツ海軍所属のグラーフ・ツェッペリンが、どうやら先ほどの会話を聞いていたらしく、無線の先で苦笑しながら口を開く。

 

「Admiral、少し心配し過ぎじゃないか? 軍人たるもの、常に他人のことばかり気にしていては駄目だ。ましてや、上に立つ者ならなおさらだ。」

 

「……聞かれていたのか。」

 

リシュリュー艦長は苦笑を浮かべる。

 

「それにしても、まさかグラーフから説教を受けるとは思わなかったな。」

 

「なんだ? まだ説教が足りないのか?」

 

「いや、それは遠慮しておこう。」

 

軽く笑い合った後、艦長はふと気になっていたことを尋ねた。

 

「そういえば最近、ビスマルクの姿を見ないが、何かあったのか?」

 

「ああ。」

 

グラーフは少し呆れたように肩をすくめる。

 

「最近起きた艦娘同士の騒動で、書類整理に追われているらしい。どうやら不眠不休で働いているらしくてな。私が帰ると、いつも疲れ切った顔をして抱きついて来るんだ。」

 

「そうか……。」

 

リシュリュー艦長は静かに頷いた。

 

「やはり、上に立つ者は大変なんだな。」

 

ビスマルクはグラーフたちと同じ艦娘でありながら、ドイツ海軍の中でも指導的立場に立つ存在だった。

 

優れた統率力と卓越した指揮能力を評価され、軍上層部へ抜擢されたのである。

 

しかし、その代償は決して小さくなかった。

 

日々増え続ける書類仕事。

 

各地で発生する艦娘同士の対立への対応。

 

そして混乱を極める祖国の現状。

 

その全てを背負い込み、ビスマルクは過酷な毎日を送っていた。

 

本人曰く、

 

「余計な問題を起こして書類を増やした奴は、深海棲艦の餌にしてやるわ。」

 

と、本気とも冗談ともつかない物騒なことを口にしているらしい。

 

「……本当に、ドイツも落ちぶれたものだな。」

 

グラーフは小さく呟いた。

 

「…………」

 

その言葉に、艦橋は静まり返る。

 

グラーフたちは祖国ドイツを信じ、その栄光のために戦い続けてきた艦娘たちだった。

 

だが、今目の前にあるのは、内部分裂し、混乱に喘ぐ祖国の姿。

 

その現実に、グラーフの表情にはどこか寂しさが滲んでいた。

 

リシュリュー艦長もまた、何も言葉を返せ無かった。

 

そんな沈黙を破るように、グラーフは無理やり笑みを作る。

 

「どうしてAdmiralまで落ち込んでいるんだ? そんな顔をされると、こっちまで気が滅入ってしまうだろう。」

 

「ああ……すまない。」

 

リシュリュー艦長は小さく笑みを返す。

 

しかし、その表情にもどこか陰りが残っていた。

 

そんな重苦しい空気の中、不意に艦橋へオペレーターの報告があがる。

 

「レーダーに感あり!本艦隊より10時方向に艦影を確認。数6!その内、大型艦1、小型艦5!こちらへ向けて急速接近中です!」

 

オペレーターの緊迫した報告が艦橋に響く。

 

「またか……。今度はどこの艦だ?」

 

リシュリュー艦長が眉をひそめながら尋ねる。

 

「艦種識別、イタリア海軍所属、ヴィットリオ・ヴェネト級戦艦1隻、マエストラーレ級駆逐艦、及びナヴィガトーリ級駆逐艦を含む計6隻です。」

 

「イタリア海軍の艦娘か。」

 

艦長は腕を組む。

 

「進路はどうなっている?」

 

「現在の進路は本艦隊とほぼ並行です。現時点で接触の可能性はありません。」

 

オペレーターは続ける。

 

「ですが、このままの進路を維持した場合、前方海域を航行中のイギリス海軍が護衛する輸送船団へ急接近する可能性があります。」

 

「イギリス海軍か。護衛戦力は?」

 

「J級駆逐艦2隻が護衛に当たっています。」

 

「分かった。」

 

リシュリュー艦長は即座に指示を出した。

 

「イギリス海軍の護衛部隊へ状況を通達しろ。念のため船団の進路を変更するようにも伝えろ。」

 

「はっ!」

 

艦長はスクリーンに映し出されたイタリア艦隊の情報を見つめながら呟いた。

 

「しかし、これが離反した艦娘たちなのか、それとも正規軍の部隊なのか判断がつかんな……。」

 

現在のヨーロッパでは各国海軍の分裂が相次いでおり、艦種や艦名だけで敵味方を判別することは極めて困難になっていた。

 

オペレーターも苦笑混じりに答える。

 

「せめて識別信号や所属コードくらい統一してほしいものですね。」

 

「まったくだ。」

 

艦長は小さくため息をついた。

 

「グラーフにもこの件を伝達しろ。それと、イタリア艦隊へ警告通信を送れ。」

 

「了解しました!」

 

そうしてリシュリューは、所属不明のイタリア艦隊に対して警告通信を開始した。

 

「こちらは地球連邦防衛軍所属、ドレットノート級航宙艦リシュリューである。付近を航行中のイタリア艦隊に告ぐ。貴艦隊の進路上にはイギリス海軍の輸送船団が存在する為、直ちに進路を変更されたし。」

 

〈…………〉

 

「繰り返せ。」

 

「はっ!」

 

「こちら地球連邦防衛軍所属、ドレットノート級航宙艦リシュリューである。イタリア艦隊に告ぐ。貴艦隊の進路上にはイギリス海軍護衛下の輸送船団が存在する。安全確保のため、速やかに進路を変更されたし。」

 

〈…………〉

 

それでも応答はなかった。

 

英語やイタリア語による呼びかけも行われたが、通信は沈黙したまま。

 

さらに問題なのは、イタリア艦隊が依然として進路を変更する気配を見せないことだった。

 

「黙りか……。可愛げの無い連中だな。」

 

艦長は小さく肩をすくめる。

 

「どうされますか?」

 

「ひとまず信号弾を打ち上げろ。それでも反応がなければ警告射撃を行う。」

 

艦長はそう言うと、メインパネルに映し出されるイタリア艦の位置などを再度見つめる。

 

「それでも無視するようなら、進路上へ割り込んで停船を要求する。必要なら臨検も実施だ。」

 

「了解しました。」

 

オペレーターが即座に復唱する。

 

「信号弾発射準備完了しました。」

 

「発射弾数1。撃てッ!」

 

艦長の号令が艦橋に響いた。

 

次の瞬間、リシュリューの信号発射機から一発の信号弾が夜空へ向かって打ち上げられる。

 

放たれた信号弾は高く上昇し、やがて大輪の光となって炸裂した。

 

眩い白光が日中にも関わらず周囲を照らし出し、その光は遠方の艦艇からでもはっきりと確認できるほどだった。

 

しかし、イタリア艦隊は依然として進路を変更しようとしなかった。

 

明らかに警告を無視しているのだろう。

 

そしてついに、リシュリュー艦隊は警告射撃を実施することとなる。

 

「どうして素直に従ってくれないんだか……。」

 

艦長は小さくため息をつく。

 

「まあ、今さら言っても仕方ないか。」

 

表情を引き締めると、艦橋全体へ命令を下した。

 

「これより警告射撃を実施する。第一主砲に三式弾を装填。目標はイタリア艦隊前方500m。」

 

「了解。三式弾装填、射撃諸元の入力を開始します。」

 

システムと連動し、リシュリューの第一砲塔が旋回し始める。

 

射撃管制システムと連動した砲塔は、入力された座標へ正確に指向していく。

 

「射撃諸元入力完了。射撃用意よし。」

 

「分かった。主砲撃ち方初めッ!」

 

その号令と同時に、リシュリューの主砲が火を噴いた。

 

轟音が海上へ響き渡り、砲口から放たれた砲弾は空を切り裂いて飛翔する。

 

射撃管制システムによって導かれた砲弾は、寸分の狂いもなく目標地点へ向かった。

 

そして数十秒後――。

 

海面で巨大な水柱が立ち上る。

 

「弾着確認!」

 

オペレーターが声を上げる。

 

「イタリア艦隊前方約五百メートル地点に着弾。目標への損害はありません。」

 

続いて別のオペレーターが報告する。

 

「イタリア艦隊、減速を確認。速度が低下しています。」

 

どうやら警告射撃の意図は伝わったらしい。

 

それまで一定速度で進んでいたイタリア艦隊は、目に見えて速力を落とし始めていた。

 

「やっとか……。」

 

艦長は安堵とも呆れともつかない声を漏らした。

 

「このまま再度警告を送れ。」

 

「了解しました。」

 

そうしてリシュリューから再度警告通信が送られた。

 

すると艦隊はゆっくりと転針を開始し、そのまま来た航路を引き返していく。

 

結局、最後まで一言も発することはなかった。

 

「最後の最後まで無視か……。まったく、礼儀のなっていない連中だな。」

 

艦長は呆れたようにため息をつく。

 

すると、副官が苦笑しながら答えた。

 

「ですが、引き返してくれただけまだ良かったじゃないですか。」

 

「まあな。」

 

「もしあのまま接触して、戦闘にでも発展していたら厄介なことになっていたでしょうから。」

 

もし相手が本当にイタリア海軍所属の正規部隊だった場合、今回の一件は国際問題に発展しかねない。

 

警告を無視されたのは問題だが、少なくとも衝突は回避できた。

 

そう考えれば最善の結果と言えた。

 

「しかしな……いくら俺達でも、もう少し艦艇が欲しいところだ。こんな連中が次々と現れたら、いつか対応しきれなくなるぞ。」

 

「それはそうですね。ですが、今はαへの備えもありますからね。戦力をこれ以上分散させるのは難しいのでしょう。」

 

「ああ、それは分かっている。まあ、もし相手がしつこく食い下がってくるようなら、拡散波動砲でまとめて吹き飛ばしてやるだけだ。」

 

「艦長、冗談でもそう言った事は、言わないでください。」

 

「悪かったよ。」

 

そう言いつつも、艦長の口元には笑みが浮かんでいた。

 

「だが実際、何が起きるか分からない時代だ。せめてBBBアンドロメダ級を一隻くらい増援に回してほしいんだがな。」

 

「それは私も同感です。」

 

副官は苦笑する。

 

「もっとも、あれは無人艦ですし、運用には制御艦も必要ですからね。」

 

「ああ。」

 

艦長は頷いた。

 

「だが聞くところによると、峯岸艦長が建造した新型艦がこちらの守備隊に配備されるらしい。」

 

「本当ですか?」

 

副官は興味深そうに身を乗り出す。

 

「それは楽しみです。しかし建造って……どうやって造ったんでしょう?」

 

「何でも、明石という艦娘が建造したらしい。」

 

「……。」

 

副官は数秒考え込む。

 

「真田さんの生まれ変わりか何かですか?」

 

「ははっ、違いない。」

 

そうして冗談を言い合っていると、グラーフから通信が入った。

 

「艦長、グラーフより通信が入っております。」

 

「グラーフか? どうした?」

 

「なに、先程、イギリス輸送船団所属の艦娘から通信が入ってな。我々を守ってくれて感謝する、とのことだ。」

 

「そうか。分かった。こちらからも、貴艦の航海の無事を祈ると伝えておいてくれ。」

 

「分かった。だが、それについては既に伝えてある。」

 

「本当か? なんだ、知り合いだったのか?」

 

「ああ、昔にな、異形艦が現れる前の戦闘で助けてもらったことがあるんだ。それ以来、今でもたまに会う仲なんだ。」

 

「そうなのか。余程、仲が良いんだな。」

 

「仮にも、彼女に助けてもらわなければ今の私はここにいないだろう。彼女は私の命の恩人だ。」

 

「そうだったのか。」

 

「ああ……それはそうと、Admiral。」

 

「なんだ?」

 

「貴様、ニヤついているだろう?」

 

「なっ、何のことだ?」

 

「バレバレだぞ。声で分かる。感謝されたのが嬉しかったのか?」

 

「ぐっ、グラーフ、分かっていても通信で言わないでくれ……。」

 

その言葉に、艦長は顔を真っ赤にし、帽子で必死に隠そうとした。

 

その様子を見ていた艦橋要員たちは思わず吹き出し、艦橋は笑いに包まれたという。

 

しばらくして――

 

「よし、哨戒任務もあと少しだ。気を引き締めていくぞ。」

 

「「「はっ!」」」

 

力強い返答が艦橋に響く。

 

こうして今日も、リシュリュー率いる守備艦隊は地中海の治安を守るため、それぞれの任務に当たっていた。

 

 

 

 




今回も読んで頂きありがとう御座います。
投稿が遅れてしまい申し訳ありません。
次回からの投稿ですがこれまでよりも投稿頻度が落ちる可能性があります。
申し訳ありません!
では次回もお会いしましょう。それでは!
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