波動砲艦隊はこれより艦隊の指揮に入る   作:前衛武装航宙艦アマテラス

31 / 35
今回はネタ会です。超ネタ会です。本当に勢いで書いた物です。特に日向が暴走しますのでそれでも良いよって方はお進み下さい。


瑞雲を信じよ

異形艦の真実を知ってから数日が過ぎた。

 

しかし峯岸は、まだ解き明かされていない「なぜ異形艦がこの世界へ現れるのか」という謎を追い続け、一日中資料と向き合っていた。

 

「……ん、いつの間にか寝ていたのか。」

 

夜通し調査を続けていたため、机に突っ伏したまま眠ってしまっていたらしい。

 

重い身体を起こして時計へ目を向けると、時刻は午前八時を指していた。

 

「誰も起こさなかったのか……。まあ、急ぎの予定があるわけじゃないから構わないが。」

 

そう呟き、艦長室を出る。

 

しかし、通路へ足を踏み出した峯岸は違和感を覚えた。

 

「……静かすぎる。」

 

普段なら乗組員が行き交い、誰かしらの話し声や足音が聞こえてくる時間帯だ。

 

それなのに、人影が一人もない。

 

嫌な予感を覚えた峯岸は、そのまま艦橋へ向かった。

 

扉を開けた瞬間、峯岸は後退りする。

 

「なんでお前がここに?」

 

艦橋には誰一人としていなかった。

 

当直要員すら見当たらない。

 

だが代わりに飛龍が居た。

 

「飛龍、一体ここで何をしている?当直のやつは?」

 

「そんな事、どうでも良いじゃん!それよりさ、峯岸さん....」

 

明らかに目の色が変わった。何かが、おかしい。峯岸は後退りする。

 

「峯岸さんもっ!」

 

すると飛龍は勢いよく飛び掛かってきた。まずい!そう思った瞬間、峯岸は横から勢いよく突き飛ばされる。

 

「なっなんだ!?」

 

それと同時に銃声が響く。誰が?そう思い顔を見るとガングートだった。

 

「ガングート⁉︎一体何を!」

 

「緊急事態だ、説明をしている暇は無い。」

 

「きっ緊急事態って.....飛龍や皆んなは大丈夫なのか!?」

 

「安心しろ。死にはしない。それよりも早く、ここを離れなければ。」

 

その時だった。

 

ゴォォォォッ!!

 

艦橋の窓のすぐ外を、轟音とともに何かが高速で飛び抜けていく。

 

一機ではない。

 

二機でもない。

 

次々と何十機もの機影が空を横切っていく。

 

「何だ……?」

 

峯岸が窓際へ駆け寄った瞬間、通信機が鳴り響いた。

 

「峯岸だ。」

 

『艦長!大変です!すぐ下へ来てください!』

 

副長の切羽詰まった声だった。

 

「副長か!?何が起こっている!こっちは飛龍に襲われかけて....」

 

『説明している時間がありません!とにかく急いでください!』

 

それだけ言うと通信は切れてしまった。

 

「何が起きているんだ……。」

 

疑問を抱きながらも、峯岸はガングートと共に急いでアマテラスを降りた。

 

そして外へ出た瞬間、その光景に思わず足を止める。

 

「……なんだ、これは。」

 

空一面を無数の航空機が埋め尽くしていた。

 

まるで黒い雲が空を覆っているかのようだった。

 

「……瑞雲?」

 

どこからどう見ても、それは瑞雲だった。

 

数え切れないほどの瑞雲が空を飛び回り、編隊を組んで旋回している。

 

「今、鎮守府は飛龍の様な奴で溢れかえっている。気をつけろ。」

 

「おっおい、説明は!」

 

「そんな暇は無い。」

 

そう言い残すとガングートは鎮守府の方に走って行った。

 

何が起きているのか理解できず空を見上げていると、副長が息を切らせながら駆け寄ってきた。

 

「艦長!」

 

「副長。これは一体どういう状況なんだ?」

 

「みんな様子がおかしいんです!来てください!」

 

「お、おい!急に引っ張るな!」

 

副長は峯岸の腕をつかむと、そのまま半ば強引に走り出した。

 

連れて来られた先に停泊していたのは、ベラトリクスだった。

 

しかし、その姿もまた異様だった。

 

「何だ、これは……。」

 

ベラトリクスの飛行甲板には、瑞雲が所狭しと並んでいた。

 

一機や二機ではない。

 

数十機……いや、百機近くはいる。

 

「コスモファルコンはどうした……?」

 

本来そこに並んでいるはずの艦載機は、一機も見当たらなかった。

 

その時、ベラトリクスの艦内から副長が慌てて飛び出してくる。

 

「おい、どうなっている。何で瑞雲なんか積んでいるんだ?コスモファルコンはどこへ行った?」

 

「そ、それが……!」

 

ベラトリクス副長は息を整える暇もなく説明を始めた。

 

「艦内点検をしていたところ、突然、艦娘の皆さんが大勢で押しかけてきたんです!最初から様子がおかしくて、理由を聞いても瑞雲を崇めよとしか言わなくて....そして突然、乗組員へ飛びかかってきて……!艦長も襲われ、気が付けばベラトリクスはこの有様です!」

 

「……何だと?この原因だが分かった気がするぞ。」

 

おおよその原因は見えてきた。

 

だが、それが本当に正しいとは限らない。

 

単なる偶然かもしれないし、本当に艦娘たちが何らかの理由で暴走した可能性も否定できなかった。

 

峯岸が考え込んでいると、一人の保安部隊員が血相を変えて駆け寄ってきた。

 

保安部でも何か異変が起きたらしい。

 

「た、大変です!」

 

隊員は息を切らしながら敬礼する。

 

「先ほど大淀さんから『峯岸さんへ至急伝えてほしい』と連絡がありました!」

 

「どうした?」

 

「防衛省からの報告です!各地で一部の艦娘が暴走し、鎮守府や警備府が次々と制圧されています!」

 

その報告に周囲の空気が凍り付く。

 

「何だと……。」

 

隊員は震える声で続けた。

 

「現在までに、呉鎮守府と舞鶴鎮守府が陥落したとのことです!さらに各地の警備府でも同様の事態が発生しています!」

 

「……呉と舞鶴が陥落だと!?」

 

峯岸は思わず声を荒げた。

 

「それより、藤井提督はどうした!」

 

「それが……。」

 

隊員は苦しそうに唇を噛む。

 

「ここへ向かう途中まではご一緒していました。しかし、暴走した艦娘の襲撃で保安部隊の一部と分断されてしまい、その後の安否は確認できていません!」

 

「くそっ……!」

 

峯岸は拳を握り締める。

 

「仕方ない。保安部は正常な艦娘と連携し、暴走した艦娘の鎮圧を最優先としろ!」

 

「はっ!」

 

隊員は敬礼すると、すぐさま走り去っていった。

 

峯岸は副長へ向き直る。

 

「副長。呉と舞鶴の艦隊とは連絡が取れているか?」

 

「はい!」

 

副長は携帯端末を確認しながら答える。

 

「呉方面とは依然として通信不能です。しかし、舞鶴方面とは連絡が取れました。」

 

「状況は?」

 

「艦隊の大半は港からの脱出に成功しています。ただし、一部艦艇は港内に取り残され、制圧された可能性があるとの事です。

 

「……そうか。この状況では、呉も相当厳しいだろうな。」

 

一瞬だけ考え込むと、すぐに指示を飛ばす。

 

「よし、一度アマテラスへ戻るり、情報を整理し、全体の状況を把握する。各艦との通信を維持しろ。新たな情報が入り次第、すぐ報告だ。」

 

「了解しました!」

 

こうして峯岸たちは、急ぎアマテラスへと引き返した。

 

アマテラスへ戻った峯岸たちは、慌ただしく作戦会議を開いていた。

 

「副長、横須賀鎮守府の状況は?」

 

「はい。鎮守府の一部はすでに制圧されています。大淀さんたちが抵抗を続けていますが、時間の問題かと……。それと、保安部からの報告ですが、藤井提督は消息不明です。」

 

「そうか……。」

 

峯岸は腕を組んだ。

 

「首謀者は何となく察しがつくんだが、目的がさっぱり分からん。」

 

「艦隊の状況は?」

 

「現在、約60%が制圧されています。」

 

「60%!?幾ら何でも早すぎるぞ....」

 

その時だった。

 

「艦長!」

 

オペレーターがメインモニターを指差す。

 

「防衛省の緊急会見です!」

 

画面には防衛大臣が映し出される。

 

『政府は本日、自衛隊に防衛出動を下令しました。また現時刻をもって、瑞雲教をテロ組織に認定します。』

 

「……。」

 

「……。」

 

艦橋が静まり返る。

 

最初に口を開いたのは峯岸だった。

 

「……は?」

 

副長も思わず聞き返す。

 

「えっと……今、何て言いました?」

 

「防衛出動か?」

 

「いや、そこじゃないです。」

 

「テロ組織か?」

 

「そこでもないです。」

 

「……瑞雲教?」

 

すると画面が突然ノイズ混じりになり、防衛大臣の映像が切り替わる。

 

そこに映ったのは、満面の笑みを浮かべた日向だった。

 

『やあ、全国の皆さん。私は瑞雲教教祖の日向です。皆さんも瑞雲の素晴らしさに目覚め、一緒に入信しませんか?今なら年会費無料、入信特典として瑞雲への愛が深まります。さあ、君も今日から――』

 

「何を言っているんだ?」

 

峯岸がそう呟くと日向は不満そうに眉をひそめる。

 

『どうやら峯岸艦長は、まだ瑞雲の良さを理解していないようだ。』

 

「理解したくもないが。」

 

『仕方ない。一度、実際に体験してもらおう。』

 

通信はそこで切れた。

 

その直後、艦橋の外から爆音が響く。

 

窓の外を見ると、鎮守府の方から艦娘の数名と保安部の隊員が暴走した艦娘に追われてこちらに走ってくるのが目に入った。

 

「艦長。」

 

「何だ。」

 

「笑ってる場合じゃありません。」

 

「いや、もう笑うしかないだろ、これ。」

 

「それよりも、艦長! 早く指示を!」

 

「あっああ、そうだな。」

 

峯岸は慌てて頭を切り替える。

 

「艦隊は保安部隊を収容後、直ちに離脱する!全艦、発進準備!」

 

「了解!」

 

峯岸の指示を受け、艦隊は一斉に動き始めた。

 

「準備が完了した艦から順次発進!本艦は下部ハッチを開放したまま待機する! 保安部隊を収容し次第、即座に離脱!」

 

「了解!」

 

慌ただしく艦艇が離岸し、一隻、また一隻と空へ舞い上がっていく。

 

やがて桟橋に残ったのは、アマテラスだけとなった。

 

峯岸は双眼鏡をのぞき込みながら叫ぶ。

 

「急げ!あと少しだ!」

 

保安部隊は暴走した艦娘たちに追われながら、必死に桟橋を駆け抜けてくる。

 

「間に合え……!」

 

隊員たちは次々と下部ハッチへ飛び込み、最後尾の一人が艦内へ転がり込んだ。

 

「全員収容!」

 

「よし!ハッチ閉鎖!発進!」

 

重低音とともにアマテラスが一気に浮上する。

 

巻き起こった猛烈な風圧に耐え切れず、桟橋まで迫っていた暴走した艦娘たちは次々と海へ落ちていった。

 

「ふぅ.....危機一髪だったな。」

 

「ですね……。艦長、これからどうしますか?」

 

「そうだな……。現状、横須賀は陥落した。いずれ陸上自衛隊が奪還作戦を開始するだろう。それまでは、無事な大湊警備府か佐世保鎮守府へ向かい、今後に備えて戦力を立て直そう。」

 

「そうですね。戦力を考えると、佐世保鎮守府へ向かうのが最善かと。」

 

「ああ。それと副長。」

 

「はい。」

 

「海外へ派遣している守備隊をすべて日本へ集結させろ。集結後は奪還作戦に投入する。舞鶴の第13戦隊は残存艦艇を大湊に移動させる様に伝えてくれ。」

 

「はっ!」

 

峯岸の命令を受け、副長はすぐさま各部隊へ通信を開始した。

 

「そう言えば助かった艦娘は誰がいる?」

 

「救助できたのは、戦艦金剛、武蔵、軽空母龍驤、軽巡神通、川内、駆逐艦時雨、白露、長波の計8名です。」

 

「そうか、一応、事情聴取をしといてくれ、何か解決の手掛かりになる事があるかも知れん。」

 

「分かりました。」

 

「はあ、まさかあの日向がテロを起こすなんてな.....」

 

こうして峯岸たちは、戦力の立て直しを図るため佐世保鎮守府へ向かうこととなった。

 

――しかし、この時の彼らは、これから待ち受ける最悪の事態をまだ知る由もなかった。

 

   ◇ ◇ ◇

 

数時間後。

 

峯岸たちを乗せた艦隊は、ようやく佐世保鎮守府へ到着した。

 

艦橋のメインモニターに映し出された佐世保は、横須賀と変わらぬ惨状だった。

 

鎮守府の各所からは黒煙が立ち上り、周囲の海面には無数の瑞雲の残骸が漂っている。

 

「……やはり、ここもか。」

 

峯岸は苦々しく呟いた。

 

どうやら被害は全国規模に及んでいるようだった。

 

すでに港内には旗艦「ふじ」をはじめとする第十一戦隊が入港していた為、アマテラスを含む第六艦隊は港外に停泊する事になった。

 

峯岸たちは、現在の状況を整理するため、一度佐世保鎮守府の提督のもとへ向かうことになった。

 

「副長は万が一の事の為に、艦に残っておいてくれ。」

 

「はっ!ですがお一人で行かれるのですか?」

 

「まさか、誰か艦娘を連れていくよ。」

 

「では私がついて行こうか?」

 

話を聞いていたのか武蔵が峯岸の付き添いに名乗り出る。

 

「来ていたのか。では任せても良いかな?」

 

「ああ、任してくれ。」

 

「.......いや、やっぱり1人で行く。武蔵達は他の艦娘と一緒にアマテラスに残ってくれ。」

 

「そうか。本当に1人で大丈夫か?」

 

「ああ、多分な。」

 

そうして峯岸は、迎えに来た内火艇へ乗り込み、鎮守府へと向かって行った。

 

上陸すると、そこには予想通り瑞雲の残骸が多数散乱していた。

 

それだけではない。

 

鎮守府の周囲にある柱には、暴走したと思われる艦娘たちが拘束されている。

 

「……ここも、かなりの被害が出たようだな。」

 

周囲を確認しながら、峯岸は呟いた。

 

そうして一行は執務室へ向かう。

 

執務室に着くと峯岸は足を止めた。

 

何故なら、本来あるはずの扉はなく、外からでも中が見えるほど開放的な造りになっていたのだ。

 

「おや……随分と開放的な執務室ですね?」

 

峯岸が冗談交じりに言うと、目の前の人物は笑みを浮かべた。

 

「はは、お気に召したようで何よりです。」

 

「お久しぶりですね、初井提督。」

 

「ええ。最近、峯岸さんが来られなかったので少し寂しかったんですよ?」

 

「それは失礼しました。」

 

初井提督。

 

彼女は日本に存在する鎮守府の中で唯一の女性の提督であり、深海棲艦との戦闘では数々の戦果を挙げてきた人物だった。

 

この状況でも落ち着いているところを見る限り、佐世保鎮守府はある程度、事態を掌握できているようだった。

 

「それで、現在の状況は?」

 

「こちらはある程度、制御できています。他の鎮守府ほど混乱はしていませんよ。」

 

「そうですか。加古と古鷹が居るならそう言うことなんでしょう。」

 

初井提督の後ろには警護する形で古鷹と加古が立っていた。

 

「ええ、SPみたいで良いでしょう?」

 

「いえ、別に?」

 

「またまた〜」

 

「それにしても……この扉の状態でもよく大丈夫でしたね。その加古と古鷹が助けてくれたんですか?」

 

峯岸が壊された扉を見る。

 

すると初井提督は後ろを指差した。

 

「ああ、これですか? 実は後ろの日向さんが助けてくれたんですよ。」

 

「……え?」

 

峯岸がゆっくり振り返る。

 

そこには、初井提督の言葉通り日向が立っていた。

 

「な、なんで日向がここに……!」

 

峯岸が警戒すると、日向は呆れたようにため息を吐く。

 

「君は……いくら私が瑞雲を愛しているからと言って、他の私と同じだと思わないでくれ。これでも私は常識を持ち合わせているのだぞ。」

 

「……そ、そうなのか。それはすまなかった。」

 

峯岸は少し気まずそうに視線を逸らす。

 

「それなら、一体誰が艦娘たちを操っているんだ?」

 

「それが、まだ分かっていないんですよ。突然のことでしたから。おそらく、事前に元凶の日向が鎮守府へ入り込んでいたのでしょう。」

 

「そうでしたか……。ならば、日向には失礼なことをしたな。」

 

「そうだ。人を見た目や印象だけで判断するのは良くないぞ。」

 

日向は少し不満そうに言う。

 

「まあ、普段の行動を考えると仕方ない気もしますが。」

 

「提督?」

 

「冗談だよ。」

 

「それより、洗脳された艦娘たちはどうやって元に戻すんです?」

 

「分かっていたら、あのように拘束していませんよ。」

 

「……確かに。」

 

「ですが、中央情報局のあきつ丸さんたちが現在、解除方法を調査しているそうです。」

 

「あきつ丸が?流石は中央情報局ですね。対応が早い。」

 

「ええ。このまま解除方法も早く見つかればいいのですが……。」

 

「まあ、あきつ丸なら、すぐに見つけてくれますよ。」

 

「そうですね。……あれ、どうかしました?」

 

「ん?」

 

峯岸が振り向くと、そこにはサラトガと数名の艦娘たちが立っていた。

 

その様子から何かを察したのか、日向が一歩前へ出る。

 

「どうした?」

 

「いえ、日向さんには特に用はありません。」

 

サラトガは穏やかな笑みを浮かべたまま、初井提督へ視線を向ける。

 

「私たちは初井提督とお話がしたいだけです。そこを退いていただけますか?」

 

「……初井提督。」

 

峯岸は小声で呟く。

 

「何だか嫌な予感がするんですが……。」

 

「ええ……私もです。」

 

初井提督も表情を曇らせる。

 

するとサラトガは小さくため息をつき、ゆっくりと片手を上げた。

 

「仕方ありませんね。話し合いで解決できないのなら――実力行使です。」

 

その合図と同時に、後ろに控えていた艦娘たちが一斉に飛びかかった。

 

「くっ!」

 

日向は飛びかかってきた艦娘を受け止めると、そのまま勢いよく投げ飛ばす。

 

さすがは戦艦クラスだ。

 

一人、また一人と軽々と制圧していく。

 

しかし、多勢に無勢だった。

 

次々と飛びかかってくる艦娘たちに、日向も徐々に押され始める。

 

「加古!古鷹!この二人を連れて逃げろ!」

 

「逃げるって……どこへ!?」

 

ここは二階だ。

 

正面の出入口は敵に塞がれている。

 

逃げ道などない。

 

そう思った次の瞬間、古鷹が峯岸のそばへ駆け寄ってきた。

 

「失礼します!」

 

そう言うや否や、古鷹は峯岸を軽々とお姫様抱っこで抱え上げた。

 

一方、加古も初井提督を抱き上げ、そのまま窓際へ向かう。

 

二人の行動を見た峯岸は、嫌な予感しかしなかった。

 

「ま、まさか……。」

 

「ここ、二階だぞ!?」

 

「緊急事態ですから!安心してください! 私たちがついています!」

 

「いや、そういう問題じゃ――」

 

峯岸が言い終えるより早く、加古は窓ガラスを蹴破った。

 

そのまま迷いなく飛び降りる。

 

「マジかよ!!」

 

古鷹は峯岸を抱えたまま振り返る。

 

「それでは行きます!しっかりつかまっていてください!」

 

「ええい、もうどうにでもなれ!」

 

加古に続き、古鷹も窓から飛び降りた。

 

ドンッ!!

 

着地と同時に強い衝撃が伝わる。

 

だが古鷹はまったく動じることなく、そのまま全力で走り出した。

 

「さ、さすが艦娘だな……。歳は取りたくないものだ。」

 

衝撃で腰に鈍い痛みを感じた峯岸が冗談交じりにそう言うと、古鷹は慌てて顔を覗き込んだ。

 

「す、すみません!お体は大丈夫ですか!?」

 

「ああ、大丈夫だ。気にしなくていい。」

 

峯岸は苦笑しながら続ける。

 

「俺も君たちくらい若かったら、あんな飛び降り方ができたのかな。」

 

古鷹は思わず笑みをこぼした。

 

「あははっ、峯岸さんも、まだまだお若いじゃないですか。」

 

「冗談でも、そう言ってもらえると嬉しいよ。だが日向が......」

 

「仕方ありません。今は逃げることが最優先です。それに、日向さんなら……」

 

峯岸が後ろを振り向くと、執務室の窓からサラトガがこちらを見下ろしていた。

 

その様子からすると、日向はやられてしまったらしい。

 

「古鷹、この辺で降ろしてくれないか?この歳になってお姫様抱っこなんて、さすがに恥ずかしいんだが……」

 

「そ、そうですよね。でも、峯岸さんが走るより、私たちが運んだ方がずっと速いですから、そういうわけにはいきません。」

 

「それもそうか。」

 

峯岸は苦笑すると、すぐに表情を引き締めた。

 

「だが、この先どうする? どこへ逃げる?」

 

すると、加古に抱えられた初井提督が口を開く。

 

「それなら、アマテラスへ向かうのはどうでしょう?あそこなら、まだ安全なのでは?」

 

「確かに……。サラトガの様子を見る限り、鎮守府はもう安全とは言えませんからね。」

 

そう言いながら峯岸は初井提督へ目を向ける。

 

「……それにしても初井提督。」

 

「何だか、加古に抱きつくのが、そんなに嬉しいんですか?」

 

「そ、そんな訳ないじゃ無いですか。こんな歳にもなって.....」

 

そう言いながら満更でもない表情を浮かべる。

 

その様子に峯岸は呆れ、それ以上は何も言わなかった。

 

こうして一行は、アマテラスを目指すことにした。

 

そして桟橋へ向かう途中――。

 

「もう大丈夫だ。降ろしてくれ。」

 

「はい。」

 

古鷹が峯岸を降ろすと、加古が海の方を指差した。

 

「おい、あれって……。」

 

「ん?」

 

その方向を見ると、第11戦隊旗艦「ふじ」の甲板上に、複数の艦娘が立っていた。

 

嫌な予感が胸をよぎる。

 

どうやら峯岸たちが話している間に、ふじまで制圧されてしまったようだ。

 

「ふじがやられたか……。用意周到な奴らだ。だが、アマテラスはまだ無事なはずだ。」

 

峯岸はすぐに通信機を取り出し、アマテラスの副長へ通信を繋ぐ。

 

「副長、ここも危険だ!今から初井提督と一緒にアマテラスへ向かう!」

 

〈艦長!駄目です!現在、洗脳された艦娘の一部が艦内へ侵入!保安部が交戦中です!陸上自衛隊には即に連絡済みですが、それまで持つか分かりません!〉

 

「何だと!?武蔵たちはどうした!」

 

〈保安部と共に応戦しましたが、突破されたようです!それと艦長と連絡が取れなかったため、先ほど金剛さんと龍驤さんを確認に向かわせました!〉

 

「分かった!副長、艦内の隔壁をすべて閉鎖しろ!一秒でも長く時間を稼ぐんだ!」

 

〈了解しました!〉

 

「……アマテラスも駄目ですか。」

 

初井提督が静かに呟く。

 

「ええ、他の艦も危ないかもしれませんね。」

 

「じゃあ、どうするんですか?」

 

「どこかに身を隠して、救助が来るまで持ちこたえるしかありません。」

 

「それが一番現実的でしょうね。」

 

そう話していると、向こうから龍驤が全力で走ってきた。

 

「君!無事やったか!」

 

「ああ、何とかな。金剛はどうした?」

 

「それが、さっきはぐれてしもうてな……。もしかしたら、もう奴らの餌食になっとるかもしれへん。」

 

「……そうか。」

 

峯岸は一瞬目を伏せたが、すぐに龍驤へ視線を戻す。

 

「龍驤、一つ確認したい。」

 

「お前、洗脳されてないよな?」

 

「……うちが?そう見えるか?」

 

「ああ。いつもより身長が小さく見えるからな。」

 

「……ん〜?」

 

龍驤はにっこり笑う。

 

「どうやら君、死にたいようやね?」

 

「よし、大丈夫そうだな。」

 

「確認方法が雑すぎるやろ!」

 

龍驤は呆れたようにツッコミを入れる。

 

だが、その直後、表情が険しくなった。

 

「……せやけど、ちょっと時間を掛けすぎたみたいやね。」

 

その言葉に峯岸たちが周囲を見渡すと――。

 

いつの間にか、洗脳された艦娘たちに完全に包囲されていた。

 

すると、一人の艦娘がこちらへゆっくりと歩いてきた。

 

日向だった。

 

「お前……佐世保の日向じゃないな?いつの間にここまで来た?」

 

「よく分かったな。その観察力は褒めてやろう。」

 

日向は不敵な笑みを浮かべる。

 

「だが、我々の愛する信者たちを制圧されるのは見過ごせない。」

 

「それそうだろう。捕まるわけにはいかないからな。」

 

「そうか。では、大人しく捕まるつもりはないということだな?」

 

「ああ、そのつもりはない。」

 

「……仕方ない。ならば、少々強引な手段を取らせてもらうよ。」

 

その言葉と同時に、空から轟音が響いた。

 

見上げると、無数の瑞雲がこちらへ飛来してくる。

 

瞬く間に空は瑞雲で埋め尽くされた。

 

「実は、あの瑞雲には”とある物”を搭載していてね。」

 

日向は楽しげに説明を続ける。

 

「懸架されているあの容器の中には特殊なガスが入っている。投下後に起動し、それを少しでも吸い込めば、瑞雲のことしか考えられなくなる。どうだ?悪い話ではないだろう?」

 

「……どこが悪くない話なんだよ。」

 

峯岸は思わず顔をしかめた。

 

どうする。

 

このままでは日向の思う壺だ。

 

しかし、今の自分たちには対抗する術がない。

 

どうすれば――。

 

そう考えている間にも、瑞雲は一斉に急降下を始めた。

 

もう見ていることしかできない。

 

誰もがそう思った、その瞬間――

 

轟音が響き渡り、先頭を飛んでいた瑞雲が跡形もなく爆散した。

 

「何だ!?」

 

誰もが何が起きたのか理解できず、その場で立ち尽くす。

 

周囲を見渡すと、アマテラスの主砲から白煙が立ち上っていた。

 

どうやらアマテラスが迎撃したらしい。

 

「副長か!よくやった!」

 

峯岸が安堵した、その時だった。

 

「避けぇぇっ!!」

 

龍驤の叫び声が響く。

 

「えっ?」

 

反射的に振り向く。

 

目の前には、いつの間にか日向が立っていた。

 

「あっ.......」

 

――そこで、視界が真っ白に染まる。

 

    ◇ ◇ ◇

 

「やっ辞めろ!……ん?」

 

ゆっくりと目を開けるとそこは自室だった。

 

「ここは……。」

 

辺りを見回した峯岸は、大きく息を吐く。

 

どうやら、机に向かったまま眠ってしまっていたらしい。

 

安堵のため息をついていると、不意に艦長室の扉がノックされた。

 

「失礼します。」

 

副長が部屋へ入ってくる。

 

「艦長、今日の予定についてなのですが……。」

 

副長は峯岸の顔を見るなり、表情を曇らせた。

 

「……大丈夫ですか? ずいぶん顔色が悪いようですが。」

 

「あ、ああ……気にするな。」

 

「少し疲れているのか、変な夢を見てしまってな。」

 

「そうでしたか。」

 

副長は苦笑しながら頷く。

 

「時には休むことも仕事のうちですよ。」

 

「そうだな。」

 

「気をつけるよ。」

 

「ぜひ、そうしてください。それと艦長に会いたいと言う人が来てますので、艦橋まで来ていただけますか?」

 

「分かった。」

 

峯岸は立ち上がり、副長の後について艦橋へ向かう。

 

……考えてみれば当然だ。

 

あの日向が、いくら瑞雲好きとはいえ、あそこまでの暴挙に出るはずがない。

 

ましてや「瑞雲教」などという訳の分からない宗教を立ち上げ、日本中を巻き込むなどあり得る話ではない。

 

「なんで、あんな夢を現実だと思いかけたんだ……。相当疲れているみたいだな。」

 

苦笑しながら艦橋へ足を踏み入れた、その瞬間――

 

「は?」

 

峯岸は思わず立ち止まった。

 

そこには、腕を組んで待っている日向の姿があった。

 

「急に来てしまってすまないな。実は鎮守府全体で祭りを開くことになってな。私が実行委員長を務めることになったんだ。ぜひ君にも協力してもらいたい........どうした?なんでお前がここに居る?と言う顔をして....そんなに嫌だったか?........おい、聞いてるのか?」

 

「艦長?」

 

副長が肩を揺する。

 

「き、気絶してる!?衛生員!」

 

その後、誤解はしっかり解けたそうな。




ここまでお付き合いして頂きありがとうございます!

今回はふざけすぎましたかね笑 

まあ、楽しかったので良いですが......

それではまたお会いしましょう!瑞雲万歳!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。