波動砲艦隊はこれより艦隊の指揮に入る 作:前衛武装航宙艦アマテラス
「では、今後の日程についてはこれでよろしくお願いします。」
「はい、承知しました。それでは失礼します。」
峯岸は横須賀鎮守府の執務室に来ていた。藤井提督と、今後の日程について話し合っていたところだった。他にも凛花から伝えられた異形艦の真相、そしてその出現源について、今後どのように調査を進めるかについても協議していた。ひと通り話し合いを終え、峯岸が執務室を出ると、廊下で副長が待っていた。
「お疲れ様です。」
「おお、副長か。どうした?」
「いえ、特に用事というわけではありません。今から大鳳さんに誘われて、鳳翔さんのところへ行くんです。そのついでに、艦長から資料をいただこうと思いまして。」
「気が利くな。」
峯岸は持っていた書類を副長へ渡す。
「これが今後の日程に関する資料だ。他の艦の連中にも伝えておいてくれ。」
「了解しました。」
副長が資料を受け取ったところで、峯岸はふと彼を見つめた。
「……なあ、副長。」
「はい? どうかしましたか?」
「お前……大鳳と、そんなに親しかったか?」
「え?」
副長はきょとんとした顔をする。
「何のことです?」
「いや……。そんなに関わりがあった記憶がなかったからな。」
「ああ!」
副長は納得したように笑った。
「少し前に、大鳳さんが重そうな段ボール箱を運んでいたんです。それを手伝ったのがきっかけで、少しずつ話すようになったんですよ。」
「……そうか。悪かったな、変なことを聞いて。もう行っていいぞ。」
「はい。それでは失礼します。」
副長は敬礼すると、そのまま廊下の向こうへ歩いていった。
「…………。」
その背中を見送りながら、峯岸は心の中で呟く。
(随分と中の良い事だ。……相変わらず鈍い奴だが、いずれ気づくだろ。)
苦笑しながら、峯岸は腕時計へ目を向けた。時刻は11:30分。午後には特に予定は入っていない。
「もうこんな時間か。せっかくだし、久しぶりに食堂で昼飯でも食べるか。」
そう呟き、峯岸は食堂へ向かった。食堂へ向かう途中、食堂から戻ってくる艦娘たちとすれ違った。いつもの明るく元気な表情とは違い、誰もが暗い顔をしている。
「何かあったのか……?」
そう思いながら食堂へと着くと普段と変わらない食堂が広がっていた。しかし、一つだけ明らかに違う光景があった。艦娘たちが、机に突っ伏したまま力なく倒おれ混んでいるのだ。
「……なんだ、この惨状は。」
周囲を見渡すと、一人だけ平然と食事を続けている龍驤の姿が目に入った。事情を聞こうと、龍驤へと近づく。
「隣、空いてるか?」
「君には空いてへんように見えるんか?」
「辛辣だな。じゃあ、遠慮なく座らせてもらうよ。」
「どうせ、この状況を聞きに来たんやろ?」
「ああ。話が早くて助かる。それで、一体何があったんだ?」
「んー、説明してもええけど、それやと面白ないやん?」
龍驤はニヤリと笑う。
「とりあえず、カレー頼んでみ。そしたらなんでこないなことなってるか理由分かるで。」
「カレー?何だ、それなら普通に美味しいじゃないか。それに作ってるのは間宮さんだろ?」
「いや、ちょっと用事で今は抜けてる。」
「そうなのか。だとしたらどんなカレーなんだ?」
「せやから、一回頼んでみ?」
「ああ、分かった。」
カレーが原因?ますます意味が分からない。食中毒か?まさか、衛生管理がなってないわけが無い。艦娘たちがここまでぐったりするほどのカレーとは、一体どんな代物なのか。龍驤に促されるまま、峯岸はカレーを注文した。
しばらく待っていると、峯岸のもとへ比叡がカレーを運んできた。
「お待たせしました!」
「ん? 比叡……これ、本当にカレーで合ってるのか?」
目の前に置かれた皿を見た峯岸は、思わず聞き返した。
「はい! 私が皆さんのために、丹精込めて作ったんですよ!」
「……あぁ。」
――これが原因か。
比叡が運んできたカレーは、カレーとは思えないほどドス黒い色をしており、何とも形容しがたい匂いを漂わせていた。
(……何をどうしたら、こんなものが出来上がるんだ。)
そう思いながら隣を見ると、龍驤がニヤニヤと笑いながらこちらを眺めている。
(嵌めたな?)
峯岸は再びカレーへと視線を戻した。いざ目の前にすると、不思議なほどスプーンが進まない。まるで本能が「食べるな」と警告しているようだった。すると比叡が、ぱっと笑顔になる。
「そうだ! 今度は第六艦隊の皆さんにも作ってあげますね! いつもお世話になっていますから!」
「お、おぉ……そ、そうか。」
悪意があって作ったわけではない。それは十分すぎるほど分かっている。
だが、周囲で机に突っ伏している艦娘たちを見れば、このカレーを食べた後に何が起きるのかは容易に想像できた。
「どうしたん? 比叡がせっかく作ってくれたカレーやで? 食べへんのか?」
龍驤が面白そうに笑いながら催促する。
「いや……今から食べようと思っていたんだよ。」
(このやろう……。)
峯岸は再びカレーに視線を落とした。比叡は期待に満ちた眼差しで、その様子を見守っている。
――もう、後戻りはできない。
峯岸は覚悟を決めると、震える手でスプーンを伸ばし、カレーを一口すくい上げた。
(……案外、見た目だけで味は普通なのかもしれない。)
そんな淡い期待を胸に、峯岸はゆっくりとカレーを口へ運んだ。
「…………」
口に入れた瞬間、カレーとは思えない味が口いっぱいに広がった。いや、目を閉じて意識を集中すれば、微かにカレーらしき風味は感じられる。だが、それ以外の何とも形容しがたい味がすべてを塗り潰していた。比叡には悪いが、これは到底カレーとは呼べない代物だった。下手をすれば、周囲で机に突っ伏している艦娘たちのように、その場で意識を失ってもおかしくない。だが、比叡が目の前にいる以上、それを顔に出すわけにはいかない。峯岸は必死に表情を取り繕い、何とか飲み込んだ。
「ど、どうですか……?」
期待と不安が入り混じった表情で比叡が尋ねる。
「……比叡。」
「はい!」
「今日の午後は空いているか?」
「はい、空いていますけど……どうかしました?」
「カレーの特訓だ。」
「えっ?」
「カレーを徹底的に練習するぞ。」
「えぇっ!?」
突然の宣言に、比叡は目を丸くした。その様子を見ていた龍驤が、ニヤニヤしながら口を開く。
「それで〜?感想はどうなん?」
峯岸は無言のままスプーンでカレーをすくう。
「……ん?」
次の瞬間、そのまま龍驤の口へ突っ込んだ。
「むぐっ!?」
不意を突かれた龍驤は反応する間もなく飲み込んでしまう。数秒間、ぴたりと動きが止まる。そして龍驤は慌ててコップを掴み、水を一気に流し込みながら悶え始めた。それを後ろ目に峯岸は比叡と共に厨房に入って行った。
「よしっ、じゃあ一から作っていくか。」
そう言って厨房へ入り、いざカレーの練習を始めようとした、その時だった。
「ちょ、ちょっと待ちぃ!」
「よしっ、じゃあ一から作っていくか。」
そう言って厨房へ入り、いざカレーの練習を始めようとした、その時だった。
「ちょ、ちょっと待ちぃ!」
「おっ、生きてたのか?」
「誰のせいやと思っとるんや!よくもやってくれたな?」
「自業自得だろ。それで、ここまで来たってことは……またあのカレーを味わいたくなったのか?」
「ちゃうわ!君らだけで料理させるんが心配で仕方ないから、非番やった伊良子ちゃんに来てもらったんや。」
「そうなのか?それは申し訳なかったな。」
「いえいえ。料理を作ること自体は悪いことではありませんから、謝らないでください。」
伊良子は苦笑しながらそう答える。すると、比叡がおずおずと口を開いた。
「あの……私のカレーって、そんなに駄目でした?」
「…………」
峯岸と龍驤は互いに顔を見合わせる。
「……あー、何と言うか。この際だから、はっきり言うが……」
峯岸は比叡には悪いと思いながらも、先ほど食べたカレーについて正直に伝えた。最初は黙って話を聞いていた比叡だったが、次第に目に涙を浮かべ始め泣き始めてしまった。予想外の反応に、峯岸は慌てて比叡を慰めようとする。
「君、それはないわ……。それも比叡は仮にも乙女なんやで?」
「は?じゃあ、どう言えば良かったんだ?龍驤も同じ感想だっただろ?」
「冗談やって。まあ……辛かっただけや。」
「今度、演習しろ。その根性を叩き直してやるよ。」
「上等や。その言葉、そのまま返してやるわ。」
「まぁまぁ、落ち着いて下さい。」
「ああ、すまん。」
そうして龍驤は比叡の肩を軽く叩く。
「ほら、比叡。そろそろ泣き止みや。」
「はいっ!」
龍驤の一言を聞いた瞬間、比叡はまるで何事もなかったかのように涙を拭った。あまりにも切り替えが
早い。峯岸はその比叡のテンションについて行けず頭を抱えた。
「それでは、比叡さん。一度、一からカレーを作ってもらえますか?」
「一からですか?」
「はい。実際に作ってもらわないことには、どこに原因があるのか分かりませんから。」
「なるほど……。分かりました!では、比叡、行きます!」
そうして比叡は厨房の奥から調理用の材料を持ってきた。峯岸が確認すると、そこに並んでいるのはジャガイモ、ニンジン、タマネギ、肉など、ごく普通のカレーの材料だった。
(……材料だけを見る限り、何の問題もないな。)
むしろ、これだけを見るなら普通のカレーが出来上がるとしか思えない。
「では、まず野菜とお肉を適当な大きさに切っていきます!」
比叡はそう言うと、包丁を手に取って野菜を切り始めた。
トントントン――。
小気味よい音が厨房に響く。その手つきは非常に慣れており、野菜を切る速度も正確さも申し分ない。どう見ても料理が苦手な人の手つきではなかった。
「おお、上手いやんか。うちより上手なんとちゃうん?」
龍驤が感心したように比叡の手元を覗き込む。
「なんだ?龍驤は料理ができないのか?」
「ちゃうわ!うちも料理ぐらいできるわ!」
「あははは……。」
そんな二人のやり取りをよそに、比叡は黙々と作業を続ける。やがて、すべての具材を切り終えた。
「はいっ!具材を切り終わりましたので、次は鍋に油を入れて、野菜とお肉を炒めていきます!」
「ここまでは何も問題ないな。」
峯岸はそう呟きながら、比叡の調理を見守る。鍋に油を入れ、切った野菜や肉を炒めていく。ジュウジュウと音を立てながら具材に火が通っていくと、厨房には食欲をそそる良い香りが漂い始めた。
「……いい匂いだな。」
ここまでの工程を見る限り、何の問題もない。むしろ、これだけを見れば、あのどす黒いカレーがどうやって出来上がるのかが理解できない。峯岸は困惑した表情で比叡の調理を見つめていた。
「ここで水と紅茶を少し加えて、10分から15分ほど煮込んでいきます!」
「紅茶か。これを入れたらどうなるんだ?」
「紅茶を入れると、野菜やお肉の旨味が引き立って、深みのある味わいになるんですよ。比叡さん、よくご存じですね。」
「これはお姉様に教えてもらったんです!」
「金剛にか……。」
峯岸は鍋の中を覗き込みながら首を傾げる。
「しかし……ここまで見ている限り、何もおかしくないぞ。ここからどうやって、あのカレーが出来上がるんだ?」
そして、ふと疑問に思ったことを龍驤に尋ねる。
「そういえば、龍驤たちはずっと比叡のカレーを食べていたんだろ? 原因を調べようとは思わなかったのか?」
「うちにも分からん。たぶん、みんな『比叡のカレーはこういうもんや』って諦めとったんちゃう?」
「酷いですよ!」
「そう言うてもなぁ……毎回出てくるんは、あのカレーやったからな。」
「なるほど……。」
伊良子が鍋を覗き込みながら考える。
「ここまでの工程に問題がないのであれば、ルーを入れる時に何かを加えているのでしょうか?」
「だろうな。」
峯岸は腕を組みながら頷く。
「……もう嫌な予感しかしない。」
「疑いすぎですよ!」
「だがなあ。」
それから10分ほど経った。
「おお……いい匂いだ。」
鍋から漂ってくる香りは、先ほどまでのものと変わらず、普通のカレーそのものだった。
「さて、ここから火を止めてルーを入れ、溶かしていきます!」
比叡は鍋の火を止め、カレールーを手に取る。
「そして、ここで比叡の隠し味です!」
(絶対これが原因だろ。)
峯岸は心の中でそう確信し、比叡の手元を注視する。
すると――。
比叡が取り出したものを見て、峯岸は目を見開いた。
「まず初めに、パ◯ロンにリポ◯タン、そしてア◯ナミン……それからアミノバ◯タルにモ◯エナ……」
「ちょ、ちょっと待て!」
峯岸が慌てて比叡の手を止める。
「えっ?」
「いいから、その手を止めろ! 比叡、今何を入れようとした?」
「えーと……パ◯ロンです!」
「いや……え?」
峯岸は思わず言葉を失った。
「……何で入れようとしてるんだ?」
「隠し味です!.......皆さん、どうかしましたか?」
あまりにも堂々とした比叡の様子に、峯岸、龍驤、伊良子の三人は揃って絶句した。
「いや……ま、まあ、それが隠し味だとしてだ。一体なぜ、それを入れるんだ?理由を教えてくれないか?」
「理由ですか?それはですね、これを入れると皆さんの疲労回復や栄養補給ができて、免疫力も上がって元気になるんですよね?」
「いや、一つも合ってないが? それに『ですよね?』って……まるで誰かに教えてもらったみたいな言い方だな。」
「合ってないんですか?」
「ああ。」
「秋雲さんに、『こうしたら皆さんが元気になる』って教えてもらったんです……。」
「秋雲が?」
「はい。どうしても皆さんを元気づけたくて、どうしたらいいのか困っていたら、秋雲さんが『こうしたらいい』って教えてくれたんですよ。」
「そうか……。秋雲には後で話を聞くとして……。」
峯岸は一度ため息をつくと、比叡に向き直った。
「比叡、隠し味なんて入れなくても、十分みんなを元気づけることはできるぞ。」
「そうなんですか!?」
「ええ。実は、カレーにそんなものを入れる必要は無いんですよ?」
伊良子が説明すると、比叡は驚いたようすで、これまで自分がしてきたことが、逆効果になっていたと知った比叡は、見る見るう肩を落として行った。
「私……今まで、皆さんを元気にするつもりで……逆に大変な思いをさせていたんですね……。」
「まあ、そう落ち込むなって。」
峯岸は苦笑しながら比叡を励ます。
「比叡がやったことは、みんなを元気にしたいと思ってやったことだろ?その気持ちだけでも十分すごいことだよ。」
「……そうですか?」
「ああ。」
「比叡さん。原因も分かったことですし、もう一度カレーを作って、皆さんに振る舞ってみてはどうですか?」
伊良子が優しく提案する。
「ええ!?で、でも……私が作って、本当に大丈夫なんですか?」
「はい。隠し味を入れるところまでは完璧でしたから、自信を持って大丈夫ですよ。」
「せや。自信持ちや。」
「はいっ!この比叡、精一杯頑張ります!」
比叡は元気よく返事をすると、カレーの材料を取りに厨房の奥へ走っていった。その姿を見送りながら、峯岸はぽつりと呟く。
「……てっきり、金剛が余計なことを教えたのかと思ったんだがな。」
「それ、偏見やで。金剛も意外と料理上手いんやで。」
「そうなのか? いつも紅茶ばかり飲んでいるあいつのことだから、変なことでも吹き込んだのかと思ったよ。」
そうして夜になり、任務を終えた艦娘たちが次々と食堂へ集まり始めた。食堂へ近づくにつれて、どこからともなく良い匂いが漂ってくる。
「良い匂いがするネ!この匂いはカレー?」
「おお、金剛か。そうだ。今日はカレーだぞ。」
「おお!峯岸ネ!貴方も作ってたんデスカ?」
「いや、俺は何もしてない。お前の妹が作ったカレーだ。」
「ああ!比叡ですか?」
「お姉様。それって大丈夫なんですか?」
「安心しろ。味はこの俺が保証する。一度、騙されたと思って食べてみてくれ。」
「んー、峯岸がそこまで言うなら食べてみるネ。それに、私の可愛い妹が作ったものなら食べなきゃダメですネ!」
そう言って金剛たちは席に着き、カレーを注文する。しばらくすると、比叡がカレーを運んできた。その様子を、周囲の艦娘たちは息を呑みながら見守っている。以前の出来事を知っているだけに、誰もが少しばかり不安そうな表情を浮かべていた。
「お姉様……」
「比叡、随分頑張ったそうネ?」
「はい!ただ……上手くできたかどうか……」
「自信を持って大丈夫ネ。私の可愛い妹なんだから、きっと大丈夫ヨ!」
金剛はそう言って笑い、スプーンを手に取る。運ばれてきたカレーは、見た目からして以前とはまるで違っていた。香ばしい匂いが漂い、見るからに美味しそうである。金剛はカレーを一口すくうと、そのまま口へ運んだ。
「どう……ですか?」
「…………」
金剛はしばらく黙ったままカレーを味わっていた。比叡は不安そうに金剛を見つめる。
そして――。
「とっても美味しいネ! 比叡、よく頑張ったネ!」
金剛は目を輝かせながら、次々とカレーを口へ運んでいく。
「本当ですか!?」
「もちろんネ!こんなに美味しいカレーを作れるなんて、比叡も立派な料理人ネ!」
その様子を見ていた他の艦娘たちも、恐る恐るカレーを口にする。
「……美味しい!」
「本当だ……!」
「これなら何杯でも食べられそう!」
先ほどまでの不安はどこへやら。食堂のあちこちから「おかわり!」という声が上がり始めた。
「どうだ?作って良かっただろ?」
「はい!峯岸さん、龍驤さん、伊良子ちゃん。本当にありがとうございます!」
「何も感謝されるようなことはしていませんよ。カレーを作ったのは比叡さんなんですから。」
「そうやな。うちらはちょっと手伝っただけや。」
「それに、比叡自身が頑張ったからこそ、こんな美味しいカレーが出来たんだ。」
「はい!」
比叡は嬉しそうに笑う。
「峯岸さんも食べてください!」
「ああ、俺も今すぐ食べたいところなんだが、少し用事ができてな。また後で食べに来るよ。」
「そうですか……。絶対に食べに来てくださいね!」
「ああ、もちろん!」
そう言うと、峯岸は龍驤とともに食堂を後にした。その後もカレーは大好評だったようで、用意されていたカレーは瞬く間になくなっていった。そして最終的には、鍋の中身が完全に空になるほどの盛況ぶりだった。嬉しさのあまり、比叡は金剛と抱き合っていた。
ーーーーーー
「あれ?艦長、戻っていたんですか?」
「ああ、まあな。」
「食堂が随分と賑わっているようですが、何かあったんですか?」
「ん?今度、副長も行ってみろ。きっと驚くぞ。」
「そうですか。……ということは、あのカレーですか?」
「ああ。比叡が作ったカレーだよ。」
「艦長がそこまで言うなら、今度食べに行ってみます。」
「ああ、ぜひそうしてくれ。」
峯岸はそう言って少し笑うと、副長へ声を掛ける。
「副長、今日はもう上がっていいぞ。あとは俺がやっておく。」
「いいんですか? では、お言葉に甘えて……。あっ、そういえば艦首に秋雲が縛られていましたが、あれはどうしたんですか?」
「ん?……まあ、ちょっとな。放っておいて大丈夫だ。」
「そうですか……。分かりました。」
副長は少し不思議そうな顔をしながらも、それ以上は何も聞かず、艦橋を後にした。峯岸は一人になった艦橋から、食堂の様子を眺める。そこには、楽しそうに食事をする艦娘たちの姿があった。その光景をしばらく眺めた後、峯岸は残っていたカレーを一口、口へ運ぶ。
「……うん。美味いな。」
そう呟き、峯岸は小さく笑みを浮かべた。艦首では、未だに秋雲が縛られたままになっていたが――それについては、今は誰も気に留めなかった。
今回はここまでです!読んで頂きありがとうございました!ではまたお会いしましょう!それでは!