どんな女がタイプだ?   作:ブラザー

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投稿する度にどうしても評価が下がってしまうので投稿しなければこの凄い記録を保存出来るのでは? と思いつつもいつの間にか1万超えそうで怖いので投稿します(?)




怒りの矛先

戦闘訓練を終えた次の日。

特に何事もなく、A組は午後のヒーロー基礎学があるらしいが、B組は普通の授業だ。

今は英語の時間でプレゼント・マイクが教壇で教鞭を執っているところ。

授業に関しては問題ないのだが、たまにテンションがハイテンションだ。

それが長所なのだろうが。声がよく通ると言えば通る。

 

『教職員に伝達します。手の空いている職員は至急、職員室にお集まりください。繰り返します。手の空いている職員は…………』

 

「なんだぁ? この前といい今回といい珍しいことばっかだな。つーわけで俺は出なくちゃなんねえ。リスナーたちはしばらく自習しててくれ!」

 

そう言って教室を去っていくプレゼント・マイクを見送った俺は顎に手をやって思考する。

普通の学校ならばまだ納得できる。一般人だからだ。

しかし雄英高校は全員がヒーローで知名度もかなりある人たちが多い。

納得いかないのがそこだ。

ヒーローである職員全員を集めるほどの緊急事態。

マスコミが侵入してきた際ですらこんなことはなかった。

つまり、ヒーローを集めるほどの緊急事態が起きている。

考えられるとすれば……。

 

「何かTroubleでもハッセイしたのでショーか?」

「どう思う、東堂」

「何か知ってる?」

「……」

 

隣の角取は分かるが、左右斜めの庄田と柳まで振り向いて聞いてくる。

それどころか目の前の吹出と左側の鱗すら俺に視線を向ける始末だ。

なぜ俺に聞くのか。

 

「まぁ予想出来ないことはないが……なぜ俺に聞く?」

「そりゃ東堂が1番分かりそうだからなー」

「僕も同意見だね、聞かせてくれ」

 

鱗が俺の疑問に答えてくれたが、物間まで参加してきて、次々と席から立ち上がって俺の周囲に群がって来たかと思えば視線が突き刺さる。

このクラスでの立ち位置を理解出来たような気がした。

普通ここは拳藤辺りに聞くものだと思うのだが、近くにいる彼女に視線を向けたら頷かれるだけだ。

どうやら投げられてしまったらしい。

仕方がないか。

 

「確証はまだない。しかしプロヒーローである教員を全員集めるという異常事態。マスコミが侵入してきて日が浅いこと。そして今A組の授業がヒーロー基礎学ということ。これらの観点から訓練場で起きたことは予想が出来る」

「訓練場? 雄英じゃなくって?」

「ああ、どうやらA組のヒーロー基礎学は人命救助(レスキュー)訓練でバス移動するほどの距離にある場所らしい。それにもしA組が雄英の敷地内でやっていたならこのようなことは起きていない」

「ふむ、雄英ならば起きていない……とは、どういうことですかな?」

 

取蔭の疑問に答えると、宍田から予想通りの言葉が来た。

予め確証はないと告げているため、言っても問題ないだろう。

 

「雄英ならばプロ全員を相手取る必要があるからだ。それが意味することはつまり、おそらくA組はヴィランの襲撃に遭ったのだろう」

「ヴィラン!?」

「なるほど、謀られたということですか。であるならば断罪せねばなりません」

「そうだ! 俺達も行かねえと!!」

「いや待てって! 先生たちが行ったんだから私らが行ったら邪魔になるって!」

「その通りだ。鉄哲、それにさっきも言ったが確証はない」

 

クラスに衝撃が走ったが、先走ろうとしていた鉄哲は拳藤に止められていた。もし行ってたらどちらにせよ俺が入れ替えて阻止していたが。

しかし確証はないとは言ったが、実は結構あったりする。

なぜならあまりに()()()()()()()()()()からだ。

俺自身も予想通りとは思ってないが、マスコミが入ってきた際に何もしなかったこと。

これは以前予想付けたようにカリキュラムを確認するためと思っていい。相手は雄英生を含め教員を相手にする戦力まではないのだろう。

だが、ただのヴィランがそんな危険を侵すかと言われれば微妙なところだ。

例えば裏に大きな力を持つ何者かが居て、俺たちがヒーローとして教養を受けてるように、そのヴィランに()()()()()()()に動かしてるのか。

この辺りは情報が無さすぎるため、考えるだけ無駄だ。この辺りはいい。

 

それよりヒーロー基礎学の時間。

オールマイトが受け持つ授業であり、狙いは平和の象徴を亡きものにすると見ていいだろう。

であればなぜA組のタイミングなのか。

ここは分からない。

しかし予想とはいえわざわざ報告したんだ。最悪の事態を避けられたならばいいが……待つしかないな。俺一人で行く訳には行かないだろう。

俺ならば規格外(バケモノ)が相手でない限り大体の相手でも時間稼ぎ程度なら何とかなるだろうが、今教職員が居なくなってる状態。

つまり雄英はもぬけの殻とも言える。

下手に俺まで居なくなったとして雄英のセキリュティを突破してくる者が居たら対処出来る人間は居ないだろう。2年、3年の戦闘力は未知数で安心出来るものではない。

少なくとも全職員が向かったのは雄英のセキリュティなら問題ないという考えではあるだろうがな。

だがそれに過信するのは良くないだろう。今回は俺は向かわずにもしもの時に対処出来るように居た方がいい。

 

「ひとまず連絡はしてみるか」

「誰にするんだ?」

「A組に知り合いがいる。確認した方が早いだろう」

「もう隣のクラスの連絡先持ってんのか!? コミュ力どうなってんだお前……!」

「いや、俺は特に何もしてないが……?」

 

円場が戦慄したように見つめてきたが、実際に俺は自らは言っていない。

向こうから言ってきたのだ。

しかし既に察していた小森を除いて、食事を共にした3人は気づいたらしい。

 

「ああ……彼女か」

「ん」*1

 

スマホを取り出すと最近連絡先が増えたが、唯一A組にいる友人である葉隠に電話を掛ける。

しかし全く出る様子がなく、大人しく消すと様子を聞くようなメッセージを送る。

暫く経っても既読はつかない。

となると、やはり連絡すら取れない状況なのだろう。

スマホを置いてきたという可能性もあるといえばあるが、今の世代の人間が持ち歩かないとは思えない。

電話が出れない状況にあるのか、実際にヴィランの襲撃に遭って電波を妨害するような個性を持つヴィランがいるのか。それとも普通に授業中なのか。

その辺は定かではないが、俺としては2番目の説だと思っている。

でなければマスコミの件がイマイチよく分からなくなるからだ。目的もなしにあんな騒動を起こさないだろう、普通。

 

「出ないようだ。だが、俺たちに出来ることはない。大人しく待つとしよう」

「だな。とにかく先生たちに任せて私らは騒がずスムーズに話を聞けるようにしておこう。先生たちが戻ってきたら事情を説明してくれるだろうしね」

 

ようやく拳藤が委員長としての仕事をしてくれた。

口にはしなかったが、まず前提として教員が無事であること、になっている。

もしヴィランの襲撃に遭ってるならば生徒を含め、先生すら亡くなっているかもしれない。プロヒーローだって死ぬ時は死ぬ。

戦場では誰が死ぬか分からないものである。

1番最悪な事態はオールマイトの死、だ。オールマイトがいる授業にわざわざ襲撃してくるとしたらオールマイトを殺せる何かを用意してると考えるのが自然だ。

もし彼が死ねばオールマイトによって築かれた平和の地盤が崩れさり、ヒーローの信頼を含めて失墜していくだろう。

少なくとも襲撃に遭ったならば雄英の信頼は落ちるだろうが……。

……最悪の事態になってないことを願うとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、戻ってきたブラドから1年A組の救助(レスキュー)訓練中にUSJという場所でヴィランの襲撃に遭ったことが説明された。

オールマイト含め教師陣は怪我を負い、生徒に重傷者が一人。ただ生徒に関してはヴィランにやられたわけではなく、自身の個性によるものらしい。

後者に関しては生徒がヴィランにやられたとなったら問題になるから明かしたのだろう。不安を煽るだけになってしまうからだ。

自壊ならば限界を超えた力を使ったのか、もしくは扱えない力を使ったかのどちらかになる。

そうせざる得ない状況だったとしても、怪我したのは自業自得ということになる。

そして流石にヴィラン連合とやらの襲撃に遭ってすぐに学校というのはどうかと思ったのか、色々と事後処理などもあるからか急遽明日は臨時休校となることが決定した。

A組の生徒たちのことを思ってのこともあるだろう。

まだ雄英に入ったばかりだ。

命を賭けた、本当の戦いというものを経験した。心構えもまだ出来てない時期に経験したにも関わらず乗り越えた。

その経験はこれからの未来に大きく役立つ。

 

下校前にブラドから声を掛けられて感謝されたが、俺の言葉を予め聞いていたからかオールマイトが先に駆けつけたらしく隣のクラスの担任、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ようだ。

どんな個性が知らないが最悪の事態にならなかったのはいいことだろう。殺し合いでは命が散ることなど多々ある。

俺は反転術式を使えないしアウトプットも出来ないため、大怪我をした相手を治すことはできんしな。

今思っても反転術式のアウトプットを出来ていた存在の大きさを実感出来てしまう。この世界でも治癒系の個性はあるが、何かしらのデメリットはあるものだ。

それこそ規格外な力を持っていた場合は別だが、そんな人物はそうそういない。居たら表になってることだろう。

 

どちらにせよ1年生で実戦を得た。

B組は訓練しかしていない。

この差がA組とB組の差を大きく開く可能性もあるな。

俺も油断しない方がいいかもしれん。才ある者はどの時代、どの世界にも必ず居るものなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

臨時休校となった次の日。

臨時休校だからといってこれといって特別何かすることはなく、いつも通りに過ごす。

せいぜい夜にある特番を見るくらいだろう。既に録画はしてあるため、あとはリアタイの時間を待つのみ。

そのため何をしてそれまで時間を潰すか考える。

いつもなら小森が居るはずなのだが、買い物に行くと言っていた。

それまで一人の時間があるわけだが。

一人になったからといって特別何かやれることがあるわけもなく。

かといってヴィラン退治に参加するわけにも行かない。仮免もなしでヒーローの真似事をすると非合法、つまりヴィジランテになる。

この辺りはどうしようもないな。無秩序なら今頃戦争になっているだろうし。

他のことを考えようと思考を切り替えようとしたところで、ふと携帯が鳴った。

どうせ用がないので詐欺かどうかだけ確かめるために画面を見ると、葉隠から連絡が来ている。

今まで既読付かなかったが電話までする必要は無いだろう。メッセージの方が手っ取り早いだろうに……。

出るが。

 

『あ、もしもし?』

 

耳から聞こえてくる声質は問題なさそうだ。

一応戦場に身を置いた身だ。ヒーローになるならある程度の覚悟はしてるだろうが、実戦に身を置く者の方が少ない。

実際に経験し、心折れる者や病む者だって中に入る。

その点では問題ないらしいな。

 

『ごめん、今までメッセージ返せなくて』

『気にするな。それよりヴィランの襲撃に遭ったのだろう?』

『うん……あっ、けど私は全然大丈夫! というか近くに轟くんっていう推薦入学の子が居てね、私がなにかすることもなく終わっちゃったから』

『そうか、大丈夫ならいいが』

 

ふむ……やはり推薦入学というだけあって相応の実力を持っているようだ。いや流石エンデヴァーの息子か。

どういう状態だったかは分からないがあっさりと制圧したならば他より一線を化してると見ていい。

逆に対して戦闘能力がないであろう葉隠は轟とやらと一緒に居たのは良かったと言えるだろう。

 

『本当に凄かったよ〜! クソ強かった!』

『まぁ実力ある者が近くに居たならば運が良かったのだろう。明日から学校がある。今日は一日中休んでるといい』

『うん、ありがと。東堂くんは普通だね?』

『ん? 別に俺が襲撃に遭ったわけじゃない。関係ないといえば関係ない。それに襲撃に遭うくらい生きていたら起きるものだろう』

『それは無いと思うよ!?』

 

百鬼夜行は別として、東京校と京都校の術師が競い合う団体戦の時にも特級呪霊の襲撃に遭ったらしい。

俺としてはその経験も受け継いでしまってるため、襲撃程度で感情が揺さぶられることはない。

第1、襲撃してきたならばこっちは返り討ちにするしか選択肢がないだろう。逃げ場を防がれていたならば特に。

 

『だがヒーローを目指す以上、小さな経験から大きな経験を積んでるのでは大きな差が生まれる。今回ヴィランの襲撃に遭ったならば、その恐怖を知っただろう。大きな経験を得ただろう。その経験は決して忘れるな』

『東堂くん……』

『人は経験から次に活かすことが出来る。今回の経験が未来のお前の助けになる。だからこそ次に似たようなことがあったら何が出来るのか、逆に今回何が出来たのか、出来なかったのか。これから何を出来るようにすればいいのかを考えるといい。今回得た経験を活かすことが出来たならば葉隠は今よりレベルアップ出来るだろうからな』

『何が出来なかったのか……かぁ。うん……確かに私に足りないことはいっぱいあるって分かったかも。それをどう補うか考えていけばいいんだよね』

『そうだな、それが自分の為になるだろう。人間、ひとりでなんでも出来ると思ってるほど必要な時に出来なくなることがあるものだ。逆に出来ないと分かってるなら出来ない者なりに取れる選択肢を生み出せる。あとはそのピースを埋めるためにどう行動していくか、それを考えていくといいだろう』

 

少なくとも今のヒーローは危うい立場にある。

まるで渋谷の時と似た状況だ。

今回のように襲撃があったとして、もしこれでオールマイトが戦闘不能にでもなっていたなら悲惨な未来になっていただろう。

だからこそ俺も実力をつけていかなければならないのだが、どう狙おうと考えても黒閃を使えない今は基礎能力を高めていくしかない。

せめて虎杖(ブラザー)のような存在が居ればタッグでの戦闘力は大幅に上昇するのだが……実力もあって親友認定出来る存在はB組には今のところいない。

 

『なんだかすごいやる気出てきた! 私なりに頑張ってみる!』

『まぁお前はまだ可能性の塊だ。個性の使い方次第ではもっと化けるだろう』

 

透明化という個性。

もし常に実体化していたとして、サポートアイテムごと透明になったり部分的に透明になることが可能になれば?

この場合腕まで透明にしていたら相手はリーチや狙いが分からなくなる。もしくはどんなサポートアイテムを持ってるのかが分からなくなる。

成長次第では本当に厄介な存在になれる可能性を秘めているのだ。

見えないというのはそれだけで十分脅威になれる。

 

『えーそう? 自分じゃあまり思いつかないんだよね……あ、そうだ。今日時間ある? 一緒に考えて欲しいなー!』

『断る』

『ええーっ!? そこはOKする流れじゃない!?』

『今日は俺にとって命に関わる用事がある。間に合わなければ俺は死んでしまう』

『大袈裟すぎない?』

 

俺にとっては生きる目的のひとつだ。

全く大袈裟でもない。

気が向いたら方法を考えてやってもいいとは思っているが、その後は少し雑談をして電話を切った。

と言っても一方的に雑談されていただけだが。

元気ならばいいだろう。トラウマになってる様子もなかったしな。

電話を切って少ししたら、家の鍵が開く音が聞こえた。

鍵を持ってる者は俺を除けば誰か特定するのは容易なため、玄関に向かう。

そして小森が持っていた荷物を代わりに持つ。

 

「葵、誰と会話してたの?」

 

――家に居なかったはずだが声が漏れていただろうか。

あまり大きな声は出したつもりはないが、別に隠すほどの相手でもないため、素直に葉隠と通話したことを告げた。

 

「ヴィランの襲撃に遭ったもんね。仕方ないノコ」

 

俺がメッセージ飛ばしてもあって既読が付いてなかったことを知ってるからか何やら納得した様子だったが、彼女が納得してるならいいだろうと俺は隣に来た小森と一緒にキッチンに向かった。

これでも俺は料理は作れるのだ。

中学生になって小森が何故か落ち込んでいたのは記憶に新しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

普段と変わらない日々を過ごした、翌日。

休校明けの学校。

テレビでもそうだったが、新聞でもやはり話題となっているのはA組のことばかりだった。

2日も経っている上に天下の雄英が襲撃されたのだ。

そうなるのは仕方がないと言えるだろう。

少なくともB組は襲撃に遭っていないため、皆元気そうだ。休校前と変わらず普通に登校して全員集まっている。

 

「皆、おはよう! ヴィランの襲撃に関してはすまなかった。防犯については再度徹底して万全を期す。今度のようなことは起こらないように俺たち教員も出来ることはやっていくつもりだ。今回のことで不安になってしまったかもしれないが、雄英を、俺たち教員を再び信じて欲しい」

 

開口一番にブラドがヴィランの襲撃の件を話題に挙げていた。

 

「そんな、先生方は悪くないです」

「ヴィランの襲撃は予測出来ないかと」

 

代表してか拳藤と骨抜が声を上げていた。

これに関しては俺も同意だ。今まで何度もこんなことがあったならともかく、そういうわけではない。

雄英に襲撃を掛けるような者が居る方がレアなケースだろう。

複数のプロヒーローがいる場所にわざわざ襲撃しにくるなんて普通はないのだ。

予想しろというのは酷な話だ。

まぁマスコミの件があったのだからもう少し警戒すべきだったと言われてしまえばおしまいだが。

 

「そう言ってくれるのは嬉しいが……とにかく今後はもっと警備を良くしていくということだ。そして連絡事項だが、もうすぐ雄英体育祭がやって来る!! 知っている人も多いだろうが、雄英体育祭は日本中が注目するビッグイベントの1つ!! 日本にいるプロヒーロー達がスカウト目的でお前達を見る! 話題性こそA組に負けてはいるが、ここで名のあるヒーローに見込まれれば、得られる経験値も世間からの注目も高まる!」

 

雄英体育祭。

スポーツの祭典と呼ばれたかつてのオリンピックに代わり、全国を熱狂させている雄英の行事だ。

大きなイベントが何かと言われればこれだと言うものも多いだろう。

かと言って俺は別にそこまでやる気が出ない。

 

「けどヴィランの襲撃があったのに大丈夫なんですか?」

「批判とか来るかもしれないよねぇ」

「テレビでも持ち切りだったしな」

「もちろん批判はくるかもしれん。だが警備は例年の5倍に強化し、逆に開催することで危機管理体制が盤上だと示す考えらしい。何より君たちにとってチャンスでもある雄英体育祭は簡単に中止していいような催しではないということだ!」

 

泡瀬の質問に他の者たちも同意していたが、ブラドの答えに納得した様子だった。

日本中が注目する上、年に1回しかなく、3回しかないチャンスというのも大きいか。

 

「世間の注目はA組に集まってはいるが、逆に言えばこれもまたチャンス! B組がA組に勝てばB組の話題も自ずと大きくなる! 残り期間は2週間と短いが、各自準備を怠らないように! 以上だ!」

 

そう言ってブラドが話を切り上げた。

準備期間であっても授業は変わらずにある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み。

小森、物間、小大、拳藤は安定のメンバーだが、柳、庄田、鉄哲、宍田、回原、角取とまたメンツが増えていた。

そのうちB組の食堂組が集合するのではないだろうか。

 

「ニッポンのカレーはとっても美味デース!」

「カレーは美味いよな」

「同意しかない」

 

目を輝かせて口に含んでいる姿が見えたが、答えていた回原と庄田の他に同意する者が多数いた。

実際日本人はカレーが好きかどうかという話になれば好きと答える方が多い。

食べやすく日持ちもする上、スパイスによっては変わるのもあるだろう。

 

「体育祭、か……」

「楽しみだよな! 次は負けねえからな東堂!」

「燃えてるな鉄哲」

「暑苦しい」

「誰であっても燃えるものだと思いますぞ」

 

やはり体育祭は注目の的なのだろう。

プロヒーローが見るというのはそれほどに大きい。体育祭の活躍が目に留まり、卒業後にコネを得られるのもあるかもしれない。

だがやはり魂を震わせてくれるような相手と出会ってないのもあって楽しめるかどうか分からない以上、やる気があるかと言われればそんなにない。

もしつまらないものだったら退屈してしまう。

 

「東堂、君は違うみたいだけど? 頼むよ、君はB組のエースなんだ。エースがやる気なければA組打倒の道は遠のくだろう?」

「そう言われてもな」

 

呪術師と違い、それほど才能の差というのも味わう経験がない。

油断はしないが脅威と思うほどでもないというのが現状だ。

仮に経験からB組より強くても圧倒するレベルではないだろう。

 

「葵なら大丈夫。やる気が出なくても負けないノコ」

「ん」*2

「まあ負ける姿は考えられないよね、私と鉄哲二人がかりでも勝てなかったし」

 

心配せずとも負けるつもりはない。モチベーションが低いだけで戦闘力に変化はない。

ただ自分の成長が出来ない退屈な戦いに誰がモチベーションを上げられるのか。

俺の魂の友(ブラザー)は果たして雄英に、この世界に居るのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後になり、ブラド先生に呼ばれた東堂はこの場にはいない。

鉄哲は敵情視察で拳藤は暴走した時用に行ったけど、教室の外の様子を見た僕は教室に戻る。

 

まるでB組なんて眼中にないというように学内の注目も外部の注目もA組ばかりに集まっている。

……面白くないな。

 

少しして教室のドアが開かれ、東堂が入ってくる。

彼は教室の外の様子を見ただろうに、正常だ。

すぐに小森が駆けていくのが見えて、僕もまた近づいていく。

東堂の実力は間違いなくB組トップ。入試1位という記録は伊達ではないと実力で証明した。

2位の小森もそうだ。

僕はまだしも、2人はもっと注目されるべき人間だろう。

僕はこの2人だけはA組に絶対に負けてないと断言出来る。B組は負けてないとは思ってるが、2人ほど確信を持っては言えない。

でもこの2人だけは言える。

言える、が。

じゃあなんで、この2人が話題に上がらない?

A組。ヴィランの襲撃を乗り越えた。

たったそれだけ。

たったそれだけで雄英のヒーロー科はA組しかいないというように持て囃している。

そんなのおかしいだろう。

僕たちだってA組ほど大きな話題性はないが、同じ時期に入学して頑張っている。

避難訓練や救助訓練もしたさ。

こっちには入試1位と2位もいる。なのに話題にはならない。

A組の彼らは運がなかった。トラブルに巻き込まれた結果。

それは理解しているし同情はするが、だからといって納得できるはずもない。

B組だって頑張っているんだ。

 

「東堂」

「なんだ? 俺は急ぎで帰らねばならん」

「ちょっと話したいことがあってね」

 

僕は帰るための支度をしていた東堂に声を掛ける。

A組に生徒たちが集まってたのもあってB組は拳藤と鉄哲を除いて全員居る。

全員居るのは鉄哲が何かやらかさないか心配なのもあると思うけど。

ただ今はこの場にいる全員の視線が僕らに集まった。

東堂はあからさまにため息を吐くと、目で問いかけてきた。

『早く言え』と。

 

「1年の他のクラス……普通科や経営科やサポート科の生徒が大勢A組のクラスに敵情視察で集まっている……それは君も見ただろう? 雄英だけじゃない。テレビや新聞といったマスコミだってまるで僕たちB組なんて眼中に無いというように報道していた」

 

この2日間。

どれだけA組の話題ばかりだったのか。

それも好意的な報道で奇跡の新星だとかプロになった時が楽しみだとか、これからが期待だとかそういったもの。

 

「おかしいじゃないかっ!? 僕たちは同じ時期に入学し、同じように頑張ってきた! 特に東堂と小森は入試において1位と2位! 君たち2人は本来注目され、1番警戒されるべきなのは君たちだったんだよ! A組なんかじゃなくて、君たちだったはずなんだ!」

「物間……」

「ヴィランに襲われた。それを乗り越えた! 確かに彼らの実力もあったんだろうさ、けどオールマイトや先生たちの活躍あってこそ乗り越えられただけに過ぎない! 彼らだけの力ではないだろう!? だというのにどこでもA組A組! 僕たちはなんだ!? 僕たちの立場は!?」

 

僕の名を呼ぶ小森と違い、東堂は表情ひとつ変えずに無表情だ。

どうして君はそんな、何も感じずにいられるんだ……君の活躍はなかったことにされてるんだぞ。倍率の高い雄英をトップ合格。

それだけで十分ヒーローへの道に大きな一歩を歩んでいるというのに……!

 

「君はもっと怒っていい、怒るべきなんだ! 悔しくないのか、許せないと思わないのか。君は何とも思わないのか東堂!! 僕たちのことを居ないように扱う世の中に! 雄英に!」

「だから見せつけてやればいい! 体育祭で君が居るんだと、A組だけじゃないんだと!! さあ、やる気を出してくれ東堂!! 共にA組よりB組の方が優れているんだと思い知らせてやるんだ!!」

 

そう言って僕は手を差し伸べる。

東堂の視線が僕に向かい、次に差し伸べた手に移った。

そのタイミングで教室のドアが開かれる。

 

「えーと……どういう状況?」

 

拳藤が鉄哲を連れて戻ってきたらしいが、それがきっかけとなったのか。

東堂が立ち上がり、椅子を戻して僕の前に立った。

見上げなくては見えないほどに巨体な体。

僕では彼に比べれば華奢な肉体にしか見えないだろう。

そうして東堂はしばらく僕を見つめてきたが、僕は目を逸らさない。

確かな憤りを宿しながら見つめ返して、ついに東堂が僕の手を握るように手を伸ばし、僕はやっとやる気を出してくれたんだと嬉しくなって――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パァン!

 

そんな音共に。

僕の頬には痛みが発せられた。

一瞬何をされたのか分からなくなり、頭が真っ白になる。

 

「東堂!?」

「喧嘩か!?」

「どうした!? 何があった!?」

「物間」

「……東堂」

 

近づこうとする皆を手で静止した東堂がようやく口を開いた。

叩かれた頬から痛みがひしひしと感じられるが、突然打たれたことの痛みよりもその意図が理解出来なかった。

 

「お前の言いたいことはよく分かる。クラスを人一倍大切に思うお前にとってこの状況が面白くないことも。この状況下に憤りを覚えていることも。A組の方が優れていると扱われつつある状況に焦りを覚えていることもよ〜く理解できる」

「だがその怒り、今のお前には余る。その怒りを発揮すべき場所は今ではない。収めろ」

 

そうして――

 

 

 

 

 

 

 

パァン!

 

 

何故かもう一度()たれた。

言ってることはよく分からないけど2度も打つことはないじゃないか……。

しかもさっきより痛いんだけど、泣きそうだ。

 

「晴れたか?」

「……ああ、痛すぎてね」

 

身体を支配していた雲は晴れた。

晴れたけど、めちゃくちゃ痛い。赤くなってないだろうか。ヒビ入ってたりしない?

 

「物間の言葉はお前が抱いた本心そのものなのだろうな。しかしここで言うだけならば、ただの遠吠えにしかならん。A組に対抗心を抱くならば、結果を示せ物間。世間に、雄英に結果を示すに一番良いものは? ちょうどそれを成すことが出来るものが近々あるだろう」

「雄英体育祭……それでB組が優勝する……?」

「そうだ、それだけじゃない。B組が上位を占めたならB組の凄さを思い知らせてやれる。ならばそのために必要なことはなんだ?」

 

まるで教師が生徒を導くように、東堂は僕に考えさせていた。

何が必要か。

A組に勝つには。いやA組だけじゃなく、世間に()()()()()()と告げるには。

 

「強くなること……僕たちがA組なんかよりもさらに強く!」

「Exactly。分かってるじゃないか、つまりそういうことだ、物間」

 

そうだ、こんなにも簡単なことだったんだ。

怒りで前が見えなくなっていた。

冷静さを失っていた。

東堂はそれを僕に教えるために強く叩いたんだ。

そして僕たちには強くなるために頼るべき人物が居る!

 

「東堂、僕を鍛えてくれ!」

「……ん?」

「東堂はA組どころかきっとプロにも通用する! そんな君から教われば僕たちは強くなれること間違いないだろ? 頼むよ」

「確かに東堂は滅茶苦茶強えしな! 俺からも頼むぜ!」

「僕からも頼むよ、東堂」

「名案ですな!」

「確かに強い人に教わる方が合理的」

「いいんじゃないか? 東堂次第だけどさ」

 

鉄哲な賛同して、庄田が、宍田が、柳が、骨抜が、次々と口にしていく。

 

「物間の言ってることも分かんなくないし」

「東堂サンに教わればもっとモーット強くなれマスネ!」

「体育祭で結果を刻んでやろうぜぇ」

「俺もいいとは思うけど、東堂が無理なら仕方ないけどな」

「個人的にはお願いしたいところではあるけどな」

「力ある者から導きの手を受けるのは悪くないですね」

 

強くなりたいと思うのは僕だけじゃなかったようで、気が付けばクラス全体が訓練を志望していた。

東堂はクラス全体を見渡して、口を開く。

 

「火をつけたのは俺か……構わんが、外せない日は帰るぞ。それと拳藤、明日から訓練場の許可を取れるか? 問題ないなら頼む」

「あ、ああそれは問題ないと思う。でもいいのか?」

「自身の言葉に責任ひとつ取れないようなやつがヒーローになれるわけないだろう」

「そっか。東堂がいいならいいけどな。私も助かるし」

「ありがとう東堂」

「俺は俺の責任を負っただけだ。それに自ら強くなりたいと願うのであるならば俺に断る理由はないからな」

 

そう言ってカバンを手に取った東堂は要件が済んだからか、小森と共に教室から出て行った。

B組の実力を世間に思い知らせるためにも強くなろう。A組が主役なんかじゃなく、僕たちもそうなのだと……!!

 

 

*1
確認するのが手っ取り早い。

*2
確かにあまり想像出来ないかも。





前書きではふざけましたが、真面目な話すると体育祭に手間取ってます。
原作と大きく異なるとだけ。
東堂くん強さとしては呪術廻戦で考えたら準特級クラスだと思われる弱体化オールマイト>東堂くんなんだけど、それを抜きにしても学生相手に正面戦闘で負ける未来がね……本人の才能+知能+経験値+呪術廻戦(並行同位体みたいな感じの東堂葵)の経験値が強すぎる。

分かりやすく教室の席表作ったので、どうぞ。
東堂くんだけ席変わってるんで一人だけ出席番号じゃないです。てか原作でも身長考えてあげて欲しい。A組は明かされてるけど何人か一部は見えてないのでは? そこを指摘するのは野暮か……。

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宿儺もどきはスローライフを夢見たい(作者:表梅)(原作:僕のヒーローアカデミア)

呪いの王、両面宿儺として転生した男。▼男は個性社会の裏を知る元公安としての名を捨てて、定食屋を営んでいた。


総合評価:6869/評価:8.42/連載:3話/更新日時:2026年02月26日(木) 08:00 小説情報

どけ!!俺は出久のお兄ちゃんだぞ!!(作者:俺もお兄ちゃんだぞ!!)(原作:僕のヒーローアカデミア)

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総合評価:13206/評価:8.58/連載:37話/更新日時:2026年06月04日(木) 11:00 小説情報

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原作を知らない男が呪術廻戦の世界に転生。▼左半身の不随という天与呪縛を授かった代わりに得た力を、自分や家族、一族の為に使って過ごしていたらある日突然村が焼かれる羽目に。▼その時出会った五条悟に誘われるまま男は呪術高専へ。▼よくあるオリ主加入もの。転生は有ってないようなもの。▼乙骨と同期で呪術廻戦0の時期にスタート。▼主人公は糸使いなので強キャラです。


総合評価:10763/評価:8.38/連載:15話/更新日時:2026年02月16日(月) 17:00 小説情報

【魔法美容師(マジカルエステ)】を得た転生者は栄耀栄華の夢を見るか(作者:好きな念能力は4次元マンション)(原作:僕のヒーローアカデミア)

 主人公『修善寺念治』は気づくとリカバリーガールの孫に転生していた。▼ しかし全く『個性』に目覚めずにいると、4歳の誕生日に個性を発現する。しかもなんとHUNTER×HUNTERの【魔法美容師(マジカルエステ)】だった。▼ これは【魔法美容師(マジカルエステ)】を個性に宿した少年がその力を使って栄華を極めるまでの物語だ。


総合評価:11426/評価:8.4/連載:7話/更新日時:2026年05月06日(水) 22:00 小説情報

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