真夏の午後の陽光が、校舎の窓を白く焼き、屋内プール全体を蒸し風呂のような熱気で包み込んでいた。 高い天井に設置された換気扇が、重苦しい唸り声を上げながら湿った空気をかき回しているが、それは気休めにもなっていない。 水面は窓からの光を反射して、天井にゆらゆらとした網目模様を絶え間なく描き出し、その静謐な光景だけが唯一の涼しげな救いだった。
そんなプールの静寂を切り裂くように、一人の少女が水面へと滑り込んだ。 彼女の名前は光賀蘭。 表向きはどこにでもいる、少しばかりスポーツ万能で天真爛漫な高校二年生だ。 だが、その真の姿は、古より日の本を影から支え続けてきた忍びの門、光賀流の正当なる継承者であった。 蘭の泳ぎは、通常の水泳部の生徒とは一線を画している。 しなやかな四肢が水を捉えるたびに、無駄のない筋肉が紺色のスクール水着の下で躍動し、水流を味方につけて音もなく滑るように進んでいく。 それは泳ぎというよりは、水中を駆ける忍びの歩法そのものであった。
「……ふぅ。やっぱり、修業の後は水に入るのが一番気持ちいいな」
五十メートルを数往復し、プールの縁に手をかけた蘭は、水面に顔を出して大きく息を吐いた。 栗色のボブヘアから滴る水滴が、整った顔立ちを伝って鎖骨の窪みへと流れ落ちる。 ゴーグルを額に上げると、そこには意志の強さを感じさせる大きな瞳が露わになった。 蘭にとって、この放課後の時間は単なる休息ではない。 水の抵抗を全身で感じ、極限まで五感を研ぎ澄ますことで、忍びとしての感覚を磨く大切な時間でもあった。
だが、その穏やかな時間は、突如として訪れた異変によって無残に引き裂かれる。 プールの中心付近で、まるで見えない巨大な石を投げ込まれたかのように、不自然で巨大な渦が発生したのだ。 同時に、空気の温度が急速に下がり、腐った生ゴミと執拗な男の情念が混ざり合ったような、吐き気を催す不快な臭気が漂い始める。
「……っ!? この不浄な気配。まさか、煩悩獣なの!?」
蘭の表情が瞬時に引き締まった。 彼女は驚異的な身体能力で、水面からプールサイドへと音もなく跳ね上がった。 濡れたタイルを裸足でしっかりと捉え、周囲を鋭く警戒する。 排水口から黒い霧が噴き出し、それが瞬く間に凝縮して、一つの醜悪な異形を形作っていった。
それは、人間の胴体に無数の眼球が埋め込まれた、巨大な入道のような姿をしていた。 それぞれの目がギョロギョロと勝手な方向に動き回り、その視線が向けられるたびに、周囲の空気がねっとりとした卑猥な熱を帯びていく。 覗き見入道。 女子生徒のスクール水着姿を拝みたい、その布地の向こう側にある禁断の聖域を暴きたいという、男たちの歪んだ欲望が生み出した怪異であった。
「よくも神聖な学び舎を汚してくれたわね! 光賀流が末裔、光賀蘭が成敗してあげるわ!」
蘭は水着の腰の部分に隠し持っていた、忍び専用の特殊なクナイを素早く構えた。 だが、入道は物理的な攻撃など意にも介さない様子で、その醜悪な顔をさらに下品に歪めて笑った。 胴体に散らばる何百という瞳が、一斉に赤黒い不気味な光を放ち始める。 それは物理的な破壊をもたらすものではなく、概念的な浸食……すなわち「服だけを透視する眼光」であった。
「な、なに……っ!? 身体が、急に熱くなって……?」
入道の視線を正面から浴びた瞬間、蘭の全身に、何千もの熱い舌で直接肌を舐め回されるような、悍ましい感触が走った。 異変は即座に、そして残酷なまでに明確に現れた。 彼女が身に纏っていた紺色のスクール水着。 厚手の布地が、まるで陽炎のように揺らぎ、見る間に透明度を増していく。 水を吸って肌に張り付いていたはずの感触はそのままに、視覚的な情報だけが削ぎ落とされ、その下にある無防備な白い肌が露わになっていく。
「うそ……透けてる!? や、やだ、見ないで、見ちゃダメえええっ!」
蘭は咄嗟に自分の胸を両腕で抱え込んだ。 だが、その腕さえもが透け始め、隠すべき場所が容赦なく外の世界へと晒されていく。 柔らかそうな胸の膨らみ、その頂点にある可憐な蕾。 さらには、下腹部の曲線に沿って広がる瑞々しい秘部までもが、一糸纏わぬ全裸の状態で露呈しようとしていた。
自分の意志とは無関係に、衆人環視のプールサイドで全裸へと変えられていく。 その事実に、蘭の頭は真っ白になり、頬は熟したリンゴのように真っ赤に染まった。 足先まで震えが止まらず、目にはうっすらと涙が浮かぶ。 これほどまでの屈辱、これほどまでの羞恥。 乙女としての誇りを踏みにじられた瞬間、彼女の深奥に眠る光賀の血が、その羞恥をエネルギーにして爆発した。
「恥ずかしい……っ! こんな姿……誰にも見せられないっ! あぁぁっ……!」
叫びとともに、蘭の身体から、この世のものとは思えないほど眩い白い光が溢れ出した。 だが、その光は単なる爆発ではない。 まるで彼女の羞恥心そのものが形を成したかのように、最も恥ずかしい場所へと集中的に収束していった。
胸の双丘。 そして、脚の付け根の秘部。 その二箇所だけを、物理的な法則を無視した白い光の塊がピカピカと覆い隠した。 まるでアニメやマンガの規制画面を現実の世界に持ち込んだかのような、異質で、それでいてあまりにも神々しい規制の光である。
「え……? な、なにこれ。私の身体が、光ってる?」
蘭は呆然と自分の身体を見下ろした。 手足や腹部、背中や腰のラインは、水着が完全に消失したせいで、どこからどう見ても全裸である。 肌を撫でる湿った空気の冷たさが、その事実を無情に突きつけている。 それなのに、肝心な局部だけが、まるで太陽を凝縮したような光で塗り潰され、物理的に視認できなくなっていた。
「見えない……。光ってて、全然見えない。これなら……」
蘭は混乱しながらも、ある種の安堵を覚えた。 羞恥心が消えたわけではない。 むしろ、全裸のまま股間や胸を光らせているという、この上なくシュールで破廉恥な現状に、さらなる恥じらいが募る。 だが、その羞恥が燃料となり、局部を隠す光はいっそう輝度を増していくという、奇妙な循環が生まれていた。
「見えないから、恥ずかしくないもん! ……うぅ、やっぱり死ぬほど恥ずかしいけど……でも、これなら戦えるわ!」
蘭は震える手でクナイを握り直し、涙を拭った。 局部だけをピカピカと明滅させながら、彼女は力強くタイルを蹴った。 その動きは、先ほどまでとは比較にならないほど速く、鋭い。 羞恥エネルギーを純粋な力に変換した浄化の輝きが、彼女の身体能力を極限まで引き上げていた。
「よくも女の子の着替えを……じゃなかった、水着を透かしてくれたわね! 覚悟しなさい!」
空中で鮮やかに反転し、蘭は入道の巨大な顔面へと肉薄した。 入道は、自らの欲望の対象であるはずの裸体が、あまりにも眩しすぎる聖なる光に拒絶されていることに激しく動揺した。 覗こうとすればするほど、その光は入道の不浄な瞳を焼き、その卑猥な精神を根本から浄化していく。
「グ、ギャアアアアッ! 見えない、見えないぞ! 眩しすぎて、その奥の桃色が見えんッ!」
「当たり前でしょ! これは、乙女の鉄壁の守りなんだから!」
蘭は空中を歩くかのような軽やかなステップで入道の触手めいた腕を回避し、懐へと飛び込んだ。 そして、羞恥心で顔を真っ赤に染めながら、自らの股間から放たれる最大級の輝きを、入道の顔面に真正面から押し当てた。
「光賀流奥義・聖域目潰し《サンクチュアリ・フラッシュ》!」
「グオォォォッ……! ああ……尊い……。眩しすぎて、もう何も見えなくていい……。昇天するぅぅッ!」
入道の胴体に埋め込まれた無数の瞳が、光に焼かれて次々と砕け散っていく。 卑猥な欲望の塊であった煩悩獣は、そのあまりにも純粋で、暴力的なまでに清潔な「隠すための光」によって、跡形もなく浄化されていった。
光がゆっくりと収まり、プールの静寂が戻ってくる。 入道の消滅とともに透視の呪縛が解け、蘭の身体を覆っていた紺色のスクール水着がゆっくりと実体を取り戻した。 だが、術の余韻が残っているのか、あるいはまだ蘭の心臓が激しく波打っているせいか、水着の隙間からはパチパチと小さな光の火花が漏れ出している。
「あぅ……。もう、本当に最低。忍者じゃなきゃ、今すぐ泣きながら更衣室に逃げ込んでるわよ……」
蘭はプールサイドに座り込み、膝を抱えて顔を埋めた。 心臓の鼓動が耳の奥でうるさく響き、全身の熱がなかなか引かない。 自分の身体が、あんな風に光り輝きながら、しかも実質的に丸見えの状態で戦ったという、ありえない事実。 冷静になればなるほど、その異常事態に意識が遠のきそうになる。
「でも……これが私の力なんだ。汚れた煩悩を払うための、光……。でもこれじゃ、光のお裸ん、とか……そんな恥ずかしい名前で呼ばれるようになっちゃうのかな」
彼女はそっと自分の胸に手を当てた。 水着の上からでも、そこにある鼓動の速さが、彼女が感じた羞恥の大きさを物語っている。 恥じらいを力に変え、自ら晒されることで世界を守る。 くノ一として、これほど過酷で、そして滑稽な宿命があるだろうか。 だが、蘭は直感していた。 この世界には、あの入道のような怪異がまだ無数に潜んでいることを。 そして、自分にしか守れないものがあることを。
しばらくの間、彼女は一人でその羞恥に耐えていたが、ふと、背後の暗がりに誰かの気配を感じて飛び起きた。
「誰!? 烈くんなの!?」
慌てて振り返るが、そこには誰もいない。 ただ、観客席の通気口の奥で、微かに何かがキラリと反射したような気がした。 蘭は不審に思いながらも、今の自分の姿を誰かに見られていなかったか、必死に周囲を確認する。 しかし、動揺すればするほど、スカートの中が不意にピカッと発光し、周囲を不自然に明るく照らし出した。
「もー! 勝手に光らないでよ! これじゃ、隠してるんだか自分から見せつけてるんだか分かんないじゃない!」
彼女の悲鳴に近い抗議が、夕暮れのプールに虚しく響いた。
その頃、校舎の屋上では、風に黒髪をなびかせた一人の少女が、プール棟を冷ややかな眼差しで見下ろしていた。 霧隠桜。 蘭とは対照的に、古式ゆかしい漆黒の忍装束を隙なく完璧に着こなした彼女は、不快そうに唇を噛み締めた。
「光賀の娘が、あんな破廉恥な真似を……。忍びとは闇に生き、影に消えるもの。あんな下劣で騒々しい光を放つなど、断じて忍びの道にあらず」
桜の手の中で、一本の苦無が鈍い輝きを放つ。 彼女の厳格な正義感は、蘭の存在そのものを、忍びの伝統を汚す不浄なものとして認識し始めていた。 だが、彼女自身もまだ知る由はなかった。 その頑ななまでの正論が、蘭の引き起こすカオスなハプニングの渦に巻き込まれ、自分自身が誰よりも無残に、そして艶やかに脱げる運命にあることを。
蘭は重い足取りで、誰もいない更衣室へと向かった。 制服に着替えている最中にも、ブラウスのボタンを留めようとするたびに、指先が触れた肌がパッと白く発光する。
「ひゃんっ!? もう、お願いだから今は光らないで……!」
自分の身体を宥めるように、蘭は必死に深呼吸を繰り返す。 しかし、一度覚醒してしまった羞恥の力は、彼女の意志を嘲笑うかのように、薄暗い更衣室を何度もピカピカと照らし続けた。 これからの戦いが、自分の貞操と、女の子としての平穏な日常にとって、どれほど過酷で刺激的なものになるか。 蘭はまだ、その真実の半分も理解していなかった。
ただ、窓の外に広がる夕焼け空は、彼女の火照った頬と同じくらいに、赤く赤く染まり続けていた。
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県立光ヶ丘高校・非公式光賀蘭ちゃん応援掲示板 (旧称:光ヶ丘高校の希望・光賀蘭ちゃんを暖かく見守る会)
【緊急】今日の放課後、プールで何かが起きた件【放送事故?】
1:名無しの光高生 今日の放課後、プールの方で信じられないくらい眩しい光を見たんだけど、誰か詳細知らないか? 蘭ちゃんが一人で練習してたはずだけど、爆発でも起きたのかってレベルの光だったぞ。
2:名無しの光高生 俺も見た。 駐輪場にいたんだけど、一瞬、辺りが真昼間みたいに真っ白になったよな。 雷かと思ったけど音もしなかったし、蘭ちゃんに何かあったんじゃないかって心配で。
3:名無しの光高生 俺は校舎の三階から見てた。 光が溢れる直前、プールの窓のあたりに不気味な巨大な影が見えた気がするんだ。 不審者か、あるいは最近噂の「煩悩獣」ってやつか?
4:名無しの光高生 おいおい、もし化け物が出たんなら蘭ちゃんが危ないだろ! 誰か中を確認した奴はいないのかよ。 あそこは女子専用時間じゃなかったか。
5:助兵衛@管理人 ……諸君、落ち着け。 俺だ、管理人の助兵衛だ。 今、人生最大の衝撃と鼻血で意識が飛びそうになりながら、必死にキーボードを叩いている。 俺は……見てしまった。 この学園の、いや、人類の歴史を塗り替える「奇跡」の瞬間を目撃してしまった。
6:名無しの光高生 会長! 生きてたか! あんた、いつも蘭ちゃんの自主練を遠くから望遠レンズで狙ってる執念の男だからな。 中で何が起きたんだ? 不審者でも出たのか?
7:助兵衛@管理人 「ああ、不審者どころじゃない。 あんな悍ましい、全身が目の塊みたいな化け物は初めて見た。 だが、そんなことはもはや些細な問題だ。 問題は、その化け物が放った謎の光線のせいで、蘭ちゃんのスク水が……。 諸君、信じられないだろうが、蘭ちゃんの水着が、その、完全に『透けた』んだ」
8:名無しの光高生 はあ!? 透けた!? 何言ってんだ、このエロ会長。 ついに妄想と現実の区別がつかなくなったのか?
9:助兵衛@管理人 「嘘じゃない! 俺のこの、命の次に大事な超望遠レンズが証人だ! 入道のビームを浴びた瞬間、紺色の布地がシュゥゥゥッて霧みたいに透けていってな……。 その下にある、蘭ちゃんの瑞々しい……白雪のような裸体が……。 ああ、思い出すだけでまた血圧が……。 とにかく、彼女は完全に『お裸(おはだか)』の状態になってしまったんだ」
10:名無しの光高生 「マジかよ……。 それが本当なら、蘭ちゃんは全裸でプールサイドに立ってたってことか? おい、今すぐプールに突撃してくる! 間に合え、俺の全速力!」
11:助兵衛@管理人 「待て、行っても無駄だ。 もう事態は収束している。 それに、ここからが本当の驚きなんだ。 蘭ちゃんが完全にお裸になったその瞬間、彼女の身体から……。 胸と、その、最も大切な股間の部分からだな。 爆発的な『白い光』が噴き出したんだ。 まるでテレビの規制画面みたいに、見せられない部分を物理的に覆い隠す、あの『謎の光』そのものだ!」
12:名無しの光高生 「何だそれ、意味が分からん。 局部が光ったってことか? 蘭ちゃんはサイボーグか何かなのかよ」
13:助兵衛@管理人 「いや、あれはもっと神聖で、かつエロティックな何かだった。 お裸になった蘭ちゃん、略して『お裸ん(おらん)』の局部を、 神様が『まだ人類には早い』と言わんばかりに光でガードしたんだ。 その光に焼かれて、化け物は『尊い……っ!』って叫びながら消滅していった。 俺もその光を直撃して、一瞬、天国にいるばあちゃんが見えたぞ」
14:名無しの光高生 「お裸(おはだか)で蘭ちゃんだから、お裸ん(おらん)……。 おい、ひどいネーミングだけど、なんか語感がしっくりくるのがムカつく。 でも、その『お裸ん』が光り輝きながら戦ってたってのは、マジなのか?」
15:助兵衛@管理人 「マジだ。これ以上の真実はない。 俺はこの日を境に、ただの『蘭ちゃんファン』をやめることに決めた。 これからは、あの神々しい光を放つ伝説のくノ一…… 《光のお裸ん》を観測し、崇めるための団体として、このサイトをリニューアルする。 今夜は一睡もせずに、カメラに残った『光の隙間』を解析するつもりだ」
16:名無しの光高生 「……。 会長がここまで熱くなるなんて、よっぽどのことがあったんだな。 全裸なのに光ってて見えない……。 逆に、逆にめちゃくちゃエロい気がしてきたぞ。 俺も今日から、その『お裸ん』とやらの信者になるわ」
17:名無しの光高生 「俺もだ! 明日からプールの周りの警戒を強めるぞ。 次に光が漏れる瞬間を、絶対に見逃さない。 蘭ちゃん……いや、お裸ん、最高!」
18:助兵衛@管理人 「同志よ! さあ、新しい時代の幕開けだ。 まずは本日の戦利品……。 光に照らされて輪郭が浮き彫りになった『お尻の肉感』の解析画像からアップする。 刮目せよ! これこそが、我らが守るべき聖域だ!」
掲示板の名称を『光のお裸んファンクラブ』に変更しました。