光のおらん 〜全裸くノ一ピカピカ退魔録〜   作:ろくさん

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第十七話

六月のじっとりと肌にまとわりつくような不快な湿気が、光ヶ丘高校のコンクリート校舎を逃げ場のない蒸し風呂へと変容させていた。窓の外ではどんよりとした鈍色の雨雲が重たく低く垂れ込め、降り出す直前の雨の気配と、大勢の男子生徒たちが放つ尋常ならざる熱気が混じり合い、廊下の空気はどろりとした淀みを生んでいた。一歩歩くごとに、肌と制服の間に熱がこもり、逃げ場を失った水分が薄い皮膚をなぞる。

 

光賀蘭は、制服のブラウスの第一ボタンを何度も震える指先で確認しながら、うつむき加減に中庭を横切っていた。数日前に影山烈から施された特殊オイルの残留効果は、未だに彼女の身体の隅々を執拗に支配し続けている。一歩足を踏み出すたびに、プリーツスカートの裏地が、しなやかな太ももの内側を執拗になぞり、そのわずかな摩擦さえもが、今の過敏になった彼女にとっては脳を直接揺さぶるような、甘く痺れるような過剰な刺激となっていた。

 

「……もう、どうなっちゃってるの。みんな、今日はずっと変だよ。目が怖すぎるっていうか、まるでお腹を空かせた狼みたいで。すれ違うだけで背中がゾクゾクして、服が肌に触れるだけで、なんだか……変な感じになっちゃうんだよ」

 

蘭は震える声で独り言を漏らしながら、自身の腕で胸を抱きしめるようにして歩を速めた。局部を覆う謎の光は、彼女の不安とオイルによって強制的に研ぎ澄まされた感覚に呼応し、制服の下で絶え間なくピカピカと明滅を繰り返している。その淡く神聖な純白の輝きが廊下の壁に反射するたびに、遠巻きに見ている男子生徒たちの間から、喉を鳴らすような卑俗な吐息が漏れるのを彼女は知っていた。

 

そんな異常な緊張状態にある学園内で、突如として異変が起きたのは放課後のことだった。

 

普段ならバレー部やバスケ部の活気ある掛け声、規則的なホイッスルの音が響き渡るはずの第一体育館が、異様なまでの静寂に包まれていた。だが、その静寂は決して平和なものではなく、火薬庫が爆発する直前のような、どす黒い熱量を孕んでいた。扉の向こうからは地響きのような野太い地鳴りが、低い振動となって床を伝わってくる。

 

異変を察知した蘭が、霧隠桜と共に体育館の重い扉を、細く、慎重に開けると、そこには常軌を逸した地獄絵図が広がっていた。

 

体育館の床一面を埋め尽くしていたのは、頭に「蘭ちゃん命」や「ペロペロ」と血のように赤いインクで乱暴に書かれた鉢巻きを締め、血走った目で中央の特設ステージを見つめる数百人の男子生徒たちだった。彼らの中には、かつてファンクラブで蘭を純粋に応援していた者、隣の席でノートを貸してくれたクラスメイト、いつも中庭で挨拶を交わす穏やかな先輩たちの姿もあった。

 

だが、今の彼らの顔には理性の欠片も見当たらず、ただドロドロとした剥き出しの肉欲だけが、その瞳の奥でギラギラと異様な光を放っていた。彼らの口元からは抑えきれない唾液が滴り、体育館特有のワックスの匂いを上書きするように、獣のような雄の体臭が空間を支配していた。

 

体育館の四方の壁面には、信じられないような文言が踊る巨大な横断幕が、いくつも掲げられていた。

 

祝、第一回ペロペロ・トーナメント開催。

優勝賞品、蘭ちゃんを一日中ペロペロできる権利。

本人の許可なし、YESタッチ、YESペロペロ。

 

その文字が視界に飛び込んできた瞬間、蘭は全身の血が指先から引いていくような感覚に襲われた。膝の力が抜け、壁に背を預けてかろうじて立ち続ける。

 

「……なっ、何なのこれ。一日中ペロペロできる権利って、何のこと? しかも、本人の許可なしって、勝手なこと書かないでよ。みんな、本当にどうかしちゃったんだ。嘘だよね、これ。冗談なんだよね……っ」

 

蘭は衝撃のあまり、扉の影で膝をがくがくと震わせた。彼女の大きな瞳から、ぽろりと大粒の涙がこぼれ落ち、埃っぽい床に小さな黒い染みを作る。昨日まで「蘭ちゃん、今日の戦いも最高だったよ!」と笑顔で声をかけてくれた仲間たちが、今は「蘭ちゃんのあのお尻を舐め回させろ!」と獣のような咆哮を上げている。その事実が、何よりも彼女の心を深く傷つけ、純粋なくノ一としての誇りを無惨に引き裂いていた。

 

「……というか、何してんのこの人たち。馬鹿なの。馬鹿なんだよね。なんでこんなに全力で気持ち悪いことしてるの」

 

悲しみの一方で、蘭の頭の中には底冷えするような呆れの感情も湧き上がっていた。だが、その呆れすらも打ち消すほどの強烈な欲望の波動が、ステージ中央から物理的な圧力となって放たれた。

 

「さあ、子羊たちよ! 理性という名の、なんと不自由で退屈な鎖を今こそ解き放つのだ! お前たちが夜な夜な夢にまで見た、あの光り輝く女神の肌。その柔らかな感触を、その甘い香りを、独占したいとは思わないか! お前たちの渇いた舌で、彼女のすべてを潤してやりたいとは思わないか!」

 

紫色の不気味な煙の中から姿を現したのは、煩悩軍団の幹部、誘惑のベリアル(ベリアル)であった。中性的な美貌を持ち、見る者を快楽の泥濘へと引きずり込むような妖艶な瞳を持つその男は、学園指定の教師用ジャージをだらしなく羽織り、手には拡声器を模した禍々しい霊具を握っていた。彼が放つ欲望増幅の波動が、体育館内に淀む男子生徒たちの煩悩を限界まで肥大化させ、人間としての尊厳を奪い去っているのだ。

 

「蘭ちゃんのパンツが見たいかぁ!?」

 

「うぉぉぉおおお!」

 

「蘭ちゃんの裸が見たいかぁ!? 謎の光の向こう側を、その舌で暴き尽くしたいかぁぁぁ!?」

 

「うぉぉぉぉぉおおおおお!!」

 

ベリアルは蘭が扉の隙間から、震えながら見ていることに気づくと、残酷な嘲笑を浮かべてさらに声を張り上げた。彼の声は拡声器の霊具を通じて、蘭の脳細胞を直接掻き回すような不快な響きとなって彼女を襲う。感度十倍の蘭にとって、その音波はもはや鼓膜を通り越して、全身の皮膚を直接なぞられるような物理的な愛撫に等しかった。

 

「ならば勝ち取れ! このペロペロ・トーナメントを勝ち抜いた唯一の勝者には、私が特別に用意した聖なる呪具を授けよう。それを使えば、蘭ちゃんのあの邪魔な謎の光を一時的に無効化し、全身を思う存分、隅々までペロペロし放題だ!! 彼女の泣き顔を特等席で拝みながら、最高の悦びを享受するが良い! 彼女の純白の肌を、お前たちの色に塗り替えてやるのだ!」

 

「ペロペロ! ペロペロ! ペロペロ!」

 

男子生徒たちのシュプレヒコールが、体育館の窓ガラスをビリビリと震わせる。それはもはや、一つの宗教的狂乱に近い熱量を帯び、正気の世界とは完全に切り離された地獄絵図となっていた。

 

蘭は、ステージの袖で呆然と立ち尽くしていた。ベリアルの言葉の一つ一つが、鋭い刃となって彼女の少女らしいプライドを削り取り、内側からボロボロに崩していく。彼女がこれまで恥ずかしさに耐え、街の平和を守るために晒してきたその姿が、今は自分を辱めるための最高の餌として扱われている。信じていた絆が、欲望という泥にまみれて汚されていく。

 

「ひどいよ。みんな、あんなに優しく見守ってくれてたのに。……ううん、優しくっていうか、いやらしい視線はあったけど、でも、こんなのってないよ。……私、何のために頑張ってきたのかな。私、ただのみんなの、舐めるための道具なの……っ」

 

蘭の胸と股間で、謎の光が激しく点滅を始めた。彼女の激しい鼓動に同期するように、純白の輝きが明滅を繰り返し、その一瞬の暗転のたびに制服の布地を内側から白く照らし出す。

 

感度十倍の身体は、男子たちの狂気的な呼び声を聞くだけで、まるで直接指で触れられているような錯覚に陥る。股間の奥がキュンと疼き、望まぬ快感の予兆が背筋を駆け上がる。その生理的な反応が、彼女をさらなる絶望へと突き落とした。自分自身の身体が、裏切り者のように快楽を貪ろうとしている事実に、彼女は唇を強く噛んだ。

 

「くふふ、良い表情だ、光賀蘭。お前が信じていた絆が、欲望という名の炎で焼き尽くされる気分はどうだ? お前を守るはずの光が、今や奴らの食欲をそそる最高のソースに見える。さあ、泣け、喚け! その羞恥の涙が、この学園を至高の楽園へと変えるのだ。お前がすべてを曝け出し、快楽に溺れるまで、この祭りは終わらない!」

 

ベリアルはさらに煽り、体育館の中央に設置された特設リングへと、欲望に駆られた男子生徒たちを次々と誘い込んでいく。リングの上では、蘭をペロペロする権利を巡り、親友同士が殴り合い、髪を掴み合い、互いの服を破り捨てるという醜悪な大乱闘が始まった。ある者は蘭の生写真に顔を擦り付けながら咆哮し、ある者は自らの舌を狂ったように動かしながら、空想の蘭を舐め回している。

 

蘭は、自分のために争う彼らの姿を見て、深い悲しみに包まれた。かつてのファンたちが、自分の局部をペロペロするために、人としての理性を捨てて獣になっている。その光景は、人間の底なしの醜さをこれでもかと見せつけていた。自分という存在が、こんなにも卑俗な欲望を煮詰めたスープの具材にされている。その屈辱に、彼女の指先は冷たく震えていた。

 

「光賀さん、耳を貸してはいけません。彼らはもはや、あなたの知っている生徒たちではないのです。煩悩の毒に当てられ、自分たちの欲望の奴隷になり下がった哀れな獣ですわ。……ですが、このままでは本当に、あなたの全てが奪われてしまいます。……覚悟を決めなさい。この不浄な欲望の祭典、私たちが力ずくで終わらせるしかありませんわ」

 

桜が蘭の肩を、折れんばかりの力で強く抱き寄せた。その温もりに、蘭は我に返った。隣の桜もまた、引き裂かれそうなほどの怒りと、わずかな羞恥に耐えている。生真面目な彼女にとって、目の前の光景は世界の終わりにも等しい惨状だろう。だが、彼女は蘭のために、折れそうな心を奮い立たせている。

 

悲しみが、次第に熱い怒りへと変わっていく。自分の光を、みんなの思い出を、こんな卑俗な目的のために汚すことは、絶対に許せなかった。自分の誇りを、少女としての最後の境界線を、あんな奴らに踏みにじらせるわけにはいかない。

 

「……うん。わかったよ、桜ちゃん。……私、悲しいけど、それ以上に、なんだか凄く、頭にきちゃった。私の光を、こんな風に汚すなんて。私の大切にしているものを、ただのおもちゃみたいに扱うなんて……絶対、絶対許さないんだからっ!」

 

蘭の瞳に、静かな、しかし烈火のような炎が宿った。彼女の胸と股間を覆う謎の光が、彼女の決意に応えるように、その白さを一層強め、周囲の空気を神聖な緊張感で包み込んでいく。ピカピカと輝くその光は、体育館の天井まで届きそうなほどの出力を放ち、ベリアルの紫色の煙を押し返した。

 

「さあ、トーナメント第一回戦の開始だ! 蘭ちゃんの唇、蘭ちゃんの首筋、蘭ちゃんの……あんなところまで! すべてを舐め取る権利を掴むのは誰だぁぁ!! 欲望をぶつけろ! 奪い合え! 蘭ちゃんは今、そこにいるぞ!!」

 

ベリアルの高笑いと共に、体育館は混沌の坩堝へと叩き落とされた。男たちがリング上で折り重なり、凄惨な格闘が繰り広げられる。蘭は自分に群がろうとする男たちの狂気的な熱気を感じながら、その純白の光の中に自身の魂を燃やし始めた。

 

彼女の一歩一歩が、体育館の床に白い光の軌跡を残す。蘭は、自分の意志でその舞台へと踏み出した。彼女を待っているのは、かつてないほどの辱めか、それとも全ての煩悩を焼き払う究極の浄化か。光のお裸ん(おらん)としての、最も過酷で、最も恥ずかしい戦いの幕が、今、完全に上がったのである。

 

蘭のお尻は、憤りと決意によってキュッと引き締まり、その弾力ある肉感は謎の光とのコントラストで、見る者の理性を焼き切らんばかりの美しさを放っていた。彼女は、涙を拭い去り、真っ赤な顔をして叫ぶ。

 

「みんな、目を覚ましなさい! 私……負けないんだから! 光の下に、正義あり、なんだからぁっ!」

 

その絶叫と共に、体育館の中央で凄まじい閃光が爆発した。それは戦士としての産声であり、乙女としての怒りの咆哮であった。しかし、その光を浴びた男たちは恐怖するどころか、さらに激しく涎を垂らして彼女へと手を伸ばす。

 

「おおおお! 蘭ちゃんが光った! もっとだ、もっと光らせて、俺たちに見せてくれぇぇ!」

 

「いい匂いだ! 蘭ちゃんの恥じらいの匂いがするぞ! ペロペロさせろ、今すぐペロペロさせろぉぉ!」

 

ベリアルの増幅した欲望は、蘭の浄化の光さえも自分たちの快楽の糧に変換しようとしていた。蘭は自分に群がる無数の「手」の幻影を感じながら、絶望的なまでの高揚感と恐怖に包まれる。

 

体育館の熱気は最高潮に達し、床を叩く激しい雨音さえもかき消すほどの狂乱が、夜の帳を切り裂いていた。蘭の服は、彼女の激しい動きと、男たちの伸ばす指先によって、今まさにその機能を失おうとしていた。

 

_____

非公式光賀蘭ちゃんファンクラブ:光の聖域(サンクチュアリ)

管理人:もっこり助兵衛

 

【緊急声明】我らが聖域の崩壊と、外道集団「ペロペロし隊」の台頭について

 

1:助兵衛@管理人

 

同志諸君、今日という日を、俺は一生忘れないだろう。

我らが「光の聖域」が内側から腐敗し、取り返しのつかない崩壊を始めた、最悪の日としてだ。

先ほどから掲示板を埋め尽くしている「蘭ちゃんペロペロし隊」を名乗る過激派諸君。

お前ら、正気か。

俺たちのモットーは「YESお裸ん!NOタッチ!」だったはずだ。

蘭ちゃんのあの神々しい光を遠くから拝み、その「隠されているからこそ溢れ出すエロティシズム」を静かに愛でる。

それがエロの求道者としての矜持じゃなかったのか。

直接触れたい、舐め回したいなんて、それはもはや観測ではなく「略奪」だ。

俺は悲しい。蘭ちゃんのあの涙、お前らには見えなかったのか。

扉の隙間からこちらを覗いていた彼女の、あの絶望に震える大きな瞳が。

 

2:名無しの光高生

 

会長、落ち着いてください。

でも、今日の蘭ちゃんは正直、いつものレベルを遥かに超えていましたよ。

廊下を走るたびに、スカートの隙間から溢れ出すあの光の密度。

それに、なんだか少し視線を向けただけで、過剰なくらいに身体を強張らせて。

まるで全身の神経が剥き出しになって、視線一つで愛撫されているような、あの無防備な反応。

あれを見てしまったら、どんなに理性が強い男でも、ベリアルの誘惑に抗うのは無理ですよ。

体育館に満ちているあの野獣のような熱気。

俺も一瞬、我を忘れそうになりました。

 

3:名無しの光高生

 

俺も見た。渡り廊下で囲まれた時の蘭ちゃん。

あの「見えないから恥ずかしくないもん!」っていう叫び、いつもより余裕がなかった。

局部を隠す白い光が、彼女の激しい鼓動に合わせてドクンドクンって脈打つように明滅して。

その隙間に一瞬だけ覗く、オイルでテカテカになった瑞々しい太ももの肉感。

「ペロペロし隊」の気持ちも、正直わからなくはないんです。

あれを目の前で見せられたら、人間、誰だって飢えた獣になっちまいますよ。

あの時、彼女が震える手でスカートを押さえた拍子に、一瞬だけ光がズレたのを見ましたか?

あの刹那の輝きこそ、まさに地獄への招待状でした。

 

4:ペロペロ過激派(元・見守り隊)

 

助兵衛、お前はもう古いんだよ。

隠されてるからいい。遠くから見てればいい。

そんなの、目の前に最高のご馳走があるのに、匂いだけで満足しろって言ってるようなもんだ。

蘭ちゃんは俺たちの欲望を受け入れるために、あんなにエロく光ってんだろ。

あの白い光の向こう側、本物の蘭ちゃんをこの舌で確かめたい。

それがファンとしての、本当の「誠意」ってもんだろ。

うぉぉぉぉ! 蘭ちゃん! ペロペロさせろぉぉぉぉ!!

優勝賞品は「一日中ペロペロできる権利」だぞ!

これを逃して何が男だ!

 

5:名無しの光高生

 

うわ、本当に出たよ「ペロペロし隊」。

なんか、こいつらの目、普通じゃないんだよな。

学校中で蘭ちゃんを追い回して、下着泥棒まで試みようとしてる。

これ、もうファンクラブじゃなくて、ただの犯罪集団だろ。

烈くんの言ってた「感度十倍」の影響で、蘭ちゃんは今、立ってるだけで精一杯なんだぞ。

それを無理やり追い回して、あんなパニックにさせるなんて、さすがに引くわ。

さっき体育館で、蘭ちゃんの生写真を四つん這いになって舐めてる奴がいたぞ。

あれはもう、人間の尊厳を捨ててるだろ。

 

6:助兵衛@管理人

 

>>4

貴様に「誠意」を語る資格はない。

エロとは、届かぬからこそ美しく、隠されるからこそ無限の想像力を掻き立てるもの。

剥き出しの肉をただ貪るだけの行為に、何の美学があるというんだ。

今の蘭ちゃんは、烈の実験という名の神の悪戯で、通常の十倍敏感になっている。

つまり、俺たちの「視線」さえも、今の彼女にとっては直接触れられているような、生々しい刺激になってるんだ。

俺たちは、その彼女の「極限の羞恥」を静かに観測し、支えるべき存在だったはずだ。

ベリアルの術中にハマりやがって。お前らはもう、俺の同志じゃない。

今の体育館の様子をモニター越しに見ているが、地獄絵図だ。

蘭ちゃんの等身大パネルに群がって、涎を垂らしているお前らの姿を、彼女がどんな思いで見ているか考えろ!

 

7:名無しの光高生

 

会長……。

でも、学園中の男子がどんどん「ペロペロし隊」に流れていってます。

体育館の方でも、何か不穏な動きがあるみたいだし。

「蘭ちゃんを一日中ペロペロできる権利」とか、わけのわからない噂まで流れてる。

これ、放っておいたら蘭ちゃん、本当にボロボロにされちゃいますよ。

ベリアルとかいう奴が配ったあの「拡声器の音波」、あれを聞くと理性が溶けるんです。

俺も危うく、蘭ちゃんの靴の匂いを嗅ぎに走るところでした。

 

8:名無しの光高生

 

蘭ちゃん、さっき廊下の隅で肩を震わせてたぞ。

自分の光が、みんなを狂わせてるんじゃないかって、自責の念に駆られてるみたいだった。

あんなに明るくて天真爛漫な彼女が、あんなに悲しそうな、今にも消えてしまいそうな顔をするなんて。

唇を噛み締めて、涙を堪えながら自分の腕を抱いてる姿、マジで見てられなかった。

俺、やっぱり会長に賛成だわ。

「YESお裸ん!NOタッチ!」の原点に戻るべきだ。

彼女を救うために、俺たちにできることはないのか?

 

9:助兵衛@管理人

 

よく言った。

俺たちは、たとえ少数派になろうとも、エロの矜持を捨てない。

烈と桜ちゃんにも連絡を入れる。

これ以上、あいつらに蘭ちゃんを、そして「お裸ん」という名の芸術を汚させてたまるか。

俺たちの愛機、カメラは、彼女を辱めるためにあるんじゃない。

彼女の「高潔な恥じらい」を、永遠に保存するためにあるんだ。

見ていろ、明日の体育館で、俺が真のエロの真理を叩き込んでやる。

カメラを構えた手が怒りで震えているが、このレンズだけは真実を映し出す。

蘭ちゃんの涙を拭えるのは、汚れた舌じゃない。俺たちの清らかなる変態心だ。

 

10:ペロペロ過激派

 

うるせえ! 能書きはいいんだよ!

蘭ちゃんは俺たちがいただく!

あのお尻、あの太もも、あの光の向こう側。

全部俺たちの舌で塗り潰してやる!

時代はペロペロなんだよ!!

ベリアル様が言ってたぜ。

「蘭ちゃんの恥じらいは、最高のスパイスだ」ってな!

トーナメントで優勝して、あの光を無効化する呪具を手に入れてやる!

 

11:助兵衛@管理人

 

全面戦争だな。

諸君、明日から体育館で何かが始まるようだ。

俺たちは、真の観測者として、そして蘭ちゃんの守護者として、この狂乱の渦に飛び込む。

決して欲望に負けるな。

蘭ちゃんの光に、泥を塗るような真似はさせるな。

行くぞ、光の聖域の生き残りたちよ。

カメラのバッテリーは充電したか? メモリーカードの空きはあるか?

蘭ちゃんの尊厳を守り、同時に最高の一枚を記録する。

それが俺たちの、命懸けの忍務だ!

 

掲示板の書き込みを終えたもっこり助兵衛は、キーボードから指を離すと、深い溜息をついた。

彼の自室は、数百枚に及ぶ蘭の隠し撮り写真と、解析データのモニターで青白く照らされている。

窓の外、夜の校舎の方角を見つめる助兵衛の目は、かつてないほどに鋭かった。

レンズを磨く布を手に取り、彼は愛機の高級一眼レフを丹念に手入れし始める。

 

……蘭ちゃん。お前らみたいな、ただ舐めることしか頭にない猿どもに、彼女の本当の美しさが分かってたまるか

 

助兵衛は、デスクの上に置かれた蘭の「光の解析チャート」を睨みつけた。

烈の実験で感度が十倍になった蘭。

彼女が今、どのような羞恥と刺激の濁流の中にいるのか、彼は誰よりも理解していた。

布地が肌を撫でるだけで光が暴発する。

そんな繊細な状態にある彼女を、物理的にペロペロするなど、暴力以外の何物でもない。

 

見ていろ、ベリアル。……そして、裏切り者のファンども。エロの深淵は、貴様らが思うほど浅くはないぞ。隠されているからこそ、そこには無限の小宇宙が存在するんだ

 

助兵衛は、以前の戦闘で蘭が脱ぎ捨てた制服のボタンを一つ、宝物のように掌に乗せた。

冷たいプラスチックの感触が、彼の決意をより強固なものにする。

明日の体育館。そこは欲望に狂った獣たちの檻となるだろう。

だが、彼はその中心に立ち、シャッターを切り続けることを誓った。

 

一方、校舎の地下にある秘密の作業場では、影山烈もまた、別の意味で限界を迎えていた。

モニターに映し出される、全校生徒の煩悩指数の急上昇。

そして、その中心にいる蘭の、感度十倍によるバイタルデータの異常な変動。

心拍数は通常の倍を超え、体温は羞恥によって微熱を帯びている。

 

……くっ。……ベリアルの術の影響で、蘭の羞恥心が想定外の周波数で共振している。このままでは、光の制御が物理的に焼き切れる。そうなれば、蘭は……本当に『無規制』の状態に……っ。……だが、それはそれで……いや、いかん! 科学者として、いや、幼馴染として、彼女のデータがこれ以上汚されるのは我慢ならん!

 

烈は鼻血を垂らしながらも、必死にキーボードを叩き続けていた。

彼の目的は蘭を守ること。

だが、その「守る」という行為の裏側には、常に「最も効率的に彼女を観察する」という歪んだ欲求が潜んでいる。

烈は、助兵衛とはまた違うベクトルの、科学的変態として、明日の決戦に備えていた。

蘭の光を無効化する呪具への対抗策を、彼は必死に模索していた。

 

……蘭。君の光を消せるのは、ベリアルじゃない。……僕の、この論理的な分析だけだ。……でも、十倍の感度で悶える君の姿、一フレームも見逃したくないんだよぉっ!

 

二人の変態、助兵衛と烈。

彼らが、狂気に染まった「ペロペロし隊」から蘭を救い出せるのか。

それとも、彼ら自身もまた、ベリアルの用意した「一日中ペロペロできる権利」という禁断の果実の前に、理性を失ってしまうのか。

 

光ヶ丘高校、運命の体育館占拠事件。

その幕が、静かに、しかし確実に上がろうとしていた。

夜の廊下に、ベリアルの不気味な笑い声が反響する。

体育館では、すでに「ペロペロ練習用」のマットが敷かれ、男たちの吐息が窓を白く曇らせていた。

 

助兵衛は、掲示板の最後のレスを打ち込んだ。

 

12:助兵衛@管理人

 

【神画像】今日の一枚:[感度十倍・明滅する境界線].jpg

……この光の震えを見ろ。これが、彼女の『魂の叫び』だ。

舐めるんじゃない。祈れ。

明日の決戦、戦場で会おう。

俺は、この一枚に蘭ちゃんの全てを、彼女の守り抜こうとしている尊厳を、刻み込んでみせる。

 

掲示板には、その画像を見たファンたちからの、断末魔のような感嘆の嵐が巻き起こっていた。

もはや、引き返す道はない。

蘭の、最も過酷で、最も恥ずかしい一日の始まりであった。

 

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