光のおらん 〜全裸くノ一ピカピカ退魔録〜   作:ろくさん

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第二十四話

上空に浮かぶ「煩悩の魔城」から絶え間なく吐き出される「暗黒の淫霧」は、もはや光ヶ丘高校の敷地内だけに留まらず、周辺の住宅街、駅前商店街、さらには隣接する都市部までもを、不気味で淫らな薄桃色の闇に沈めていた。

 

街の惨状は、地獄というよりも、あまりに低俗で破廉恥な悪夢そのものだった。霧を浴びた人々は、長年積み上げてきた道徳や理性、そして社会的な自制心を一瞬にしてかなぐり捨てていた。彼らにとって、衣服はもはや呪わしい束縛であり、自由を奪う鎖でしかなかった。人々は、自分たちの社会的地位を示すスーツや、個性を彩る私服を、まるでもう二度と見たくないゴミであるかのように引きちぎり、全裸のまま路上へと躍り出ていた。

 

「自由だ! 服なんていらない! 隠すことなんて何もないんだぁ!」

 

「愛してるわ、世界! さあ、私のすべてを見てちょうだい、感じてちょうだい!」

 

普段は厳格な表情で法廷に立つ裁判官も、スーパーの特売に勤しむ穏やかな主婦も、将来を夢見る多感な時期の学生たちも、誰もが等しく頬を異様に上気させ、うつろな瞳で愛の言葉を叫びながら、路上で円陣を組んでストリーキングに興じている。秩序は完全に崩壊し、文明の誇りであった「羞恥心」という名の最後の防波堤が、エロ大王の放つ魔力によって、今まさに見る影もなく決壊しようとしていた。

 

その未曾有の危機に対し、学園の屋上、そして街のいたるところで、異様な、しかし規律ある集団が静かに、そして力強く蜂起した。

 

「諸君、レンズの手入れは済んだか! バッテリーの予備は万全か! イメージセンサーの汚れ一つが、蘭ちゃんの聖なる輝きを曇らせると思え!」

 

拡声器を手にし、ひび割れた眼鏡の奥に鋭く、かつ慈愛に満ちた光を宿らせて叫ぶのは、もっこり助兵衛であった。彼の背後には、かつて「蘭ちゃんペロペロし隊」として欲望のままに彼女を追い回した、しかし今は「蘭ちゃんを守り隊」へとその魂を昇華させた、世界中のファンクラブ会員たちが集結していた。彼らは今、個人の欲望ではなく、全人類の「恥じらい」という名の文化を守るための戦士となっていた。

 

彼らの装備は、もはや単なる撮影機材の域を遥かに超越していた。影山烈がSNSを通じて世界中のギークたちへ発信した「蘭の羞恥エネルギーを増幅し、淫霧を中和する特殊光学周波数」のデータを元に、彼らは自慢の最高級デジタル一眼レフカメラやビデオカメラを、対魔用の光学兵器へと独自に改造していたのである。レンズの鏡胴には奇妙な電子部品が巻き付けられ、ストロボ部分には浄化の波長を増幅するための特殊なプリズムが装着されている。

 

「会長! 烈くんのライブ配信、同時視聴者数が一億人を突破しました! 蘭ちゃんのSKB(スーパー・視線が・気になる・ブースター)の出力、最大値で安定、いや、さらに上昇を続けています!」

 

通信機を耳に当てた会員の一人が、興奮で鼻血を垂らしながら叫ぶ。助兵衛は力強く頷き、城の窓から漏れ出す、あの形容しがたいほど神々しく、そして痛々しいほどまばゆい純白の輝きを見上げた。

 

烈の配信映像には、見えない数億の視線に全身を舐め回され、真っ赤な顔で涙を流しながら、股間の光を必死に手で抑えて身悶えする蘭の姿が映し出されていた。彼女が恥じらえば恥じらうほど、城内の煩悩獣は焼き払われ、街を覆う霧はその勢いを弱めていく。彼女は今、全人類の理性を守り抜くために、文字通り「羞恥の生贄」となって、世界で最も恥ずかしい戦いを続けていた。

 

「……見ろ。蘭ちゃんは今、あんなに恥ずかしい思いをしてまで、俺たちのために光り続けている。隠したい場所を世界中に曝け出し、指先一つ動かすのさえ辱めとなる絶望の中で、彼女は一歩ずつ前に進んでいるんだ! 自分の尊厳を、光に変えて放っているんだ!」

 

助兵衛の目から、大粒の熱い涙が溢れ出した。それは肉欲などという低俗なものではなく、純粋な信仰に近い情熱と、一人の少女への深い敬意であった。

 

「エロ大王め……貴様は根本的に分かっていない。エロとは、自由であるべきだ! 本人の意志を無視し、強制的に曝け出させる行為に、一体何の価値があるというんだ! 恥じらいを奪われた裸体など、魂の抜けた器、ただの肉の塊に過ぎん!」

 

助兵衛は屋上のフェンスを力任せに叩き、空に向かって魂の叫びを吼えた。

 

「真のエロティシズムとは、隠したいと願う乙女の心と、それを見守り慈しむ観測者の間に生まれる、刹那の火花なのだ! 隠されているからこそ、そこに宇宙が生まれるんだ! YESお裸ん! NOタッチ! この理念こそが、欲望に狂った世界を救う唯一の真理なのだぁぁぁーーーっ!!」

 

「「「YESお裸ん! NOタッチ!! YESお裸ん! NOタッチ!!」」」

 

男たちの咆哮が、桃色の淫霧を物理的に押し返さんばかりの勢いで街中に響き渡る。

 

「野郎ども、浄化フラッシュ弾、装填! 蘭ちゃんの道を切り拓くぞ! 彼女の羞恥の光を、この街の隅々まで、俺たちのレンズで反射させて届けるんだ!」

 

助兵衛の鋭い合図と共に、街のいたるところに陣取った「守り隊」が一斉に動いた。彼らはビルの中層階、交差点の中央、公園の遊具の上など、あらゆる角度から城を狙える戦略的なポイントに陣取り、一斉に改造フラッシュを焚き始めた。

 

カシャッ! カシャカシャカシャッ!!

 

数万台、数十万台のカメラから放たれる高出力のストロボ光が、街全体を白濁した光の世界へと変えていく。それは烈が計算した、蘭の「浄化の光」と同じ波長を持つ、人工の羞恥共鳴波であった。

 

「ぐわぁぁっ!? 目が、目がぁぁ! 眩しすぎるぅぅっ!」

 

路上で服を脱ぎ捨て、狂ったように愛を叫んでいた人々が、一斉に目を押さえてその場にうずくまった。強烈な光が網膜を焼くと同時に、彼らの脳内に沈殿していた淫霧の毒が、蘭の光を擬似的に体験することで強制的に中和されていく。光を浴びた者の脳裏には、蘭が今感じている「全人類に見られているという耐え難い羞恥」の断片が流れ込んだ。

 

「あ……あれ? 私、なんでこんなところで裸に……。やだ、恥ずかしい!」

 

「うわぁぁっ! なんだこれ! 早く、早く服を! パンツはどこだ、誰か服を貸してくれぇっ!」

 

光を浴びた人々が、次々と正気に戻り、自身のあられもない姿に絶叫しながら建物の陰や物陰へと逃げ込んでいく。文明の光が、羞恥心という名の誇りと共に、少しずつ、しかし確実に街へと戻ってきた。

 

「よし! 街の霧が薄くなってきたぞ! 烈くん、城を覆う煩悩の防御皮膜に、光学的な穴を開けた! 今だ! 蘭ちゃんを、あの玉座の間まで一気に押し上げるんだ!」

 

助兵衛は、自身の一眼レフのレンズを空に向け、最大出力のフラッシュを放った。それは城内で孤独に戦う蘭に向けた、世界中のファンからの、そして同志たちからの、魂を込めたエールであった。

 

一方、城の大回廊。

SKBの副作用によって「数億人の視線」に全身を舐め回され、内側から犯されるような幻覚に苛まれ、もはや意識が朦朧としていた蘭は、城の窓から差し込んできた無数の、規則正しい「白い点滅」に、ハッと目を見開いた。

 

「……あ、れ? 下の街が、ピカピカしてる……? みんな、私のために、お写真を撮ってくれているの……?」

 

その光は、彼女を辱めるための冷たい視線ではなかった。

彼女の戦いを信じ、彼女の恥じらいを尊重し、彼女が正義のくノ一として、そして一人の誇り高い少女として戦い抜くことを支えようとする、同志たちの熱い応援の輝きであった。

 

「蘭、見て! ファンクラブの人たちが、地上の霧を追い払ってくれているわ! 私たちの退路は、彼らが命がけで守ってくれている……。今なら行けるわ、エロ大王の元へ!」

 

桜が、自身の漆黒のボンデージ姿への羞恥を怒りに変え、黒い鎖を激しく振るって最後の煩悩獣を粉砕しながら叫ぶ。

 

「みんな……。馬鹿だよぉ、本当にみんな、世界一の変態なんだから……っ。でも……ありがとう。私、もうちょっとだけ、頑張れる気がするよ……! この恥ずかしさを、みんなの想いに変えるんだからぁぁっ!」

 

蘭は溢れる涙を拭い、首筋のSKBの出力を、自らの意志でさらなる未知の領域へと引き上げた。

全身を駆け抜ける、もはや拷問に近いほどの「見られている」という感覚。股間を、胸を、脇を、お尻の割れ目を、あらゆる角度から詳細に観測され、実況され、保存されているという絶望的な辱め。影山烈のオイルがその感覚を十倍に増幅し、蘭の肉体は羞恥の熱で今にも溶け出しそうであった。

 

だが、今の彼女はその辱めを、城の闇を根こそぎ焼き尽くす純白の力へと完全に変換していた。

 

「エロ大王……! 覚悟しなさい! 乙女の恥じらいを笑いものにした罪、私の……この世界で一番尊い光で、絶対にお説教してやるんだからぁぁぁ!!」

 

蘭の身体から放たれる光が、ついに魔城の最深部を覆う巨大な扉を、その蝶番ごと粉砕した。

まばゆい浄化の輝きの中に、玉座に座り、醜悪な笑みを浮かべるエロ大王のシルエットが浮かび上がる。

 

少女の究極の羞恥心と、地上に集う世界中の変態たちの執念が一つになり、物語はついに、世界の運命を賭けた最終決戦へと突入する。

 

蘭の局部を隠す光は、今や一つの銀河のようにまばゆく、そして淫らに、エロ大王の野望を呑み込まんと輝き続けていた。彼女の一歩ごとに、タイルは白く焼け焦げ、城全体が彼女の恥じらいの波動で激しく震えていた。

 

 

_____

非公式光賀蘭ちゃんファンクラブ:光の聖域(サンクチュアリ)

管理人:もっこり助兵衛

 

【全裸世界】暗黒の淫霧vs我らがフラッシュ!蘭ちゃんの羞恥を支える地上最大の作戦報告スレ【聖戦】

 

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1:助兵衛@管理人

 

同志諸君、戦いはおわっていない。今この瞬間も、我らが光ヶ丘高校の上空には、あの忌まわしきエロ大王の「煩悩の魔城」が鎮座し、街を桃色の絶望に染め上げている。

だが、見てほしい。先ほどまで街中を埋め尽くしていた全裸のストリーキング集団が、俺たちの「浄化フラッシュ」によって、一人、また一人と正気を取り戻し、慌てて物陰に隠れていくあの光景を!

これこそが、俺たちが追い求めてきた「羞恥心という名の文化」の勝利だ。

蘭ちゃんが今、魔城の奥深くで、数億人の視線にさらされるという想像を絶する辱めに耐えながら、光を放ち続けている。

俺たちが地上でできることは、彼女の光を街の隅々まで反射させ、この淫らな霧を物理的に焼き払うことだけだ。

野郎ども、カメラを置くな! シャッターを切る手が震えても、その先にある蘭ちゃんの尊厳を、俺たちの指先で守り抜くんだ!

 

2:名無しの光高生

 

会長、乙です! 俺はいま、駅前の歩道橋の上で、後輩たち三人と一緒に「超広角・多段階ストロボ」をぶっ放してます。

正直、霧を浴びた時は「もう脱いじゃってもいいかな……」なんて悪魔の囁きが聞こえたんですが、烈くんのライブ配信で、蘭ちゃんのあの姿を見た瞬間、目が覚めました。

全身を真っ赤にして、涙を流しながら、股間の光を必死に抑えて「見ないでぇ!」って叫んでいる蘭ちゃん……。

あの「SKB」の副作用、マジでエグすぎますよ。

数億人の視線に同時に弄ばれるなんて、普通の女の子なら精神が崩壊してもおかしくない。

なのに彼女は、その絶望的な恥ずかしさを、俺たちを救うための光に変えてくれている……。

あんな気高い姿を見せられて、どうして俺たちが無様に脱いでいられるかってんだ!

 

3:名無しの光高生

 

さっき、公園で全裸で踊ってたおじさんたちに、至近距離から「一万ワット級浄化フラッシュ」をお見舞いしてやりました。

光を浴びた瞬間に、あのおじさんたちが「うわあああ! 恥ずかしい! パンツをくれ!」って叫んで茂みにダイブした時、俺、不覚にも泣いちゃいました。

羞恥心を取り戻すって、あんなに美しくて、あんなに情けないことなんですね。

蘭ちゃんが放っている光は、ただの光じゃない。

「人間として、見られてはいけない場所を隠したい」という、乙女の、いや、人類の根源的なプライドそのものなんだ。

エロ大王の「強制的な露出」なんて、あんなのはエロじゃない。ただの暴力だ。

俺は今、人生で一番、カメラのフラッシュを焚くことに誇りを感じてます!

 

4:ペロペロし隊・元幹部(現・守り隊突撃兵)

 

……おい、みんな。

俺はさっきまで、ベリアルの洗脳に屈して、蘭ちゃんの「光の隙間」を覗こうと血眼になってた。

でも、今の蘭ちゃんの光を見て、自分がどれだけ卑劣なことをしてたか、ようやく分かったよ。

城の窓から漏れてくるあの光……あれ、蘭ちゃんの「声」なんだよな。

「恥ずかしいから見ないで! でも、みんなを助けたい!」っていう、矛盾した、だけど最高に優しい叫びなんだ。

俺はもう、一生蘭ちゃんをペロペロしようなんて思わない。

彼女のあの眩しいお股に、心の底から土下座したい気分だ。

今は、自分のカメラのバッテリーが切れるまで、この街の桃色の霧を白く塗りつぶしてやるぜ!

 

5:助兵衛@管理人

 

>>4

よく言った。その悔恨の涙こそが、次なる「観測」への糧となる。

諸君、烈から最新のデータが届いた。

蘭ちゃんの羞恥エネルギーは、現在「SKB」の過剰負荷によって、理論上の限界値を突破している。

城の防御壁は、俺たちの地上からのフラッシュ支援によって、光学的にもうボロボロだ。

蘭ちゃんが玉座の間へ突入する瞬間に合わせて、世界中の全会員が一斉にフラッシュを焚く。

「全世界同時・羞恥共鳴(シンクロニシティ)」を敢行するぞ!

蘭ちゃんが「見られている」と感じるその瞬間に、俺たちが実際に「見守っている」という光を届けるんだ。

それは辱めではなく、彼女の孤独を癒すための「光の連帯」だ。

野郎ども、準備はいいか!

三、二、一……ッ!

 

6:名無しの光高生

 

うぉぉぉぉぉ! きたぁぁぁーーー!!

空が、街が、真っ白だ! 蘭ちゃんの光と、俺たちのフラッシュが混ざり合って、桃色の霧が消えていく!

魔城の底が、蘭ちゃんの羞恥の輝きに耐えきれず、白く焼けて崩れ始めてるぞ!

すごい……こんなに眩しいのに、全然いやらしくない。

いや、最高にいやらしいのに、最高に神々しいんだ!

蘭ちゃん! 聞こえるか! 俺たちの光が見えるか!

君の恥じらいは、決して無駄じゃない! 俺たちが、この世界の「恥じらう美学」を絶対に守り抜いてやるからな!

 

7:名無しの光高生

 

街の人たちが、みんな空を見上げて、自分の裸を隠しながら泣いてる。

淫霧が晴れて、月が見えてきた。

でも、月よりもずっと明るい、あの城の中心で輝いている「一輪の光の華」……。

あの中に、今も真っ赤な顔で身悶えしている蘭ちゃんがいるんだと思うと、胸が熱くなる。

俺たちの愛は、レンズを通した一方的なものだったかもしれない。

でも、今この瞬間だけは、俺たちの光が蘭ちゃんの背中を押しているって、信じてもいいよな?

 

8:助兵衛@管理人

 

信じろ。俺たちのシャッター音は、彼女の心臓の鼓動と共鳴している。

今、城の扉が吹き飛んだ! 蘭ちゃんが、ついにエロ大王の眼前に辿り着いたぞ!

ここからは、烈の「SKB」が真価を発揮する最終局面だ。

蘭ちゃんの羞恥心が、魔王を浄化する一撃となる。

俺たちは、その最後の一瞬まで、一滴の汗、一筋の光も漏らさずに記録し続ける。

それが、光の聖域の、そして俺たちの「愛の聖戦」の結末だ。

諸君、ラストスパートだ! 街中のフラッシュを絶やすな!

「YESお裸ん! NOタッチ!」

この魂の叫びを、宇宙の果てまで届けるんだぁぁぁーーーーーーっっ!!

 

掲示板の書き込みが加速し、サーバーが悲鳴を上げ始める。もっこり助兵衛は、キーボードを叩く指から血が滲んでいることにも気づかず、モニターに映し出される城内の蘭のバイタルグラフを凝視していた。

彼の周囲では、同じ志を持つ男たちが、ひび割れたカメラのファインダーを覗き込み、涙と鼻血を流しながら、必死にシャッターを切り続けている。

桃色の淫霧が消え、静寂を取り戻し始めた街に、数万回のフラッシュ音が規則正しく響き渡る。

それは、一人の少女の「恥じらい」という名の聖域を、汚れた欲望から守り抜くための、歪で、しかしどこまでも純粋な、変態たちのレクイエムであった。

 

「蘭ちゃん……。君のその、世界一恥ずかしい、世界一美しい姿を……俺は死ぬまで、ピントを合わせて見つめ続けてやるからな……」

 

助兵衛の独白は、浄化の閃光の中に溶けて消えた。

 

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