ワイ卿、Fate世界の円卓の騎士になる。 作:サーッ・タドコロ
いつもお読みいただきありがとうございます。
今回・第16節でちょうど文庫本1冊くらいの文字数(X.Xの話を除く)になり、一つの区切りとなります。
ワイは騎士になる以外の多くの可能性を持っていましたが、しかし最高位の騎士(または高級文官、宮廷料理人など)を目指して生きることになるという、その動機・切っ掛けまでを書きました。
ここまでを「1章 運命の仔」として一纏めにいたします。
次回から一応新章扱いになると思います。
一気に時代が飛ぶわけではないのですが、ワイが騎士になるまでを書けたら良いなぁって思います。オッスお願いします。
ようお前ら!元気にしとるか?
ワイは(どっきりどっきりDONDON!)元気やで!
エクトル卿の従騎士…マイヤさんの看病を始めてから、はや2週間。マーリンが夢に現れてから1週間が過ぎた頃…ってことになる。
時期としては春真っ盛りで、そこかしこで可愛らしい野花を見かけるようになってきた。
それに、すっかり春蒔きも終わって、早いとこやと既に若々しい青芽が顔を出しとるとこもあるくらいや。
そうそう、以前にちょっと相談しとったケイ義兄ちゃんの畑には、エクトル卿にも許可を貰った上で、なんとか作るのが間に合った試作品の肥料を使うてみた。
土中で発酵が進むことにより発生する悪臭防止の為に、同時進行で作った炭を砕いて一緒に土に漉き込んだり、それらが土に馴染むまで少し期間を置いたりしたから、ケイ義兄ちゃんの畑だけ春蒔きがちょっと出遅れてもうたりしたけどな。
秋の収穫祭までに刈り終えられるかは、かなり微妙な塩梅やろうけど…。
ワイとしては不安な気持ちも結構強いけど、ケイ義兄ちゃんの畑は個人用で完全に独立しとるようやし、そのケイ義兄ちゃんから「そこまで気にしなくていい」って言われとるから、気長に楽しみにしておくことにするわ!
時期の様相の話はこの辺にして、マイヤさんの容態の方の話なんやけども。
看病を続けていくうちに、傷の方はだいぶ良くなったようで、この頃になると
…いや、相変わらず、顔を合わせると歯茎を剥き出しにしてガチガチ鳴らしてくるんやけどもな。アイツ、もしかしてワイの髪の毛を食い物やと思っとるんやないか?
せやけども、怪我が治ってきて身体は健康状態に近づきつつあるのに、日を追うごとに夜に呻く声が酷くなっていくようやった。
始めは数日に一度程度のことだったのが、今では毎日必ず夜中に呻き声を挙げて藻掻き苦しむような動きを見せよる。
そんなんやから、ワイもここ最近はずっとマイヤさんの部屋で寝泊まりしとって、真夜中に起きては鎮静効果のある薬やらを適量処方しとる。
まあ、真夜中に起きるって言うても、ワイもこの頃は早起きする用事があるから、それについては別に苦でも無かったりするんやけどな。
…それに、この薬の効果は一時的なもんでしか無いから、原因を取り除かんことには苦しむたびに与えんとイカンくて、どうにもな…。
はよ目覚めてもらって、どこが痛んで苦しいんか聞けたらええんやけども…。
+
ワイのここ最近の一日のサイクルは、夜明けがまだまだ遠いような…そんな真夜中から始まる。
起きたらマイヤさんの容態を確認してから、苦しそうにしてるなら少し強めに、そうでないなら軽めに薬を与える。
モラールさんが起きてきたら、汗を拭ったりガーゼを取り替えるなんかするのを手伝ってもらうから、それまでは静かに寝かせとくんや。
そういや、そのモラールさんやけど、…こういう言い方はちょっと悪いとは思うけど、脳筋寄りな思考をしとる私兵団の人たちの中では、かなり知識欲がある人らしい。
ワイの治療の技術をひと目見て、「子どもとは思えんほどの技術だな…もし良ければなんだが、私にも学ばせてもらえないか?」って頼んできよった。
…以前までのワイの扱いを思うと、ここまで歩み寄ってくるのは逆に怖く感じはする。
そりゃあ、そんなん当たり前やろ。態度が変わって見えるようになった最初の頃は、マジで結構ビビっとったわい。
でも、モラールさんは本当にワイに対して対等に、…時々、ちょっと
他の私兵団の人らは、相変わらず結構しっかりワイのことを無視しよるけど、モラールさんだけは率先してワイに関わろうとしてくれる。
…それは、その…大丈夫なんかな、私兵団の中での関係性みたいなもんについては…。
いや、まあ、それはワイの考える問題ではないわな…。気になりはするけども…。
ともかくや!
ほんで、それならワイの方も、別にこれ以上ビクビクしとるのもなんかちゃうよな~…って思ってな。それからは毎日、日が昇ってから看病を手伝ってもらうようになったわけやな。
ただし、ワイはまだ人に教えられるほどの技術を持っとらんし、間違った教え方をして逆に病人を危険な目に遭わせるかもしれん。
そう思って、技術を教えることについては断らせてもらったわ。モラールさんはめっちゃ残念そうにしとったけども、こればっかりは情に流されて教えるようなもんとちゃうからな。流石にダメや。
ワイの技術はモルガンちゃん…お師匠様仕込みのもんやし、今度お師匠様がやってきたときにでも、一緒に教えてもらえるように頼んでみようか?って聞いてみたら、それについては全力で首を横にブンブン振られた。
相変わらず怖がられとるみたいやなぁ、お師匠様…。確かに怖いかもしれんけど、話せば普通にめっちゃええ人なのに…残念や…。
…話がむちゃくちゃに逸れてもうたな。
あれやな、真夜中に起きて、マイヤさんに薬を与えて、それからどうしたって話やね。
次は厨房に向かって、あったかい飲み物を作る。春になったからって、真夜中は寒いからな。この時代にエアコンなんて無いし。
ほんで、この時間に厨房に行くと、必ずアルトリアちゃん…あいや、アルトリウスくんがおる。
アルトリウスくんは、寝起きに必ず一杯の水を飲みに厨房にやってくる。水分を補給してから、朝日が登るまでの間、一人稽古に打ち込むために。
日中の明るいうちに、エクトル卿が居ない時は勉強を、エクトル卿が居てくれる時は剣技の稽古を直接受けて、完全に日が落ちきった後に汗を流して寝に入る。
そして、たった数時間ほどの睡眠を終えた後、日が昇らないうちに目覚めては、エクトル卿の剣技の教えを反芻して磨くために一人稽古を始めよる。
ワイがその事に気づいたのは、あの日…マーリンが夢に現れた日から数日後のことで、そうと気付いたその次の日からワイも同じ頃合いに起きるようになった。
アルトリウスくんに、せめて健康で居られるようにと願って、こうしてハーブを煮出したお茶モドキを出すのが日課になっとる。
アルトリウスくんからは「ワイ兄さんは、ちゃんと寝てください」ってちょっと怒られてもうたけども、そりゃあお互い様やろ。
それにそんなに心配せんでも、実はワイもショートスリーパーの才能があったみたいでな、マジで数時間くらい寝りゃあ寝不足にならんみたいや。だから、安心してくれて大丈夫やで!
そう言ったら、なんか悲しそうな顔されたわ。
なんでやねん。逆や逆、そんな顔したいのはワイの方や。
ほんで、二人で温かいハーブティモドキを飲んで、マイヤさんの容態が落ち着いてるときには、アルトリウスくんの稽古に夜明けまで付き合うことにしとる。
以前までにアルトリアちゃんが学んどった剣技の稽古は、まだごっこ遊びくらいのレベルだった。…それでも、天性の直感とセンスでワイを一撃で仕留めてきたりしとったけども。
でも、あの日からエクトル卿が本気で剣技を教えるようになって、アルトリウスくんはメキメキと剣技の実力を伸ばしとる。
せやけども、剣技の技巧だけで言えば、先に学んどったワイのほうが圧倒的に上や。…まあ、流石にケイ義兄ちゃんには劣るけど。
日中にエクトル卿がキチンと教えとる手前、ワイからアルトリウスくんへ技術を教えることはない。
けれども、一人稽古をするよりもワイが相手になった方が研鑽を積むことが出来るやろう。
それに、アルトリウスくんの才能はマジモンやからな。相手をしとるワイの方こそ、ホンマに良い訓練になる。
…というわけで、互いに良い影響があるなら、これを活かさないのは勿体ないっちゅう話に落ち着いて、余裕があれば朝まで二人で剣技の稽古に励んどるわけやね。
マイヤさんの容態があんまり良くない時は、お茶だけ一緒にして、ワイは看病に戻ってまうんやけどもね。
アルトリウスくんを一人残して厨房を去るんは、ちょっと心が痛むから、そういう意味でも早くマイヤさんには目覚めてほしいンゴねぇ…。
夜が明けて、朝日が昇り始めた頃に、ワイとアルトリウスくんは他の誰よりも早く仕事を始める。
アルトリウスくんは、いつも通りに水汲みとお馬さんたちのお世話を。
ワイは、以前よりいっそうよく食べるようになったアルトリウスくんの朝ご飯を作る。
異常としか言いようがない訓練の量やから、どうしてもお腹が空くらしい。
それに対して、「食事の礼儀作法を覚えるのも大事だから、本当は一人で食べるのはダメだけど、間食程度なら許す」って感じでエクトル卿には許しを貰っとるので、それなら遠慮なく…と、朝ご飯を作っとるわけやな。
例えば昨日なら…。
朝一番に焼いたパンと、燻製を試して以降よく作るようになったベーコンをカリッカリに焼いて、それと少しの葉野菜を挟んでサンドイッチ風にしたモンを食べさせてあげとる。
材料に余裕がありそうな日は、これに簡単なスープも付ける。スープが付けられない時は、ハーブティモドキやね。
ちなみに、エクトル卿との食事は日が天辺に昇る前辺りの頃になる。
真夜中から起きとるワイら二人だと、ハラペコが我慢できんようになるくらいに遅い時間やね…。
あと、エクトル卿は食事の礼儀作法を大事にするから、サンドイッチ風の食い物は普段は出さん。
エクトル卿に黙ってそういうモンを食っとるっちゅうのは、今のところワイとアルトリウスくんの二人だけの秘密だったりする。
ちゃんと話すべきなんやろうけど、エクトル卿がアルトリウスくんの稽古に励むようになってから話す余裕があんまりなくて、ズルズルと秘密のままになってしもうてな…そろそろ後が怖くなってきたわ…。ひぃん…。
っちゅうわけで、ワイは味見程度…にしてはちょい多めの1~2個だけ、残りは山盛り作って全部アルトリウスくんの腹の中へ。
…この幼女ボディの腹の中に、どうやってあんな量の食い物が吸い込まれて、ほんでその後普通にみんなで囲って食う分の飯も入っとるんや?ホンマに不思議やで…。
朝食を食べ終えたら、ワイとアルトリウスくんは揃って午前の剣技の稽古に向かう。
エクトル卿が居てくれる時は、エクトル卿はアルトリウスくんに付きっきりになる。
それならワイはケイ義兄ちゃんと…って言いたいところなんやが、夢でマーリンと会った次の日から、ケイ義兄ちゃんはかなり荒れてて…。
そういや、マーリンがなんか説明するって言うとったけど…絶対いらんこと言いまくったんやろなぁ…。
ワイのときと同じくらいか、ケイ義兄ちゃんのあの荒れようなら、恐らくそれ以上に。
で、今のケイ義兄ちゃんは、一緒に稽古してくれることもあるけど、結構な頻度で一人で打ち込むようになってもうた。
そこにワイが声をかけても、「すまん、今日は一人にしてくれ」とか言ってしもうて…。
なんとか、元気づけられたら良いんやけどな…。
せやけど、なんであんなに荒れとるのかよくわからんことにはどうにも…うむむ…。
ともかくや、ケイ義兄ちゃんと稽古ができなくて困る日が増えてもうた。
私兵団の人たちは相変わらずワイに対してイヤ~ンな態度やし、どないしよ…と思っとったら、そこにモラールさんが来てくれるようになった。
ワイやケイ義兄ちゃんより年上ということもあって、エクトル卿の技術をよく吸収しとるのがその身振りを見ればよくわかった。
そんなモラールさんがエクトル卿の代わりに稽古を見てくれるおかげで、ワイはなんとか剣技を腐らせること無く、地道に成長できとる。ホンマにメッチャありがたい話やで!
いやホンマに、アルトリウスくんの成長がメキメキと著しすぎて、ワイも燻ってられんのよな。
正直なところ、数年もせずに追い抜かれそうな気がしてならん。というか、そうなると思う。そのくらいの成長速度や。
…ケイ義兄ちゃんは、一人で稽古する事が増えた。…けど、それで本当にええんか…?
立派な騎士になるためには…。
いや、いいや、ケイ義兄ちゃんにだって考えはあるだろうし、心の整理が必要なときくらいあるってだけや。ワイが不安になってどうすんねん。
いかんいかん、またずんずんとナイーブになってもうた、ワイの悪い癖やなホンマに…。
よっしゃ!シャキッと切り替えなアカンわな!フンスッ!
午前の稽古が終わったら、昼食の時間になる。
ワイは厨房を任されとる身やから、みんなよりも一足先に訓練場を離れて食事の準備や。
私兵団の人たちにも料理担当の人が居るようで、ワイと近いタイミングで訓練場を離れていくのをよく見かける。
食事は…エクトル卿と、ケイ義兄ちゃんと、アルトリウスくんと、ワイと、…そして、エクトル卿の奥様が、席を囲むようになった。
以前までは、奥様は決して食事の場に…少なくとも、ワイが居るときには顔を見せることはなかった。
礼儀作法を大事にするようになったため、食事中に一切の会話が無くなって寂しくなってしもうたけど…むしろ、今はそれがありがたいとすら思えてしまった。
…ケイ義兄ちゃんの目が、なんだかどんよりしているように見えていたり…たまに、奥様の冷たい視線がワイに向けられ、突き刺さったりする食卓になってしもうたけど。…、……。
午後からは、ワイとケイ義兄ちゃんは仕事に出たり、仕事が終わるかそもそも仕事がない日には勉強に励む。
アルトリウスくんは、午後の仕事を受け持たなくなり、代わりに勉学に時間を費やすようになった。
数時間ほど勉強したら、アルトリウスくんはまた午後の鍛錬に励む。
ケイ義兄ちゃんは、アルトリウスくんに付き添う…というより、連れ回すような形で動くので、基本的に一緒に勉強や訓練をしとるのをよく見かける。
あと、どうやらたま~に、村の中へ引っ張って連れ歩いとるみたいやね。
…二人共、ここ最近はちょっと「心ここにあらず」って感じやし、それで良い気分転換になっとったらええんやけどなぁ…。
で、本当はワイも一緒について行きたいんやけど、流石に重症の身のマイヤさんを放っておけないので、午後の分の看病や日々使用する薬を作ることに励む。
まあ、看病って言うても、
…薬作りと言えば、エクトル卿から「そのうちモルガンが来るから、その時はワイが応対しなさい」って言われとるけど、まだ一回も来てくれとらん。しょ、しょんな~!(泣)
お師匠様に会えんのは寂しいけど、マイヤさんの看病も大事やし、その時までマイヤさんが回復してなかったら、この場で学ばせてもらえたりせんかしら…?
夕方になれば、その日の二度目の食事をするために、ワイはもう一度厨房に足を運ぶ。
夕食には、保存状態がちょっと悪そうなやつを優先して使うという決まりがある。
昼飯は見栄え重視な綺麗系で、夕食は昼よりちょっと食材が多くなったりして豪華っぽいけど雑な見た目って感じやね。
それについて、以前にケイ義兄ちゃんと獲りに行って作った魚の干物やら燻製やらについてになるんやけども。
アレらは日が経つほどに臭くなる…実際には腐っとるわけではないんやけども、悪くなってると思われるような状態になっていくから、このタイミングで出すようにしとる。
焼く前に一手間加えてから火を当てれば臭みがほとんど飛ぶし旨味が強いから、ワイとしても普通に食いたいし、今のところ毎日の夕食で少しずつ…いや、結構な量を出しとるな。
しかも、それでもあと1ヶ月くらい出せる量が残っとる。そりゃあまあ、バカデカ怪物フィッシュをわんさか獲ってきたもんなぁ。それだけ出しても余裕なくらい。まだまだ大量にあるわ。
ほんで、しっかり焼いて魚臭さが飛んだやつを食卓に出せば、臭いに敏感な様子のエクトル卿も美味しそうに食べてくれる。
…代わりに、焼いた直後に発生する魚臭さが若干部屋にこもってまうせいで、エクトル卿は厨房にはまったく近づかんようになってしもうたけども。換気は頑張っとるんやけどなぁ…。
ちなみに、奥様は魚料理が大好きなようで、毎食美味しそうに夢中で食べて、大皿で出した時はあのアルトリウスくんに張り合うくらいの割合で取り皿に持っていく。
いや、大人の胃袋と張り合っとるアルトリウスくんの方がおかしいっちゅう話よな。ちょっと感覚が麻痺しとったわ。
夕食を終えたら、エクトル卿は奥様と共に書斎へ向かい、アルトリウスくんやケイ義兄ちゃんらは水浴びなんかして寝に入る。
エクトル卿と奥様が揃って書斎に向かう理由はハッキリとは聞いとらんけど、今は領地運営の政務のほぼ全てを奥様が担っとる関係で、その調整やらなにやらがあるってちょっとだけ聞いとる。
日中はずっとエクトル卿がアルトリウスくんに付きっきりになっとるし、そういう役割分担なんやな~って感じやね。
電化製品とか存在せん時代やし、暗くなったら基本的に寝るしか無い。
…まあ、灯りさえ用意できれば、暗い夜の中でも動き回る人もいるみたいやけどな。
そんでも、積もり積もればなかなかデカい出費になるやろうし、誰も率先して夜中に灯りを点けてウロチョロなんてしたいとは思わんやろうけども。
ワイかて移動のたびに燃やすオイルやらなにやらが勿体ないからこそ、こうしてマイヤさんの部屋で寝泊まりするようになったわけやし。
+
…ってな感じで、細かい部分は省くけど、こうしてワイは日々を過ごしとったんや。
以前とは少しずつ何かが違っていて、それでもワイらの日常は止まらずに続いていく。
アルトリアちゃんは、アルトリウスくんとして過ごすようになった。
毎日、日に数時間の睡眠だけを取り、真夜中から稽古を始める。それでも、無理はしていないのだという。ホンマか?
ワイは、ほんならせめてワイに出来ることをと思って、同じくらいの睡眠サイクルで合わせるようになった。ちな、ワイは無理してないで?(暗黒微笑)
エクトル卿は、外に出て働く用事がある時以外は、基本的にアルトリウスくんに付きっきりみたいになった。
代わりに、ワイとケイ義兄ちゃんの相手をすることは減ってしもうた。いや、アルトリウスくんの稽古と一緒に、比重はアルトリウスくん重視って感じで教えてくれはするんやけどもな。
あと、魚料理をするようになってから、明らかに厨房に来なくなった。なんならちょっとだけ「異臭が過ぎるぞ」って怒られた。それはホンマにすんませんやで…。くぅ~ん…。
ケイ義兄ちゃんは、エクトル卿が仕事のためにアルトリウスくんから離れるようになる午後の時間になると、アルトリウスくんを無理矢理に連れ回すことが増えた。
…以前は、アルトリアちゃんの方からただ無邪気について行っとったんやけどな。
逆に、ワイとケイ義兄ちゃんが一緒に過ごす時間は一気に減っていった。ワイが嫌われとるっちゅうわけではないと思う。でも、ケイ義兄ちゃんはいつもどこか暗い表情をしとる。心配や。
モルガンちゃんには、まだ会えとらん。
そのうち会いに来るってのがいつなのか、エクトル卿に聞いてみたことがあるんやけど、春のうちには必ず一度は来るらしい。楽しみやね。
ちょっとだけモラールさんに触れると、ワイが見た限りでは私兵団の中で邪険にされとることは無いようではある。…今のところは。
モラールさんは、その…親切にしてくれとるんはわかるんやけど、ホンマに大丈夫なんかなぁ…。
あとは、お馬さん…インプルシオン号は、ワイの髪の毛を「黒くなった牧草」か「ワカメっぽい何か」と勘違いしてる可能性がある。この前少し食いちぎられた。
…以前よりも、賑やかになったような、寂しくなってもうたような。
そんなワイの感傷なんて置き去りにするように、日常はただ進んでいくばかりや…。
──みんなが少しずつ変化していったように、ワイも何かが変わっていくんやろうか。…そんならせめて、良い変化ってやつやったら、嬉しいなぁ…なんて。この日はそんな小さな不安を抱きながら、少しだけ寝入るのが遅くなってしもうた日になった。
▼お馬さん達
・エト号
エクトル卿の愛馬。
生まれた仔のうち、もっとも優秀な個体に「エト」の名を継がせて、生涯可愛がり続けた相棒。
筋肉の塊かつ巨大なエクトル卿を乗せて疾駆するという、剛力の馬である。
今代のエト号は、性格がお淑やかかつ非常に寡黙でおとなしいが、しかしワイには憤怒の形相で歯茎を剥き出しにする。
・インプルシオン号
従騎士マイヤの愛馬。
通常の馬では怖がらせてしまい、乗ることは出来ても疾走らせることは出来ない…というマイヤが駆ることが出来る、唯一と言って良い相棒。
ほとんどの人間に対して極めて苛烈な態度を示す妖精馬であり、並の馬よりも圧倒的に高い知能(馬としては)と魔力を有している。
実はエクトル卿のことがあんまり好きじゃない。
ワイの髪の毛に噛みつくのは、「それがソイツの大事な物」と理解してわざわざ狙って攻撃している。
・ラムレイ号
アルトリア/アルトリウスに特に懐いている、青鹿毛・黒毛の馬。
見た目は恐ろしく見えるかもしれないが、性格は非常に人懐っこく甘えん坊なお嬢様。
このラムレイ号の子孫が巡り巡って、アーサー王の愛馬の一頭である「黒馬・ラムレイ」として生まれる。
ワイのことは、ただひたすらに怖くて、近づいてほしくない。
・その他のお馬さん
広い土地を守るため、いっぱいお馬さんが居る。
みんなワイのことが、それぞれ理由に多少の違いはあれど、嫌っている。
およそ全ての馬に嫌われているワイのことを、私兵団の者たちの殆どは「騎士に(そして騎士の息子に)ふさわしくない」として、あからさまな態度で侮蔑している。