機動戦士ガンダムGQuuuuuuX SIDE AMURO ~少年が見た戦争~ 作:すずき 虎々
物語の第一章も、佳境に入ってまいりましたので、楽しんでいただけるように頑張ります。
第11話 暗躍
現在、グリムアーチは先日の海賊からの襲撃を受け、被弾個所の補修と、物資及び人員の補充の為、サイド3に帰港していた。
一方、アムロはというと、クアックスとフレドの最終調整を済ませ、先日、キシリアから預かった謎の素材であるUNMの研究に没頭していた。
「このミュー波の伝導率の異常値を利用すれば、ベータ波による駆動制御が可能になるな。となると、いよいよサイココミュニケーション義肢も現実味を帯びてきたんじゃないか。ただし、問題は、このマテリアルの精製方法だけど…。」
既にあらかたの職員が帰宅した研究棟のオフィスの奥、与えられた個室は資料やらサンプル、試作品やらで、足の踏み場もなく、最早この現象は個人的な資質によるものとして認知されだしているが、本人は全く意に介さず、サイドセブンの自宅で引き籠っていた頃同様、その凄まじいまでの集中力を全て注いで、新素材の研究に明け暮れていた。
ふいに扉をノックする音が響き、同時に扉が開く音が聞こえたかと思った直後、今度は明らかに嫌悪感を帯びた「うっ。」という声が聞こえた。
「これは…。いったいどうすれば、執務室がこんなゴミ集積場のような臭いになるのだ…。」
持参したファイルを小脇に抱え、空いた方の腕で自らの鼻を覆い隠し、眉間には本人の感情を如実に表したかのように、皴が寄っている。
「お呼びいただければ、こちらから出向いたんですが。」
抑揚のない声で、明らかに気のない返事とわかる返答を返すアムロ。
「15時頃にメールを送ったのだがな。いつまでたっても貴様が現れないので、私が自ら赴いたのだが。何なのだこの部屋は…。」
イザベラは足元に転がっている紙きれや謎の物質を足で払いのけながら、部屋の中央に置かれた応接用のテーブルの上に積みあがった書類の束の上に、ファイルを乗せる。
「あぁ、払いのけないでください。どこに何があるのかわからなくなってしまいます。」
「これで、物の場所が把握出来ているのだとしたら、まさしく貴様は本物のニュータイプなのだろうな。」
「ニュータイプがそんな便利屋みたいなものだったら、自分もなってみたいものです。」
アムロは未だ集中が途切れていないのか、目の前にいるのが遥か雲の上に居る存在であるとはつゆ知らず、軽口で受け答えをしていた。
そんなアムロの態度など気にも留めずに、イザベラは続ける。
「ギレン総帥が、先日の貴様の報告とデータに大変満足なさっておいでだ。ひいてはそこに置いた資料は、総帥府からは決して出ることのない極秘資料だが、貴様の研究に役立つだろうと開示を許可してくださったのだ、ありがたく拝謁するように。」
「総帥!?」
アムロはモニターから視線を移し、テーブルの上に積みあがった資料の上のファイルを見ると、その奥にいるイザベラの存在にようやく正気の状態で気が付いたようで。
「イザベラ准将!?」
と、勢いよく立ち上がって敬礼をするアムロだったが、もう既に大分醜態は晒し終えており、さらに立ち上がる動作と、敬礼をする動作で、周囲の本や書類の山が二度崩れ落ち、醜態の上塗りを晒すのであった。
「さっきから、貴様は誰と話しているつもりでいたのか。」
怒るのを通り越して、完全に呆れた顔のイザベラは、既に部屋の異臭に鼻も慣れたのか、口元を覆っていた腕も下ろしていた。
「申し訳ありません。このような場所に准将閣下がお見えになるとは、思いもしませんでしたもので。」
「まぁ良い。兎に角、そのファイルを確認しろ。写しを取ることは認められない。頭の中から外には出さないように。見終わったら、即座に返却しろ。いや、ダメだな。私が今持ち帰るから、直ちに確認しろ。」
イザベラは、アムロの執務室内を見渡し、極秘文書を置いて立ち去るという選択肢がありえないものだと感じたようで、作業の手を止めて、直ちに極秘ファイルを確認するように指示した。
アムロは、イザベラが置いたファイルに目を通し始めた途端、あからさまに目の色が変わり、食い入るように読み始めた。
そんなアムロの様子を見たイザベラは、諦観のこもった顔に拍車がかかるのを自覚しながら、無駄だと知りつつもアムロに声をかけた。
「私は部屋の外でまっているから、ゆっくりと確認すると良い。」
廊下にある自動販売機で買ってきた紅茶も飲み終わり、そろそろ小一時間も経とうかという頃、来客用のソファで寛ぐイザベラだったが、アムロの執務室の中から奇声が聞こえたので、部屋の様子を見に行くと、既にアムロは自分のパソコンの前に座り、作業を再開していた。
アムロは頭を掻きむしってみたり、ブツブツと独り言を言ってみたりと、忙しそうだったので、最早この状態のアムロに、小言を言うことの愚かしさを悟ったイザベラは、応接テーブルの上に山積みになった書類や本の上に放置された軍の機密文書を手に取り、何も言わずにアムロの執務室をあとにしたのだった。
「どうやら私は、大きな子供の子守役を押し付けられたようだな…。」
イザベラは、帰りのエレベーターの中で、大きめの溜息と共に独り言ちた。
月面都市グラナダ・ジオン公国宇宙攻撃軍司令本部司令官室
上質な地球産の黒牛革を、丁寧に鞣した革張りのリクライニングチェアは、オフィス用と言うには少々度が過ぎる代物ではあるが、その椅子に身を委ねる主にとっては必要不可欠と云える程に、その激務の疲労を緩和してくれていた。
黒檀製のデスクの上に据え置かれたデバイスから投影されたエアリアルモニターには、先日のアムロ大尉と海賊との戦闘記録映像が映し出されていた。
「初めての実戦でこの結果とはな。何度見ても文句のつけようもない戦果とは思わないか?」
「はっ。か、閣下のおっしゃるとおりにご、ご、ございます。」
男は、軍内部でも、それなりの地位と実績を持つ、立場のある人間であるが、それにも関わらず、男の口の中は、口腔内めがけて除湿機でもかけたのかという程に乾き、喉が張り付きそうになっていた。逆に額からは、冷や汗が流れ落ちる程の、極度の緊張状態の中、それでも何とか、喘ぎながらもやっとの思いで、たった一言の世辞を返す。
「で?私は何故、ギレン総帥から本国への帰還命令を受け、UNMの報告を求められているのだ?」
男の身体に一層の緊張が走り、自身のズボンの縫い目に這わせて、気を付けの姿勢を取る指の先が、盛大に震えているのがわかる。
「あ、あ、アムロ大尉の周りを、い、イザベラ准将がウロチョロしているようでして…。」
普段はマスクで覆い隠している口元も、今は露わになっていて、ヘルメットもかぶってはいない。普段は丁寧に編み込まれた髪の毛も、今は解かれて背中の辺りにまで、無造作にかかっている。それ故普段とは違い、その表情には如実にキシリアの感情が浮かび上がっていた。
「貴様は、自分の部下が、何を、何処まで話して良いかの管理も出来ない程に、無能か?ギレン兄の子飼いの雌犬が、自分の部下の周りをうろついているということが、何を意味するのか、私がいちいち丁寧に教えてやらねばならない程に、無能なのか?」
男は、キシリアが自分の意に副わない者に対し、これまでどのようにしてきたかを知っている。
そして、自分が、やたらと出来の良い部下を持ってしまったが故に、今まさに命の危機に直面しているという不幸を呪った。
キシリアの怒気に押しつぶされそうになりながらも、男は震える声で、必死に言葉を絞り出した。
「イザベラ准将の件につきましては、私の方で必ずなんとかいたします。」
キシリアは、男をじっとりとした眼差しでねめつけると、小さいが芯のある声で言った。
「私は気の長い方ではないということだけは覚えておくのだな。」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次の第十二話でこの物語の第一章は幕を閉じます。
盛り上がるように頑張りますので、どうかご声援よろしくお願いします。
私のオリジナル作品は「小説家になろう」の方で投稿していますので、興味のある方は、そちらの方もよろしくお願いします。(作者名はそちらも『すずき虎々』です)