機動戦士ガンダムGQuuuuuuX SIDE AMURO ~少年が見た戦争~   作:すずき 虎々

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いつもご愛読していただきありがとうございます。
今回の第十二話をもって、この物語の第一章が終了したという形をとりたいと思います。
次回十三話からは、第二章ということで、また皆さんに楽しんでいただけるような話を書いて行きたいと思いますので、今後もよろしくお願いいたします。


第十二話 相反転現象

第12話 相反転現象

 

「大尉、いい加減帰って下さい。レクスさんに愛想つかれて出て行かれちゃいますよ。」

 

 アムロの執務室内の動線を確保するため、床の上に配置された資料を、片っ端から拾い上げては部屋の端の方に積み上げるという作業を繰り返しながら、小言をを繰り返すメリル。

 

「あぁ、やっておく、置いておいてくれ。」

 

 それに対して、全く話を聞いていないのがあからさまなアムロの返答を聞いて、流石のメリルも声を荒げる。

 

「大尉、追い出される前に、一度帰ってお風呂に入って、服を取り換えてください!いい加減にしないと、この部屋追い出されますよ!大尉のスメハラ苦情本当に出てるんですからね。」

 

「うるさいなもう、怒鳴らなくても聞こえてるさ。」

 

 まるで他人事のような受け答えに、いよいよメリルの感情も限界に近付いてきた。

 

「もうじき子供が生まれる彼女を放っておいて、職場に入り浸って帰ろうともしないってどういうことですか!?再来月には生まれるんでしょ?起き上がるのだって、歩くのだって辛い時期なんだから、ご飯くらい作ってあげてくださいよ、本当にもう!」

 

 アムロは、メリルの癇癪に驚きを隠せずにたじろぎながら一言もらした。

 

「メリルがそんなに怒ることないだろ…。」

 

「いいですか?女性って、こと出産となると、自分は仕事をすることが出来ない、給料を貰ってくることが出来ない、家計の負担になっていると感じがちなんですよ。で、も!それは大きな間違いです、男と女が二人そろって初めて子供が作れるんです!つまり、男にも責任があるんだから、妊娠中は男が稼ぐのが当たり前なんです。でも、女性ってそうは考えられないものなんですよ、とにかく不安なんです。だから、こんなところに入り浸ってないで、帰って優しくしてあげないでどうするんですか?あ、でも、お風呂は入ってくださいよ!」

 

「まるで自分が出産したことあるみたいない言いぐさじゃないか。いや、ちがうな、ゴメン、メリルの言うとおりだ。仕事にのめり込んで家庭を顧みずに、母親を置いて宇宙に出た父を、心のどこかで蔑んでいたこと、思い出したよ。俺も同じことをしていたんだな…。」

 

 アムロは寂しそうな、それでいて嬉しそうな、何とも言えない表情を見せる。

 

「もう、そんな顔するくらいなら、とっとと帰って、愛してるよレクス~♡ってキスでもしてください。あ、3日も家に帰ってないんだから、帰る前に連絡して、食べたいものでも聞いて、買って帰ってあげてください。それと、この部屋も次に大尉が来るときにはきれいさっぱり片付けて置きますので、覚悟しておいて下さい。どうせ資料なんて頭に入ってるんでしょ。」

 

 アムロは苦笑いをすると、一言。

 

「いつもすまない、助かるよ。」

 

「本当にもう、私清掃業者じゃないんですからね。」

 

「明日のランチ、奢るよ。」

 

「マジで!?ラッキー!」

 

 形容的な意味合いではなく、物理的に背中を押されて執務室を追い出され、もう少しで纏まりそうだった新設計の内部フレーム用素材に後ろ髪をひかれる思いをしながらも、アムロは研究棟を後にした。

 

 研究棟のあるエリアには、直接地下を通るOTL(オービタル・トランジット・ライン)という、地球でいうところの地下鉄のようなものが走っている。

 出身地によってはスペースチューブであったり、ヴォイドラインなどと呼ぶ者もいるが、一般的にはOTLという呼称が最も標準的と言える。

 このOTLの特徴は、地球での地下鉄であれば、本当に地面の下を通っているので、走行中の景観はひたすらに暗闇ということになるが、OTLの場合は、コロニーの外郭の外を走るので、宇宙空間を楽しむことが出来るのだ。

 アムロは自宅のあるエリアのひとつ手前の商業エリアでOTLを降り、レクスに何か欲しい物がないかと送ったメッセージの返信を待つが、一向に既読になる様子がなかった。

 

「本当に体調でも悪いのかな、辛くて起きれないのかもしれないし、一度帰って様子を見

てからでも、買い物は出来るしな。」

 

 アムロは、いったん買い物を諦めて、先にレクスの様子を見に帰ることにした。

アムロは、再度OTLのターミナルに降りて、住宅エリアまで行き、そこから地上に戻って、自宅まで歩くのを面倒と感じたので、時間的に早いであろう直接歩いて帰る方を選択した。

 

「レクス、ただいま。鍵開いていたけど、不用心だから、ちゃんと鍵かけないと。」

 

アムロは、いるはずのレクスに帰宅したことと、ドアの施錠が成されていなかったことを伝えようとした。

 

「レクス?」

 

返事がないことに違和感を感じる。

 

リビングにもキッチンにもレクスの姿はない。

 

ユニットバスにもいない。

 

アムロはベッドルームのドアノブに手をかけて、一瞬躊躇う。

 

 このドアを開けてしまうと、もう元には戻れないかもしれないという、言われもない焦燥を覚えながら、レクスの名を囁きながら、恐る恐るドアノブを捻る。

 ドアを開けた瞬間、アムロは目に入ったあまりにも凄惨な光景に、言葉をしぼり出すことすら出来ず、ただ膝をつくことしかできなかった。

 

 いや、立っていることが出来なかったという方が正しいのだろう。

 

 次の瞬間、水平に走る稲光と共に、目の前には広大で、暗く、どこまでも深く、暗い闇が広がり、全てを飲み込んでゆく。

 ひたすらに繰り返される『ラ、ラ…。』という音は、空気の振動が鼓膜を介して聞こえる音ではなく、頭の中で響き渡る音。

 時の奔流が過ぎては返し、時間の波がアムロの体を溶かしてゆく。

 その闇の奥底で、あるいは煌めいては消えていく光の中、薄っすらと、しかしながら確かな、良く知った気配が揺らぐ。

 温度も、形も、輪郭もないのに、でも確かに“そこにいる”。

 

『…ロ。……アム……ロ……』

 

 その声が途切れた瞬間、アムロは胸の奥で、何かが爆ぜるのを感じた。

 

 世界の表裏が反転する。

 

 闇も、光も、刻の流れさえも、全てはその意味を失い、その形を失い、生まれる。

 

 意識はやがて刻を超え、刻は全てを無に帰し、光が全てを繋ぐ。

 

「大丈夫、貴方はただ、受け入れるだけで良い。」

 

 初めて聞くようで、懐かしい響き。

 

 背中から感じる、全てを包み込むような優しい抱擁。

 

「貴方は失ったのではないわ。ただ、繋がっただけ。」

 

 頬に感じる温かな手のぬくもり。

 

 そして、今目の前に広がっていると感じていた光景は、まるで薄いガラスが砕けるように音を立てて崩れ落ち、同時に少女の悲鳴にも似た鋭い音が空間を貫いた。

 その日、誰にも気づかれないまま、ミノフスキー粒子の相反転現象が観測された。

 アムロとレクスが住む家の、ベッドルームを中心に、球体状に削り取られたかのように、抉れており、その中心には、浮遊するT字型の、緑色に発光する物体が残されていた。

 




ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
本日をもって第一章は終了となります。次回、第十三話からは第二章へと入ります。

更新は一週間ほど間を空けてから再開する予定です。
少しお待たせしてしまいますが、再びお会いできるその時まで、どうぞよろしくお願いいたします。
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