機動戦士ガンダムGQuuuuuuX SIDE AMURO ~少年が見た戦争~ 作:すずき 虎々
本日より第二章が始まるという感じで進めてまいります。
今後は週一ペースで投稿しますが、なにとぞご容赦の程、お願いいたします。
第十三話 彗星再び
第13話 彗星再び
0084年 9月10日
先週末、ジオン公国軍の技術士官で、現在ジオニック社へ出向中のアムロ・レイ大尉が、自宅に帰宅したとされる午後13時以降、同居していた女性と共に忽然と姿を消した。
寝室に残された血痕は、同居女性のものとみられ、鑑定の結果、レクス・オリバの血液であると断定されたものの、出血したのは、アムロ大尉が帰宅したと思料される7月6日午後13時より、15時間以上前であるという鑑定結果からも、レクス・オリバの出血の原因がアムロ大尉によるものである可能性は極めて低いと推認されるとの報告を受けている。
帰宅直前に会話したとされる、部下によると、翌日には出勤意思を示していたが、勤務地であるジオニック社本社付帯の研究棟執務室に、一向に姿を現さないことを不審に思った前述の部下が、大尉宅を訪れたところ、寝室と、そこへ至る廊下の一角が、球状に抉り取られたかのように消失しており、その球体の中心に位置する空間には、T字型の金属素材が浮遊し、薄っすらと黄緑色に発光していたと記された報告書を確認した。
私が赴任後、初めて調査することとなったのが、この、アムロ大尉個人が発生させたと推察されている、ゼクノヴァの痕跡調査だった。
私の時は、ガンダムに搭載されたアルファサイコミュが暴走したのが、そもそもの原因だと思っていたが、今回のこのアムロの場合はどうだ。
例えば、ニュータイプの能力が覚醒していたとして、生身の人間が、単体でゼクノヴァを引き起こすなどということがありえるのか。
そもそも、ゼクノヴァの定義すら怪しいものだ。
ミノフスキー粒子の相反転現象と言ったところで、それは結果として観測される現象がそうだというだけで、なぜその現象が発生するのかを解明できているわけではない。
あの時のあの感覚は、いったい何だったというのだ。
マス家を飛び出して、アズナブルと入れ替わった時、もう二度と会うことは叶わないと思っていたアルテイシア。
虫も殺せぬ、優しくて愛らしいあのアルテイシアが、まさかモビルスーツに乗って私の前に立ちはだかるなど、ありえない話だと分かってはいても、しかし、あの時感じたあの感覚を、完全に否定することも出来ない。
「えぇい。いったい私にどうしろと言うのだ。」
苛立ちに任せて机を叩いた拳に伝わる痛みが、混沌としていた思考の縺れを解きほぐし、一つの道筋を指し示す。
シャロンの薔薇が見つからないとはいえ、アムロがゼクノヴァを発生させたことは、ほぼ間違いない以上、この報告書にあるT字の金属、これを手に入れることが叶いさえすれば、答えに近づけるはずだということだけは、間違いあるまい。
「あとは、あの男、シュウジ・イトウか…。」
思わず口をついて出た名前。
向こう側の世界に飛ばされた際、今のこの世界とはまるで逆の世界情勢の中で、戦勝国である地球連邦を勝利に導いたとされる一人のニュータイプが操るモビルスーツ、ガンダム。
その、白い悪魔と恐れられるガンダムを操縦していたのは、民間人の子供だったという噂話。
普通であれば与太話として聞き流すであろう、獲るに足らない噂話ではあるが、そのパイロットの名を聞いて、全てが繋がったかのような感覚を覚えたのだった。
そして、その名を私に伝えたのが、シュウジ・イトウという少年だった。
何の前触れもなく、突然、私の前に現れたその少年は、私が誰であるかなどは、どうでもいい事であるかのように、唐突に語り出した。
「貴方は、この世界のアムロにもララアにも、会ってはならない。と、ガンダムが言っている。」
「君はいったい、何だというのだ。」
「僕は、シュウジ。僕の事はいずれわかるよ。それより、貴方は帰らなければならないから、こちら側のアムロ・レイ、白い悪魔に会うのは危険だ。ララアも同じ、貴方とアムロを引き合わせてしまう。自分が壊れるとわかっているのに。貴方の主戦場はこちら側ではない。と、ガンダムが言っている。」
あの、シュウジと名乗る少年は、私のパーソナルカラーで塗装されたガンダムを見上げ、私のことなど見えてすらいないかのように、ただガンダムに語り掛け、そして立ち去った。
「僕は再び貴方のもとに現れる。と、ガンダムが言っている。」
やがて、彼の残した言葉が現実となった時、私はこの世界に連れ戻されたのだ。
設計図を開いた瞬間、私の中で渦巻いていた思考が、わずかに静まった。
“イオマグヌッソ”開発計画
ゼクノヴァとは何か、未だはっきりとはわかっていないというのに、ゼクノヴァによって発生するであろう現象を、人工的に発生させようというこの計画。
キシリアが、嘗て自分の目の前で起きた現象の、そのあまりに桁違いな規模に、憑りつかれてしまった妄想につきあわされる軍を哀れみもしたが、今となってはそれも利用できるということになる。
しかしながら、その中核に据えられるはずだった“シャロンの薔薇”が見つからない事には、計画が動くこともない。
だが、アムロが残したT字型の金属が、薔薇の代替となるというのであれば、話は変って来る。
しかしながら、軍でもメリル女史の報告を受け、ただちに出動した軍の調査隊が、その金属を回収したという記録が上がっていないところをみると、その金属も、自らの存在を誇示した後に、消えたということなのではないだろうか。
であれば、その謎の金属素材が内在する力は、薔薇と同等かそれ以上の能力を秘めているということになる。
軍が、いやキシリアが、これを兵器として運用しようとするなら、まず間違いなくシステムは“暴走”する。
「それがわからない程愚かではないだろうに、所詮はキシリアも俗物ということか、私も、彼女に対して買い被りが過ぎたのかもしれんな。」
その時、止められる者は誰もいない。
アムロがいたとして、気づいた時にはもう既に手遅れとなっているだろう。
そして、これは止められなくても良いのだ。
都合が良いことに、キシリアも、ギレンでさえ、この計画が自分たちの思惑によって進められていると信じきるであろうことが何よりだ。
「ふっ。せいぜい、私が仕込む罠の為に、必死に金をかき集めてくれればいいさ。」
ダークウェブのとあるチャンネルで密かに放映され、いたるところで賭博の対象となっている非合法のMSマブバトル、その名も“クランバトル”。
今日も赤いガンダムが、派手に暴れてくれている。
しかも、今日の相手のあのモビルスーツ、確か黒い三連星とか言ったか。
戦争が残した亡霊共を相手に、派手な立ち回りで、暗い宇宙に二つの火球が、夜空に上がる花火のように儚く消えてゆく。
「彼に私の機体を預けたのは正解だったようだな。おかげで私は自由に動き回れるというものだ。感謝せねばなるまい。」
暗い研究室の中、モニターの明かりに浮かび上がる、目元まですっかり前髪で隠された
顔の口元が、わずかに歪んでいた。
最後までお付き合いいただきありがとうございます。
今後は、週一ペースで連載していくつもりでおりますので、次回はおそらく来週の土曜日くらになるのではと思います。
今後とも面白いと思っていただけるよう頑張りますので、応援よろしくお願いいたします。