機動戦士ガンダムGQuuuuuuX SIDE AMURO ~少年が見た戦争~   作:すずき 虎々

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早速ですが、本編をお楽しみください。


第十四話 始動

第14話 始動

 

サイド3・17バンチコロニー

 

 サイド3の工業区画の一つで、戦時中は、ジオニック社のモビルスーツ製造ラインが密集し、昼夜を問わず稼働する工場のため、常にデイライトを照射する様を“不夜城”と呼ぶ者も少なくなかったが、今となっては、一部の稼働を継続している工場を除き、そのほとんどが、モビルスーツ関連のジャンク置き場と化していた。

 不要となった明かりは落とされ、コロニーの疑似重力を発生させるための回転運動で、時折差し込む星々の光が、無造作に放置されたモビルスーツの残骸を、不気味に照らしていた。

 有機物が発酵する際に出す、すえた匂いと、油の匂いが混じって、なんとも言えない不快な臭気を漂わせているジャンクヤードに、場違いな白いスーツをその身に纏った金髪の男が、工場跡の主と思しき薄汚れたノーマルスーツをツナギの様に着ている男と話している。

 

「さっそくだが、見せてもらおうか。」

 

「裏手のハンガーにあります。」

 

 先導するノーマルスーツの男の後を、白いスーツ姿の男がゆっくりと追いかける。

 

「それにしても、シモンズ氏もそのような設計図を何処で手に入れたのか、怪しいものだな。」

 

「まぁ、設計図と言っても、理論的には可能って話を、とりあえず形にしたっていう程度の代物ですが、それにしても、フレーム自体を可動させるっていうアイデアは、機体の汎用性の面でも、バリエーションの面でも、理にかなっていて目を見張るものがありました。この図面を書いた人間は、相当頭がキレるんでしょうね。モビルスーツを変形でもさせようとでも思っているんでしょうか。」

 

「さぁな、だが、ありえない話でもないだろう。」

 

「たいs、っと。お客さんの機体ですが、中身に関しては、ほぼ設計図の通りに出来上がっています。稼働テストも問題ありませんでした。ただ、装甲に関しては、はっきり言わせてもらいますが、手に入りませんでした。なので、ある物を継ぎ接ぎして、それなりに形にしたといった程度になりますので、特に脚部は気を付けてください。ほとんどフレームむき出し状態ですので。」

 

「かまわんさ、むしろ軽量化の手間が省けるというものだ。それに、今の時代、モビルスーツの装甲などというものは、飾りのようなものだ。当たらなければ、どうということはない。」

 

 嘗ては、ジオン公国軍の基幹コロニーに直結するかたちで、生産されたモビルスーツを次々と供給し続けていた工場も、今では常夜灯の一つも灯されることなく、只々仄暗い寂れた廃墟と化しているかに見えたが、役目を終えたかに見えたその旧様式のハンガーには、一機のみすぼらしいモビルスーツが、ひっそりと据えられていた。

 

「ほう。ガンダムタイプの流れをくむ意匠に見えるが、ゲルググとは違うな。あのバイザーの奥はデュアルアイユニットか?」

 

「よくおわかりで。」

 

「マブの機体は?」

 

「見た目がジャンクの寄せ集めに見えるように偽装した、ザクを用意しました。お客さんの嘗ての愛機とまではいきませんが、出力は20%以上も向上させてますんで、クランバトルで後れを取ることはないと思います。」

 

 目を凝らすと、新型機の奥に、見慣れた意匠のモビルスーツが、継ぎ接ぎの装甲の所々が欠けたような状態で、ぱっと見は寄せ集めにしか見えないザクが佇んでいた。

 

「パイロットは、捕まったんだろうな。」

 

「えぇ。苦労しましたが、見つけ出しました。」

 

「どこで捕まえた?」

 

「フォン・ブラウンのバーで。」

 

「ふっ。」

 

 鼻を鳴らした金髪の男の口元が、僅かに歪んだ。

 

「兎に角、これで、必要な資金を稼げるのはありがたい。父の息子であることを呪いもしたが、父が残してくれた縁に助けられるとは、皮肉なものだな。」

 

 球状の全天周囲モニターの中央に位置するリニアシートに体を委ね、操縦桿を巧みに操る金髪の男がつぶやく。

 

「素直な機体だ。反応も悪くない。それにしても、サイコミュの受信デバイスが無いだけで、モビルスーツのコックピットというものは、こうも広く感じるのだな。アポリー、そちらはどうか。」

 

「こちらは勝手知ったるなんとかってやつですが、スラスターの出力が20%以上上がっていると聞きましたけど、体感ではそれ以上です。それでも、大佐の機体について行くのは無理そうですけどね。」

 

「今の私は大佐ではない。そうだな、知られていない名だと、エドワウ・マスか。愛称として、E・M、エムとでも呼んでくれ。」

 

「わかりました。エム。」

 

「ところで、私への援護のタイミングは覚えているな。」

 

「もちろんです。多少のブランクがあったとしても、忘れませんよ。まぁ、シャリア大尉の様にはいきませんが。」

 

「なぁに、援護が必要な相手が出てくるとは思えんさ。」

 

 今は使われていない資材搬入用の通路。

 エアロックが解除されたことを示す警告灯の赤い照明が照らす、二機のモビルスーツ。

 先頭を移動するのは、塗装も施されていない、材質の金属色むき出しの機体。

 一部装甲はあるものの、必要最低限といった趣のその機体は、誰が見ても、最新鋭のモビルスーツという形容からは、最も遠い存在であるかに見えた。

 そして、後ろから追従するザクの見た目も、動くのかどうかも怪しい雰囲気を醸し出していて、賭けのオッズとしては、相当な高騰を見せそうで、運営にとっては“オイシイ”参加者と言えることは間違いなかった。

 

「こちらアポリー。通信クリア。コンディションオールグリーン。」

 

「アポリー、そう畏まるな。これは作戦行動ではないのだから、レクリエーションくらいの心づもりで丁度良いさ。」

 

 やや緊張気味のアポリーに対し、スーツを着た男の声音には、戦闘前特有の昂揚も緊張もない。

 

「了解しました。たいs、エムは相変わらずノーマルスーツを着ないのですね。」

 

「被弾するつもりがないのだから、ノーマルスーツの必要性は感じられないな。」

 

「流石です。」

 

 資材搬入口からコロニー外縁へと移動する二機のモビルスーツ。

 モニターの右上に、クランバトルの開始を告げるカウントダウンが始まる。

 

「アポリー、今回はマブを意識しなくて良い。貴様もブランクがあるだろうからな、自由に動け。問題があれば、私が対処する。」

 

「了解しました。」

 

「しかし、素人相手に手古摺るようでは、将来的には使い物にならないということは、忘れるなよ。」

 

「はっ!」

 

 クランバトルでは、戦闘開始時点で、敵の位置は知らされない。

 索敵からが勝負となり、当然、敵に位置を知られる前に機影を補足し、先制攻撃を仕掛けた方が圧倒的に有利となる。

 エムと呼ばれる男も、アポリーも、戦闘開始の合図から、まだ一度もスラスターを吹かしてはいない。

 ゆっくりと移動してはいるが、姿勢制御用のアポジモーターすら使用せずに、慣性のみで宙間を漂っていた。

 すると、視界に、凄まじい勢いで、一筋の光が流れるのが見えた。

 

「来たか。」

 

「そのようですが、あれ、ブースターつけたまま戦闘する気なんでしょうか。」

 

「さぁな。しかし、ブースターを払い下げているという話は聞いたことがない。手に入れるには、高い金を支払うか、盗むくらいしかないであろう貴重なものを、パージ出来る程の資金力を持っているとは思えんな。」

 

 背中にブースターを背負い、鮮やかなオレンジと白のカラーリングを施されたザクがブースターをフルスロットルのまま旋回しようとして、機体を大きくオーバーランさせている。

 

「こちらに来るようだが、我々に気付いているわけでもなさそうだな。」

 

「きっと、コックピットの中で、速さに酔いしれているんじゃないですかね。気持ちよくなっているところ、申し訳ないですが、このまま仕留めます。」

 

「あぁ、もう一機は私に任せろ。」

 

「お願いします。」

 

 アポリーの駆るザクは、ブースター付きのザクが、自機の足元を通過するであろうタイミングで、隠れていたデブリの影から飛び出し、モビルスーツの右腕に構えさせたヒートホークで、ブースターザクのヘッドユニットを刈り取る。

 視界を失って狼狽したブースターザクは、コントロールを失って、デブリに激突し、大きな火球となって宇宙の闇を照らした。

 アポリーのザクは、ヒートホークの一撃を加えた後、即座に離脱して再びデブリの影に身を隠したが、敵のもう一機のザクは、味方のザクが爆散したことで、パニックにでもなったのか、火球の上がったあたりの宙域めがけてマシンガンを乱射していた。

 その背後に迫るエムの機体は、相変わらずスラスターを一度たりとも吹かしてはおらず、デブリや隕石を蹴りつけることで移動を繰り返し、敵にその気配すら気取らせず、最後は蹴りで残りのザクの頭部を背後から破壊してしまった。

 

 エムは、モニターに現れたWINの文字を一瞥するも、ピクリとも表情を変えずに、アポリーに対して撤退の指示を出す。

 

「これであの額が手に入るというのも、ぼろい商売ですね。」

 

「たまに軍人崩れも出てくるらしいからな、油断はしないことだ。それに、いくらシンパが面倒を見てくれるとはいえ、おんぶに抱っこでは恰好が付かないからな。シモンズ氏は良いとして、マハラジャにはあまり借りを作りたくはない。彼女をこちら側に引き入れる為にもな。」




最後まで作品を読んでくださり、ありがとうございます。
次回も楽しんでいただけるよう頑張ります。
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