機動戦士ガンダムGQuuuuuuX SIDE AMURO ~少年が見た戦争~ 作:すずき 虎々
本当にありがとうございます。
今回で、第二章の最終回を迎えます。
公式の最終回とリンクする部分が沢山あるので、見つけてみてください。
アムロ・レイの失踪。
UNMと呼ばれるT字の金属。
イオマグヌッソ計画。
レオ・レオーニの研究。
キシリアの動向。
そして、向こう側で知った“白い悪魔”と呼ばれる存在。
それぞれは、点でしかなかったはずのもの、しかし、それらはゆっくりと線を描き始めているように思える。
「この私が、導かれる、か…。しかし、まだだ。まだ確信には至らんよ……。」
だが、未来の輪郭は、霧の向こうで確かに形を成しつつあった。
シャリア・ブル。
あの男の動きだけが読めない。
「流石は木星帰りとでも言うべきか…。」
シロウズは立ち止まり、静かに息を吐いた。
この瞬間、誰も知らないところで、未来が静かに動き始めた。
向こう側で出会ったあの少年、シュウジが残した言葉が、今になって妙に重みを持ってのしかかる。
“貴方はララァを探して。貴方が全てを理解出来るのは、その後だから。”
向こう側でララァという少女に出会うことは叶わなかった。
しかし、それで良いとも思える。
あの少年の言葉は、“ララァという存在そのもの”ではなく、“ララァが象徴する何か”を指していたのだと、今なら理解できる。
意識の奥に、微かな波紋が広がる。
それは、ハマーンの覚醒を目の当たりにした時に感じたものと、どこか似ていた。
あの少女は、間違いなく“力”になる。
アクシズが動いたとて、戦いに勝つには将となる器が不可欠だが、彼女たちはその器として、十分な力を秘めていると確信している。
シャアは立ち止まり、先ほどのニュース映像を思い出す。
赤い機体が、画面の中を縦横無尽に飛び回り、スラスターの青白い光が描く幾何学模様を蒼い瞳に映す。
アムロは政治に巻き込まれてどう変化したというのか、どちらに転んだとしても、両陣営の趨勢に関わる存在であることは間違いない。
「あの男は、機械いじりで終わる男ではないのだからな…。」
全てが、ひとつの結末へと向かって収束していく。
研究施設を出たシャアは、外気に触れた瞬間、胸の奥に広がっていた細波が、わずかに形を変えたことに気づいた。
ひんやりとした空気が肺に入り、思考が研ぎ澄まされていく。
アムロ・レイの失踪が、いったい何を意味しているのか、そして、ジオンの各陣営がそこにどのように関係しているのか、その答えによっては、かなり難しい話にもなり得る。
「キシリアめ、余計な事をしてくれる…。」
アムロ・レイの失踪、いや、消えたのではない、行き先には見当がついている。
そして、それは偶然などではあるはずがない。
「ゼクノヴァを引き起こす程の何か…。」
あの現象は、偶発的に発生しているわけではない。
何らかの意思によって引き起こされているのは間違いない。
しかし、それをアムロが彼の意思によって自発的に“引き起こした”のか。
あるいは、“巻き込まれた”のかはまだわからない。
だが、どちらにせよ、アムロ・レイがゼクノヴァに触れたという事実は、この世界の均衡を大きく揺るがす。
そして、キシリアはそれを利用しようとしている。
「ちぃっ。つくづく私の邪魔をしてくれる……。」
シャアは低く吐き捨てた。
人工的なゼクノヴァの発生装置などと、引き起こされた現象と、その目で見た事象の規模に目を奪われてはいるが、それらは、結局ゼクノヴァという現象のほんの“入口”に過ぎない。
キシリアはその先にある“出口”の存在になど、たどり着けるはずもない。
知らぬまま、力だけを求めている。
いや、知らないからこそ、求めようという気にもなるのかもしれない。
その愚かさが、自らの破滅を招くことなど、予想だにせずに…。
しかし、破滅するのはキシリアだけでは済まない。
ジオンも、アクシズも、そして地球圏全体も巻き込んで、大きく口を開けた世界の破滅が訪れるのだ。
「この私が止めねばならん。」
シャアは静かに呟いた。
だが、この大きなうねりを止めるだけでは、足りない。
「やはりザビ家には、この世界から退場してもらうほかあるまい…。」
嘗て、サンゴや貝だったものが堆積して出来た、白く美しい海岸線は、青い海とのコントラストによって、更に引き立ち、肌を焼く程に強い日差しも、浜風によって心地よいものへと変わる。
ワンピースの水着を着た一人の少女が、画面の割れたスマホをバッグの中に放り込むと、遠い海を見つめて記憶の中の少年の言葉を思い返す。
「僕はララァを追って沢山の世界を巡ってきた。その長かった旅もようやく終わる。君のような人は初めてだ。きっとこの世界は、君と僕が出会うために作られたのかもしれない。ありがとうマチュ、君が好きだよ。」
大好きで、心の底から愛おしいと思える少年の頬を、マチュは両手で包み込み、そっと自分の唇を重ねる。
すると、少年はマチュの細い体を優しく抱きしめた。
その瞬間、マチュには、全てが見えた気がしていた。
これ以上の言葉に、何の意味があるのか。
物思いにふけるマチュの前に、長い黒髪の、背の高い少女が立つ。
「なんで、会いに行ってあげないの。」
「迷惑でしょ、お尋ね者だもん。」
「もう地球も来ちゃったし、他に行きたいところなんてないでしょ。」
「あるよ。」
「まさか、シュウちゃんのところ。」
「いつか、また会えるって、ガンダムが言っている。」
身を焦がす熱い日差しを手で遮り、当てもなく歩き続ける青年が一人。
彼はどこから、どのようにして、今いる場所にたどり着いたのか、そんなことすらわからないまま、ふらふらとした足取りで彷徨い続け、誰もいないビーチにたどり着く。
何かに吸い寄せられるように、いや、誰かの意思で導かれているようにと言った方が正確なのかもしれない。
青年がたどり着いた場所は、来たこともないはずなのに、それでいて知っている場所であるかのようで、鼻孔を刺激する磯の匂いが、心地よくも、不快にも感じるようで、遠くに見える二人の少女が、自分を受け入れてくれると、何の根拠もなしに感じていた。
「僕を呼んだのは、君達なのかい。」
その声は、海風に溶けるように柔らかく、しかし、どこか遠い世界の響きを帯びていた。
マチュは振り返り、青年の顔をみるなり息を呑んだ。
理由はわからないけど、青年の姿と、キラキラ、シュウジ、ガンダム、全てがあの“光”に重なって見える。
ニャアンは一歩前に出て、青年を睨みつける。
しかし、ニャアンも、その青年の瞳の奥に、何かを思い浮かべずにはいられず、困惑が滲む。
「アンタ……誰?」
青年は答えようとして口を開くが、言葉が出ない。
全ての記憶に霞がかかったようで、吐き出そうとした言葉をかき消していく。
「……アムロ。アムロ・レイ。名前は、たぶんそうだ。でも、それ以外は……思い出せない。」
マチュの胸が、強く脈打った。
“アムロ・レイ”その名前は知らないはずなのに、なぜか、心の奥で肯定してしまっている自分がいる。
まるで、ずっと前からその名を呼んでいたかのようで、ずっと一緒に戦ってきたような。
青年は、二人の少女を見つめた。
その瞳には、恐れも、敵意も、虚勢もない。
ただ、深い空白と、微かな痛みだけが宿っていた。
「君たちに、呼ばれた気がしたんだ。ここへ来いって。そう言われたような……そんな気がして。」
マチュは、ゆっくりと歩み寄った。
海風が、三人の間を静かに通り抜ける。
「呼んだんだよ、きっと。ガンダムならきっと、そう言うと思う。」
「ガンダム……。」
今回で第二章最終話となります。
これまで応援してくださった皆様に感謝します。
次回からは最終章である第三章が始まります。
次回以降も楽しんでお読みいただけるよう頑張ります。