機動戦士ガンダムGQuuuuuuX SIDE AMURO ~少年が見た戦争~ 作:すずき 虎々
今回は、技術的な話が少し多めになっています。
物語の流れとして必要な部分ではありますが、
読みづらいところがあれば申し訳ありません。
月面都市イーストキャピタル市
月面都市フォンブラウンの衛星都市で、グラナダの丁度裏側に位置している、古くから続く、建設機械などを扱う企業が集まる工業区画。
その中でも、大型建設機械の工場という名目のとある工場。
多目的空間のソファの上で、膝を抱えるようにして座る男が、自分の携帯端末の画面を見ながら話す。
「フィフス、ラサに落ちたって話だ。大半が大気圏で燃えたらしいから、コロニーの時よりは被害が少ない見込みとは言っているけど、やって良いことじゃないことくらい、大佐だってわかっているだろうに……。」
エンジニアスーツの上半身部分を、腰の辺りで袖を結び、ラフな着こなしで、特徴的な長い黒髪をポニーテールに結んだニャアンが、不安げな表情で答える。
「最近のシャア様、ちょっと怖いよね。」
「天パって大佐さんの知り合いなんでしょ?すこしガツンと言ってやりなよ。」
アムロの座るソファと背中合わせのソファに胡坐をかき、背もたれに両腕を絡めながら座るアマテが、眉間にしわを寄せながら言った。
「大佐はそうだと言っているが、思い出せないんだ。それに、あの人に近づくと、気持ちが落ち着かないというか、ザラつくような、不思議な感覚になるのが嫌なんだ。」
「あぁ、天パと大佐さんが近づくと、毎回確実に“キラキラ”が起きるよね。」
アマテは、自分の携帯端末の画面を眺めながら、どうでも良さそうに答える。
「地球で私たちを拾ってくれた時は、すごく優しそうだったのに、後から聞いたら、キシリア様を殺したのもシャア様だっていうし。ララァさんと凄く仲良さそうで、いい雰囲気だったのに。」
「でも、あの時が過去一でヤバいキラキラだったけどね。」
「そう、俺はあれいらい、一度もあのララァという女性とは会っていないし、あの時初めて会った人だというのに、でも、俺は彼女のことを知っているという気にさえなるんだ。」
「天パが記憶を失っているからわからないだけで、知り合いなんじゃないの?」
「わからない、わからないんだ……。」
「あぁ、やめなよマチュ、アムロさんまた白目モードになっちゃうから。」
「ごめん、ごめん。じゃあ、ほら、ガンダムいじりに行こう!私も手伝うからさ、ほら、行こう、行こう。」
民間の貨物船に偽装したアクシズからの輸送船で運び込まれた新型の機体のフレーム。
そのフレームに、小分けに輸送されてくる各部の内部機構を組付け、稼働テストを繰り返し、最終的に外部装甲を取り付けることで、モビルスーツの姿となる。
そして、そのコックピット周囲のフレームや、駆動系のパーツには、嘗て自らが解析および開発に取り組んだサイコフレームが使われている。
それは、UNMと呼ばれた謎の金属だったもの。
アムロがジオンの技術士官だった頃、キシリアから受け取った、重力を無視して浮遊し、自ら発光するT字型のマテリアル。
自らが、極めて高いニュータイプとしての素養を持つ、アムロだからこそ出来たリバースエンジニアリングだったと言っても過言ではなく、その仕組みをあれほどの短期間で解析してしまったのは、アムロの最大の功績と言えるだろう。
ナノレベルのチップを鋳込んだ金属を、量産化することに成功したことで、ジフレドサイズのモビルスーツに、サイコミュのアウトプットデバイスをコンパクトに搭載することを可能とし、結果として、オメガサイコミュを超えるポテンシャルを秘めた、カッパーサイコミュの開発に成功していた。
宇宙用の建設機器は、小型の物から、大型の物まで多岐にわたり、コロニーの外壁を組みつける用途に使われる建設機械などは、そこらのモビルスーツのサイズを優に超えてくる程大型の物も存在する。
そんな建設機械の製造ラインともなると、モビルスーツの製造ラインとなんら変わらぬ大規模な設備が通例であり、ここも、その一つということで、様々な機材や製造中の建設機械が、所狭しとひしめき合っている。
そんな中、建設機械建造用のベッドの上に横たわる、まだ外装も取り付けられていない、フレーム状態の人型機械。
鈍い金属の輝きを放つフレームに、アムロの手が触れると、コックピット周辺から四肢にいたるまで、ぼんやりとした、薄緑の光が走る。
それはまるで、脳の放つ電気信号が、全身を駆け巡る、シナプスを模しているかのように、美しくも儚い光。
ニャアンがタブレットを操作しながら質問する。
「アムロさん、ジフレドの脚部のスラスターと、一部のアポジモーターが新しい型の物に交換したって書いてあるけど、これって、OS普通に認識するの?」
マチュが横から口を挟む。
「あと、クアックスの腕部フレームも交換したことになってるけど、強度が上がってるなら、プログラム上のトルクとか、耐負荷の数値なんかも変更するんだよね?」
アムロは苦笑しながら答える。
「どっちももう終わってるから、心配いらないさ。」
マチュとニャアンが口をそろえて「「おぉ~~~~!」」と唸る。
ニャアンがタブレットをフリックしながら続ける。
「それにしても、今回の新型ガンダムは、ジフレドとジークアクスのいいとこ取りみたいな設計だって言ってたけど、具体的にはどこが良くなったの?この背中に生えてる羽みたいなの?」
アムロは眉をひそめた。
「ニャアンにはそれが羽に見えるのかい?」
「んんん?じゃあ、放熱板?」
「クアックスとフレドにも装備する予定だけど、これはファンネルさ。しかも…。」
アムロは一度言葉を切り、背中のフレームに取り付けられた、羽とも放熱板とも違うユニットを手のひらで軽く叩いた。
「これは、従来のファンネルとは違って、今みたいなクローズドポジションを取ることで、このファンネルラックでの推進剤の再充填が可能になっている。つまり、旧来のサイコミュシステムを搭載している敵と対峙した際に、敵より長い継戦時間が確保出来るということと、ナイチンゲールやドーガ系に搭載されるサイコミュよりも出力が高いということ、更に、パイロットの感覚に応じて、自動で展開し、バリアを形成する機能を搭載しているんだ。」
ニャアンが首をかしげる。
「えっ……じゃあ、ヤバっ!ってなってもヤバくないってこと?」
アムロは、薄緑の光を放つサイコフレームを見つめながら続けた。
「その通り、これはパイロットの生存を第一に考えられたシステムだよ。攻撃じゃなくて、守りに重点を置いたファンネルさ。」
マチュが目を丸くする。
「凄いじゃん!天パ凄いよ!! 誰もファンネルを防御に使おうなんて思わないって、攻撃する以外の発想なんて普通思いつかないって。ファンネルなんて、ビュンビュン飛んで、ドカーンってやるやつだとしか思わないでしょ?」
アムロは苦笑しながら首を振った。
「せっかくサイコフレームの反応速度を利用するなら、直接的な攻撃よりも、自分が損傷しないことを選んだ方が、結果として、相手に与えるダメージもデカくなるのさ。Iフィールドの小型化には限界があるし、それならファンネルのビームで敵の攻撃を相殺した方が効率がいいだろ。モビルスーツは皆ビーム兵器を持ってるんだし、攻撃はそれで事足りるさ。今はシールドを装備しているけど、ビーム兵器がデフォルトになって以来、シールドの有用性も懐疑的になってきているからな。いずれはニュータイプ能力に関係のない防御機構を組み込むことも視野に入れていこうと思ってる。」
マチュは目を細めたジト目でアムロを睨みながら呟いた。
「まぁ、天パならそうなんだろうけど、普通はビームライフルを持っているのと敵に攻撃を当てられることがイコールにはならないけどね……。それにしても、いつも思うけど、天パの言ってることって、まるでモビルスーツを開発する人が言ってることみたいだよね。本当はそっち系の人なんじゃないの?」
「俺が、モビルスーツの開発? メリル? 誰だ? レ、クぅ、うぅ……。」
マチュがぽかんと口を開けながら、顔色がどんどん青ざめて いく。
「あぁ、あぁあぁ、天パ、ごめん、落ち着いて……。」
アムロは答えない。
いや、答えられずに、ただ、うめき声をあげている。
記憶は曖昧なのに“どうすべきか”は知っている。
胸の奥ざらつきが、ウィルスに蝕まれる細胞のように、加速度的に広がっていくのを感じる。
鈍い金属色のフレームの中心で、 サイコフレームが微かに脈打つ。
『俺は…… 何を作って…… 誰を守ろうとしていた……?』
アマテがフレームを軽く叩く。
「大丈夫だよ天パ、あんたは凄いんだから、なんとかなるって、ガンダムも言ってるよ、たぶん……。」
ニャアンがアムロの肩に優しく手を置き、背中を擦る。
「アムロさん、大丈夫……?」
アムロは小さく頷いた。 だが、胸の奥のざらつきは消えない。
アムロが見上げるフレームは、 まだ“機体”ではなく、 ただの“骨格”に過ぎなかった。
しかし、その中心に埋め込まれたサイコフレームだけが、 まるで“心臓”のように脈動しているかのように感じた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次回は、またテンポよく楽しんでいただける戦闘シーンを
入れられればと思っています。
ただ、現在、目の手術を控えておりまして、
経過によっては執筆が難しくなる可能性があります。
その場合は更新を延期させていただくこともあるかもしれません。
ご心配・ご迷惑をおかけしますが、どうかご了承いただければ幸いです。