機動戦士ガンダムGQuuuuuuX SIDE AMURO ~少年が見た戦争~   作:すずき 虎々

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たくさんの作品の中から見つけてくださり、ありがとうございます。
この章では、アクシズ落下作戦を巡る各勢力の衝突が、ついに本格的な戦闘へと移ります。


第二十四話 硝子の円卓

第24話 硝子の円卓

 

 月軌道上のラグランジュポイントであるL5スウィ-ト・ウォーター。

 一見、静まり返っているかのように見える宙域に漂う、巨大な資源採掘用小惑星アクシズの核パルスエンジンに火が灯される。

ムンゾからリーアに向けて発進した艦隊が、転身して引き返し、地球の重力圏をかすめてスウィート・ウォーターを目指すこととなった理由を思い返し、エギーユ・デラーズ提督は歯噛みせずにはいられなかった。

 ジオン公国宇宙軍第一艦隊所属近衛師団(通称デラーズ艦隊)の旗艦であるサダラーン級八番艦プリンセス・レグナントのブリッジで、エギーユ・デラーズ提督は、腕組みをしたまま、前方の宙域を睨みつけ、独り言ちた。

 

「シャアのブラフにまんまと乗せられるとは、このエギーユ・デラーズ一生の不覚であった。アクシズに火を入れることを許すとは…。」

 

 デラーズの苦渋に満ちた声が響くブリッジの窓外には、プリンセス・レグナントを中心に、一糸乱れぬ陣形を維持したまま漆黒の宇宙を突き進む、十二隻の直衛艦艇の姿があった。

 ジオン公国第一艦隊――戦後の地球圏の秩序そのものであるその精鋭たちが、今は推進剤の限界を挑むかのように、一斉に青白いメインスラスターの光を激しく噴き上げている。

 しかし、その必死の転身をあざ笑うかのように、L5からの熱源反応は確実に大きくなっていた。

 

「アクシズの艦隊、確認できます。本国より発進した第七艦隊と交戦を開始しました。」

 

「数は?」

 

「旗艦含め、十七隻。モビルスーツは——確認できるだけで六十機以上。」

 

 オペレーターの報告に、ブリッジに緊張が走る。

 

「ガトー、準備はいいか。」

 

 通信越しのガトーの声は、静かだった。

 

「はっ!臥薪嘗胆の思いで、この時に備えておりました。」

 

 デラーズは一度目を閉じ、そして開く。

 

「全艦、第一戦闘配備。アクシズのテロリスト共に、ジオンの意地を見せつけてやれ!ガトー、マンスフィールド、ライデン、ギリアム、ガラハウ各モビルスーツ大隊は、先行して散開、敵を包囲して各個撃破、先行している第七艦隊のモビルスーツ隊と連携し、逆賊の息の根を止めるのだ。シャリア・ブル中将の隊に後れを取ることは許さんぞ!」

 

「「「「「はっ!」」」」」

 

 宙域に、無数のモビルスーツが展開し、アクシズの後方に展開するテロリストの艦隊に向けて進軍し始める。

 その光景は、夜空に舞う無数の流星を見ているかのようだった。

 

 一方、アクシズ側の旗艦ブリッジでは、シャアが静かにモニターを眺めていた。

 

「シャリア・ブルか。律儀な男だ。」

 

「大佐、ジオンの艦隊第一波、展開を始めました。モビルスーツの数、百機以上。」

 

「ハマーン、ララァ、キャラ、出撃だ。大物は後で構わん。まずは数を減らす。ファンネルを使い切ったら、帰艦して、かならず補給しろ。小蝿とはいえ、ライフルで相手をしていては、らちが明かないからな。」

 

 緑と白、橙色の三機のモビルスーツが、次々とカタパルトから射出される。

 3機を見送った後、真紅の巨体、ナイチンゲールが、宇宙に躍り出る。

 戦闘の火蓋が切って落とされる。

 最初の一撃は、ハマーンが駆る、純白のサイコドーガが握るロングライフルの一撃で、発艦直後のドライセンもろとも、母艦のエンドラ級を巨大な火球に変え、周囲に展開していたモビルスーツ数機を誘爆させた。

 

「ハマーン、よくやった。各機発艦シークェンス中の母艦を狙え、数を減らすのには丁度良い、ハマーンが良い手本を見せてくれた。」

 

「「「了解!」」」

 

「そうはさせません!」

 

 シャアの頭上から、ビームの光跡が輝き、ピーコックブルーの機体が、4人の間をすり抜ける。

 

「シャリア・ブルか。お前たちは手筈通りに動け、ヤツの相手は私がする。」

 

「貴方が黙って和平のテーブルにつくなどとは思っていませんでしたよ。」

 

 ピーコックブルーに塗られたザクⅢが、ライフルの銃身下部に備えられたビームバイオネットで、逆袈裟に斬り上げるが、真紅に塗られたナイチンゲールは、その巨体に見合わぬ俊敏な動作で難なく回避する。

 

「そういえば、貴様はキシリアを仕留めたあの時から、今日の事を予測していたのだったな。しかし、予測していたというのに、準備は万全ではなかったとみえる。そんな情けないモビルスーツで、このナイチンゲールの相手が務まると思うか。」

 

「昔の貴方なら、モビルスーツの性能の差が、戦力の決定的差ではないとでも言いそうですけどね。」

 

「揚げ足でも取っているつもりか。アクシズはもうじき阻止限界点に到達する、無駄死にする必要もあるまい、兵を引け、シャリア・ブル!」

 

 出力で勝るビームトマホークを握るナイチンゲールが鍔迫り合いを制し、僅かに生じた隙に乗じてザクⅢを蹴りつける。

 

「生にしがみつくつもりは毛頭ありませんが、理不尽に奪われようとする命を前に、傍観するほど老いぼれてもいません!」

 

「ならば、ここで終わりにしよう、逝くがいい、友よ!」

 

 

 ガトーの隊が、真っ先に敵陣に突っ込んだ。

 マンスフィールドと、ギリアムの隊もそれに続く。

 歴戦のエースたちの動きは、統率が取れていて、無駄がない。

 しかし、ララァのサイコドーガから展開されるファンネルが、統制のとれた部隊の作戦行動をあざ笑うかのように蹂躙する。

 無数のファンネルが宙域を駆け巡り、公国軍のモビルスーツを次々と火球に変えて行く。

 

「なんだ、あのファンネルは!」

 

 マンスフィールドが叫ぶ。

 

「エリック落ち着け、ファンネルには死角もあれば限りもある、各自散開しろ!」

 

 ガトーの冷静な指示が飛ぶ。

 しかし、ララァのサイコドーガが、その散開した先を読み、次々とジオンのモビルスーツを撃破していく。

 

「ぬぅぁぁああああぁあぁぁぁぁぁあ!」

 

 宙域全体に響き渡るかと錯覚する程の叫び声と共に、ガトーのギラドーガから放たれるビームの光跡が、アクシズのモビルスーツを捉える。

 戦場は混沌としていた。

 経験と数で勝るジオン、サイコミュの質で勝るアクシズ、両者は一歩も引かないまま、宙域に無数の火球を散らしていた。

 

 感情を排し、冷徹に感覚を研ぎ澄ます。

 ファンネルは過不足なく、正確に、敵機のコックピットだけを狙い続ける。

 怒りでも、焦りでもなく、ただ、圧倒的な精度だけがそこにあった。

 ララァのサイコドーガは、まるで別の戦場にいるかのような動き方をしていた。

 敵の射線を躱す動作に、一切の迷いがない。

 ただ、感じて、敵の殺意が届く前に、その場から消える。

 それだけだった。

 しかし、その動きがララァ自身を蝕んで行く。

 ファンネルが静かに展開し、敵の攻撃を相殺し、あるいは敵機を無力化する。

 しかし、全ての攻撃をファンネルが相殺してくれるわけではない。

 まるで、戦場全体の流れを、水面に映る月を見るように、ただ静かに捉え、流れるような動きだったとしても、それを操るパイロットの体には負担がかかる。

 

「ララァは下がって、無理しすぎよ。」

 

「ハマーン、私は大丈夫よ。」

 

「私まで気づいていないとでも思った?貴女は今無理をして良い体じゃないことくらい、私にはわかるわ。」

 

「ハマーン、貴女…。」

 

「きゃっははははぁ、やったぁ!お姉ちゃん見てた!?また一機、モビルスーツが花火になった、綺麗な花火が沢山、とっても綺麗!」

 

「いいわ、キャラ、お姉ちゃんと競争よ、もっともっと、花火を咲かせましょう!」

 

「うん、わかった!お姉ちゃんには負けないんだから!」

 

「ララァ、ここは大丈夫、私達ならこんな雑魚にやられることはないわ。あの人の、大佐の傍にいて、この戦い、これだけじゃ終わらない、嫌な予感がするの。」

 

「わかったわ、ありがとう、ハマーン。」

 

「勘違いしないでね、私は貴女に負けたわけじゃない!」

 

「わかってるわ、貴女の気持ちも、だから、貴女も無理はしないで。」

 

 

 エメラルドグリーンに塗装されたサイコドーガが、敵機の爆発の光球をすり抜けるように急旋回し、フィールドを離脱する。

 その軌跡は、傍目には華麗にさえ見えるが、相対するするジオン側のパイロットたちには、悪夢以外の何物でもなかった。

 

 キャラのサイコドーガが、ガトーの機体すれすれを通り抜け、そのまま敵陣に突っ込んで、ガトーの隊の陣形を壊滅的に崩壊させてゆく。

 強化人間特有の反応速度と、サイコミュの出力が、常軌を逸した機動を可能にしている。

 しかし、その動きには、戦術も、味方への配慮も存在しない。

 ただ、本能の赴くままに、獲物を追い続けるだけだった。

 

「キャラ!前に出すぎないで!」

 

 ハマーンが出すぎたキャラを窘めようと叫ぶが、そんな心配をよそに、キャラのサイコドーガは、歴戦のエースパイロット達が指揮する部隊を、壊滅に追い込んでゆく。

 

 戦場は混沌としていた。

 経験と数で勝るジオン、サイコミュの質で勝るアクシズ、両者は一歩も引かぬまま、落ちてゆくアクシズをしり目に、無数の火球を散らし続けていた。

 

 

 そのさなか、プリンセス・レグナントのオペレーターが叫んだ。

 

「提督、未確認の機体が三機、宙域に進入してきます!」

 

「何?識別コードは?」

 

「一機体はリストにヒットしません、新型です!ただ、このシルエットは…。」

 

 オペレーターの声が、途切れた。

 

 戦闘宙域の最奥から現れた機体は、静かに、しかし確実に、戦場へと向かっていた。

 その機体のサイコフレームが、薄緑の光を放ちながら、静かに脈打っていた。

 

 




最後までお読みいただきありがとうございます。
戦場に集う者たちの覚悟と、交錯する思惑が、ここからさらに大きな流れを生み出していきます。
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