機動戦士ガンダムGQuuuuuuX SIDE AMURO ~少年が見た戦争~ 作:すずき 虎々
この章では、戦場に新たな存在が現れ、宿命に引き寄せられる者たちの軌道が交差します。
第25話 宿命の二人
宙域に、新たな気配が生まれた。
最初に異変を感じたのは、ハマーンだった。
ファンネルを展開し、ジオンのモビルスーツを次々と撃墜し続けていたハマーンの動きが、一瞬だけ止まった。
「このプレッシャーは、何?。」
突如として戦場に現れた圧倒的な気配。
そして、ハマーンの目の前で広がる異様な光景。
戦闘を繰り広げる両陣営のモビルスーツ達が、その圧倒的なものの前では、まるでその存在の異様さを強調するために作られたムービーの一コマででもあるかのように、次々と無力化されていく。
シャアの元へと向かおうとしていたララァもまた、ハマーン同様その存在の登場を感じとっていた。
自身が駆るサイコドーガのスラスターを絞り、宙域の奥に視線を向ける。
「来てはダメ……!貴方は何故、来てしまったの……。」
その嘆きにも似た呟きは、通信に乗ることもなく、ただエメラルドグリーンのサイコドーガのコックピットの中で消えていくのみだった。
戦闘宙域の遥か上から現れた謎の三機は、戦場を穿つ雷であるかのように、一瞬にして戦場の中心へと降り立った。
薄緑の光を放つサイコフレームが、まるで脈打つ心臓のように明滅している。
最初にコンタクトしたのは、ガトーだった。
「正体不明機、応答しろ!識別コードを示せ!」
「シャアを止める、邪魔をしなければこちらも手出しはしない。」
ガトーは舌打ちをすると、僚機に指示を出す。
「包囲しろ、正体を確かめる!」
三機のモビルスーツが、未確認機を取り囲むように展開しようとした、まさにその瞬間だった。
「出てこなければ良いものを!」
アムロの駆るモビルスーツに握られたビームライフルの銃口が、三度光ったかと思った次の瞬間には、アムロの機体を取り囲もうとしたモビルスーツの武装のみが綺麗に撃ち抜かれていた。
「やめろ、出てくるな。ジオンのモビルスーツはアクシズの核ノズルの破壊に専念しろ!シャアは俺達でやる!」
襲い掛かるジオン公国軍所属のモビルスーツなど、まるで存在していないかのように、一目散にシャアの元へと向かうアムロ達。
その言葉と挙動に、怒りをあらわにしたガトーが吠える。
「ふざけるな!我ら大義を掲げ、命を賭して挑むこの戦場で、どこの馬の骨ともわからぬ者の妄言を、鵜呑みにすることなど出来るものか!」
憤怒の形相で襲い掛かるガトーだったが、アムロに続いて現れたニャアンのジフレドが抜いた大型のビームサーベルによって、一瞬のうちに右腕を両断され、無力化される。
「な……っ!」
ガトーは目を見開き、言葉を発することさえ忘れていた。
背後からの接近にまるで気づかず、ただの一撃で無力化されるなど、これまでに経験したことの無い、そう、新兵であったころですら経験のない、圧倒的な実力差…。
攻撃の軌跡すら見えず、気づいた時には、終わっていた。
「ぬぅぁぁぁぁぁぁぁぁあぁあああああああああああ!」
ガトーは激しい咆哮と共に、コンソールを両手の拳で叩きつけた。
その目尻に光るものなど気にも留めず、やり場のない屈辱を、ただ腹の底から吐き出した。
「下がれガトー、こいつらは俺達に任せろ。」
エリック・マンスフィールド大佐率いる部隊がガトーの戦闘宙域に加勢する。
しかし、マンスフィールドの部隊が未確認機に向けてまさに攻撃を仕掛けようとしたその時、ガトーの機体の腕を落としたのとは別の機体が現れ、咆哮と共に次々とマンスフィールド隊のモビルスーツを撃墜していく。
「うぅおぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「マチュ、あまり無茶をするなよ。無暗にパイロットを殺すんじゃない。」
アムロが窘めるのをよそに、アマテが叫ぶ。
「いいから天パは先に行って!」
「アムロさん大丈夫、ここは私達に任せて。」
「了解した。」
言うが早いか、アムロは自機の最大出力で戦場を跨ぎ、突き進んでいった。
プリンセス・レグナントのブリッジで、デラーズはモニターを見つめたまま動くことさえ出来ずにいた。
「提督……あれらは、いったい何者なのですか。」
オペレーターの声が、震えていた。
デラーズが明確な答えなど持ち合わせているわけもなく、ただ、一言、喉の奥から絞り出すのが精一杯であった。
「あれは、人ならざるものだとでも言うのか…。」
ただ、戦場の中心へと進み続けるその機体の、薄緑の光を眺めている事しか出来なかった。
ナイチンゲールの出力は、あらゆる面でザクⅢを圧倒していた。
しかし、シャリア・ブルも、AMBACとアポジモーターを極限まで駆使し、戦場の中にいて、まるで踊っているかのような挙動で攻撃を回避し続ける。
「えぇい、しぶといヤツめ。だが、いつまでも貴様に付き合っていられるほど、暇ではないのでな。そろそろ終わりにさせてもらう。」
シャアは独り言ちたその瞬間、目の前に走る稲妻のような閃きを感じた。
「このプレッシャーはなんだ!?これはまさか、アムロ・レイか!?」
その瞬間、ナイチンゲールのコックピットの中で、何かが揺れた。
ニュータイプの感応ではない。
もっと深い、もっと根本的な何か。
一瞬の隙を逃すまいと、ビームバイオネットを構えて斬りかかろうとするシャリア・ブルも、背後に感じる圧倒的な気配に抗うことが出来ず、動きを止めてしまう。
不意を突かれる形になったとはいえ、黙ってやられるわけにもいかないと、反射的に銃口を向けた瞬間、ザクⅢの把持するビームライフルのマズルに吸い込まれるかのように、アムロが放ったビームが、ザクⅢのライフルを貫いた。
刹那、ザクⅢのビームライフルはマニピュレーターごと、激しく爆ぜ、継戦能力を著しく落とした。
「邪魔をするな!抵抗しなければ、殺しはしない。」
「冗談にしては笑えませんね、今のは…。あの時感じた、白いモビルスーツへの恐怖の非ではない、直接死が迫っているような感覚を覚えるとは…。」
シャアは即座に立て直し、一度全てのファンネルをバインダーに戻した。
「貴様が今感じたその感覚は間違いではない。死にたくなければ引くのだな。」
「戯言を。貴方を野放しにするわけにはいきません。」
「貴方達の目的はシャア大佐を殺すことじゃないでしょう。大佐は俺が止めてみせる。」
「フッ、舐められたものだな。この私を止めることが、簡単ではないということを教えてやる。」
そういいながらも、シャアはグリップを握る手が、汗で濡れるのを感じていた。
「大佐、いけません。」
戦場の光に反射して輝くエメラルドグリーンの機体が現れる。
アムロの駆るモビルスーツに向けて放たれた牽制のビームも、アムロは難なく全弾回避する。
「えぇい、男同士の戦いに口を挟むな。」
シャアの機体をかばいながら後退し、アムロのガンダムに向けて当たらないと知っている牽制射撃を続け、ララァが諭すように言った。
「大佐、冷静になって、貴方の目的はアムロと戦うことではないでしょう。」
「ちぃ。」
シャアは、何故か自分がアムロとの決着を強く望んでいる事に疑問を挟むことが出来ず、ララァの横槍を忌々しいとさえ感じていた。
アムロは、後退するシャアとララァを追いすがろうとしたが、そこでアクシズの核ノズル破壊の報を受け、自分もマチュ達と合流し、撤退することにした。
「このまま引き下がってくれよ……。」
慣性で移動するHi-νガンダムのコックピットのシートに体を委ね、祈りにも似た独言が、静寂を取り戻した宇宙の闇に木霊した。
最後までお読みいただきありがとうございます。
避けられない二人の邂逅と、その周囲で揺れる者たちの選択が、物語をクライマックスへと導いていく、そんな回になっていればと思います。