機動戦士ガンダムGQuuuuuuX SIDE AMURO ~少年が見た戦争~   作:すずき 虎々

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第28話「激突」です。



第二十八話 激突

第28話 激突

 

 動力と役目を失ったアクシズが漂うラグランジュ5宙域。

 漆黒の闇を照らす星の輝きだけが、その存在を示すかのように、辺りは静寂に包まれていた。

 刹那、虚空を漂う小惑星アクシズを掠める様に、幾筋もの薄桃色を帯びた光の帯が、静かな闇を貫き、いくつかの青い火球が生まれた。

 一切の警告もなく、その艦影すら視認することの出来ない位置から、旗艦レウルーラ率いるアイラ艦隊が、唐突に艦砲射撃を放った。

 アクシズの周辺宙域に展開するジオン公国軍の防衛ラインを、まるで紙を破くように突き、一瞬でその陣形を破綻させた。

 

「全機散開!各隊長指揮の元、個別判断で迎撃せよ!」

 

 デラーズの指示が飛ぶ間もなく、ギラドーガの大群が宙域に展開し、ジオンのモビルスーツ部隊に襲いかかる。

 

「数が多い、押されるなよ!」

 

 エリック・マンスフィールドが叫ぶ。

 突然切って落とされた戦闘の火蓋ではあったが、流石は歴戦のエース率いるジオン公国宇宙軍とでも言おうか、浮足立つことなく奮闘し、乱れた陣形を立て直していった。

 しかし、戦力的には拮抗しているものの、部分的な個の力の差で、じりじりと後退せざるを得なかった。

 そして、戦闘宙域の最奥から、深紅に染められた異様なシルエットのモビルスーツ、ナイチンゲールが現れた瞬間、戦場の空気が一段冷え込むのを感じる。

 

「シャア・アズナブル……!」

 

 宙域を俯瞰してみるような挙動で、単機戦場を駆け巡るシャリア・ブルが、その赤い機体を感じて低く呟いた。

 ナイチンゲールを目視できる距離ではないが、しかし、はっきりとそのシルエットを感じとったシャリア・ブルだったが、その巨大な機影の周囲に、一回り小さい白いシルエットと、巨大なナイチンゲールの機影を、更に一回り程大きくしたようなエメラルドグリーンのシルエットを感じ、あまりのプレッシャーに息をのむ。

 

「あれはいったい、なんだというのですか。」

 

 白い機体は、一瞬のうちに戦場の中心に躍り出ると、背後のバインダーからファンネルを射出して、整いつつあったジオン軍の陣形を、再度瓦解させた。

 

「ファンネル!?全機散開しろ、固まるな! 面を作れ!」

 

 ジオン公国宇宙軍モビルスーツ部隊の先頭で、獅子奮迅の勢いで戦うガトーが叫ぶ。

 マラカイトグリーンとコバルトブルーに染められたリゲルグ・カスタムが、高出力ビームバズーカを構えながら、キュベレイに向かって突っ込む。

 

「サイコミュなどなくとも、ねじ伏せて見せる!」

 

 一発、二発、三発と、高出力のビームがキュベレイに迫る。

 しかしハマーンは、それを全て見切って回避していた。

 

「速い!?撃つ前に避けているとでもいうのか。」

 

 ガトーは舌打ちをした。

 

「ガトー、無茶をするな!」

 

 マンスフィールドが叫ぶ。

 

「無茶をせずに、あいつを止められるものかぁ!」

 

 その時、宙域の後方から、三機のモビルスーツが飛び込んできた。

 

「新手か!?いや、味方の識別信号だと?」

 

 見慣れぬ機体に、一瞬戸惑う二人だったが、しかし、すぐに先の戦闘で暴れまわっていた三機だと気づいた。

 クアックス、フレド、そして、装甲の隙間から、薄緑の光を放つHi-νガンダム。

 

「俺達はジオンの敵ではない、アイラを止めに来た。サイコマシンは俺達に任せてくれ。」

 

 アムロが戦場を通り抜けながら、ジオンの周波数に合わせた通信で呼びかける。

 

「貴様、アムロ・レイか、話は聞いている。」

 

 ガトーはリゲルグ・カスタムを後退させながら、アムロのHi-νガンダムを見た。

 

「先の戦闘での礼を言うべきだな。」

 

「お互い様だ。それより、シャリア・ブル中将は。」

 

「前方、シャアを迎撃に向かったようだ。」

 

「了解した。マチュ、ニャアン、ここは頼む。」

 

 ガトーは一瞬だけ沈黙した。

 

「ジオンに手を貸してくれるとはな…。」

 

「敵の敵はってヤツさ。」

 

 ガトーは低く笑った。

 

「気に入らないだろうが、今は我慢してくれ。」

 

 リゲルグ・カスタムが見送る中、Hi-νガンダムが単機、戦場の最奥へと突き進み、シャアの駆るナイチンゲールの元へと向かった。

 

 一方、マチュとニャアンは、ハマーンとキャラの前に立っていた。

 

「邪魔をするなら!」

 

 言うが早いか、ハマーンはキュベレイの腕に固定されたビームカノンを掃射し、マチュとニャアンを牽制する。

 二人は散開し、マチュが抜いたビームサーベルでキュベレイに切りつける。

 ニャアンは、フレドのバックパックに装着したバインダーから、ファンネルを射出して、キャラの駆るサイコドーガに襲い掛かった。

 

「ニャアン、行ける?」

 

「うん、こっちは大丈夫!」

 

 ハマーンのキュベレイとジークアクスが、キャラのサイコドーガとジフレドが、それぞれ互いの攻撃を受けては返し、躱しては斬りかかる。

 その光景は、常人には目で追うことすら困難なほどで、二筋の太い光跡が、闇に染まるキャンバスに、一瞬だけの絵画を描いているかのようにすら見えた。

 4人が4人ともに、ファンネルを展開し、宙域には、更なる光の奔流が走ったのだった。

 

「ニュータイプ同士の戦闘とは、こうも常軌を逸するものだというのか…。」

 

 光の軌跡に目を奪われながら、思わずガトーは独り言ちていた。

 

 クアックスのファンネルが、キュベレイのそれを相殺し、更にビームライフルでファンネルの数を削っていく。

 

「キュベレイのファンネルいったい幾つ積んでんのさ。ハマーン、ズルい!」

 

「貴女もアムロに頼んで増やしてもらうといいわ。生きて帰れればの話だけどね。」

 

「冗談は髪の色だけで十分っ!」

 

 フレドが大型ビームサーベルを両手で保持し、砲丸投げでもするかのように、機体を回転させて、近寄るキュベレイのファンネルを、次々と叩き落として行く。

 

「助かった!ニャアンナイス!」

 

「あぁ、ダメ、しくじった。気持ち悪い…。吐きそう。」

 

 ニャアンが通信越しに嘔吐いていると、頭上からサイコドーガがキャラの咆哮と共に二機の間に突っ込んできた。

 

「きゃははははははは!お姉ちゃんばっかりズルぅ~~い!私も一緒に遊ぶんだからぁ!!」

 

 キャラの機動は相変わらず常軌を逸していて、普通に目で追っていては、首の可動域が持たない。

 

「キャラぁぁぁぁぁぁ!相変わらずぶっ飛んでなぁ!」

 

「きゃははははははは!マチュの機体じゃあたしには勝てないよ!あたしのは最新式なんだから!」

 

「新しけれりゃ良いってもんじゃないだろうがぁぁあぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 マチュは機体をサイコドーガの下に滑り込ませ、持っていたライフルを捨てて、サイコドーガのバックパックを鷲掴みにすると、そのままキュベレイの方に向かって投げ飛ばした。

 

「うおぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 すると、そこへ、ガトーのリゲルグ・カスタムが、絶妙なタイミングで高出力ビームバズーカを打ち込んできた。

 

 回避が間に合わずに左腕のシールドで防御するキャラ。

 

「あぶないじゃないかぁ!邪魔をするならお前から先に落としてやるぅ!」

 

 キャラがガトーのリゲルグ・カスタムに気を取られた瞬間を見逃さず、ニャアンがキャラの背後からビームライフルを掃射する。

 

「マチュ!」

 

「了解!」

 

 マチュはニャアンが掃射するのを知っていたかの様に、そのビームの束を回避するサイコドーガの移動先を読んで、ビームサーベルで斬り割いた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!」

 

 キャラのサイコドーガは、マチュの横薙ぎの一撃を躱すことが出来ずに、シールドで受けようとして、左腕の肘から先を斬り飛ばされてしまった。

 

 マチュとニャアンの二人は、完璧と言えるほど息の合ったコンビネーションで、キャラのサイコドーガを追い込んでいた。

 嘗てジオンの英雄として名をはせた、シャアとシャリア・ブルが編み出した鉄壁の戦術であるMAV戦術。

 それが新しい世代のニュータイプ達によって、さらなる進化を遂げたことを告げる瞬間でもあった。

 

 千載一遇のチャンスとばかりに、マチュとニャアンは畳みかけ、二人の斬撃がキャラを五月雨のごとく襲う。

 キャラは辛うじて回避するが、明らかに劣勢に立たされていた。

 しかし、片腕を失ったキャラのサイコドーガと、マチュ達を遮るように立ちふさがる白いモビルスーツ。

 

「主義も主張も持たないくせに、私達の前に立ちふさがらないで!」

 

「髪の毛だけじゃ足りなくて、頭の中までピンク色の癖に!主義だの主張だのってぇ~!」

 

「なっ!?誰が!!!」

 

 マチュの安い挑発に、顔を真っ赤にして反論するハマーンだったが、動揺を振り払うように放ったファンネルたちが、マチュとニャアンを容赦なく追い回す。

 

 その瞬間だった。

 

 展開し、今まさに襲い掛かろうとしていたキュベレイのファンネルが、一瞬の迷いを示す。

 

 マチュとニャアンは、その異変に気づいて動きを止める。

 

「?」

 

 一瞬走る稲光、その僅かな瞬間に垣間見えた光景に、ハマーンは背筋が凍る思いを余儀なくされる。

 コックピットの中にいながら、シャアの気配に揺らぎを感じて、何とも言えぬ、言葉にならない、感覚。

 

 焦燥…。

 

「大佐……!」

 

 ハマーンは、マチュとニャアンの存在など忘れてしまったかのように、キュベレイのスラスターが、全力で噴射される。

 

「え?ハマーン!?」

 

 マチュが頓狂な声をあげる。

 しかし、その時にはもう既に、キュベレイの機影は、全開に吹かしたバーニアの光のみになっていた。

 

 宙域の奥、彼のいる方角へ、ただ一直線に。

 

 ただ、その一点だけを目指して…。

 




最後までお読みいただきありがとうございます。
いよいよクライマックス直前となりました。
次回もよろしくお願いいたします。
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