機動戦士ガンダムGQuuuuuuX SIDE AMURO ~少年が見た戦争~   作:すずき 虎々

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第三話 邂逅

第3話 邂逅

 

 どこまでも深い闇、其処彼処に光を放つ星々、宇宙空間では星は明滅しない、地球から見る星とは違い、大気による拡散がないことで、星は常に一定の光を放つ。

 人間など、道導のない宇宙空間に放り出されると、上下左右の間隔など途端に見失ってしまい、永遠に暗闇の中を彷徨う羽目になる。

 少年は、赤いザクのコックピットの中で、モニターに映し出された情報を元に、目的地の方向を設定し、どこまで行けるのかを、搭載されたAIに計算させるが、どこに進路をとっても途中で推進力を失うという結果に絶望していた。

 

「どうしろって言うんだ。これじゃ八方塞がりじゃないか。」

 

 誰にともなく独り言ちた少年は、既にサイドセブンの1バンチコロニーには、殆ど生きている人間がいないことを認識していた。

 少年がザクに乗り込み、コロニーの外を目指して移動していた際に、2発のビーム砲が撃ち込まれ、コロニーの外に出た後も、さらに3発のビーム砲が撃ち込まれ、その内の1発は、少年の乗るザクごとコロニーを破壊しようとしているかのように向かってきたが、少年は何とかそのビーム砲を回避し、コロニーの裏側に退避することに成功していた。

 その際、連邦の新型機体同士の戦闘を見た少年は、その性能に、まるで胸の奥に冷たい針がすっと刺さったかのような感覚を覚えた。いや、性能にではない、同型機であるはずの両機の動きに、雲泥の差が観られたことに対しての驚愕であった。一方はスペックに対して当たり前の結果を見せているのに対し、もう一方は、カタログスペックでは言い表すことのできない、理論値を優に超えるであろうその動きは、星々の間を縫うような軌跡を描き、時には障害物であるはずのデブリさえも蹴りつけて、自らの機動力に変える、まるで俊敏な野生の獣を連想させる程の流麗なものだった。しかも、そのパイロットは、そんな激しい戦闘の最中、止まっていても発見するのが困難な程に距離の開いた場所にいる、自分の事までをも見ているとさえ感じたのだった。

 少年は、無我夢中でその場を離れようと、ザクの推進力の残量など気にもせずに、只々その場から距離を取れればそれでいいとでもいうように、一粒の光も差さない心の中で、夢中でフットペダルを踏み込む脚に力を入れたのだった。

 

「アムロどうする、アムロどうする。」

 

 虚無感に打ちひしがれる少年の心情など意に介することもなく、捲し立てるハロに対し、少年は怒りをぶつける。

 

「どうするって言ったって、そんなのわかるわけがないだろ、こっちが教えてもらいたいくらいだよ!」

 

「アムロ脳波レベル低下、アムロ脳波レベル低下。」

 

「うるさいな、もう、少し黙ってろよ。」

 

 ハロの言動に耐え切れなくなった少年は、思わずハロの電源をオフにし、コックピットのシートの上に膝を抱えて座り込むと、虚ろな目でぶつぶつと独り言を始めるのだった。

 

 酸素残量のアラームが鳴り響くコックピットの中、膝を抱えている少年の耳に、突然スピーカーから人の声が響いた。

 

「そこの少年、私のザクに乗ってどこに行こうというのだ。出来ればその機体は返してほしいのだがな。」

 

 ムサイ級軽巡洋艦ファルメルのブリッジで、自身がサイドセブンで投棄してきたはずのザクを発見し、そのザクを動かしているであろう人物に対して、音声通信を発信した赤い士官服の男は、『今、私は少年と言ったのか。』と、自身の発言に驚いていた。

 男はさらに音声通信を発信する。

 

「私は、ジオン公国宇宙攻撃軍のシャア・アズナブル少佐だ、この艦を預かっていて、そのザクのパイロットでもある。おとなしくそのザクを返してくれるというのであれば、右手のマシンガンを投棄して、開いたハッチから着艦してくれたまえ。君には出来るのだろう。」

 

 武装解除してからの着艦を促された少年は、シャアと名乗る男の指示に従う以外、自分に残されている選択肢が無いことを理解していた。

 少年は言われるがままに、右手に握られていたマシンガンを投棄する操作をし、そのまま艦首下部のハッチが開いたので、マニュアル操作で相対速度を合わせ、艦内に着艦したのだった。

 

 ファルメルのモビルスーツデッキの扉が閉まると、空気の充填中であることを示す警告灯が赤く点灯し、しばらくすると緑に代わる。緑に代わると同時に自分が乗っているザクの右手側のクルー用ハッチが開き、赤い士官服の男シャア・アズナブルが部下らしき人物二人を引き連れて、モビルスーツハンガーに入ってくるのが見えた。

 そのままコックピットハッチの前までやってくると、モビルスーツから降りることを促すようなジェスチャーをする。

 少年は素直に従い、コックピットハッチを開放すると、ハロを抱えて外に出る。コロニー暮らしが長いとはいえ、無重力の空間に出るのは初めてではなくても、慣れてもおらず、バランスを崩して、その場で回転してしまう。その場でクルクルと回転する少年を、シャアの後方で控えていた細身の男が体を支えてくれた。

 シャアは、少年を見るなり「若いな。」と独り言ちただけで、他には特に何も云わず、そのまま入ってきたハッチに向かって進んだ。

 モビルスーツデッキを移動する最中、少年が見上げた先に、先程鹵獲したであろう連邦のモビルスーツが見えた。

 少年はモビルスーツを見上げて、ぽつりとつぶやく。

 

「あの設計図、完成させられてたんだな。」

 

 少年のつぶやきを聞いて、シャアが反応を示す。

 

「君はこのモビルスーツを知っているのか。」

 

 少年は、シャアを下から睨め付けるように見るだけで、口を噤んでしまう。

 シャアは、そんな少年を見ると、口元を緩めて言葉を続ける。

 

「軍人を見て固くなるのはわかるが、私も先程名乗ったのだから、名前くらいは教えてくれても罰は当たらないのではないかな。」

 

 そう言われて、少年は逡巡するが、出てきた言葉は自己紹介とは程遠いものだった。

 

「貴方達が僕達のコロニーを攻撃してきたんじゃないか。モビルスーツを奪うだけなら、コロニーを撃ち抜かなくても良かったはずでしょう。」

 

 少年の言葉に、一瞬虚を突かれたような表情を見せたシャアだったが、すぐに余裕の表情を取り戻して、言葉を返す。

 

「ずいぶんと威勢の良い少年だな、しかしそれは、一方的な物の見方だ。」

 

「何を!」

 

 身体を拘束されることのなかった少年は、自由であるのをいいことに、シャアにつかみかかろうとするが、後ろに控えていた小太りの男に、いとも簡単に右腕をねじ上げられ、そのまま制圧されてしまう。

 

「くっ、離して下さい。」

 

 少年は、腕をねじ上げられた痛みに顔を歪めながらも、なおも身をよじって拘束を免れようとする。

 しかし、シャアは右手で部下を制し「ドレン、離してやれ。」と言って少年を見据える。

 制圧を解かれた少年は、後ろを振り返ってドレンと呼ばれた士官を一瞥すると、再度正面を向いてシャアに正対する。

 

「確かに、君の言う通り、我々はサイドセブンの偵察任務の際に、連邦の軍事施設を攻撃した。そこで命を落とした軍人もいるだろうが、それはお互い様だ。その後、我々はそこのモビルスーツと、この艦がけん引している連邦の新型艦を奪取して、サイドセブンから離脱したが、この最新型のモビルスーツと戦艦の機密漏洩を嫌って、コロニーごと撃ち落とそうとしたのは、連邦の艦隊だ。我々はコロニーに穴の一つも開けてはいないさ。」

 

 少年はなおもシャアを睨みつけ「そんなもの、信用できるか。」と吐き捨てる。

 するとシャアは、口元を歪めて「ふっ。」と鼻を鳴らす。

 

「この状況で、物おじもせずにはっきりと自分の意見を言える度胸があるというのは良いことだ、ただし、それは時と場合と相手を選ぶということも覚えておいた方が良い。まぁ、良いだろう。ドレン。」

 

シャアは、後ろに控える部下に対し「戦闘記録の映像は残してあるな。」と問いただすのだった。




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